「店舗設計」と聞くと、多くの人がまず「デザイン」や「間取り」などの“見た目”を思い浮かべるかもしれません。けれど、実はそれだけでは不十分です。
店舗の設計とは、単なる内装工事ではなく、「商売の土台をどうつくるか」という極めて戦略的なプロセス。特に熊本のような地域密着型のエリアでは、地元の人々の動線や気候、文化まで踏まえた設計が、成否を大きく左右します。

本記事では、これから熊本でお店を開こうと考えているあなたに向けて、「店舗設計を依頼する前に必ず知っておくべき5つの視点」を、初心者にもわかりやすく、かつ実践的に解説します。
これを読むことで、依頼先の選定、設計の落とし穴、コストの考え方、そして店舗の“その後”まで、総合的に判断できる視点が手に入ります。


目次(このページの内容)

熊本で「理想の店舗」をつくるために、最初に考えるべきこと

要点:
・店舗設計は“商売のスタート地点”を整える戦略そのもの
・テナントを選んだ時点で「設計の7割は決まる」

設計は「工事」ではなく「経営戦略」の一部

店舗設計というと、多くの方は「壁をどう塗るか」「棚の配置は?」という装飾的な部分に目が向きがちです。けれど、開業経験者の多くが後から気づくのが、設計そのものが商売の成否を左右する要素だったという事実です。

たとえばカフェを開く場合、キッチンの導線が悪いだけで回転率が落ち、利益が圧迫されます。整骨院であれば、患者さんが気持ちよく移動できる空間が確保できなければ、リピートに直結します。つまり、設計とは内装だけではなく、売上と体験の“基盤”をつくる作業なのです。

テナント選びの時点で設計は始まっている

熊本での開業では、特に「テナントの選定」が極めて重要です。なぜなら、建物の形状・方角・天井高・換気性能など、設計の“前提条件”のほとんどがそこで決まってしまうからです。

たとえば、

  • 天井が低すぎて照明設計が難航
  • 旧耐震構造のビルで設備配管が思うようにいかない
  • 駐車場の導線が悪くて集客しにくい

といったことは、設計だけではリカバリーできません。

逆に、テナント選びの段階で設計のプロが入ることで、「この場所は◯◯業種向け」「この改装はコストがかかる」といったアドバイスをもらうことができ、無駄な工事を避けることができます。

熊本特有の「地域密着型商圏」を踏まえた視点

熊本では、都市部と比べて「常連をつくる力」が店舗経営において非常に重要です。
そのため、「入りやすさ」「居心地」「回遊しやすさ」といった空間的要素が強く求められます。

例:

  • 地域の高齢者も訪れるなら「段差」「手すり」の有無が来店率に影響
  • 暑さが厳しい時期に「入口が開けっ放しで空調が逃げる」設計では、快適さを損なう
  • 自然光を活かした設計が喜ばれる傾向があるが、直射日光のコントロールも必要

こうしたことを踏まえると、熊本での店舗設計は「地域文化と気候」を読み解く視点が必要不可欠だと言えます。


設計の依頼先はどう選ぶ? 熊本の選択肢と特徴を比較

要点:
・依頼先には「設計事務所」「内装業者」「工務店」があり、それぞれ強みが違う
・どこに頼むかで、予算と仕上がり、相談のしやすさが大きく変わる

選択肢①:設計事務所(建築士事務所)

設計に強く、理想を図面に落とし込む力があるのが設計事務所です。特に以下のようなケースに向いています。

  • コンセプトを重視した店舗(美容室、カフェ、アパレルなど)
  • デザイン性を武器にしたい場合
  • テナントがスケルトン(何もない状態)からのスタート

ただし、設計料が別途かかることが多く、全体予算をしっかり見ておく必要があります。

選択肢②:内装業者・インテリア会社

図面だけでなく、「施工(工事)」も自社で行う会社が多く、ワンストップで進められる点が強みです。

  • 工期がタイトな場合
  • 見積もりの総額が明快なほうが安心
  • すでに内装の方向性がある程度決まっている

といった場合に向いています。ただし、業者によってはデザイン提案が弱いこともあるため、過去の実績は要チェックです。

選択肢③:工務店・建築会社

主に建築を得意とする会社で、戸建て住宅などの経験が豊富なところが多いです。店舗併用住宅(自宅とお店が同じ建物)の場合に向いています。

また、熊本では地元に根ざした工務店が多く、地域の施工ルールや業者ネットワークに詳しいという利点も。

自分の店舗に合う依頼先の見極め方

依頼先を選ぶときのポイントは、**「何を一番重視するか」**を明確にすることです。

重視ポイント向いている依頼先
デザイン性設計事務所
工期とコスト感内装業者・施工会社
地元対応・住宅併設工務店・建築会社

また、どこに頼むにせよ、「必ず事前に3社は比較する」ことをおすすめします。
比較を通して、自分の希望が明確になると同時に、相場感覚や信頼感のある相手かも見えてくるからです。


美容室、カフェ、整骨院…業種別によくある設計ミスとその対策

要点:
・業種によって「設計の正解」が違う
・よくあるミスは「見た目」優先で、動線や使いやすさを軽視してしまうこと

カフェや飲食店の設計ミスと対策

【ミス例】

  • 厨房とホールの動線が交差していて、スタッフがすれ違いづらい
  • 換気や排煙の設計が甘く、においがこもる
  • 座席数を詰め込みすぎて、客同士の距離が近い

【対策】

  • 「提供スピード」と「滞在の心地よさ」を両立する動線計画
  • 厨房面積は「全体の25〜30%」を目安に確保
  • 熊本の夏は高温多湿なので、排熱や空調計画は設計初期に組み込む

美容室・理容室の設計ミスと対策

【ミス例】

  • シャンプースペースが暗く、手元が見えづらい
  • 鏡の位置や照明のバランスが悪く、顔映りが悪い
  • 待合スペースが狭く、混雑時に顧客満足度が下がる

【対策】

  • 作業しやすさと、**お客様の“魅せ方”**のバランスを重視
  • 熊本では店舗が1階路面にあることが多く、外からの視線対策も忘れずに

整骨院・治療院の設計ミスと対策

【ミス例】

  • 施術ベッドの間隔が狭く、プライバシーが保てない
  • 受付・待合・施術室の動線が分かりにくい
  • 高齢者対応が不十分(段差、手すり、トイレ)

【対策】

  • ベッド間は90〜100cm以上、カーテンで仕切れる設計が基本
  • 専門性を感じさせる設計(無機質すぎず、過度に装飾しない)

業種別に見ると、「何を重視すべきか」は全く異なります。
熊本では地域密着型の業種が多いため、「常連さんが安心して通える設計」が長く続くお店づくりの要です。


設計費・工事費の目安と、見積もりの見方

要点:
・「坪単価」だけで比較すると危険
・削ってはいけない費用と、調整できる費用がある

熊本での店舗設計・工事の目安

熊本での一般的な内装工事費の目安は以下の通りです(スケルトン物件の場合)。

業種坪単価の目安工期の目安
飲食店15万〜30万円約1〜2ヶ月
美容室20万〜35万円約1〜1.5ヶ月
整骨院12万〜25万円約0.5〜1ヶ月

この数字はあくまで「平均的な価格帯」であり、どこまでこだわるか既存設備の有無で変動します。

見積もりの内訳は「建材・設備・人件費・諸経費」

見積書には大きく以下の項目が含まれます。

  • 造作工事(壁・天井・床などの施工)
  • 設備工事(電気、空調、水道、換気)
  • 什器・備品(カウンター、棚、椅子など)
  • 設計料・管理料
  • 諸経費(運搬費、廃材処理、仮設トイレなど)

中でも「設計料」や「現場管理費」などは一見見落とされがちですが、手を抜くとトラブルの元になる重要な項目です。

削ってはいけない費用 vs. 調整しやすい費用

削ってはいけない:

  • 設備工事(電気・空調・換気):やり直しが効かず、店舗の“命綱”
  • 現場監理費:職人の品質管理に影響
  • 給排水工事:飲食や美容関係では最重要

調整しやすい:

  • 外観の装飾:オープン後でも対応可能
  • 什器類:中古やDIYも選択肢
  • 照明:後から追加もできる設計にする

見積もりの比較で見るべきポイント

複数の見積もりを比較する際、金額だけを見るのではなく、「項目の詳細さ」と「質問への対応力」を重視しましょう。
細かく書かれた見積もりは、施工ミスや追加請求のリスクが少ない傾向にあります。


開業後に効く設計とは?「電気代・換気・開放感」も戦略になる

要点:
・快適性は「空間づくり」だけでなく「設備選び」でも決まる
・ドアや換気などの“目立たない部分”が、経営に効くコスト要因になる

快適性とランニングコストのバランスを取る

設計段階では、どうしても「内装のデザイン」や「什器の配置」などに目がいきがちです。
しかし、開業後に経営を続けていく中で、じわじわと効いてくるのが**ランニングコスト(維持費)**です。

特に、

  • 冷暖房費(電気代)
  • 換気効率
  • 空間の開放性(入口まわり)

これらは設計時の選択に大きく影響されます。

熊本のように、夏は35度を超える日もある地域では、冷房の効率が悪い店舗設計は致命的です。
そしてその原因の多くが「入口(ドア)の設計」と「換気計画」にあります。

自動ドアの選び方が、実は売上にも関わる

一般的に、店舗入口には「引き戸」「開き戸」「自動ドア」があります。
その中で、近年注目されているのが「電気を使わない自動ドア(荷重式自動ドア)」です。

これは「人が体重をかけると開く」という仕組みで、電源が不要で、停電時も問題なく使えます。

ドアタイプ開閉方式特徴
電動式自動ドアセンサー+電源スムーズだが電気代がかかる
手動引き戸手動で引いて開けるシンプルだが両手がふさがっていると不便
荷重式自動ドア足元の圧で開く電気不要で静か、安全性も高い

熊本のような地元密着型の店舗では、以下のような理由で**荷重式自動ドア(Newtonドア)**が選ばれるケースが増えています:

  • 電気代がかからず、夏の冷気を逃しにくい
  • 停電時も安心で、防災観点から選ばれることも
  • 子供や高齢者でも自然に開けられる(安全性が高い)

ドアひとつでそこまで変わるの?と思うかもしれませんが、実は「入口のストレス」が来店頻度や第一印象に大きな影響を与えるため、見過ごせない要素です。

設備選びを“建築視点”から考えることが利益を生む

設備の選定は、業者任せにしがちですが、「建築的な視点」で最初から考えることで、経営に効く空間が作れます。

  • 換気の方向と空調の効率を同時に考える
  • エントランスの開け方(内開き・外開き)と視線の抜けを調整
  • 自然光を取り入れながらも、遮熱対策を施す

こうした細部は、地元の気候を知っている設計者でないと、なかなか最適解が出せません。
熊本で店舗を開くなら、「涼しさ」と「開放感」を両立できる工夫を、設計段階から盛り込むことをおすすめします。


【適ドア適所】にそった「まとめ」:熊本で店舗設計に失敗しないために大切なこと

熊本での店舗設計を成功させるためには、「かっこいい店をつくる」ことよりも、「継続できる商売の土台を整える」ことが何よりも大切です。
この記事で解説してきた5つの視点を振り返りながら、もう一度確認してみましょう。


✅ 1. テナント選びが、設計の7割を決めてしまう

→ 設計は“工事”ではなく“戦略”。テナントの形状・方角・気候対応まで見て判断を。

✅ 2. 依頼先ごとに得意分野がある

→ 設計事務所、内装業者、工務店。自分の業種・目的に合った選び方が重要。

✅ 3. 業種ごとの「やりがちミス」を先回りして避ける

→ カフェ、整骨院、美容室など、それぞれ設計の“正解”は違う。常連が通いたくなる空間設計を。

✅ 4. 見積もりは「項目の中身と対応力」で選ぶ

→ 坪単価だけで判断しない。特に電気・空調・水回りは絶対に削ってはいけない。

✅ 5. 設備選びも“店舗設計”の一部

→ ランニングコストや災害対策も見据えた設計を。非電気式の荷重式自動ドアはその一例。


熊本のように、気候・文化・地域性が経営に影響するエリアでは、「適ドア適所=その場所にふさわしい建築・設備を選ぶ」ことが、長く愛される店舗への近道です。

Newtonドアのような荷重式自動ドアもまた、電気を使わず、安全かつ快適な入口を提供する、経営を支える一つの選択肢です。

店舗設計は、ただの“箱づくり”ではありません。
あなたの事業とお客様をつなぐ、大切な「場」をつくるプロセスです。

どうか焦らず、納得できる一歩を踏み出してください。

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