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なぜ「店舗設計の期間」は不安になるのか?

要点:
多くの人にとって、店舗設計の「期間」はとても不安なポイントです。その理由は、スケジュール全体をイメージできないことや、ネット上の情報が断片的であいまいなことが背景にあります。


Q:「設計期間」って、どうして不安になるの?

A:全体の流れが見えていない中で、他の準備と並行しないといけないからです。


背景:情報の分断と「専門家任せ」の罠

初めての開業では「どれくらい時間がかかるのか?」という問いに対して、まっすぐに答えてくれる情報にたどり着くのは意外と難しいものです。
ネット上には「最短1ヶ月」「通常3ヶ月」「半年以上かかる場合も…」といった、バラバラな記述が並んでいます。これらはすべて「間違ってはいない」が、「前提条件が違う」ために混乱を招いているのです。

また、多くの開業準備者は「設計は専門家に任せればいい」「自分が口を出すことではない」と思いがちですが、スケジュールを決めるのは「施主(あなた)」です。
つまり、「どのタイミングで誰に相談し、何を決めるのか」を把握していないと、知らぬ間に遅延やトラブルの原因になります。


よくある3つの誤解

  1. 「設計期間」は施工と同じ時期に始まると思っている
     → 実際は、設計図が完成してからでないと施工に入れません。
  2. 設計は「業者に頼んだらすぐ始まる」と思っている
     → 業者が設計を始めるのは、施主側の「要望・条件」が整理されてからです。
  3. 「設計を急げばオープンも早くなる」と考えている
     → 実際は、焦って始めると確認申請・図面修正のやり直しが発生し、かえって遅くなることも。

設計期間=「全体スケジュールの中核」だと理解する

開業までの準備は、物件契約・設計・施工・申請・採用・集客など、多くの工程で構成されています。
この中で「設計期間」は、すべての始点にあたる要素です。設計がずれると、施工はもちろん、その後の家具搬入や開業日にも影響が及びます。

特に多いのは、

  • 「いつ設計を依頼すればいいのか分からない」
  • 「設計って何をしてくれるのかよく分からない」
  • 「設計と施工の境界が分からない」
    という“もやもや感”が、期間の不安を生んでいるケースです。

まず「スケジュール全体像」を知ることが第一歩

期間の不安を解消するには、まず「店舗設計という言葉が、開業全体のどの部分にあたるか」を正しく把握することが重要です。
次の章では、実際に店舗設計〜開業までに必要な流れを、時系列で解説していきます。


店舗設計〜開業までの流れと標準期間

要点:
店舗設計にかかる期間を把握するには、設計単体ではなく「開業までの全体スケジュール」の中で考える必要があります。ここでは、各工程がどのように進み、どれくらいの時間を要するのか、標準的な期間をもとに解説します。


Q:店舗の設計〜開業って、どんな順番で進むの?

A:基本は「企画→物件確定→設計→申請→施工→引き渡し→開業準備」の順です。


標準的な工程と所要期間(目安)

工程内容の概要目安期間(平均)
1. コンセプト設計店の業種・ターゲット・コンセプトを明確化1〜2週間
2. 物件選定立地調査/条件交渉/契約(物件の形状や制約で工事内容が変わる)2〜4週間
3. 設計(基本+実施設計)レイアウト・動線・設備設計・詳細図作成3〜6週間
4. 各種申請保健所・消防・建築確認など(業種によって異なる)2〜4週間
5. 施工工事内装工事・設備工事・什器設置など3〜6週間
6. 引き渡し/開業準備備品搬入・スタッフ採用・研修・集客準備1〜2週間

総期間の目安:約3〜4ヶ月(90〜120日)


工程は「一部同時進行」も可能

すべてを順番に進めると時間がかかりますが、プロジェクトによっては一部を同時並行で進めることも可能です。たとえば:

  • 設計と申請を並行して進める(ある程度の設計が固まっていれば仮申請は可能)
  • 物件契約後すぐに現地調査と基本設計を始める
  • 施工業者と早期に連携し、資材発注のタイミングを前倒しする

ただし、これは「施主側がある程度の準備をしている」ことが前提です。準備が不十分なまま急ぐと、かえって手戻りやミスが発生し、最終的に遅れることがあります。


注意点:保健所や消防の審査期間は自治体により異なる

特に飲食業・理美容・医療などの業種では、保健所や消防署への申請と立入検査が必要です。
自治体によっては予約待ちが2〜3週間以上になることもあり、これが開業スケジュールに大きく影響するケースもあります。


設計開始のベストタイミングとは?

実際には、物件契約の直前〜直後に設計者へ相談するのがベストです。
内見時点で相談できる設計者がいれば、物件の制約(天井高/配管/構造)も踏まえてレイアウトを早く詰められるため、全体スケジュールが効率的に進みます。


物件状態による違い|居抜きとスケルトンでどう変わる?

要点:
「設計にかかる期間」を左右する最大の要因は、物件が「居抜き」か「スケルトン」かという状態の違いです。この節では、それぞれの特徴と、設計・施工にどれだけの差が出るのかを詳しく解説します。


Q:「居抜き」と「スケルトン」でどれくらい期間が変わるの?

A:設計・施工合わせて、居抜きなら1〜2ヶ月、スケルトンなら3〜4ヶ月が目安です。


居抜き物件とは?【短縮型】

居抜きとは、前のテナントが使用していた内装・設備などをある程度残した状態で引き渡される物件のことです。

  • 設計期間の短縮理由:
    • 配管・電気などのインフラが残っている
    • 内装が使える場合、レイアウト変更が少ない
    • 一部再利用により、設計と工事のスコープが小さく済む
  • 留意点:
    • 既存設備の老朽化チェックが必要
    • レイアウトが完全には理想と合わないケースもある
    • 前テナントの業種と異なる場合は申請内容が変更になる

スケルトン物件とは?【自由設計型】

スケルトンとは、内装・設備がすべて撤去されて「コンクリートむき出し」の状態になった物件です。

  • 設計期間が長くなる理由:
    • すべての設備・レイアウトをゼロから設計
    • 各種申請が一から必要になる
    • 工事範囲が広く、調整や設計修正も多くなる
  • メリット:
    • 自由度が非常に高く、理想の空間設計が可能
    • ブランドイメージや動線に合わせた最適化がしやすい
  • デメリット:
    • コストと期間は居抜きに比べて倍近くかかるケースも

比較表:居抜き vs スケルトン

項目居抜き物件スケルトン物件
設計期間(目安)約2〜3週間約4〜6週間
施工期間(目安)約3〜4週間約6〜8週間
設計の自由度限定される非常に高い
初期コスト抑えやすい高くなりやすい
申請の手間少ないことが多い多くなる傾向
おすすめの用途同業種で開業したい人/短期開業独自ブランド重視/自由設計希望

判断ポイント:何を優先するか?

  • スピードを優先するなら: 居抜き物件+最低限の改装
  • こだわりや差別化を重視するなら: スケルトン+一から設計

この違いを知っておくことで、物件選定の段階で「自分が何を優先したいのか」が明確になります。


業種別の目安期間と注意点

要点:
店舗の業種によって、必要な設計・申請・施工内容が大きく異なります。この節では、飲食・美容室・整体・物販など代表的な業種ごとに、設計にかかる期間の目安と、その際に注意すべきポイントを整理します。


Q:業種によって、設計にかかる期間は変わるの?

A:はい。設備や申請の有無によって、2〜3週間以上の差が出ることもあります。


業種別|設計〜開業までの目安期間(スケルトン物件想定)

業種設計期間施工期間申請の有無特記事項
飲食店約4〜6週間約6〜8週間保健所・消防・換気計画厨房の動線やグリストラップに注意
美容室約3〜5週間約5〜7週間美容所登録申請が必要シャンプー台の給排水がポイント
整体・治療院約3〜4週間約4〜6週間特になし(医療行為なし)プライバシー性と防音に注意
歯科医院約5〜8週間約6〜10週間医療機器・保健所・消防等高度な設備と精密設計が必要
物販店約2〜3週間約3〜5週間基本なし陳列動線や倉庫スペースがカギ
テイクアウト専門店約2〜4週間約3〜5週間保健所対応が必要小面積でも厨房設計が要件

※ 居抜き物件では、これらの期間が30〜50%短縮されることがあります。


設計に影響を与える要素とは?

  1. 申請の種類と量
    • 飲食業や医療系は申請内容が多く、設計図の精度が問われる
  2. 設備の複雑さ
    • 厨房や医療機器など、特殊な設備は設計段階から仕様を決める必要がある
  3. 導線とゾーニングの制約
    • 接客・調理・スタッフ動線の調整が多い業種は時間がかかる

業種別注意点まとめ

  • 飲食店: 厨房機器の設計が複雑で、換気・排気計画が設計の難所。
    → 設計前に厨房レイアウトを固めておくとスムーズ
  • 美容室: 水まわり(給排水)の位置に制限があると設計が難航
    → 物件選定時点で設計者に相談できると安心
  • 医療・歯科: 専門設備と保健所基準があるため、設計と申請が長期化しやすい
    → 時間と予算にゆとりを持つことが重要

工期を短縮するには?事前にやるべき準備とは

要点:
店舗設計〜開業までの期間は、「物件選定後に急ぐ」よりも、「選定前に備える」ことで短縮できます。この節では、設計依頼前にできる準備や、よくある遅延の原因とその対策を整理します。


Q:設計期間って、自分でも短くできるの?

A:はい。設計依頼の前に「決めておくこと」が多いほど、期間は大幅に短縮できます。


1. 設計依頼前に決めておくべき5つのこと

  1. コンセプト・ターゲットの明確化
     →「誰に、どんな価値を提供する店か」がブレていると、設計方針が定まらず時間がかかります。
  2. 必要な席数・設備のイメージ
     →店舗の広さと設備をざっくりでも把握しておくことで、レイアウト提案が早く進みます。
  3. 理想のイメージ(参考写真・事例)
     →イメージが共有されていると、デザイン案が一発で近づきやすくなります。
  4. 予算の上限・内訳(設計費/工事費)
     →現実的な制約がわかれば、設計者も設計の引き算がしやすくなります。
  5. 想定オープン日とそこからの逆算スケジュール
     →「いつまでに工事完了したいか」が明確であれば、工程の優先順位がつけやすくなります。

2. よくある遅延の原因と対策

遅延の原因対策方法
施主の要望が毎回変わる初回にコンセプトと優先順位を明確に伝える
設計の修正指示が曖昧・遅れるレビューの締切を設け、返信タイミングを明確にする
設計と施工業者の連携が取れていないワンストップ対応の業者を選ぶ、または早期打合せ
保健所・消防の申請が間に合わない必要書類・手続きフローを設計者に早めに確認する
資材納期の遅れ使用資材の選定は初期段階で確定しておく

3. 設計をスムーズにする「施主の関わり方」

設計期間の長短は、設計者の能力だけでなく「施主の関わり方」によっても変わります。
「任せきり」は必ずしも時短につながりません。以下のような姿勢が、スムーズな進行を生みます。

  • 要望を「感覚」ではなく「事実」で伝える
     (例:「落ち着いた雰囲気」→「照明を暖色に」「木目の内装にしたい」)
  • 優先順位を伝える
     (例:「デザインよりも工期重視」「キッチンは予算をかけてもいい」)
  • 決断を早くするために、事前に家族・関係者と調整しておく

設計・施工の依頼方法|分離か?一括か?判断軸の整理

要点:
設計と施工を「別々の会社に依頼する」のか、「同じ会社(ワンストップ)に任せる」のかは、スケジュールや完成度、コストに大きな影響を与えます。どちらが良いかは人によって異なります。この節では、それぞれのメリット・デメリットと、選び方の判断軸を紹介します。


Q:設計と施工って、一緒に頼む方がいいの?

A:それぞれにメリットがあり、優先するもの(時間/品質/コスト)によって判断すべきです。


1. 「設計・施工分離方式」とは?

  • 設計は建築士事務所やデザイン事務所に依頼
  • 施工は別途、工務店や内装業者に発注
  • 設計者が施工をチェックし、施主の代理的立場になることが多い

メリット:

  • 設計の中立性が保たれる
  • 見積もり競争により施工コストを抑えやすい
  • 設計と施工の責任分担が明確

デメリット:

  • 打ち合わせの窓口が複数になり、管理が大変
  • 設計と施工の間に「伝達ロス」が起きやすい
  • トラブル時の調整負担が施主にかかることも

2. 「設計・施工一括方式(ワンストップ)」とは?

  • 1社で設計から施工まで請け負う
  • 通常は内装業者や設計施工会社が担当
  • 工程管理も1社がまとめて行う

メリット:

  • 進行が早く、スケジュール調整しやすい
  • コストの総額が分かりやすい
  • 窓口が一本化され、施主の負担が軽い

デメリット:

  • デザイン性や設計の自由度が下がる場合がある
  • 設計の中立性が低くなる可能性も
  • トラブル時に施主の立場が弱くなることも

3. 自分に合った選び方|判断軸一覧

優先したいこと向いている依頼方法理由・特徴
とにかく早く開業したい一括方式(ワンストップ)工程の同時進行や簡略化がしやすい
デザインにこだわりたい分離方式+設計事務所表現力の高い設計が可能/ディテールまでこだわれる
コストを抑えたい分離方式(相見積もりを取る)施工会社を比較検討できる
自分の時間を節約したい一括方式ワンストップで完結するため連絡の手間が少ない
工事トラブルを避けたい分離方式+監理契約設計者が施主の立場でチェックしてくれる

【適ドア適所】にそった「まとめ」

自動ドアと同じように、店舗設計もまた「適材適所」の発想が鍵です。
スピード・予算・自由度、何を優先するかによって「最適な依頼方法」や「設計期間の捉え方」は変わってきます。

すべてを最短にするのではなく、「どこに時間をかけるべきか」「どこをシンプルにするか」を見極めることで、無理なく納得のいく開業が実現できます。

設計の期間は、単なる“日数”ではなく、「自分のビジョンを形にしていく時間」。
自分らしい店舗づくりの第一歩として、ぜひこの記事を参考に、今できる準備を進めてみてください。

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