自動ドアというと、ガラスのドアが自動で開閉するイメージがまず浮かびます。しかしその内部には、多くの機械的・電子的な部品が関わっており、日常的に使っている私たちが目にすることはほとんどありません。しかも、その部品がどれか1つでも不調になれば、ドアの開閉に支障が出ることもあります。
今回は、自動ドアに使われている部品名をすべて明らかにし、それぞれの役割や壊れた際のサインについて徹底解説します。さらに、モーターを使わず開閉する荷重式ドア(Newtonドア)の部品構造にも触れ、「自分のドアがどのタイプか」「何が問題の原因か」を理解できる構成にしています。
この記事を読むことで、業者とのやり取りもスムーズになり、不安なく判断ができるようになります。
目次(このページの内容)
自動ドアの種類と構造の違いから部品を理解する
まずは大前提として、自動ドアにはいくつかの種類があり、それによって使われている部品が異なります。自分のドアがどのタイプなのかを知っておくことは、部品名を理解する上でとても重要です。
手動ドアとの違いからスタート
自動ドアとは「動力を使って自動で開閉するドア」のことです。人の手で開閉する手動ドアと違い、動力源として以下のような違いがあります。
| タイプ | 動力源 | 開閉方式 | 主な構成 |
|---|---|---|---|
| 電動式自動ドア | モーター+電源(100V〜200V) | センサーによる開閉 | モーター、制御盤、センサー、駆動ユニット |
| 荷重式自動ドア(Newtonドア) | 人の体重(荷重) | 足元のプレートで動作 | 荷重検知ユニット、エアダンパー、スプリング |
| 半自動ドア | スプリングや重り | 自動で閉じるのみ | 閉鎖用ダンパーやバネ |
ここで重要なのは、電動式と荷重式(Newtonドア)では、部品の種類が根本的に違うという点です。電動式は「動力を持つパーツ」が多いのに対し、荷重式は「動力を持たず、物理的仕組みで動作するパーツ」が中心になります。
自動ドアの部品名一覧|設置位置ごとにわかる全体像
自動ドアの部品を構造から理解するには、どこにどんなパーツがあるかを「設置位置別」に知るのが最もスムーズです。
部品の配置と分類
自動ドアの部品は、大きく以下の5つのゾーンに分かれています。
- 上部ユニット(ドア上部)
- ドアレール(ガイドレール)
- 駆動ベルト(タイミングベルト)
- 駆動モーター
- 制御盤(コントロールユニット)
- ハンガーローラー(吊り車)
- ドア本体
- ドアパネル
- フレーム
- 押し引きハンドル(あれば)
- 床部(足元)
- ストッパー(ドア終点部の緩衝)
- 荷重検知プレート(Newtonドアのみ)
- フロアガイド
- センサー類
- 人感センサー(赤外線、マイクロ波)
- 接近センサー(超音波タイプもあり)
- ドア開閉用押しボタン(病院やトイレ等)
- 補助部品/安全装置
- 安全装置(挟まれ検知センサー)
- バッテリー(停電対応)
- エアダンパー(荷重式の場合)
荷重式ドアに特有の部品
Newtonドアのような荷重式には、以下のような独自部品が含まれます。
- 荷重感知ユニット(床面に内蔵)
- ドア開閉機構(空気式:エアダンパーやスプリング)
- 復帰レバー(一部モデル)
この部品が壊れるとどうなる?不調サイン早見表
自動ドアの不調を感じたとき、「なんとなくおかしい」と思っても、原因がどの部品にあるのかまでは分かりづらいものです。ここでは、主要部品ごとに「どんな壊れ方をするか」「どんなサインが出るか」を整理しました。
要点:プロでなくても分かるように、不調の“音・動き・反応”を手がかりにする
| 部品名 | 主な役割 | 壊れた時のサイン |
|---|---|---|
| 駆動モーター | ドアの開閉動作を行う | ドアが動かない/動作音が異常に大きい/途中で止まる |
| ベルト(駆動ベルト) | モーターの動力をドアに伝える | ドアの開閉が遅い/ガタつく/変な音(ギギッ) |
| センサー(人感) | 人を検知してドアを開閉 | 反応が鈍い/近づいても開かない/勝手に開く |
| 制御盤 | 全体の動作を制御する頭脳 | ドアが反応しない/途中で動作が止まる/予測不能な動き |
| ハンガーローラー | ドアの吊り下げとスムーズな開閉 | ドアが歪んで見える/引っかかるような動き/音が出る |
| ストッパー | 開閉の終点で衝撃を吸収 | ドアがガツンと止まる/異音/止まらずぶつかる |
| 荷重プレート(Newton) | 人が乗るとドアを開ける信号を送る | 反応しない/プレートが沈んだまま戻らない |
見逃しがちな“異音”と“遅延”は、故障のはじまりかも
特にモーターやローラー類に関しては、以下のような兆候が出たら注意です。
- 「ウィーン」ではなく「ギーギー」という金属音
- 以前より開くのが遅い、または途中で止まる
- 開閉のタイミングがズレる、センサー反応が不安定
これらのサインを放置すると、突如ドアが開かなくなったり、利用者が転倒するリスクにつながるため、早めの点検が必要です。
よく交換される部品ランキングとその寿命・費用の目安
自動ドアのトラブル対応で最も多いのが「部品の交換」。ここでは、業者がよく交換する部品のランキングと、寿命・費用の目安を紹介します。
よく交換される部品TOP5(電動式)
- 駆動ベルト(寿命:3〜5年/費用:1万〜3万円)
- センサー類(寿命:5〜7年/費用:2万〜6万円)
- モーター(寿命:7〜10年/費用:5万〜10万円)
- ローラー・ガイドレール(寿命:5〜8年/費用:1万〜3万円)
- 制御盤(コントローラー)(寿命:8〜12年/費用:7万〜15万円)
荷重式(Newtonドア)の場合
Newtonドアは電動部品がないため、交換対象となる部品が少なく、寿命も長めです。
| 部品名 | 寿命目安 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| エアダンパー | 約10年 | 1〜3万円 |
| 荷重検知ユニット | 約10〜15年 | 3〜5万円 |
| ドアスプリング類 | 約10年 | 1〜2万円 |
メモ:費用は現場状況や工賃で大きく変動
特に制御盤などは交換だけで済まないこともあり、工事や設定調整が入ると高額になります。複数部品を一緒に交換することで、工賃を節約できる場合もあるので、業者にそのあたりも確認すると良いでしょう。
「うちはNewtonドアだけど、何が違う?」荷重式ならではの部品構成と注意点
自動ドア=電動式と思われがちですが、「荷重式自動ドア(Newtonドア)」は、まったく異なる原理で動作します。そのため、部品の構成も大きく違い、メンテナンスや故障のリスクも異なります。
要点:Newtonドアは「動力源を使わない=壊れる箇所が少ない」が最大の特徴
荷重式は、電気を使わず、人がドア前のプレートに乗ると、重さで内部の機構が作動してドアが開く仕組みです。これにより、以下のような独特な部品構成になります。
Newtonドアの主な構成部品
| 部品名 | 役割 | 故障リスク・注意点 |
|---|---|---|
| 荷重感知プレート | 人の荷重を感知して開閉を開始 | 劣化で反応鈍化/プレート戻り不良 |
| エアダンパー | ドア開閉をスムーズにする空気圧調整部品 | 空気漏れで開閉スピード低下 |
| スプリング | 閉じる力を支える | ヘタリによる開閉力の減退 |
| 復帰レバー | 手動で開閉をリセットする | 過度な使用で摩耗することも |
電動式では不可避な「モーター」「制御盤」「センサー」などが存在しないため、電気的な故障リスクがゼロに近いというのがNewtonドア最大の利点です。
メンテナンス上の違い
| 比較項目 | 電動式自動ドア | 荷重式(Newtonドア) |
|---|---|---|
| 故障頻度 | 比較的高い(部品が多いため) | 非常に低い |
| 必要電源 | AC100V〜200V | 不要(完全非電源) |
| 使用可能時間(停電時) | バッテリー次第 | 制限なし |
| メンテナンス頻度 | 年1〜2回の点検推奨 | 2〜3年に1度程度で十分 |
| 寿命 | 10〜15年程度 | 15〜20年超も可能 |
注意:Newtonドアも「定期的な点検」は必要
電気を使わないとはいえ、可動部が存在するため、部品の摩耗や経年劣化はあります。特にエアダンパーや荷重プレート部分の動きが鈍くなると、ドアの反応が悪くなり、ストレスや安全リスクに直結することもあるため、2〜3年に一度のメンテナンスは推奨されます。
「知らなかった…」で損しないために、部品の知識はここまででOK
自動ドアは見た目がシンプルでも、内部では多くの部品が連携して動いています。普段意識することはなくても、「ドアが遅い」「変な音がする」「勝手に開く」などのサインが現れたら、どこかの部品に異常が起きている可能性が高いです。
今回紹介したように、電動式と荷重式では構造が大きく異なりますし、よく壊れる部品やその症状も変わってきます。業者に任せるだけでなく、最低限の知識を持っておくことで、不必要な交換を防いだり、より的確な判断ができるようになります。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
- 電動式と荷重式では、使用される部品そのものが大きく異なる
- 不調のサイン(音・動き・反応)を手がかりに、どの部品が原因か推測できる
- 荷重式(Newtonドア)は構造がシンプルな分、部品数が少なく故障リスクが低い
- 自分の施設や用途に合ったドアタイプを選び、それに応じた部品理解が「適ドア適所」の第一歩になる
【出典・参考文献】
- Newtonプラス社「Newtonドア」製品資料
- NewtonドアFAQ.txt
- Nドア顧客セグメントと導入事例.txt
- Newtonドアの安全性検証とJIS規格整合性.txt
- 他 各種自動ドア業界資料、メンテナンス実務報告書等