自動ドアと聞くと、ほとんどの人は「電動の自動ドア」を思い浮かべると思います。でも実は、それだけではありません。動力源が電気でない「荷重式自動ドア」など、様々なタイプが存在します。
ただ今回のテーマは「電動の自動ドアが突然動かなくなったとき、どう対処するか」。多くの人が経験するこの場面では、焦りと不安が入り混じる中で「何をすべきか」が非常に重要です。
結論からいえば、自動ドアの故障は「すぐに業者を呼ばなくても対処できる」ケースも多くあります。しかし、そうでない場合の判断や、修理の費用感、安全上の注意点も含めて、総合的な視点が求められます。
この記事では、自動ドアが故障したときにまず確認すべき5つのポイントから始まり、症状別の原因、修理と交換の判断基準、費用の相場、業者に頼む際の注意点、さらには日常的な点検と予防策まで、包括的に解説していきます。
読み終わるころには、あなたの状況にとって「最適な一手」がきっと見つかるはずです。焦らず、一歩ずつ確認していきましょう。
目次(このページの内容)
突然、自動ドアが動かないときに最初に確認すべきこと
自動ドアが反応しない──この状況に直面したとき、まず思い浮かぶのは「壊れたかもしれない」という不安です。しかし、現場の点検では意外にも「故障ではない」ケースも多く存在します。
この章では、業者を呼ぶ前に自分でチェックできるポイントを5つに絞って、わかりやすく解説します。どれも特別な知識や工具を必要としないものばかりです。
1. 電源の供給状況を確認する
最も基本的ですが、意外と見落とされがちなのが「電源の供給状態」です。ブレーカーが落ちていたり、電源ケーブルが抜けている、停電後の復旧時に再起動がかかっていないなどのケースもあります。
とくに制御盤が高所や天井裏にある場合、清掃や設備点検時に何かの拍子でケーブルが外れているケースも見られます。
2. センサーの前に障害物がないか確認する
自動ドアのセンサーは、反応範囲に「動くもの」や「遮蔽物」があると誤動作することがあります。たとえば段ボールや販促物、ゴミ袋などが置かれているだけでも、センサーが「常に誰かがいる」と誤認識してしまい、開きっぱなしや反応しない原因になります。
また、強い直射日光や照明の反射がセンサーに干渉するケースもあるため、天候や時間帯にも注意が必要です。
3. ドアレールや床面にゴミや異物がないか
自動ドアの動作は、モーターや制御盤だけでなく、物理的な動きが非常に重要です。とくに引戸タイプのドアでは、下部のレールや床面に「小石」「ホコリの塊」「落下物」などが詰まって、スムーズな開閉を妨げているケースが多発しています。
とくに店舗や病院など人の出入りが多い場所では、目に見えない程度のゴミでも動作に支障をきたす場合があります。
4. ドア本体に傾きやズレがないか
ドアの吊り元やガイドローラー部分にズレが生じると、動作が途中で止まったり、異音が発生したりすることがあります。この場合、ドアの下部や上部を目視でチェックし、明らかに傾いていたり、レールから外れていたりしないか確認します。
ただし、この確認は「目視」に留めましょう。力を入れて押したり無理に戻そうとすると、逆に故障を悪化させる可能性があります。
5. 非常開放スイッチや安全装置が作動していないか
自動ドアには、火災時などに作動する非常開放装置や安全装置が設けられている場合があります。これが作動していると、制御盤の表示やランプで何らかの「異常」を示している場合が多くあります。
特に「赤いランプが点灯している」「表示パネルにエラーコードが出ている」などの兆候があれば、マニュアルを確認するか、メーカーに問い合わせましょう。
ここまでの確認で、「完全に反応しない」「明らかに故障している」場合でなければ、簡単な掃除や電源リセットで復旧するケースもあります。
逆に、これらを確認しても状況が改善しない場合は、次の章で紹介する「故障パターン」と照らし合わせて、より具体的な判断に進みましょう。
症状別|よくある故障パターンと原因の見分け方
自動ドアの故障は、その「症状の出方」によっておおよその原因を推定できます。この章では、よくある故障症状を4つに分類し、それぞれに考えられる原因を解説します。
不具合の見極めは、適切な対応の第一歩です。
パターン1:まったく反応しない・開かない
主な原因
- 電源供給トラブル(ブレーカー/コンセント)
- 制御盤の故障(制御基板・タイマーの不良)
- センサー本体の故障または配線断線
- 非常開放機能の誤作動
対応のポイント
まずは電源とセンサー周辺の障害物を確認。制御盤のLED表示などでエラーを確認できれば、原因特定がしやすくなります。
パターン2:閉じない/開きっぱなしになる
主な原因
- センサーの誤検知(常に「人がいる」と誤認識)
- センサーの角度ズレや汚れによる誤作動
- 駆動ユニットの劣化や異常
- プログラム設定ミス(開放時間が長すぎる)
対応のポイント
一時的にセンサーの感知範囲を狭める(遮蔽物を除去するなど)ことで、誤作動かどうかを切り分ける手がかりになります。
パターン3:途中で止まる、動きがぎこちない
主な原因
- レールや車輪の汚れ・破損・異物混入
- モーターの出力不足(経年劣化)
- 吊り車(ローラー)やレールの摩耗
- 電気系統の接触不良
対応のポイント
開閉のタイミングや動作音を確認し、引っかかる場所があればその部分を重点的に観察します。見た目は正常でも「動作の遅さ」が故障の前兆であることも。
パターン4:異音がする(キーキー・ゴロゴロ・カタカタ音)
主な原因
- レールの潤滑不足(グリス切れ)
- ローラーの劣化・変形
- 部品の緩み(特にガイドピースまわり)
- 内部モーターの異常
対応のポイント
音の種類によって、メカ部の劣化か、電動部の異常かが判断できることがあります。金属音や焦げ臭さを感じた場合は、ただちに使用を中止しましょう。
自動ドアの故障は、その挙動を観察するだけでも多くの情報が得られます。「いつから」「どのような動きで」「どんな音がするか」を記録することで、業者に説明する際にも非常に有効です。
ただし、ここまで来て「原因がよく分からない」「安全面に不安がある」と感じたら、次の章で紹介する「業者依頼の判断基準」に進んでください。
自分で直せる?それとも業者に頼むべき?判断の目安
自動ドアの不具合を発見したとき、「このまま放っておいても大丈夫か?」「自分で直せるか?」「業者を呼ぶべきか?」──多くの方がここで迷います。
この章では、「自力対応の限界」と「業者依頼が必要なケース」を具体的に分けて解説し、判断をサポートします。
自分で対応できる範囲
以下のような内容は、ユーザー自身で対応できる可能性があります:
- 電源スイッチ・ブレーカーのON/OFF確認と再投入
- センサーの表面を軽く拭いて清掃(ただし専用クロスを使用)
- レールや床の掃除、異物の除去
- 明らかな障害物の撤去
- エラーコードの確認(マニュアルがある場合)
これらはあくまで「視認・掃除・確認」の範囲であり、部品の交換や内部点検を行わないことが前提です。
業者に依頼すべきライン
次のような場合は、即座に専門業者への相談をおすすめします:
- 電気系の異常が疑われる(焦げ臭い/電源は入っているが無反応)
- センサーや制御盤に明らかな損傷がある
- ドアの動きが途中で止まる、もしくは暴走する
- 音や動作に異常があり、安全上問題があると感じる
- 「非接触センサー」や「フラッパー式」など特殊型のドアで、自力判断が難しい
判断のための3つの軸
- 設置年数
→ 設置から10年以上経過している場合、劣化による機械的故障の可能性が高く、部品交換が必要になるケースも。 - サポート体制の有無
→ メーカー名や機種名が分かるか? 保守契約があるか? メーカー指定業者が決まっているか?などの情報が重要です。 - 安全性への影響度
→ 症状が「利用者の安全」に関わる内容であれば、即業者へ。とくに学校・病院・福祉施設などでは、トラブル放置は重大事故の原因になります。
応急対応として「開けておきたい」場合
多くの自動ドアには、非常時にドアを開けたままにする「フリー機能」や「手動切替」が設けられています。たとえば:
- 制御盤のスイッチで手動モードに変更する
- 電気を遮断した状態で、ドアを手でスライドさせる(ロック解除が必要な場合も)
※ただし、操作には危険を伴うため、取扱説明書に従い、安全に行ってください。
自己判断で無理をすると、かえって故障を悪化させたり、保証対象外となってしまうこともあります。
「これは少しでも不安だ」と思った時点で、迷わず業者への連絡がベストです。
次は、気になる「修理費用の相場」について、実際の症状別に見ていきましょう。
修理にかかる費用相場と見積もりのポイント
自動ドアの修理において、「一体いくらかかるのか?」というのは多くの人が最も気になるポイントです。費用感がわからずに業者を呼ぶことをためらってしまうケースも少なくありません。
ここでは、一般的な修理費用の相場とともに、「なぜ費用に差が出るのか」「見積もりで注意すべき点」について丁寧に解説します。
修理費用の基本構成
自動ドアの修理費用は、主に以下の3つの要素で構成されます:
- 技術作業料(基本作業・診断)
- 部品代(センサー、基盤、駆動モーターなど)
- 出張費(地域や時間帯によって変動)
これに加えて、夜間・休日の緊急対応が発生する場合は、時間外料金が加算されることもあります。
症状別の費用相場(目安)
| 故障内容 | 主な修理内容 | 相場(税抜) |
|---|---|---|
| センサー不良 | センサー交換 | 約20,000〜40,000円 |
| 制御基板不良 | 制御盤修理または交換 | 約30,000〜80,000円 |
| モーター異常 | 駆動ユニット交換 | 約50,000〜120,000円 |
| レール異常 | 異物除去/清掃 | 約5,000〜20,000円 |
| 総合点検 | 簡易点検と調整 | 約10,000〜25,000円 |
※価格はメーカー・機種・設置環境・部品の供給状況により大きく変動します。
見積もり時にチェックすべきポイント
- 「部品代」と「作業費」が明確に分けられているか
→ 総額だけでなく、内訳を細かく記載してもらいましょう。 - 「出張費」が別途かかるかどうか
→ 特に遠隔地や僻地では、出張費だけで1万円以上かかる場合もあります。 - 「保証期間」の有無
→ 修理後の同一症状について、保証期間が設定されているか確認を。 - 「メーカー対応可否」
→ 特定メーカー製のドアで、純正部品が必要な場合は、その取り扱いがあるかをチェック。 - 「修理対応時間」
→ 故障発見が夜間・休日であれば、緊急対応可能か、別途費用が発生するかを明確に。
修理の相談時に役立つ情報
業者に問い合わせる際、以下の情報が揃っているとスムーズです:
- ドアのメーカー名・機種番号(銘板やシールに記載)
- 症状が起きた時刻と状態(動画があればベスト)
- 最終の点検・修理履歴(わかる範囲で)
- 設置年数と使用環境(屋外/屋内・開閉頻度など)
見積もりが明確であることは、信頼できる業者の最低条件です。
また、費用の大小だけで判断するのではなく、「その費用でどこまで直るのか」「今後も安定して使えるのか」をしっかり確認しましょう。
次は、よくある疑問「修理か、それとも交換か?」という迷いについて解説します。
修理か交換か迷ったときの判断基準
自動ドアの不具合が起きたとき、「修理すれば直るのか」「もう交換したほうがいいのか」は非常に悩ましい問題です。費用面、今後のリスク、安全性など、多角的に考える必要があります。
ここでは、修理と交換の判断基準を明確に整理し、「納得できる選択」ができるようサポートします。
修理で対応すべきケース
以下に該当する場合、修理での対応が妥当な可能性が高いです:
- 故障が初回または軽微(センサーずれ・レールの異物など)
- 製造から5〜7年以内で、部品供給が安定している
- 他の機能に影響がなく、故障箇所が明確
- 使用頻度が低く、突発的なトラブルだった
こうしたケースでは、修理後も十分に運用が可能であり、費用対効果も高くなります。
交換を検討すべきケース
以下のような状況では、交換を視野に入れることをおすすめします:
- 設置から10年以上が経過し、故障が複数箇所で発生している
- モーターや制御基板など中核部品の交換が必要で費用が高額
- メーカーが部品供給を終了している(ディスコン)
- 月に数回以上トラブルが発生している(頻発故障)
- 利用施設が学校・病院・店舗などで、安全性が最優先される
「費用で見れば修理の方が安い」ように見えても、安全性・将来的な安定性・管理コストを考えれば、交換の方が合理的というケースは少なくありません。
判断のポイントまとめ
| 判断軸 | 修理に向いている | 交換に向いている |
|---|---|---|
| 設置年数 | 5〜7年以内 | 10年以上 |
| 故障頻度 | 初回または稀 | 頻発している |
| 故障箇所 | 限定的 | 複数個所/中核部品 |
| 安全性 | 影響なし | 歩行者や高齢者の安全に関わる |
| 部品供給 | 安定している | 終了している/確認不能 |
| 使用環境 | 一般住宅など | 商業施設・公共施設など |
設置環境によっては「そもそもドアが合っていない」可能性も
とくに「人の通行量が多い」「風雨にさらされる場所」「泥や砂が入りやすい」などの条件があると、一般的な電動式自動ドアでは耐久性が持たないことがあります。
このような場合は、運用に合わせたドアの見直し(=適ドア適所)も大切です。例えば、頻繁に開閉する環境では荷重式自動ドアの方が適しているケースもあります。
詳細は関連記事で後述しますが、「故障はドアそのものの設計選定ミス」から始まっていることも少なくありません。
単純な「直すか/買い換えるか」ではなく、使い続けた時のコスト・安全性・安定性まで含めて判断しましょう。
最後に、今後こうしたトラブルを防ぐための「点検と予防」について整理します。
トラブルを未然に防ぐ!自動ドアの予防保全と点検のすすめ
自動ドアの故障は、突然やってくるように見えて、実は「予兆があった」ケースが非常に多くあります。日常的な点検や使用環境の見直しによって、ほとんどのトラブルは未然に防げるのです。
この章では、予防保全の考え方と、ユーザー自身でできる簡易点検、そして長期的な視点でのドア選定について解説します。
自動ドアの故障、実は「予防できるもの」がほとんど
以下は、よくある「予防可能だった故障」の実例です:
- ゴミの蓄積による開閉不良 → 日常清掃で防げた
- センサーの角度ズレ → 定期点検で調整可能
- レールの潤滑不足 → 月1回のグリス補充で回避可能
- モーター異音 → 異音の早期発見で部品交換を最小限に
つまり、**使用者の「気づき」と「点検習慣」**が、もっとも効果的な保全手段になります。
ユーザーができる簡易点検項目(月1回〜)
| 点検項目 | 方法 | 異常の目安 |
|---|---|---|
| センサーの汚れ | 柔らかい布で軽く拭く | 表面に汚れや指紋がある |
| レール清掃 | ゴミや異物がないか確認 | 小石やゴミが詰まっている |
| 開閉音の確認 | ドアの動作音を聞く | ガタガタ音・異音がする |
| ドアスピードの確認 | 通常より遅くなっていないか | 動作がぎこちない |
| 障害物センサーの作動 | わざとセンサー前に立ってみる | 反応しない or 誤作動 |
これらはマニュアルや仕様によって異なる場合があるため、必ずメーカーの指示に従うことが大前提です。
業者による定期点検のメリット
- プロの目による異常の早期発見
- 消耗品や摩耗部品の交換時期を把握できる
- トラブル時の緊急対応がスムーズに(契約内容による)
- 安全基準(JIS等)に準拠した維持管理が可能
とくに病院・福祉施設・商業施設など、不特定多数の人が利用する場所では「点検をしていないこと自体がリスク」になるため、最低でも年1〜2回の点検契約をおすすめします。
故障の根本を減らす「適ドア適所」の考え方
実は、故障が多発するドアには「その場所に適していないドア」が使われているケースが目立ちます。
たとえば:
- 開閉頻度が非常に高い → 電動式よりも荷重式の方が適していることも
- 風雨や粉塵が多い環境 → 密閉性や防水性の高い設計が必要
- 高齢者が多く使う → ドア速度や感知範囲の最適化が必要
自動ドアは「どれでも同じ」ではなく、**設置環境と運用目的に合わせた選定(=適ドア適所)**こそが、トラブル削減と長寿命化の最大の要です。
詳しくは、以下の参考記事をご覧ください:
→ 【関連記事】自動ドアに「適ドア適所」が必要な理由とは?
未来のトラブルを減らすために、いま知識を深め、対策を取っておく。
これが、もっとも賢い自動ドアとの付き合い方です。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
自動ドアが故障したとき、多くの方は「突然のこと」に戸惑い、業者に頼むべきか悩みながらネット検索を始めます。しかし、この記事で見てきた通り、まず確認できること、症状別に判断できること、費用の相場感、そして修理と交換の分かれ目など、冷静に整理できる材料はたくさんあります。
そして、最も大切なのは「なぜそのトラブルが起きたのか?」という根本原因への理解です。
単なる部品の劣化であれば修理で済みますが、「その場所に合っていないドアが使われていた」のであれば、今後も同じようなトラブルを繰り返す可能性が高くなります。
だからこそ、自動ドアの選定・設計段階から「適ドア適所」を意識することが、故障リスクを減らし、長く安全に使うための最短ルートです。
「今、目の前のトラブル」をきっかけに、「これからの使い方」も見直すタイミングかもしれません。
【出典一覧】
- Newtonプラス「自動ドア 故障のサインと対応法」(https://newton-plus.co.jp)
- 一般社団法人 自動ドア産業振興会「自動ドア点検基準」
- 一般的な自動ドア修理業者のサービスサイト・費用公開ページ各種
- JIS A 4722:自動ドア装置の安全基準