「名古屋でお店をつくろう」と決めたとき、最初に立ちはだかる壁のひとつが「設計をどこに頼めばいいのか分からない」ということです。設計事務所、内装業者、工務店、デザイン会社——それぞれの役割がぼんやりしていて、何が違うのか、誰に相談すればいいのか、戸惑う方が多くいます。
このガイドでは、そうした疑問を持つ方のために、名古屋で店舗を設計・施工する際の選択肢、費用相場、業種別の設計の違い、よくある失敗例とその対策、さらに最近注目されている「電気を使わない自動ドア」という設計視点まで、広く深く解説していきます。
読み終えたときには、自分にとってベストな依頼先がどこか、そして店舗設計で失敗しないために必要な知識が得られるようになっています。
店舗を設計するとき、名古屋ではどこに頼める?
名古屋で店舗設計を始めるにあたって最初にぶつかるのは「誰に依頼すればいいのか?」という基本的な問いです。この段階で迷子にならないために、まずは主要なプレイヤーたちの違いと役割を整理しましょう。
設計事務所
→ 建築士が在籍しており、法的な手続きや図面設計、空間全体の構想に強い。デザイン性や法規制対応において安心感があるが、施工は外注となるため、設計と施工のやり取りを自分が担う必要がある場合も。
内装業者(内装工事会社)
→ 主に施工(つくること)を担当。設計も簡易的に対応する場合があるが、複雑な法規制や意匠性の高い空間には限界がある。見積もりは比較的明快で、スピード感があることが特徴。
デザイン会社・空間プロデュース会社
→ コンセプト設計やブランディングに強く、内装・家具・照明までトータルコーディネートすることが多い。設計士が在籍していることもあれば、外部と連携する場合もある。飲食・美容など特定業種に特化していることも。
工務店
→ 戸建て住宅などを中心に扱う施工業者だが、小規模な店舗の施工を請け負うところもある。設計というより、すでに図面がある状態から施工を請け負うことが多い。
ワンストップ対応と分離発注の違い
重要なのは「設計から施工まで一括して請け負う業者(ワンストップ)」と、「設計と施工を分けて発注する(分離発注)」の違いを理解することです。
ワンストップのメリット:
- 打ち合わせが一元化されるため、スムーズに進行する
- 設計者と施工者の間で意思疎通ミスが起きにくい
分離発注のメリット:
- より専門性の高い設計が可能
- 施工者を競争入札で選べば費用を抑えられる可能性がある
どちらが良いかは、予算や希望の店舗の複雑さによります。一般に「デザイン性を重視したいが予算も抑えたい」という場合は、設計事務所+施工業者という分離発注が適していますが、「時間がなく、まとめてお願いしたい」場合はワンストップの方が現実的です。
名古屋という都市の特性
名古屋では、商業地(栄・名駅エリア)と住宅街(覚王山、星ヶ丘など)で出店環境が大きく異なります。エリア特性に詳しい設計者や施工業者に相談することは、大きな安心材料になります。
名古屋での店舗設計、費用相場はどれくらい?
設計や工事を依頼する際に、最も気になるのが「結局、いくらかかるのか?」という点です。ここでは、名古屋エリアにおける店舗設計・施工の費用感を、一般的な相場と業種別の傾向を交えながら解説します。
設計費用の目安
設計費用は、「店舗の広さ」「求めるデザイン性」「法的な要件(用途変更など)」によって大きく異なりますが、ざっくりとした相場は以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 相場の目安(税別) |
|---|---|---|
| 基本設計費 | 図面作成・法規チェックなど | 10〜15万円程度/坪 |
| 実施設計費 | 施工図、詳細図面作成など | 5〜10万円程度/坪 |
| 設計監理費 | 現場チェックや工程管理 | 工事費の5〜10% |
※設計事務所やデザイン会社によって、「設計+監理」でパッケージになっていることも多いです。
設計と施工を一体で請け負う会社(デザイン施工一体型)では、設計費用が無料または低額になる場合もありますが、その場合は「施工費に含まれている」前提で比較が必要です。
内装工事費の相場
実際の工事にかかる内装費は、業種や店舗規模によって大きく異なります。
| 店舗業種 | 床面積(坪) | 内装費相場(税別) |
|---|---|---|
| 飲食店(カフェ) | 10坪 | 約500〜800万円 |
| 美容室 | 15坪 | 約800〜1,200万円 |
| アパレル | 20坪 | 約700〜1,000万円 |
| クリニック | 30坪 | 約1,500〜2,500万円 |
この金額には、解体・造作・床壁天井・照明・電気配線・設備工事などが含まれます。ただし、厨房機器・什器・サイン(看板)などは別途になる場合が多い点に注意が必要です。
什器・備品・設備などの追加費用
設計や施工以外に発生する代表的なコストには、以下のようなものがあります。
- 厨房機器(飲食店):300〜800万円
- セット椅子・ミラー(美容室):1席あたり10〜20万円
- 冷暖房・換気設備:100〜300万円
- サイン・看板:10〜50万円
- 自動ドア設置:30〜100万円(※仕様による)
特に厨房機器や空調設備は高額になるため、設計段階で早めに業者と連携しておくことが予算調整のポイントになります。
業種別の費用の違い
設計費用や施工費は、「業種による設備要件」に強く影響されます。
- 飲食店:厨房・換気・排水などの設備にコストがかかる
- 美容室:給排水・セットミラー・電源位置が重要
- 物販店:照明と什器で空間演出に差が出る
- 医療施設:衛生基準・医療機器の導入で高額になる傾向
このように、見た目の面積や内装の派手さだけではなく、裏方の設備要件が費用を大きく左右する点は見落とされがちです。
費用を抑えるための工夫はある?
「おしゃれにしたいけど、できるだけコストは抑えたい」というのは当然のニーズです。そのための工夫としては以下が有効です。
- スケルトン物件を選ぶことで、自由度の高い設計が可能
- 見せる部分と見せない部分を明確にし、重点的に投資する
- 意匠部分はDIYや施主支給を取り入れる(ただし管理との兼ね合い注意)
- 電気・水道などの引き回し距離を短くする
- 機械設備やドア・建具の仕様を見直す(Nドアなども選択肢)
後述する「電気を使わない自動ドア(Nドア)」も、設備コストや施工の簡略化という面で検討する価値があります。
名古屋の店舗設計で「失敗しない」ために知っておくべきポイントは?
店舗設計において「後からやり直す」となると、時間もコストも非常に大きな損失になります。特に名古屋で店舗を構える場合、立地や行政対応、地域の利用者特性などからくる落とし穴も多く、事前の情報整理と準備が重要です。
この章では、よくある失敗例と、それを避けるために知っておくべき具体的なポイントを紹介します。
失敗例に学ぶ:よくある設計のつまずき
- 「立地に合わせた設計ができていなかった」
→ 駅前の物件に高齢者向けの段差が多い設計、繁華街で騒音対策が甘い設計など、地域特性との不一致が招く失敗。 - 「導線が悪く、回転率が落ちた」
→ 飲食店で客席が奥まっていて見えない、動線が交差してスタッフが動きにくい、などの機能設計ミス。 - 「消防・保健所・建築基準法への対応を忘れていた」
→ 飲食店やクリニックなどでは、設計段階から消防法や保健所の規定をクリアしていないと、工事のやり直しや営業許可の遅延につながる。 - 「費用感をつかめていなかった」
→ 内装工事費や設備費が予想より高くなり、全体の予算が圧迫され、最後の什器・広告費に回せなかった。 - 「契約前の図面や見積もりの確認が甘かった」
→ 工事開始後に「こんなはずじゃなかった」と気づくことが多く、口頭でのやり取りで重要な点が抜けていたりする。
地域性:名古屋ならではの注意点
名古屋という地域には、他の都市と比べて設計時に考慮すべき以下のような特性があります。
- 駐車場ニーズの高さ
→ 地下鉄網はあるものの、車社会でもあるため、郊外立地では駐車場スペースの確保が重要です。 - 商業地域での景観規制
→ 栄・名駅などでは、屋外広告物や外観色彩に一定の制限があるエリアも存在します。 - 耐震や防災に対する規定
→ 東海地震対策の一環で、建物の構造や非常口・避難誘導灯の配置など、行政指導が厳しいケースもあります。 - 地盤の違い
→ 名古屋港エリアや中川区などは地盤が弱い地域もあり、基礎工事や構造計画に影響します。
チェックしておきたい事前確認ポイント
- 建築基準法、消防法、用途地域など、行政の規制を確認(設計者と一緒に)
- 物件選定時に、排水・換気などのインフラが対応可能か調査
- 開業スケジュールから逆算し、設計・施工の期間を余裕持って計画
- 保健所や消防署への事前相談
- 工事業者の「実績と相性」を確認(口コミ・実物の施工を見学)
設計段階からこうした点を考慮しておくことで、後戻りのないスムーズな出店準備が可能になります。
業種によって設計の考え方はどう変わる?
店舗設計とひとくちに言っても、その考え方や優先事項は業種によってまったく異なります。おしゃれな内装を追求するだけでなく、業種特有の「機能性」「衛生性」「動線効率」などを考慮しなければ、どんなに見た目がよくても“使いにくい店舗”になってしまうことも。
ここでは、主要な業種別に設計で重視すべきポイントを見ていきましょう。
飲食店の設計
飲食店は、他業種と比べて設備面の要件が非常に多く、また衛生・消防などの法令対応も複雑です。
設計ポイント:
- 厨房とホールのバランス:厨房が狭すぎるとオペレーションに支障、広すぎると席数が稼げない
- 動線の分離:スタッフ・客・食材が交差しないように設計
- 換気と臭い対策:特に焼き物・揚げ物を扱う店舗では重要
- 給排水・ガス・電気容量:物件選びの時点でインフラを要確認
- 保健所対応:2槽シンク、床材、手洗い器の配置など
失敗例:
- 見た目重視でホールを広く取りすぎた結果、厨房機器が収まらない
- 換気設備の容量不足で、開業後に近隣から臭いクレーム
美容室の設計
美容室は、サービスの快適さとオペレーションのしやすさを両立することがカギです。
設計ポイント:
- セット面とシャンプー台の配置:スタッフの導線をできるだけ短く
- 電源と給排水の位置:イスごとに配置が必要
- 照明:明るさ・色温度・陰影が印象に大きく影響
- 音の配慮:個室や半個室を導入する場合は遮音対策も
- ブランディング要素:内装がそのまま世界観になる業種のため、デザイン性が重視される
失敗例:
- 給排水が不十分で、追加工事が必要になった
- 外から見える位置に待合スペースを設けてしまい、プライバシーを損なった
物販店(アパレル・雑貨など)の設計
物販店では、「商品が魅力的に見える空間」をいかに作るかが焦点になります。
設計ポイント:
- 動線計画:店内の回遊性を高め、滞在時間を延ばす
- 什器設計:ブランドの世界観と整合させる
- 照明設計:商品にフォーカスするため、スポットライトの使い方が重要
- 倉庫・バックヤードの確保:在庫や梱包作業スペースを見落としがち
失敗例:
- 商品が多すぎて視認性が悪く、接客しにくい
- 倉庫スペースが狭すぎてオペレーションに支障
医療・クリニックの設計
クリニックは、清潔感と安心感、そして機能性をいかに共存させるかが問われます。
設計ポイント:
- 動線の分離:患者・スタッフ・薬品・ゴミの動線を分ける
- 感染対策:待合と診療エリアの距離感、換気計画が必要
- プライバシー配慮:声漏れ防止や視線を遮る設計
- 医療機器の設置寸法・電力容量:事前に詳細確認が必須
失敗例:
- 機器が大型で、搬入経路や設置スペースが足りなかった
- 音の漏れがあり、患者が不安を感じてしまった
設計フェーズでの「使い勝手」の想像力がカギ
これらの事例からもわかるように、業種ごとの要件をしっかり理解したうえで設計することが、機能性とデザイン性の両立には欠かせません。
設計者を選ぶ際には、「その業種の設計経験があるか」を確認することが非常に重要です。また、実際に手がけた店舗を見学させてもらうのも大きな参考になります。
設計の選択肢を広げる:「電気を使わない自動ドア」という視点
自動ドアと聞くと、多くの方が「電動式で、センサーで開閉するもの」を思い浮かべるでしょう。しかし、実は「電気を一切使わない」新しいタイプの自動ドアが存在します。それが、「荷重式自動ドア」、通称「Nドア」です。
設計の初期段階でこの選択肢を知っているかどうかで、店舗全体のプランニングが大きく変わることもあります。
自動ドア=電動式という“常識”の再考
従来、自動ドアはセンサーで人を感知し、モーターでドアを開閉する方式が一般的でした。しかしそれは、次のような課題を抱えています:
- 電気配線・電源工事が必要(設計自由度が制限される)
- 停電時に動作しない/非常時に開かない
- メンテナンスが高コスト(定期点検・部品交換など)
これに対して、「荷重式自動ドア」は、ドアの手前に設置された“床の荷重センサー”によって、電気を使わずにドアを開閉させる仕組みです。
Nドアの仕組みとメリット
Nドアは、床に内蔵された「荷重装置」に人が乗ることで作動し、油圧とバネの原理によってドアが自動で開くしくみです。電気を一切使わないため、構造がシンプルで、施工やメンテナンスのコストも低く抑えられます。
主なメリットは以下のとおりです:
| 観点 | Nドアの特徴・利点 |
|---|---|
| 設計自由度 | 電気配線が不要なため、レイアウトや配置に柔軟性がある |
| 初期コスト | 電動ドアよりも工事費用を抑えやすい(配線・電源不要) |
| 維持費 | 電気代がゼロ。定期点検・部品交換もほとんど不要 |
| 非常時対応 | 停電時でも機能する。開かない心配がない |
| デザイン性 | 機構部が隠れるため、外観・内観を損なわない |
店舗設計との相性が良い理由
Nドアは、特に以下のようなシーンで力を発揮します:
- カフェや小規模飲食店で、「入口の印象を大事にしたい」場合
- バリアフリーを意識しつつ、ドアの開け閉めの手間を省きたい場合
- 入口に電源が引けない、電気工事が難しい物件
- 商店街やテナントで「音が静か」な自動ドアが求められる場所
例えば、カフェやベーカリーのように「やわらかく、気軽に入れる雰囲気」を大切にしたい店舗では、ドアの存在感を消せるNドアは非常に有効です。また、美容室のように「常時ドアが開きっぱなしになるのは避けたいが、手を使いたくない」というニーズにも合致します。
導入実績と事例(簡易紹介)
実際にNドアは、以下のような現場で導入されています:
- 地方自治体の庁舎・トイレ(メンテナンス軽減目的)
- 公共施設や福祉施設(停電時対応・段差解消のため)
- マンションのゴミ置場・エントランス(共用部コスト抑制)
- 小規模飲食店・美容室・物販店(省スペース・無音設計)
設計時に「電気を使わない自動ドア」も選べるという視点を持つことで、設計者・施主双方にとって、選択肢の幅が広がり、納得度の高い空間づくりが可能になります。
※なお、Nドアについての詳細は、以下の専門記事や資料(関連記事リンク)から学ぶことも可能です。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
—納得のいく店舗をつくるために—
店舗設計において、「どこに頼むか?」「いくらかかるか?」という問いは、あくまで入り口にすぎません。最終的に重要なのは、その空間で「お客様にどんな体験をしてもらいたいのか」という視点で、すべての要素を選び抜くことです。
ここまで紹介してきた情報を踏まえて、あらためて整理しておきます。
- 依頼先の選び方=設計の主導権を誰が持つか
→ 設計事務所、内装業者、デザイン会社など、それぞれに得意領域があります。希望の優先順位(デザイン性・スピード・コストなど)を明確にして、自分の「店舗のゴール」と相性の良いパートナーを選ぶことが大切です。 - 費用=目に見える部分と見えない部分の両方を見る
→ 工事費や設計費だけでなく、厨房設備やインフラ、什器、メンテナンスコストなど、トータルで考える視点が欠かせません。 - 業種別設計=“業務のしやすさ”を軸に考える
→ 飲食、美容、物販、医療、それぞれの動線・設備・規制要件に適した設計がなければ、使いにくく、非効率な店舗になってしまいます。 - 失敗しないために=“後から直す”コストは大きい
→ 法令チェック、地域特性、消防・保健所対応など、初期段階で設計者と一緒に確認しておけば、大きなトラブルは回避できます。 - 設計の幅を広げる視点=適ドア適所の発想を持つ
→ Nドアのような「電気を使わない自動ドア」は、その空間に最適な体験と運用のしやすさを提供してくれる選択肢のひとつです。これは「自動ドア=電動式」という思い込みを捨て、**“ドアも設計の一部である”**という視点を持つことに他なりません。
自分のお店が、どんな雰囲気で、どんな人に、どんな時間を提供したいのか。その「軸」が明確になっていれば、設計もパートナー選びも、自然と正しい方向へ進んでいくはずです。
情報に振り回されるのではなく、自分の理想と向き合いながら、確かな選択を重ねていくこと。それこそが、納得のいく店舗をつくるための第一歩です。
【出典表示:一括】
- Newtonドア.txt
- Newtonドアの安全性検証とJIS規格整合性.txt
- Nドア(チラシ)マンション.txt
- Nドア(チラシ)自治体.txt
- NドアFAQ.txt
- Nドア顧客セグメントと導入事例.txt
- Nドア自社チャネル.txt