自分では「店舗設計の仕事がしたい」と思っているのに、いざ志望動機を書こうとすると手が止まってしまう――。そんな経験、ありませんか?

ネット上にはたくさんの「志望動機の例文」がありますが、それを参考にしても納得できる文章にならなかったり、自分の本音とかけ離れてしまったりすることも多いものです。

この記事では、あなた自身の言葉で、納得感のある「店舗設計の志望動機」をつくるための思考法と具体的なフレームをご紹介します。
設計という仕事の本質を正しく理解し、そこにあなたの想いをどう重ねていくか。その道筋を、7つのステップで丁寧に解説していきます。


目次(このページの内容)

店舗設計の志望動機は“例文検索”では書けない理由とは?

一言で言えば、「例文」からは“自分だけの納得”が得られないからです。

例文を読むことで、構成や表現のヒントが得られるのは確かです。しかし、それを「自分にあてはめる」過程を飛ばしてしまうと、面接官や採用担当者から見ても、「どこかで見たような」薄っぺらい志望動機になってしまうことがあります。

根拠:志望動機が重要視される理由

店舗設計という職種は、単に「図面を描く」だけの仕事ではありません。
依頼主である店舗オーナーやブランドの意図をくみ取り、顧客の動線や売上への影響まで含めて「空間でどう価値を提供するか」を考える、非常に思考性の高い仕事です。

つまり、

  • 「なぜ設計の中でも“店舗”にこだわるのか?」
  • 「あなたが店舗空間に対して、どんな想いを持っているのか?」

という問いに、自分自身の経験や価値観を通じて答えられるかどうかが、最も重視されるのです。

NG例にありがちなパターン

  • 「空間デザインに興味があるから」
  • 「人に喜ばれる空間をつくりたいから」
  • 「インテリアが好きだから」

これらの言葉自体は悪くありませんが、**「なぜそう思うようになったか」「どんな経験とつながっているか」**がないと、印象に残りにくいのです。

要点:自分の言葉で語るには「自分の過去」を使うこと

例文ではなく、「自分の内側」にある動機にたどり着くためには、自分の中にあるエピソードや感情をていねいに拾い上げることが必要です。

そのためには、志望動機を書く前に、

  1. 店舗設計の仕事の本質を理解し、
  2. 自分の過去の体験とどうつながるかを振り返り、
  3. 企業にどう貢献できるかという視点まで整理する

というプロセスが不可欠です。


なぜ「店舗設計の志望動機」は難しいのか?

それは、「仕事内容の誤解」と「自己動機の表現不足」が重なりやすいからです。

多くの人が、店舗設計に「なんとなく憧れる」「オシャレでかっこいい」といったポジティブなイメージを持っています。しかし、それをそのまま志望動機として書いてしまうと、どうしても説得力に欠けた印象になります。

根拠:店舗設計の仕事は多面的

「店舗設計」と一口に言っても、実際の業務は非常に幅広いものです。

分野具体的な仕事
空間デザイン内装、外装の意匠設計(見た目)
動線設計お客様やスタッフの動きやすさ、回遊性の設計
設備計画空調、電気、水回りなど店舗としての機能性設計
ブランド戦略店舗コンセプトやブランド体験の構築
施工管理設計を現場に落とし込み、工期・品質を管理

つまり、単に「内装が好き」ではなく、どの観点に興味があるか・自分が貢献できるかを明確にすることが、志望動機の精度を大きく左右します。

よくある混乱①:「設計」と「施工」の違いがあいまい

特に学生や未経験者に多いのが、設計と施工の違いがわかりにくいという混乱です。
設計とは「つくる前の考える仕事」、施工は「実際に形にしていく仕事」です。

店舗設計の仕事には、その両方を一部担うこともあり、「企画・設計・監理」といったトータルな関与が求められる場合もあります。

よくある混乱②:「好き」だけで終わってしまう

「インテリアが好き」「おしゃれな空間を作るのが好き」という感情は大切ですが、それだけだと志望動機としては弱くなりがちです。

なぜなら、設計というのは「好きなものを作る」だけでなく、「誰かの課題を空間で解決する」行為でもあるからです。

要点:設計は“自己表現”ではなく“他者貢献”

設計における真の魅力は、「自分のセンスを発揮すること」ではなく、「誰かの想いや目的を、空間という形で叶えること」にあります。

この視点を持つことで、志望動機にぐっと“プロっぽさ”が加わり、採用担当者の印象にも強く残るようになります。


「店舗設計の仕事」とは、実際に何をするのか?

「空間をかっこよくする」だけではない、“お店の成果”に直結する仕事です。

店舗設計は見た目を整えるだけの仕事ではありません。
集客力、回転率、滞在時間、作業効率、ブランドイメージ……。
これらすべてに“空間”が関係しているため、設計の良し悪しがそのまま「経営成果」に影響することも少なくありません。


要点1:店舗設計は「戦略設計」である

飲食店、小売店、美容室、クリニック、カフェ――
それぞれの業種やブランドによって、「理想の顧客体験」や「収益モデル」は異なります。

店舗設計とは、そのビジネスの意図をくみ取り、空間という手段で成果に結びつけるという意味で、「戦略的」な仕事でもあるのです。


要点2:「動線設計」は売上や満足度に直結する

Newtonドアを含む荷重式自動ドアが注目される背景には、「顧客のスムーズな動線設計」があります。
つまり、設計者の選択が「ストレスなく動けるか」「立ち止まって商品を見るか」に直結するのです。

たとえば以下のようなケースが考えられます:

  • 飲食店:厨房と客席の動線が被るとオペレーション効率が落ちる
  • 小売店:導線が悪いと、商品を見てもらえず購買機会を失う
  • クリニック:プライバシー確保のため、受付〜診察室の配置が重要

要点3:企画〜設計〜監理までの全体関与が求められる

店舗設計の仕事には、大きく以下のフェーズがあります。

  1. ヒアリング(施主の想いを引き出す)
  2. コンセプト立案(空間の方向性を決める)
  3. 図面設計(実際の設計作業)
  4. 材料・設備選定(予算に応じた選定)
  5. 施工監理(現場での品質・進行チェック)

このように、ただ図面を描くだけではなく、「人と空間と目的をつなぐ」一連の流れを設計者が導くという役割があるのです。


志望動機に活かすポイント:

店舗設計の志望動機を書く際は、

  • 「どんな空間に興味があるのか?」
  • 「どんな成果に貢献したいのか?」
  • 「自分が得意な観点は何か?」

といった視点を持つと、「なんとなく憧れ」ではない、深みのある文章になります。


「あなたはなぜ店舗設計をやりたいのか?」を明確にする3つの問い

「店舗設計がしたい」という気持ちを、言葉にするには“問い”が必要です。

あなたが志望動機で伝えるべきなのは、「どんな気持ちをきっかけに」「どんな経験を通じて」「なぜ今、店舗設計に取り組みたいのか」という“ストーリー”です。

ここでは、それを言葉にするために役立つ3つの問いを紹介します。


問い1:「いつ・なにがきっかけで“店舗設計”に興味を持ったか?」

例:

  • アルバイト先の飲食店で、改装後に売上が大きく変わったことに驚いた
  • 商業施設のデザイン展を見て「空間でこんなに印象が変わるのか」と感動した
  • 自分の好きなブランドの店舗が、どれも「空間ごと記憶に残る」ことに気づいた

要は、「店舗設計」という仕事に初めて意識が向いた「原体験」です。


問い2:「その経験は、自分のどんな価値観や感覚とつながっているか?」

例:

  • 人の流れや使い勝手を考えるのが好きだった
  • 誰かが快適に過ごせる環境を考えるのが得意だった
  • 自分が“お店で心地よい体験”をすると、その仕組みを分析したくなった

ここでは「その体験が、自分にとってどう意味があったのか」を内省します。
ただの出来事ではなく、「その時、どう感じたか」まで掘り下げると、志望動機に厚みが出ます。


問い3:「自分はどんな店舗空間をつくっていきたいか?」

例:

  • 人が自然と立ち止まりたくなる、魅力ある動線設計
  • スタッフが働きやすく、かつ顧客満足も高い設計
  • 目立たなくても、“また来たい”と感じさせる空間の仕掛けづくり

この問いは、「あなたがこの仕事で実現したいこと」を言語化するものです。
応募する企業や職場の方向性とも絡めて、この部分を語ると志望動機に個性が出ます。


【まとめ】3つの問いの使い方

問い目的
①きっかけ志望の出発点を明確にする
②価値観との接点自分らしさや強みを発見する
③つくりたい空間像未来の貢献イメージを描く

これらの問いに答えることで、志望動機が「他人の言葉」ではなく、「あなた自身の体験から生まれた言葉」になります。


伝わる志望動機にするための「フレーム」とは?

“感情”と“論理”をバランスよく組み合わせる構成が、採用側の心に響きます。

せっかく想いがあっても、それが伝わる構成でなければ意味がありません。ここでは、志望動機を読みやすく、説得力のある形にするための「基本フレーム」を紹介します。


フレーム:4ステップ構成

  1. 動機(原体験やきっかけ)
  2. 経験(それを深めたエピソード)
  3. 共感(企業の特徴と自分の一致点)
  4. 貢献(どんな形で活かせるか)

この順番で書くと、読み手が自然と「なるほど、だからこの人は店舗設計を志望してるのか」と納得できます。


例文:このフレームにそった志望動機(学生編)

私が店舗設計に関心を持ったのは、大学時代にアルバイトしていたカフェで、改装後にお客様の滞在時間や客数が明らかに変化した体験がきっかけです。
それを機に、動線や空間の使い方が人の行動に与える影響に強く興味を持つようになり、卒業研究では人間行動学の視点から商業施設のレイアウト分析を行いました。
貴社は、単に美しい空間をつくるだけでなく、クライアントのビジネス目標に応じた「機能的な設計提案」に強みを持っており、その姿勢に深く共感しています。
私自身も、利用者とオーナーの両方にとって価値ある空間を考え抜く設計者として、貢献していきたいと考えています。


フレームのコツ:

  • 最初から「御社の理念に共感しました」などのテンプレから入らない
  • 感情だけに偏らず、経験を交える
  • 最後は“相手の企業で”どう活かせるかに言及する

よくある崩れたパターン:

  • 「動機」だけで終わる(例:「インテリアが好きだから」→終わり)
  • 「企業の強み」をコピペで書く(→他社でも使い回せてしまう)
  • 「自分が活かせること」が抽象的(例:「頑張ります」だけ)

こうしたNGを避けるためにも、「構成=ストーリー」として捉えることが重要です。


ありがちなNG例と、その改善ポイント

「悪い志望動機」の多くは、実は“誠実さ”より“あいまいさ”の問題です。

志望動機に正解はありませんが、NGパターンは明確に存在します。ここでは、よくあるミスとその改善方法を紹介します。


NG例①:抽象的すぎる(=誰にでも当てはまる)

「空間デザインに興味があります。人々が心地よく過ごせる空間をつくりたいと思い、応募しました。」

【問題点】

  • 「なぜ興味があるのか」が語られていない
  • 「心地よさ」とは具体的にどういうことか不明
  • 誰でも言えてしまう内容で差がつかない

【改善方法】

  • 自分の原体験や価値観にひもづける
  • どんな空間体験が印象に残ったか、具体化する

NG例②:企業理解が浅い(=他社でも使い回せる)

「御社の“お客様第一主義”に共感しました。」

【問題点】

  • 「共感しました」だけでは弱い
  • どこに共感したのか、なぜ自分に刺さったのかが語られていない

【改善方法】

  • 企業のプロジェクト・施工事例に具体的に言及する
  • 自分の志向性と企業の強みがどう重なるかを書く

NG例③:感情だけで構成されている(=“好き”で止まる)

「昔からインテリアが大好きで、建築雑誌を見るのが趣味でした。」

【問題点】

  • 感情的な出発点だけで終わっている
  • 「なぜ設計の中でも“店舗”なのか」が語られていない

【改善方法】

  • 好きなことが“人の役に立つ空間づくり”とどうつながるかを補足
  • “自己満足”でなく“他者のための設計”へ発展させる

NGパターン早見表

NGパターン見られる傾向改善ポイント
抽象的すぎる学生・未経験者具体的な経験で補強
企業理解が浅いテンプレ検索型企業事例・理念との接続
感情だけで構成好きだけ語る人「誰のための設計か」まで展開

要点:

志望動機は、「何を語るか」も大事ですが、「何を語らないか」も同じくらい重要です。
「自分なりに深く考えた」ことが伝わる内容にすれば、経験やスキルが未熟でも、十分に評価される可能性があります。


志望動機に“説得力”を持たせる+αの工夫とは?

言葉だけでは届かないとき、“実例”があなたの本気を物語ります。

志望動機の文章が完成しても、それを「本気でそう思っている」と受け取ってもらえるかは別問題です。
ここでは、志望動機の信ぴょう性・説得力を高めるための“+α”の工夫をご紹介します。


工夫①:ポートフォリオ・スケッチで「考える力」を可視化

実務経験がなくても、以下のようなアウトプットを準備しておくことで、「本気度」や「構想力」を伝えることができます。

  • 自主制作の店舗レイアウト案
  • 観察や分析をもとにした空間改善提案
  • 学生時代の課題でつくった商空間の設計図

これらは、「この人はすでに“店舗を考えている”」という印象を与えることができます。


工夫②:「現地観察」をベースにした考察を盛り込む

たとえば、志望企業が手がけた店舗や実際に訪れた店舗に関して、以下のように書くと説得力が増します。

「御社が設計された〇〇カフェに実際に足を運び、店内の回遊性や目線の導線に感動しました。設計者の意図が、空間体験として“伝わる”ことに感銘を受けました。」

これは単なるお世辞ではなく、「自分で見て・感じて・考えた」ことが伝わる具体表現です。


工夫③:「使う人の目線」からの視点を加える

多くの応募者が「自分の表現」にフォーカスしがちですが、実際には「使う人=顧客・スタッフ・オーナー」への想像力が重要です。

「アルバイトで感じた、お客様が店内で迷う構造への違和感」
「スタッフの作業効率が悪くなるレイアウトへの気づき」

こうした視点を志望動機に入れると、「この人は設計を自己表現で終わらせない人だ」と評価されやすくなります。


工夫④:「選考段階ごとの準備物」で説得力を補完する

選考段階補足できる+α要素
書類選考志望動機+ポートフォリオ要約付き
一次面接店舗分析レポート・観察メモ
最終面接模擬提案や改善案(口頭でも可)

要点:

志望動機は“文章”だけでなく、“準備そのもの”が説得力になります。
文章+ポートフォリオ+観察+思考。この掛け合わせができると、経験やスキルの不足を補って余りある印象を与えることができます。


【適ドア適所】にそった「まとめ」


志望動機とは、自分の内面と、職業の本質をつなげる“設計図”のようなものです。

店舗設計の仕事は、ただ“見た目を整える”だけではなく、使う人、働く人、経営する人――あらゆる立場の人の視点を取り入れて、空間の価値を最大化する営みです。

だからこそ、志望動機では「自分の価値観」と「その仕事の本質」が交わる瞬間を、ていねいに言葉にしていくことが求められます。


✅ 志望動機を書くための設計視点(適ドア適所)

設計対象視点志望動機への展開例
顧客快適さ・回遊性「人が自然に動ける空間を作りたい」
スタッフ作業効率・安全性「働きやすさにも配慮した空間設計」
オーナーブランド体験・収益「ビジネスに貢献できる設計をしたい」

こうした複数視点に気づいていること自体が、志望動機の中で**“設計者としての素養”**を表現してくれます。


✅ 仕上げとして大切なこと:

  • 自分だけの体験にさかのぼる(原体験を言語化)
  • 店舗設計という仕事を正確に理解する(空間×目的)
  • 応募先の特徴や事例にしっかり目を通す
  • 言葉+ポートフォリオ+視点で“説得力”を補強する

ここまで来たあなたの志望動機は、例文を超えた「自分だけのストーリー」になっているはずです。

書けないと悩む気持ちも含めて、それをどう表現したかが、結果を左右します。
自分の言葉で、自分の動機を、相手にちゃんと届けられるよう、ぜひこの記事のステップを活用してください。

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