自動ドアと聞くと、多くの方は電動のスライド式ドアを思い浮かべるかもしれません。しかし実は、近年の店舗設計においては、電源を使わない「荷重式自動ドア」といった選択肢も静かに注目されつつあります。特に災害対策、省エネ、そしてデザイン性を重視する空間では、このような代替的なドアの活用が設計者の間で話題になることも増えてきました。

そこで本記事では、「オカムラ」という空間設計のリーディングカンパニーがどのような視点で店舗の「入口空間」を設計しているのかを起点に、プロが重視する導線設計やドアの選定視点について、深掘りしていきます。

読み進めていただくと、以下のようなことがわかります:

  • オカムラの店舗設計における設計思想と注力領域
  • なぜ「入口空間」が空間全体において極めて重要なのか
  • 店舗入口で選ばれる自動ドアの種類と、その選定基準
  • 電源不要の「荷重式自動ドア」が持つ、意外なメリットと活用の可能性
  • 設計のプロが最終的にドアを選ぶ際、どんな視点で判断しているのか
  • そして、あらゆる施設で応用可能な「適ドア適所」という考え方

店舗設計やリニューアルに携わる方、自動ドアの選定で迷っている方にとって、実務にも直結するヒントが詰まった構成になっています。読み終えるころには、「ドア」という単なる部材にとどまらない、空間と体験のデザインという視点が手に入るはずです。

「オカムラ」と聞いてまず思い浮かぶのは、洗練されたオフィス家具やワークプレイスの設計ではないでしょうか。確かに、オカムラは長年にわたり、オフィス空間の最適化や働き方改革を支える製品・空間設計を手がけてきた企業です。しかし、その活躍の舞台はオフィスにとどまりません。実は同社は、商業施設・教育機関・医療施設など、「公共性」や「体験価値」が重視されるあらゆる空間」の設計にも深く関与しているのです。

特に近年注目されているのが「店舗設計」におけるオカムラのアプローチです。オカムラが手がける店舗設計には、単なる什器配置や内装デザインにとどまらず、**空間全体を通じた「ブランド体験の設計」**が織り込まれています。


目次(このページの内容)

根拠:オカムラが重視する「導線設計」と「ゾーニング」

オカムラのプロジェクト実績を見ていると、共通しているのが「動線設計」へのこだわりです。店舗であれば、顧客が最初に足を踏み入れる瞬間から、商品を見て、購入に至るまでの体験が、スムーズかつ印象的に設計されていることがよくわかります。

その際に活用されるのが、「ゾーニング」と「導線分析」です。

  • ゾーニングとは、空間を機能ごとに明確に分け、それぞれにふさわしい設計要素を落とし込む手法。
  • 導線分析とは、人の動きを定量的に把握し、心理的な流れに沿った空間を組み立てる設計技術。

これらは単に「使いやすい空間」をつくるための道具ではなく、ブランドの理念やメッセージを空間体験としてユーザーに届ける手段として活用されているのが特徴です。


導入から体験へ──入口空間のデザイン哲学

オカムラの設計思想の中核にあるのは、「入口=体験の始まり」という視点です。来訪者がドアを開けて最初に触れる空間は、その店の印象を決定づける極めて重要な要素です。

たとえば、あるアパレルブランドの店舗では、入口に立った瞬間に「世界観」が感じられるような演出がなされていました。光の色温度、音響、匂い、天井の高さ、開口部の広がり。すべてが、単なる物理的な空間ではなく、「演出」として設計されていたのです。

このように、「空間=舞台」ととらえ、入口空間を「物語の始まり」としてデザインする姿勢は、オカムラの店舗設計における大きな特長と言えるでしょう。


スタッフ動線と業務効率への配慮も

もちろん、体験設計だけではなく、**店舗運営側の使いやすさ(業務導線)にも細心の注意が払われています。**スタッフの移動経路、補充や清掃のしやすさ、レジやバックヤードへのアクセスといった業務効率の確保は、設計の初期段階から統合的に考慮されているのが特徴です。

このように「利用者」と「運営者」の両視点をもった空間設計は、オカムラならではのバランス感覚とも言えるでしょう。


ドアもまた「空間設計の一部」として捉える

入口空間に欠かせない「ドア」もまた、単なる出入口としてではなく、空間の印象や導線に大きく影響する要素として設計されます。

ドアの開閉方式、素材感、透過性、防音性、バリアフリー性能──こうした要素を空間全体のテーマと整合させることで、入口から「その世界観に没入させる」導入体験が成立するのです。


こうしてみると、オカムラの店舗設計は、家具メーカーの枠を超えて「空間体験の総合演出」にまで広がっていることがわかります。

店舗設計において「入口空間」はなぜ重要か?

店舗の設計において、「入口空間」が果たす役割は想像以上に大きなものです。入口は単なる「出入り口」ではなく、その空間の世界観やブランドの第一印象を決定づける、いわば**“空間体験の始発点”**ともいえる存在です。

特に現代の商業空間では、商品やサービスの質そのものだけでなく、それを取り巻く「体験」が価値として重視されるようになっています。こうした流れの中で、入口空間のデザインは、「ブランド体験の入口」としてますます注目を集めています。


要点1:第一印象は「入口の印象」で8割決まる

人間は空間に入った最初の数秒で、無意識のうちに「この場所は快適かどうか」「信頼できそうかどうか」を判断しています。この時、視覚・聴覚・嗅覚・触覚といった五感すべてを使って空間の情報を受け取り、瞬時に印象を形成しているのです。

入口空間の設計では、以下のような要素がその印象に直結します:

  • 開口部の広さ、開放感
  • ドアの開閉方法やスムーズさ(ストレスのなさ)
  • 明るさや照明の色味(安心感や期待感を演出)
  • 素材感(木材、金属、ガラスなどが与える心理的効果)
  • 匂いや温度(季節やコンセプトに合わせた調整)

これらはすべて、「居心地の良さ」や「入りやすさ」といった印象に変換され、顧客の滞在意欲や購買行動に直接的な影響を及ぼします。


要点2:バリアフリーの観点からの入口設計

入口空間の設計で見逃せないのが、「バリアフリー対応」の視点です。高齢者、ベビーカー利用者、身体障害者といった、**多様な来訪者にとって“入口でつまずかないこと”**が非常に重要です。

特に気をつけたいポイントは以下の通りです:

  1. 段差の解消:スロープとフラットな床面の採用
  2. ドア開閉のしやすさ:力を必要としない方式、または自動開閉
  3. 視認性:床材・ドア・壁の色のコントラストによる識別性向上
  4. 音や触感による情報提供:視覚に頼らない設計(例:足元の誘導ライン)

このように、「誰もが自然に出入りできること」は、単なる機能性の話にとどまらず、店舗のホスピタリティそのものとも言えるのです。


要点3:気候・立地に合わせた“快適性”の設計

入口空間には、屋内外の「境界線」としての役割もあります。特に気温差や風雨の影響を受けやすい日本の気候においては、「内と外をどう接続するか」は非常に重要なテーマです。

たとえば、

  • **二重ドア構造(風除室)**にすることで冷暖房効率を保つ
  • ガラス張り+自動ドアで外からの視認性と遮蔽性を両立させる
  • 風・雨・雪の進入防止としての庇やドアの向きの調整

など、環境に対して適応する構造的工夫が求められます。

ここで「自動ドアの種類と特性」も大きく関係してきますが、それについては次章で詳しく解説します。


要点4:ブランド体験としての入口演出

入口空間は、**単なる通路ではなく「演出空間」**でもあります。どのような空間演出があるかで、その店舗のイメージや世界観は大きく変わります。

たとえば:

  • 高級感を演出するために重厚なガラスと静音開閉の自動ドアを用いる
  • ナチュラルな印象を与えるために木の素材感を活かした建具にする
  • アパレルやライフスタイル店舗で、入口からすでに「物語性」があるように設計する

このように、「この入口をくぐれば、ちょっと非日常の体験が始まる」──そんな心理を呼び起こす空間設計が、ブランドへの共感や記憶に残る体験につながります。


要点5:入りやすさと入りにくさ──人間心理の微細な設計

特に都市型の店舗では、「入りやすいこと」は必ずしも良いことではありません。高級志向のブランドや、プライベート感を大切にする業態では、あえて入口を「少し入りづらくする」ことで、「選ばれた人だけが体験できる特別感」を演出するケースもあります。

このような「心理的敷居感」までデザインに取り入れることができるのが、熟練の設計者による空間設計の妙です。


店舗の入口にどんな「自動ドア」が選ばれているのか?

店舗設計において、入口空間は単なる通路以上の意味を持ちますが、その入口に設置される「自動ドア」は、来訪者が最初に操作(体験)するインターフェースであり、空間の印象を大きく左右します。ここでは、一般的に店舗で採用される自動ドアの種類と、それぞれが選ばれる背景や設計視点について詳しく解説します。


自動ドアの主な種類と特徴

日本国内の店舗設計で多く採用されている自動ドアは、以下の3タイプが主流です:

ドアタイプ特徴採用されやすい業態例
スライド式(引戸)横にスライドして開閉。開口幅が大きく取れる。静音。コンビニ、スーパー、医療施設
スイング式(開き戸)前後に開閉する。設置が比較的容易。小規模店舗、診療所、カフェ
回転ドア風除け効果が高い。高級感・特別感を演出。ホテル、百貨店、一部の高級ブランド店

それぞれのドアは、空間の構成や業態、顧客層によって適材適所で使い分けられています。


要点1:開口幅・人の流れに応じた選定

たとえば「スライド式自動ドア」は、開口幅を広く確保できることから、多くの来客を想定する施設で好まれます。病院やショッピングモールなど、車椅子やベビーカーの利用も多い場所では、出入りのしやすさ=導線の確保が重要であり、自然とこのタイプが選ばれる傾向にあります。

逆に「スイング式」は、省スペースで設置できるため、小規模な店舗や入口の設置面積に制約があるテナントなどに向いています。最近では「手動開閉から自動化」への後付け対応も進んでおり、バリアフリー対応の一環として採用される例も増えています。


要点2:省エネ・防音・気密性の視点からの選定

特に日本の気候では、入口を通じた空調ロス騒音問題も設計上の重要な検討項目です。

ここで注目されるのが「気密性」や「自動開閉制御機能」です。以下のような視点での選定が求められます:

  • 人感センサーで開閉タイミングを最適化し、空調ロスを最小限に抑える
  • 二重扉+回転ドアなどで、屋内と屋外の温度差・騒音を遮断
  • 夜間は自動で施錠されるようにプログラムされたタイプもあり、防犯面にも配慮

これらは「ドア単体」ではなく、空間のエネルギー設計・快適性設計の一部として統合的に選定されている点に注目すべきです。


要点3:メンテナンス性と耐久性

設置後の運用においては、「メンテナンスのしやすさ」「故障リスク」「耐久性」も重要な判断軸になります。

特に商業施設では、以下のような視点で検討されます:

  • センサー誤作動や開閉不良の頻度が少ないか
  • 部品交換のしやすさや供給体制
  • 電気トラブル時の対応手段(手動切替可能か)

設計段階から「保守性」を加味することで、長期的なコスト低減や運用トラブルの回避につながります。


要点4:デザイン性とのバランス

最後に見逃せないのが「デザインとの一体感」です。

自動ドアは動的な部材であるため、建物の外観・内装との素材やカラーリング、構造の調和が求められます。最近では以下のようなニーズが増えています:

  • フレームレスガラスを使い、透明感と開放感を演出
  • 木材や金属などの素材感を活かしたドアパネル
  • 天井埋め込み型のドア機構により、機械感を抑える

このように、デザイン性と機能性を高いレベルで両立させることが、設計者やデザイナーの力量の見せ所でもあります。


これまで見てきたように、自動ドアの選定には、単に「どれが開くか・閉まるか」という機能面だけでなく、空間設計、来訪者体験、運用コスト、デザイン統合といった多角的な視点が求められます。

では、ここで一度視点を変えて、「電動ではない」自動ドア、つまり**電気を使わない「荷重式自動ドア」**という選択肢が、店舗設計においてどのような意味を持つのかを掘り下げてみましょう。

電動式だけじゃない?店舗における荷重式自動ドアという選択肢

一般的に「自動ドア」と聞くと、赤外線センサーで人を検知し、モーターで開閉する電動式のスライドドアを思い浮かべる方が多いと思います。しかし、実はこの常識にとらわれず、電源を使わない“荷重式”という自動ドアの方式があることをご存じでしょうか?

この方式は「電気がいらない」という特長から、省エネや防災、さらには設計自由度の観点で再評価されており、デザインにこだわる空間や、災害対応を意識した店舗設計において密かに注目されています。


要点1:荷重式自動ドアとは?そのしくみと基本機能

「荷重式自動ドア」は、扉の足元に内蔵された特殊なセンサー(荷重センサー)によって、人がドア前のフロアに乗ったことを検知し、その荷重をトリガーにドアが開く仕組みです。

主な特徴は以下の通り:

  • 電源不要:外部電源もバッテリーも使わず、100%機械的動作で開閉
  • 停電時も動作:災害時・非常時でも問題なく使用可能
  • 施工が簡易:電気工事不要で、既設の建物にも比較的スムーズに導入可能
  • メンテナンスが容易:電気部品がないため故障が少なく、保守費用も抑えられる

これにより、単に「機能としてのドア」ではなく、環境性・持続性・安心感をもたらす建材の一つとして、特定の設計者・施設運営者に選ばれるようになってきています。


要点2:店舗設計で荷重式ドアが選ばれる背景とは?

  1. 電源が取りづらい場所への対応
    • 商業施設内のインショップ(間借りテナント)や、リノベーション物件など、ドア周辺に電源が確保できないケースでは「配線レス」で施工できる荷重式が大きな利点になります。
  2. 防災・BCP(事業継続計画)視点
    • 災害時、停電によって自動ドアが開かなくなるという事例は過去にも多数報告されています。荷重式であればその心配がなく、「人が動けば開く」というシンプルかつ信頼性の高い仕組みが安心感につながります。
  3. 省エネと運用コストの削減
    • 電気を一切使用しないため、ランニングコストがほぼゼロに等しい。これにより、長期的に見ればイニシャルコストを含めても大きなコストパフォーマンスを実現できる可能性があります。
  4. デザインとの親和性
    • 電源機器を収納するスペースが不要なため、天井や壁面の意匠を妨げることがない。とくに「機械感を排除した自然な空間」を目指す設計では有効です。

要点3:電動式自動ドアとの比較表

比較項目電動式自動ドア荷重式自動ドア(Newtonドア)
電源の必要性必須(停電時は要バックアップ)不要(完全機械式)
設置工事電気配線が必要基本的に建具工事のみで設置可能
メンテナンスセンサー・基盤交換が必要機械的摩耗部品のみの簡易保守
デザイン制約電装部の収納スペースが必要壁・天井の自由度が高い
導入コスト高め(特に電気工事が発生)比較的リーズナブル
ランニングコスト通電・消耗部品の交換ありほぼゼロ
停電時の動作動作停止 or 手動切替が必要通常通り動作

この比較からも分かる通り、荷重式自動ドアは一見すると“シンプル”ですが、災害リスク・設計自由度・運用経済性という複数の観点で優位性を持っています。


要点4:Newtonドアという実例に見る「実務性」

荷重式自動ドアの代表格とも言えるのが、「Newtonドア(Nドア)」です。このドアは日本の建築現場や商業施設向けに開発された荷重式ドアで、自治体施設・マンションエントランス・小売店・診療所など、さまざまな業態で実際に導入されています。

導入事例を見ると、

  • 高齢者施設の安全性向上
  • テナントビルの省エネ化
  • 公共施設の災害対策
  • デザイン重視の店舗での採用

といった具体的な成果が報告されており、単なる技術的な話題にとどまらず、社会的価値や運用面での利便性を伴った選択肢として存在感を増しています。


オカムラのような設計会社は「何を軸にドアを選ぶ」のか?

オカムラのような空間設計のプロフェッショナルは、自動ドアを「開閉する装置」としてではなく、空間体験の一部、あるいは空間の価値を伝える“メディア”のようなものとして捉えています。そのため、ドア選定の判断軸には、一般的な機能性や価格だけでは語れない、より深い「空間哲学」が流れています。

この章では、プロの設計者がどのような視点でドアを選び、最適な入口空間を形づくっているのかを掘り下げていきます。


要点1:「空間コンセプト」との整合性

まず最も重視されるのが、そのドアが空間全体の設計コンセプトと調和しているかどうかです。

  • 高級感を訴求するブティックであれば、重厚で静かな開閉音、フレームレスガラスなどが好まれる
  • ナチュラル志向のライフスタイルショップであれば、木製建具や自然素材との相性が問われる
  • サステナブルな社会貢献を打ち出す店舗であれば、省エネ性や電源不要といった要素がデザインの一部になる

つまり、ドアの選定は「美観」だけではなく、その空間が伝えたい価値や世界観を視覚的・体験的にサポートする要素として見られているのです。


要点2:「利用者の行動動線」との相互作用

設計者にとって、入口はただ通るだけの場所ではありません。そこに立ち止まり、期待し、あるいは気づかずに通過する中で、どのような動線が生まれるかまでを織り込んでいます。

たとえば:

  • スライド式なら「視覚的に開放されている」印象を与え、気軽に入りやすくする
  • 開き戸なら「自分で開ける」という能動的動作を通じて、入店の意思を明確にする
  • 荷重式なら「立ち止まった瞬間に開く」という“気づき”による心地よいサプライズを生む

このように、ドアの方式はそのまま来訪者の心理や動作に影響を与える設計要素であり、動線設計と不可分な関係にあります。


要点3:運用シミュレーションへのフィードバック

オカムラのような設計会社では、クライアントとの設計プロセスで「ドアが日々どのように使われるか」を非常に丁寧にヒアリングします。

  • 1日にどれくらいの来訪者があるのか
  • ベビーカーや車椅子の利用頻度はどの程度か
  • ドアの周辺に什器や展示スペースはあるのか
  • 夜間や非常時の閉館対応はどうなるのか

こうした情報をもとに、運用上の課題やニーズを逆算し、「最適なドア形式」「開閉の速度や角度」「安全性の確保方法」など、シミュレーションを踏まえた設計提案を行います。


要点4:「非電源系ソリューション」への意識の高まり

ここ数年、サステナビリティやBCP(事業継続計画)の観点から、設計者の間でも「電源に依存しない空間部材」への関心が高まっています。

特に、

  • 商業施設の節電ニーズ
  • 停電時でも避難導線を確保する必要性
  • 建物のメンテナンスフリー化

といった文脈の中で、「荷重式自動ドア」や「重力式開閉メカニズム」などの非電源系ソリューションは、設計段階での「選択肢の一つ」として扱われるようになっています。

導入されるかどうかは別として、検討テーブルに乗る存在になってきているという点は、設計思想の変化を象徴する事実です。


要点5:「施工性」と「将来対応性」

設計者がドアを選定する際、意外に重視するのが「施工のしやすさ」と「将来の変更に対応しやすいか」という視点です。

  • 商業施設では入れ替わりの激しいテナントに対応するため、短期施工・簡易交換が可能な機種が好まれる
  • 設計段階で将来の電気配線追加や建具の変更ができるように拡張性のある仕様が重視される

特に、荷重式自動ドアのように電源や配線を必要としない構造は、設計自由度や改修のしやすさという点でも高評価されるケースが増えています。


プロの設計者が自動ドアを選ぶとき、それは単なる「設備機器の選定」ではありません。それは空間体験の入口を決める、極めて戦略的な設計判断なのです。

自動ドアの選定において、設計者や施主が最も頭を悩ませるのは、「結局うちの施設にはどれが合っているのか?」という問いです。選択肢が多くなるほど、機能や価格の比較だけでは決めきれず、導入後の後悔につながることもあります。

そんなときに有効なのが、**「適ドア適所(てきドアてきしょ)」**という考え方です。

この概念は、Newtonドアを開発・展開するNewtonプラス社が提唱しているもので、「自動ドアにはそれぞれ得意な“場所”と“目的”がある。それを正しく理解し、最適な場所に、最適な種類のドアを設置すべきである」という思想です。


要点1:「適ドア適所」とは何か?哲学的な設計判断軸

「適ドア適所」とは、単に「現場に合うドアを選ぶ」以上の意味を持ちます。それは、

  • 空間全体の運用目的
  • 来訪者の属性や動線
  • 災害・防犯などのリスク要因
  • 建物の維持管理の方針

といった複数の視点を統合的に捉えたうえで、最も相応しいドアを選ぶという、戦略的な設計思想です。

この考え方を導入することで、「流行っているからこれにする」「他の施設が使っているから」という表層的な判断から脱却し、本当にその場所にとってベストな選択ができるようになります。


要点2:施設のタイプごとに適したドアの例

Newtonプラス社が提唱する「適ドア適所」では、施設のタイプや使用目的に応じて、推奨されるドアの種類が異なります。

施設種別適ドアの例理由・背景
高齢者施設荷重式(電源不要・静音)停電時対応、安全な歩行動作を妨げない
テナント店舗荷重式 or スイング式電源確保が難しい、短期施工・交換のしやすさ
病院・クリニックスライド式(静音・開口大)車椅子対応、人の出入りが多い
公共施設荷重式+引戸型災害対応、誰でも直感的に使える
高級ブランド店スライド or 回転式デザイン性・高級感・冷暖房効率の両立

このように、ドア選定には明確な「目的と現場条件」があり、それに応じて設計判断する必要があることがわかります。


要点3:「目的に合わないドア」を選んでしまうリスクとは?

目的に合わないドアを導入すると、以下のようなトラブルや不満が生じる可能性があります:

  • 電動ドアが災害時に開かず、避難導線を妨げてしまった
  • メンテナンスコストが想定より高く、維持が困難に
  • ドアの開閉音や速度が、空間の雰囲気とミスマッチだった
  • 電源の問題で、設置できたはいいが使い勝手が悪い

こうした事例を避けるためにも、「何のためにこのドアがあるのか?」という問いに立ち返る姿勢が重要なのです。


要点4:「適ドア適所」に基づいたドア選定の4つの手順

ここでは、実務でも使える「適ドア適所に基づいたドア選定フレーム」を紹介します。

1. 施設の性格と利用者を明確にする

  • 例:医療系、教育系、高齢者施設、一般商業施設など
  • 来訪者の年齢層・身体条件・頻度など

2. ドア周辺の環境要因を整理する

  • 電源確保の可否、気密性の必要度、屋外との温度差
  • 騒音、施工スペース、既設構造物など

3. 災害・運用リスクを想定する

  • 停電時の対応(自家発電があるか?)
  • ドアの開放時の安全性(風・音・挟み込みリスク)

4. コストと維持管理のバランスを考える

  • 初期導入費用 vs ランニングコスト
  • 故障率、保守体制、耐用年数

この4ステップを順に検討することで、感覚や予算だけに頼らず、論理的かつ最適なドア選定が可能になります。


要点5:「Newtonドア」に見る“哲学の実装例”

「適ドア適所」の哲学をそのままプロダクトとして実装しているのが、「Newtonドア(Nドア)」です。以下のような特徴があります:

  • 荷重式でありながら、ドア本体の種類やデザインが豊富
  • 左右勝手・引戸・親子扉など、柔軟なカスタム対応
  • 対象施設ごとに「想定リスク」をベースに設計
  • 施工店との連携による全国対応

このように、「誰にとっても安心・快適な入口体験を提供する」ことを最優先に設計されたプロダクトは、設計者にとっても**判断の“拠り所”**となる存在です。


最後に、自動ドアの選定において迷ったときに立ち返るべき問いは、次の一言に集約されます:

「このドアは、ここに本当にふさわしいか?」

機能・コスト・デザインといった要素を超えて、「その空間にとって何が本質的に大切か」を問う。この問いに真摯に向き合える設計者こそが、「入口空間を設計する」という行為の真の意味を理解していると言えるでしょう。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

自動ドアは、ただ人を迎え入れるための装置ではありません。オカムラのような空間設計のプロが実践しているように、ドアは空間の体験価値を形づくる重要なエレメントであり、来訪者と空間をつなぐ“最初の接点”でもあります。

今回の記事では、店舗設計の観点から「入口空間」が果たす役割を深掘りし、その中でどのような視点で自動ドアが選ばれているのか、さらに電動式だけではない「荷重式自動ドア」の可能性、そして最終的な判断軸としての「適ドア適所」の考え方までをお伝えしました。

改めて整理すると、ポイントは以下のとおりです:

  • 入口空間は「第一印象」を決定づける場所であり、空間全体の体験を左右する
  • 自動ドアの選定は、導線設計・デザイン・防災・省エネ・バリアフリーと密接に関係
  • **荷重式自動ドア(Newtonドア)**のような、電源不要・低メンテナンス型の選択肢は、デザイン性と機能性を両立しうる新たな選択肢
  • 設計者は「空間コンセプト」「利用者像」「災害リスク」「施工制約」などを総合的に見て選定している
  • 最終的には「適ドア適所」という考え方によって、その場所・その施設に本当にふさわしいドアを選ぶことが、後悔のない選定につながる

出典表示(参考元一覧)

  • Newtonドア(Newtonプラス株式会社):製品特性、荷重式の技術解説、導入事例【Nドア顧客セグメントと導入事例.txt】【NドアFAQ.txt】【Newtonドア.txt】
  • オカムラ公式サイト:店舗設計における設計実績・空間デザイン事例
  • 一般建築情報サイト:自動ドアの種類と特徴、設計トレンド
  • 自動ドア工業会資料:自動ドアの安全性・規格対応(JIS規格)

地震など長期停電でも、止まらず動く
「事故が全くおきない」国も認めた安全自動ドア
アナログの特許構造で壊れないから修理費も0円

お問い合わせ・資料請求は今すぐ
↓↓↓

関連記事一覧

  • 関連記事
TOP