「店舗設計」と一口に言っても、その中には動線計画、照明設計、ブランド演出、空間の快適性など、さまざまな要素が詰め込まれています。そして、それらを自分の頭の中だけで構築していくには限界があります。だからこそ、多くのプロたちは「良い本」を手元に置き、実務のたびに立ち戻って参考にしているのです。
しかし――
いざ書店やネットで「店舗設計 書籍」と検索しても、出てくるのはランキング記事か、装丁は立派だけど中身がふわっとしたものばかり。「結局、どの本が本当に役に立つの？」という疑問が、設計実務者の多くに共通しています。
この記事では、そんな迷える方のために「失敗しない店舗設計本の選び方」と「目的別・業種別に整理した信頼できる本のリスト」をご紹介します。さらに、設計と運営をつなぐ“入口設計”の視点も踏まえ、他では得られない実務的な気づきも盛り込みました。
あなたの手元に、本当に役に立つ一冊が届きますように。
目次（このページの内容）
なぜ「店舗設計の本選び」がこんなに難しいのか？
「人気ランキング上位の本を買ったのに、実務では全く使えなかった…」
これは、多くの設計担当者が一度は経験している“本選びのミス”です。
●問いかけ：なぜ、店舗設計本は「ハズレ」が多いのでしょうか？
●答え：設計の性質上、「どんな空間を、誰のために、どう使いたいか」が本ごとに異なるからです。
住宅設計やオフィス設計と違い、店舗空間には明確な“目的”があります。それは「顧客の行動を促すこと」です。そして、その目的は業種によって千差万別。
たとえば、カフェなら「長く滞在してもらう空間」が重要ですが、美容室では「施術と回転のバランス」が重視されます。
この違いを無視して「おしゃれな空間づくり」だけを語る本は、実務には応用しにくいのです。さらに、ランキング上位にある本の多くは、広く浅くまとめられている一方で、実際の寸法や照明の照度、素材選びの基準など、“設計判断に必要な情報”が薄いという問題があります。
つまり、設計本の“選びにくさ”の原因は、以下の2点に集約されます：
- 空間の目的や業種が異なるため、万人向けの内容になりがち
- 実務に必要な「具体的な情報」が不足しているケースが多い
そこで次章では、この「選びにくさ」を突破するための“本の選び方”を3つの視点からご紹介します。
店舗設計書籍の選び方【３つの視点】
書籍選びで最も大切なのは、「自分の目的に合っているか」を見極めることです。どんなに良い内容でも、それが今のあなたに合っていなければ意味がありません。
●問いかけ：どうすれば、自分にぴったりの店舗設計本が見つかる？
●答え：目的・業種・スキルの３つの視点で選ぶと、失敗しにくくなります。
以下では、それぞれの視点について詳しく解説します。
視点1：目的別に選ぶ（動線／集客／滞在）
まず考えるべきは「その本で何を学びたいか」です。
店舗設計には大きく分けて次のような目的があります。
- 動線を最適化したい（顧客が自然に移動し、回遊性が高まるようにしたい）
- 集客力を上げたい（外観やファサード、視認性を改善したい）
- 滞在時間をコントロールしたい（カフェやラウンジなど、居心地重視の空間設計）
それぞれの目的に合った本を選ぶことで、「読んだのに実務で使えない」という失敗を防ぐことができます。
視点2：業種で選ぶ（飲食／美容／物販など）
次に重要なのが、業種との適合性です。
飲食と物販、医療と美容――それぞれ顧客の期待も行動も大きく異なります。
たとえば、美容室なら「施術スペースの配置」や「鏡の反射光」が重要になりますが、クリニックでは「バリアフリー」や「清潔感の演出」が優先されます。
つまり、同じ“設計”という言葉でも、業種によって求められる空間の条件がまるで違うのです。業種別に書かれた本を選ぶことで、その業種ならではの「暗黙のルール」や「ノウハウ」を得ることができます。
視点3：前提知識・レベルで選ぶ（入門／中級／実務）
最後に見落とされがちなのが、自分の「設計スキルのレベル」です。
- 初心者向けの入門本：イラストや図解が多く、専門用語も丁寧に説明されている。店舗設計未経験者におすすめ。
- 中級者向けの実例集：ある程度の知識がある人向けで、業種別の実例写真や寸法図が掲載されている。
- 実務者向けの設計資料集：寸法基準、法規、材料特性など、実務に直結する情報が網羅されている。経験者向け。
自分のレベルに合っていない本は、「難しすぎて理解できない」「物足りない」と感じる原因になります。
このように、「目的」「業種」「スキルレベル」の3視点を組み合わせることで、自分にぴったりの一冊を効率よく選ぶことができます。
次章では、これらの視点に基づいて具体的におすすめの本を「目的別」にご紹介します。
それぞれどんな課題を解決してくれるかもあわせて解説します。
実務で使える！目的別おすすめ店舗設計本リスト
ここでは、前章でご紹介した「設計の目的別」に、実務で信頼できる書籍を厳選してご紹介します。
●問いかけ：どの本を選べば、自分の課題が解決できる？
●答え：動線・照明・ブランド設計など、目的ごとに本を選べば、最短距離で成果が出せます。
1. 動線計画に強い本
『売れる店はどこが違うのか？動線と空間で見る店舗設計』／○○建築設計研究会（仮）
この本は、客の流れを「意図的にデザインする」ことに重点を置いています。
回遊性を高める配置や、滞留を生むコーナー設計など、実例写真と共に「行動を誘導する設計」が学べます。
主な特徴：
- 売場・サービス動線の対比事例が豊富
- 顧客心理と空間設計の関係性を解説
- 図解が多く、レイアウトの参考にしやすい
2. 照明・空間演出に強い本
『商空間の照明デザイン』／照明学会編集（仮）
店舗の雰囲気は照明が決める、と言っても過言ではありません。
この本では、演色性・照度・配光角といった基礎的な照明設計の知識から、空間全体の演出までをカバー。
主な特徴：
- 目的別（物販／飲食／接客）の照明設計を解説
- 実際の照明器具と設計図の事例あり
- 店舗ブランディングと光の関係にまで踏み込む
3. ブランド設計と空間表現に優れた本
『空間でブランドを伝える：コンセプトから導く店舗デザイン』／××デザイン事務所（仮）
単に美しい空間をつくるのではなく、ブランドコンセプトを空間に翻訳するという、上級者向けの視点を与えてくれる一冊。
主な特徴：
- 「抽象的なブランドワード」を空間に落とし込む手法
- 有名ブランド店舗のデザイン解剖
- 世界観と設計図面の一貫性にフォーカス
これらの本は、単なる知識ではなく「どう設計判断すれば良いか」を教えてくれる、いわば実務における思考のガイドブックです。
次章では、設計目的だけでなく、業種別に適した書籍をご紹介します。業種によって空間要件が大きく異なるため、必ずチェックしておきたいポイントです。
業種別おすすめ書籍【カフェ・美容室・医療・物販】
設計において、業種は最も強い制約条件の一つです。
どれだけ優れた設計でも、業種に適していなければ「使えない空間」になってしまいます。
●問いかけ：業種ごとに、設計で何が求められる？
●答え：機能・心理・回遊性などのバランスが、業種によってまったく異なります。
カフェ：雰囲気 × 回転率のバランスが命
『小さなカフェの設計図鑑』／○○出版（仮）
小規模な店舗を想定した、実務に直結する設計ノウハウ本。
「客単価×滞在時間×席数」のバランスをどう設計に反映するかが明快です。
注目ポイント：
- 客席の配置と滞留時間の相関分析
- 客目線とスタッフ目線の動線設計
- 一人客・複数客の比率による家具選定のコツ
美容室：施術動線と待機空間の両立
『サロンデザインの教科書』／××クリエイティブ（仮）
美容室の設計における「スタッフ効率」と「客の安心感」を両立させる空間戦略が豊富。
注目ポイント：
- 施術・洗髪・待合など各ゾーンの配置図例
- 鏡・照明・音響が与える心理的影響
- 店舗拡張時を見越した設計計画の方法
医療・福祉：清潔・安全・バリアフリーの最優先
『クリニック設計の基本』／建築医学研究会（仮）
医療空間ならではの「清潔感」「動線分離」「患者心理への配慮」まで丁寧に解説。
注目ポイント：
- 受付→診察→会計までの心理的ストレスを減らす動線設計
- 感染対策・防音・照度などの技術的根拠付き
- 高齢者・車椅子ユーザーに配慮したユニバーサルデザイン実例
小売・物販：視認性と回遊性を両立する工夫
『売れる店舗のデザイン術』／販促空間研究所（仮）
「どう陳列すれば売れるか」ではなく、「空間全体でどう売るか」に焦点を当てた設計思考が学べます。
注目ポイント：
- 棚の高さと顧客視線の関係
- 動線誘導のための床材・照明演出
- 季節イベントやPOPとの空間連動設計
これらの本を業種別に持っておくことで、設計前のヒアリング段階から「空間の目的」を正しく設定できるようになります。
結果として、現場の設計品質・運営効率ともに大きく向上します。
次章では、これまで紹介してきた本に共通する「本当に役立つ設計書籍の見極め方」をご紹介します。
実務設計に本当に効く本の「共通点」とは？
世の中には“建築本”はたくさんありますが、設計実務の現場で「これは助かった！」と評価される本には、明確な共通点があります。
●問いかけ：本当に実務で使える設計書籍って、どんな本？
●答え：判断基準や寸法情報、現場視点の写真がしっかり載っている本です。
1. 設計「手法」ではなく「判断基準」にフォーカスしている
多くの設計本は、「こう設計すべき」という手法を示しますが、実務では「この条件なら、どちらを選ぶべきか」という判断のフレームの方が重要です。
例）
- 「入口幅は900mm以上」ではなく「車椅子対応が必要な場合は？」と条件分岐を明示
- 「全体照度300lx」ではなく、「どの作業・空間にどの照度が適切か」を段階的に解説
2. 寸法や仕様が具体的に載っている
実務では「イメージ」より「具体」が何より重要です。
役立つ本は、次のような情報をしっかり掲載しています：
- 什器や壁の寸法、素材厚み、施工条件
- 設計図と実際の写真を並べたビジュアル比較
- 法規やガイドラインとの対応関係
こうした情報があれば、そのまま設計図やプレゼン資料に転用できます。
3. 写真と図版のバランスが良い
文章だけの説明では、設計のニュアンスは伝わりません。
実務で評価される本には、次のような特徴があります：
- 図面／CG／完成写真がバランスよく掲載
- 「設計前→設計後」など変化の比較が見られる
- 空間を俯瞰で見た配置図と、使用中の写真が連動
これにより、言葉だけでは伝わらない「空間の意図」や「ユーザーの動き」が可視化され、設計判断が一段と精緻になります。
これらの共通点を意識することで、「自分に合った本かどうか」を短時間で見抜く力がつきます。
次章では、こうした知見をもとに、「設計と運営の橋渡し」とも言える“入口設計”に焦点を当てていきます。
「入口の設計」を見直すだけで、店舗の印象は変えられる？
ここまで、店舗全体の設計に役立つ書籍をご紹介してきましたが、最後に注目したいのが「入口」です。
●問いかけ：入口って、そんなに空間全体に影響するの？
●答え：入口の設計次第で、来店率・安心感・店舗印象すべてが変わります。
店舗入口は“無言の接客担当”である
客が店舗に入るかどうか――その判断は、多くの場合「入口のたたずまい」で決まります。
- 自動ドアか、手動ドアか
- 開く方向とスピード
- ドアの存在感や透過性（ガラス／木製など）
- 段差・バリアフリー対応の有無
この数秒の接触体験が、無意識のうちに「入りやすさ」や「安心感」を左右します。
入口がもたらす心理的効果と機能的役割
たとえば、ガラスの自動ドアは「開放的で入りやすい」という印象を与えますが、夜間営業の飲食店では「防犯上の不安」が出てくることも。
また、病院や調剤薬局などでは「手を使わずに開く」「音が静か」など、衛生性や安心感が重要視されます。
つまり、「業種と目的に応じた入口の選定」こそが、実は空間のUX（ユーザー体験）を左右する重要な設計要素なのです。
自動ドア＝電動式だけじゃない？知っておくべき入口の選択肢
一般に「自動ドア」と聞くと電動式を思い浮かべがちですが、実は**電気を使わずに開閉する“荷重式自動ドア”**という選択肢もあります。
たとえば：
- 小規模店舗（美容室・個人医院・カフェなど）
- 停電対策・防災対策が求められる施設
- 電源を引くコストが重く感じられる場所
こうしたケースでは、荷重式という「重さで開く」ドアが、省エネ・安全・維持管理の面で非常に高い効果を発揮します。
設計段階でこの選択肢を知らなかったばかりに、運営後に「もっとシンプルなドアにすればよかった」と後悔する例は少なくありません。
入口設計は「設計」と「運営」をつなぐ接点
入口は、設計者がプランする最初の要素であると同時に、運営者が最も日々向き合う部分でもあります。
だからこそ、「入口の設計」に目を向けることは、空間の“理想”と“現実”を結びつける重要な視点と言えるのです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
最後に、この記事全体の内容を「【適ドア適所】」という視点から、整理してまとめます。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
本記事では、「店舗設計 書籍」で悩んでいる実務者の方に向けて、本当に役立つ本の選び方とおすすめ書籍を、目的別・業種別に整理してご紹介してきました。さらに、設計者が見落としがちな「入口設計」の重要性についても掘り下げました。
では、これらをNewtonドアの哲学＝適ドア適所の観点で振り返ってみましょう。
「空間に合った本」と「場所に合ったドア」は同じ発想
書籍選びにおいて「目的」「業種」「スキルレベル」によるフィルタリングが有効だったように、ドア選びにおいても「用途」「環境」「利用者層」に応じた最適解があります。
- 店舗の規模が小さいのに電動ドアを設置することは、「大は小を兼ねない」設計ミスになりうる
- 頻繁な開閉が必要ない空間で、電動ドアが高コスト・高トラブル要因になることも
- 逆に、車椅子利用が多い空間では、電気式よりも「静かに、確実に開く構造」が求められる場合もある
このように、「空間の使われ方」に即して最適なドアを選ぶこと＝適ドア適所は、設計者としての大きな責任でもあります。
「入口」は情報と体験のスタート地点
本選びにおいて、最初の一冊が「間違っていた」ときのロスは大きいように、
入口のドア選びも、来店体験の第一印象を左右する“情報の起点”です。
入口は「機能」と「感情」の交差点。
だからこそ、そこに設計思想が宿っていなければ、全体の空間もぼやけてしまうのです。
最後に：設計とは、選択の連続
- どの空間を、どの目的で、誰のために設計するか
- その中で、何を重視し、何を切り捨てるか
- そして、「どの本を参考にするか」「どのドアを選ぶか」
そのすべてが、設計という行為です。
あなたのその選択が、利用者にとって最適な空間を形づくりますように。
【荷重式自動ドア】Newtonドアの資料請求はこちらから→https://76auto.biz/newtonplus/registp/p-offer.htm
【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus