自動ドアといえば、電動で開閉する便利な設備として、オフィスビルや商業施設、マンションのエントランスなど、さまざまな場所で活用されています。しかし、いざ設計段階で「自動ドアを導入しよう」となったとき、最初につまずくのが「図面」の扱いです。
「どの図面を使えばいいのか?」
「そもそも、何種類あるのか?」
「どこで手に入れるのか? 設計図にどう入れ込むのか?」
そんな疑問を抱えて検索する方が非常に多く、しかも意外と「図面の全体像」を分かりやすく解説した情報が少ないのが現状です。
この記事では、これから自動ドアを設計・施工する方向けに、最低限知っておきたい図面の種類と用途、図面の読み方や渡し方、さらにはミスを防ぐための注意点まで、徹底的に解説します。
目次(このページの内容)
自動ドアの図面にはどんな種類がある?
Q: 自動ドアの図面って、どんな種類に分かれるの?
A: 一般的には「平面図」「立面図」「断面図」「詳細図」「建具表」の5種類があります。それぞれ目的が異なるため、使い分けが重要です。
手順:代表的な図面とその目的
- 平面図(Plan View)
- 自動ドアの設置位置、開閉方向、動線の確認に使います。
- 開口幅、戸袋スペース、センサーの配置も記載されます。
- 立面図(Elevation)
- 正面から見た扉の高さやデザイン、仕上げ材を確認。
- 外観設計やデザイン検討時に重宝されます。
- 断面図(Section)
- 壁・床・天井との取り合いや、駆動部の納まりを詳細に示す。
- 電気配線・機械構造の把握にも必須です。
- 詳細図(Detail)
- 特定の部位(枠の取り合い、取付金具など)の拡大図。
- 施工精度を高める目的で使われます。
- 建具表(Schedule)
- 図面で示した建具を一覧化し、型式や材質、電源仕様などを明示。
- 建築設計全体の整合を取るための「リスト型図面」です。
根拠:建築業界の標準的な図面構成
建築設計の世界では「平面図をベースに、立面図・断面図で補足、詳細図で確定」という流れが基本です。自動ドアは“機能する建具”であるため、単なる枠・パネルの描写では不十分であり、動作や機構を理解させる構成が求められます。
注意点:
- 自動ドアは動く設備なので「開閉に必要な空間」も明記する必要があります。
- 施工者に渡す際には、駆動方式や電源の位置も図面上に落とし込むことが求められます。
- 特に建具表は「見積・発注」の根拠になるため、メーカー型番や仕様の記載ミスに注意。
平面図・立面図・断面図で最低限おさえるべきポイントは?
Q: 各図面を見るとき、どこに注目すればいいの?
A: 注目すべきは「機能上重要な要素」が図面に正しく反映されているかです。特に開閉方向・クリアランス・納まり構造は必ずチェックしましょう。
要点:図面ごとのチェックポイント
それぞれの図面には、最低限押さえておきたい「見逃すと施工ミスにつながる要素」があります。
1. 平面図のポイント
- 開閉方向の矢印が記載されているか
- 自動ドアは“左右どちらに引くか”で設計が変わります。
- **戸袋(扉の収納スペース)**の寸法
- 引戸タイプでは、壁内部または外部に戸袋を確保する必要あり。
- センサー・スイッチの配置
- 平面図には、センサー(天井/壁)と押しボタンの位置も示しておくべき。
2. 立面図のポイント
- 有効開口高さが正確に記載されているか
- バリアフリー対応か、車いすや搬入に適した寸法かが判断できます。
- 枠の見込み寸法(前面からの奥行き)
- 下地構造と干渉しないかを確認。
- 上部レール・カバーの見え方
- 意匠的な納まりにも関係し、デザイン・美観への影響が出ます。
3. 断面図のポイント
- モーターや機構部の納まり
- 天井裏や壁内に機器が納まるかを確認。構造との干渉もチェック。
- 電源配線の取り回し
- 電源ケーブルや制御線の導入経路は、断面図に明記しておく。
- 壁厚との取り合い
- 鉄骨・RC・木造で取り合いが異なり、下地材・アンカー施工に関わる。
実務的Tips:
- 引戸を“壁内”に収納する設計の場合は、**「戸袋スペースの壁構造」**も確認する。
- 断面図は現場での寸法合わせや加工に直結するため、**縮尺を大きくして描く(1/10〜1/5)**ことが推奨される。
- 立面図で外観ラインを揃えることで、外壁との一体感が得られ、意匠性が高まります。
よくあるミス:
- 図面上でセンサーの記載がなく、後から「ここに付けられない」問題が発生
- モーター納まりスペースが足りず、施工時に天井を壊して再設計
- 平面図で戸袋が“開口枠と重なって”いたため、実際に扉が引き込めなかった
どこで図面データを手に入れられる?信頼できる提供元まとめ
Q: 自動ドアの図面って、どこから手に入れるの?
A: 主にメーカー公式サイトやCADデータ提供サービスで入手可能です。PDF・DWG・DXFなど用途に応じた形式を選びましょう。
手順:信頼できる図面の入手先(代表例)
以下は、自動ドア図面を無料で提供している主要な企業・団体のサイトです。
1. NABCO(ナブコ)
- 自動ドア最大手。製品ごとに平面図、立面図、納まり図などが分類。
- 図面形式:PDF/DXF(AutoCAD)
- 特徴:詳細納まり図、注意事項付きで実務者向き。
- URL: https://nabco.nabtesco.com/download/
2. YKK AP
- 建築用建具の総合メーカー。自動ドア以外との納まり調整にも便利。
- 図面形式:DWG/DXF/PDF
- 特徴:カタログ連動型。建具表付きテンプレートあり。
- URL: https://cad.ykkap.co.jp/building
3. 寺岡オートドア
- スライドドア、スイングドアに強み。自治体導入事例も多数。
- 図面形式:PDF/DXF
- 特徴:形式別で断面・正面・平面図を一括DL可能。
- URL: https://teraoka-autodoor.co.jp/
4. 昭和フロント/ソリック(SOLIC)
- アルミサッシの自動ドア設計図集が豊富。
- 図面形式:DWG中心、PDFもあり
- 特徴:レール構造や建具納まりの参考に向く。
- URL: https://newautodoororder.showadoor.net/
5. Newtonプラス(荷重式:電源不要の特殊機構)※将来的に連携可
- 現在、一般公開されていないが、「荷重式機構の納まり」「断面構造」「戸袋スペース」の図面整備中。
- 特徴:電気不要の特殊構造に特化した設計対応。構造詳細を図面化。
- お問い合わせ型の提供を想定(公式Web掲載計画あり)
図面形式の違いと使い分け
| 形式 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| 誰でも閲覧・印刷可、編集不可 | 確認・プレゼン用、施工者渡し用 | |
| DWG | AutoCAD専用フォーマット | 設計者向け編集図面 |
| DXF | CAD汎用形式(DWG互換) | 異なるCAD間でのやり取り |
注意点:
- データ取得時には「図面のバージョン」や「製品型番」が設計内容と合っているかを必ず確認しましょう。
- 不特定多数が使う無料ダウンロード図面には、「最終確認は自己責任」という注意書きがある場合もあります。
図面を見るとき・渡すときに気をつけるべき落とし穴とは?
Q: 図面を見てるだけじゃダメ? 何に注意すべき?
A: 図面は「設計者・発注者・施工者」の間で意思を伝えるためのツールです。読み違い・伝達ミス・未記載項目などが、現場トラブルの元になります。
根拠:図面はコミュニケーションツール
図面は“完成品の設計図”であると同時に、“伝達メディア”でもあります。誰が見るかによって必要な情報が違い、それに応じて「どこまで描いておくか」「どう渡すか」を調整しなければなりません。
注意点①:施工者に渡す図面が不十分
- モーターの位置や電源引き込み位置が未記載
- 壁厚や天井下地との干渉が未確認
- 図面上では納まりそうに見えても、現場で収まらないケースが発生
🛠 対策:
- 断面図にモーター・戸袋・センサーの位置と寸法を明記
- 電源線・制御線の配線ルートも記載(スリーブ情報含む)
- 建具表には「製品名・型番・駆動方式・電源仕様」を記載
注意点②:設計者とメーカーの情報がズレる
- 建築設計の建具表と、メーカーの製品仕様が一致していない
- 型番だけで仕様を決めてしまい、オプション未確認で施工に支障
🛠 対策:
- メーカーと早めに打ち合わせをし、製品仕様書と建築図を照合
- 図面提出時に「参考図として製品の図面」も添付しておく
- 自社内に伝達する際にも、製品説明と図面をセットにする
注意点③:形式やファイルが現場で読めない
- 現場に渡した図面がDWG形式で、開けない
- 出力したPDFがA4でスケールが狂っていた
🛠 対策:
- 現場には「PDFのA3出力」推奨、縮尺を明記
- 図面は原寸ではなく「寸法線の明記」を最優先
- 施工者に使うファイル形式を事前にヒアリング
まとめ:図面の「描き方」と同じくらい「渡し方」も重要
「図面は描いたから大丈夫」と思っていると、意図が正しく伝わらず、結果的に追加工事や手戻りが発生するリスクがあります。設計者・メーカー・施工者・施主の間で、「どこまで」「どう渡すか」を明確にしておくことが、図面活用の第一歩です。
荷重式など特殊な自動ドアの場合はどうすべき?
Q: 荷重式や電源不要タイプの自動ドアって、図面上でも違いがあるの?
A: はい、大きな違いがあります。駆動機構や電源が不要なため、電気系統の記載が不要になり、設計の自由度や記載方法も変わります。
要点:荷重式自動ドア(Newtonドア)の特徴と図面への反映
荷重式とは、「扉の重さそのものをエネルギー源として開閉を制御する」機構です。Newtonプラス社の「Newtonドア」では、モーターや電源が一切不要で、安全性やメンテナンス性に優れた特徴があります。
構造の違いが図面にどう影響するか
| 比較項目 | 電動式自動ドア | 荷重式(Newtonドア) |
|---|---|---|
| 駆動源 | 電気モーター | 重力(扉の質量) |
| 電源配線 | 必要(AC100Vなど) | 不要 |
| センサー・制御装置 | あり | なし(人が押して開ける) |
| 戸袋構造 | 固定されることが多い | 戸袋の柔軟設計が可能 |
| 点検スペース | モーター点検口が必要 | 不要 |
| 図面記載項目 | 配線経路・制御装置位置 | 重量/傾斜制御部の取り合い |
| 対象図面 | 詳細図に制御盤・電源記載あり | 戸袋スペースの断面記載が主 |
設計・図面上での注意点
- 電源表記を削除する
- 電気設備図との整合を保つため、荷重式には「電源不要」の注記を加える。
- 機構部の記載
- 重力を使ったバランス制御部分の断面図が必要になるケースあり。
- 開閉角度と速度制御
- 動的特性が異なるため、動線設計に影響。現地試験や動作確認が前提。
- 納まり自由度が高いため、設計者側の責任が増す
- モーターがない=構造・可動部の干渉をすべて建築側で管理する必要がある。
Newtonドアの導入事例にみる図面配慮
- 自治体・公民館など:
- 電源不要のため、屋外・省電力ゾーンにも安心して導入。
- 図面では「重力制御機構部」の収まりを断面詳細で表現。
- マンションの通用口・自転車置場:
- 通電設備が制限される場所でも採用され、戸袋の形状が自由に設計可。
- 平面図上で、センサーなしの「手動押し出し」による開閉方向矢印が使用される。
注意点:
- 自社設計で荷重式を採用する場合、JIS A 4722(建具の開閉力)やバリアフリー法基準との整合も確認する必要があります。
- Newtonドアのような荷重式は「安全認証・事故検証」の観点からも、図面上に「構造説明文」や「意図説明」を併記するケースが増えています。
建築図面に組み込む時のベストプラクティスとは?
Q: 自動ドアの図面って、建築設計図にどう入れればいいの?
A: 他の建具と同様に「建具図」「平面・断面図」「建具表」へ反映しますが、自動ドア特有の機構や配線、開閉スペースを反映する必要があります。
要点:自動ドアの「建築図面反映」は3ステップで行う
ステップ1:平面・断面図への挿入
- 平面図では:
- 自動ドアの設置位置を明確に
- 開閉方向の矢印を記載
- 戸袋の寸法を確保(引戸の場合)
- 壁厚や天井高さとの整合を断面図で補足
- 断面図では:
- レール、戸袋、機構部の取り合い
- 壁/床/天井との納まり
- 電源・配線の経路(電動式)
- 荷重式では「制御機構部」の納まり
ステップ2:建具表への記載
| 項目名 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 建具記号 | D-101 など |
| 建具種類 | 自動引戸(電動式 or 荷重式) |
| 型式 | NABCO G-100、Newton ND-03 など |
| 開口寸法 | 幅1800×高さ2200 |
| 材質・仕上げ | アルミ押出形材/焼付塗装 |
| ガラス仕様 | 透明ガラス6.8mm(合わせ) |
| 駆動方式 | 電動モーター式 or 荷重式 |
| 電源仕様 | AC100V(電動式のみ) |
| 備考 | 防犯センサー付き、電源不要(荷重式) など |
ステップ3:製品図面の添付と確認印の取得
- メーカーからの「正式図面」(PDFまたはDXF)を添付
- 設計事務所・元請・設備業者でレビュー
- 建築確認や内覧会でも図面資料として使用されることあり
注意点:
- CADへの流し込み時にスケール・縮尺がズレることがあるため、縮尺表示と実寸確認を徹底。
- 意匠設計者・構造設計者・電気設備設計者の三者で整合確認を。
- 荷重式の場合、「非電源設備」の注釈が建築確認審査で問われるケースあり。
実務の現場で役立つ工夫:
- 1つのレイヤーに「建具記号+開閉方向+納まり範囲」をセットで記載すると、他職種との整合が取りやすい。
- 設計者・発注者・メーカー・施工者の4者協働チェックを前提とした「図面伝達プロトコル」を設けると、後工程でのミス削減につながる。
ここまでで図面の種類・使い方・作り方・渡し方がすべて整いました。
次は、記事全体をFAQで振り返ったあと、「適ドア適所」の考えに基づいた総まとめをします。
続いて、実際に多く寄せられる疑問に対するFAQをまとめます。
【FAQ】よくある質問
Q: 自動ドアの図面はどこでもらえますか?
A: メーカー公式サイトや建材CADポータルなどで無料配布されています。ナブコ、YKK AP、寺岡などが代表的な提供元です。
Q: 自動ドアの納まり図とは何ですか?
A: 建築物と自動ドアの接点(壁・床・天井)との取り合いを詳細に示した図面です。断面図や詳細図に含まれることが多いです。
Q: 図面にセンサーの位置はどこまで記載すべきですか?
A: 平面図・断面図ともに、センサー本体の位置と検知範囲(目安)を明示することが望ましいです。施工者への伝達精度が向上します。
Q: 荷重式と電動式では図面がどう変わりますか?
A: 荷重式では電源・配線記載が不要ですが、機構部の構造や戸袋の自由度を反映する断面図が重要になります。
Q: 建築士に渡す時、どこまで描いておくべき?
A: 施工者が判断できるよう、最低でも開閉方向、寸法、駆動方式、納まり断面、建具表まで整えて渡しましょう。
Q: 自社で設計せず、施工業者に任せても大丈夫?
A: 設計図の完成度によります。事前に施工業者と「誰がどこまで描くか」を共有し、メーカー図面を添付するのがベストです。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
自動ドアの図面は、単なる設計ツールではありません。現場での意思伝達や施工品質を左右する、重要な情報メディアです。
そのため「どんな形式のドアを、どんな場面に使うか」によって、図面の中で強調すべきポイントも変わってきます。
☑ 適ドア適所の考え方から見た図面の使い分け
| 使用場所 | 推奨ドア形式 | 図面上の重要ポイント |
|---|---|---|
| エントランス(屋外) | 電動引戸 or 荷重式 | 電源位置、防雨構造、戸袋寸法 |
| 共用通路 | 荷重式(Newton) | 電源不要、戸袋の自由度、断面納まり |
| バリアフリー対応箇所 | 電動引戸+センサー式 | 有効開口、センサー範囲、安全確保 |
| 倉庫・搬入出ゾーン | スライド式 or 自動スイング | 開口幅、操作系統(押しボタンなど) |
| 公共施設・自治体施設 | 荷重式(安全性・停電対応) | 電源不要、保守性、構造の明快さ |
☑ 図面上で判断すべき“ドアの適性”
- 電動式にすべきか、荷重式で十分か?
→ 電源インフラがない場所・省メンテナンス要件がある場合は荷重式が有効。 - 扉の開閉頻度と、使用者の属性(高齢者、児童など)
→ 開閉速度・操作方法を図面に反映することで、安全性の設計にも貢献。 - 建築構造との干渉
→ 断面図と詳細図でレール・機構部の納まりが取れているか要確認。
設計の現場では、限られたスペースと仕様の中で「何を優先するか」が常に問われます。
自動ドアの図面は、単なる建具図面ではなく、「安全・快適・コスト」のバランスを最前線で設計する“戦略図”でもあります。
そしてそれを実現するための一歩は、「目的に応じた図面の選び方と伝え方」を、しっかり押さえることから始まります。
📚 出典・参考リンク一覧(実務での確認に)
- NABCO公式図面ダウンロード: https://nabco.nabtesco.com/download/
- YKK AP CADダウンロード: https://cad.ykkap.co.jp/building
- 寺岡オートドア図面: https://teraoka-autodoor.co.jp/
- Newtonドア製品ページ: https://newton-plus.co.jp
【荷重式自動ドア】Newtonドアの資料請求はこちらから→https://76auto.biz/newtonplus/registp/p-offer.htm
【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus