自動ドアなどを含む飲食店の空間設計において、「どこに行っても安心感がある」と言われる店舗は稀です。そのなかでサイゼリヤは、日本全国どの店舗を訪れても“なじみの空気感”と“期待を裏切らない使い勝手”が感じられるという点で、多くの設計者・運営者の関心を集めています。

この記事では、そのサイゼリヤの店舗設計の秘密を、表面的な内装の話にとどまらず「設計思想」「標準化」「再現性」という設計プロセスの核心から読み解いていきます。


なぜ「サイゼリヤの設計」が注目されているのか?

要点:

  • 「全国どこでも同じ雰囲気」が、ブランド信頼に直結している
  • サイゼリヤの空間は“感覚”ではなく“設計で意図された雰囲気”

根拠:

飲食業界のなかでもサイゼリヤのように、初めて訪れる店舗でも常連のような安心感を与える空間は珍しい存在です。この“安心感”は、インテリアや色合いの類似性だけではなく、「使い方がわかっている」「動きやすい」「声が反響しすぎない」といった無意識の快適さによって支えられています。

その理由は、感覚的なデザインではなく「標準化された設計思想」によって構築されているからです。

詳細:

  • すべてのサイゼリヤ店舗には「店内の奥まで通路を直進できる」「厨房とホールがシームレスに繋がる」「厨房はホールと並列型」などの設計パターンが存在します。
  • また、インテリアにおいても、イタリア調の絵画と暖色の照明が必ず配置され、「無機質ではない空間」の再現が統一されています。
  • これらの要素は“標準化された再現可能な構造”として、店舗設計ごとに展開されているのです。

「標準化された設計」がもたらすメリットとは?

要点:

  • どの物件でも“同じように再現できる”
  • 設計者や現場任せにしないことで「ブレ」が起こらない

根拠:

サイゼリヤは毎年数十店単位で出店・改装を繰り返しています。このスピードと規模を支えているのが、店舗設計の「標準化」と「再現性」です。これは属人性を排除し、どんな土地・形状でも“あの雰囲気”をつくる仕組みでもあります。

詳細:

  • 設計は施工業者によってバラつきが出やすい領域です。しかしサイゼリヤでは「このサイズにはこの厨房モジュール」「この幅の通路にはこの客席配置」というように、詳細まで標準化されています。
  • さらに、動線計画においても「厨房⇔ホール間の歩行距離」「トイレまでの案内動線」「レジの視認性と導線」をすべてパターンで設計。
  • これにより設計者が変わっても、オペレーションの質が変わらない店舗が再現されるのです。

サイゼリヤ店舗設計の基本構成と考え方

要点:

  • 「席配置」「厨房」「照明」「素材」のそれぞれに明確な基準がある
  • “居心地の良さ”は設計思想としての結果

根拠:

「サイゼリヤの店舗は、なぜ落ち着くのか?」という問いに答えるには、空間の要素分解が必要です。照明の高さ、椅子の硬さ、床材の音響性、テーブルのサイズと間隔まで、すべてが設計の判断材料になっています。

詳細:

  • 席配置:2人席・4人席を交互に並べず「ブロック」で配置。客層の回転率を想定した設計。
  • 厨房設計:ホール側と並列配置、搬入経路と出入口が交差しない。最小移動距離で最大作業が可能。
  • 照明:天井高に合わせた吊り下げ照明、間接照明、色温度3000K前後で“暖かさ”を演出。
  • 素材選定:騒音反響を抑える床材(ゴムやコルク風)や、汚れが目立ちにくい壁紙・椅子ファブリックなど、メンテナンスと居心地の両立。

設計がもたらす「居心地」と「回転率」の両立

要点:

  • “長居しすぎず、それでも落ち着ける”を狙った設計
  • 回転率を下げずにリピート率を上げる絶妙なバランス

根拠:

居心地を良くすれば回転率が下がる。効率を上げようとすれば居心地が悪くなる。飲食店が最も悩むこのジレンマに対して、サイゼリヤは設計でバランスをとっています。

詳細:

  • 背もたれの角度やテーブルの広さが「90分滞在で疲れない・でも3時間は居づらい」設計になっている。
  • 客席の音の響きや天井高を一定に保つことで“騒がしすぎない”空間を演出。
  • 一方で、天井が高すぎず、声がこもりすぎない「会話が弾むボリューム感」も意図的に設計されている。
  • 注文・提供・支払いまでのオペレーションがスムーズに行われるよう、席数と人員数のバランスも設計段階で検討されている。

サイゼリヤ設計思想の裏にある「型」とは?

要点:

  • 設計者が変わっても同じ結果が出せる“型”がある
  • 店舗ごとの違いを吸収する「フレームワーク型の設計」

根拠:

「毎回違う物件に出店しているのに、なぜどこでもサイゼリヤらしくなるのか?」という疑問への答えが「型」です。固定の図面やレイアウトではなく、あくまで“設計思考”として共有された再現フレームがあります。

詳細:

  • サイゼリヤでは、厨房サイズ・ホール面積・客席数のバランスを算出するテンプレートを持っています。
  • 照明器具や壁面装飾も、“どこに何を配置すればらしさが出るか”という「再現ルール」が設けられています。
  • この設計フレームは「設計図」ではなく「設計の考え方」として現場に展開されており、結果としてどの施工業者でも“あの雰囲気”を実現できるのです。

自店に活かすには?設計思想の応用ポイント

要点:

  • 表面をなぞるのではなく「思想」を理解して使う
  • 標準化は「形式」ではなく「目的」を再現するためにある

根拠:

設計思想はコピーできませんが、考え方や構造の持ち方は応用可能です。サイゼリヤの設計から得られるのは「形式」ではなく「仕組みと思想」です。

詳細:

  • 自社の店舗でも「どんな設計をすれば、どんな体験が生まれるか」を逆算できる仕組みをつくる。
  • 設計時に「滞在時間」「回転率」「席配置による心理効果」などを数値と構造で設計フローに入れる。
  • 設計担当・施工担当・運営側が「共通の言語」で空間を考えられるようにすることで、設計と運営のズレを解消。
  • サイゼリヤのような再現性の高い設計思想は、自社にとっての「適ドア適所=適空間適所」を考えるうえでも重要なヒントになる。

【適ドア適所】にそった「まとめ」

サイゼリヤの店舗設計が優れているのは、「どこにでも同じ設計をする」からではありません。「どの場所でも同じ体験を提供できるように、設計思想を標準化し、構造的に再現している」からです。

このアプローチは、Newtonドアが掲げる「適ドア適所=設置環境に応じた最適ドア選定」の思想と深く通じるものです。

適空間設計とは、単なる設備の配置ではなく、体験の設計。これはどの店舗にも通じる普遍的な視点です。サイゼリヤの設計思想は、その視点を体系化した好例として、空間づくりの指針となるでしょう。


出典一覧

  • saize.zenhp.co.jp「サイゼリヤの店舗設計に隠された空間の秘密」
  • duc.jp「サイゼリヤ ゆめタウン博多店」
  • nextleader.net「サイゼリヤの店舗設計が示すチェーン店の設計思想」
  • tenpodesign.com「サイゼリヤの店舗内装事例」
  • motauni.com「“整う”店舗空間哲学」

地震など長期停電でも、止まらず動く
「事故が全くおきない」国も認めた安全自動ドア
アナログの特許構造で壊れないから修理費も0円

お問い合わせ・資料請求は今すぐ
↓↓↓

関連記事一覧

  • 関連記事
TOP