店舗の設計を考えたとき、まず多くの人がイメージするのは「内装のデザイン」かもしれません。けれど実際には、それ以上に重要な視点がいくつも存在します。とくに設計会社を選ぶ段階では、「どこに依頼するか」「どこまで任せるか」という判断を誤ると、後になって思わぬトラブルや後悔につながることも。

この記事では、設計会社に依頼する前に知っておきたい基本知識から、つい見落としがちな“入口設計”や“設備連携”の視点まで、店舗づくりの専門家が実際の現場で見てきたことをベースに解説していきます。

単なるデザイン性だけでなく、「動線」「安全性」「バリアフリー対応」なども踏まえた“本当に失敗しないための判断軸”を、ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。


目次(このページの内容)

そもそも店舗設計の企業は、どこまでやってくれる?

要点:設計だけでなく「どこまで任せられるか」が企業によって違う

「店舗設計をお願いしたい」と考えたとき、まず大きな分かれ目になるのが、「設計だけを行う会社」か「設計から施工までを一貫して行う会社」かという違いです。

どちらが良い・悪いということではありませんが、選ぶ側がこの違いを把握していないまま進んでしまうと、後で『こんなはずじゃなかった』という行き違いが生じやすくなります。


手順:設計会社の業務範囲を確認する

  1. 設計のみの企業:
     – デザインと図面作成までを担当し、施工は別業者に委託する形が多い
     – より自由度の高いデザイン提案が受けられることがある
     – 一方で、設計と施工の連携不足による“施工ミス”や“伝達ミス”のリスクも
  2. 設計施工一括の企業:
     – 自社内、またはグループ企業内で施工まで一貫して担当
     – 工程の一体感があり、スケジュールやコスト管理がしやすい
     – 設計上の制約が多少出ることもあるが、現場との連携力は高い

注意点:入口・設備も設計に含まれているか?

意外と見落とされがちなのが、「入口設計」「設備との連携」までどこまで対応してくれるかという点です。

たとえば自動ドア、換気設備、看板、サイン計画などは、設計の段階で明確に扱われていないと、施工段階で急に追加対応が必要になり、予算超過や設置ミスにつながることもあります。

こうした問題を避けるためには、打ち合わせ初期に以下のような確認をしておくことが重要です。

  • 入口の設計や扉の方式(自動・手動)も対応範囲に入っているか?
  • 設備業者との調整・発注まで含めてサポートしてくれるか?
  • 省エネやバリアフリー対応について、どの程度ノウハウがあるか?

根拠:設計範囲と「適ドア適所」の視点

Newtonドアのような“荷重式自動ドア”が提唱する「適ドア適所」という考え方があります。これは、人の通行頻度・空間の目的・コスト・安全性などを踏まえ、最適なドア形式を選ぶことが設計段階で重要であるという視点です。

この視点は、内装デザインばかりに気を取られてしまいがちな店舗設計において、非常に有効です。特に入口は、来店者が最初に触れる“接点”であるだけでなく、安全・利便性・印象すべてを左右する場所です。

設計会社に依頼するときは、こうした設備レベルの視点まで共有できるかどうかが、後悔しない発注の分かれ目となります。


店舗設計を頼むとき、どんな点で“失敗しやすい”?

要点:設計段階の小さな見落としが、運用時の大きなトラブルになる

「設計はプロに任せるから大丈夫」と思っていても、実際に店舗が完成して営業を始めてみると、「こんなはずじゃなかった…」という場面が出てくることは少なくありません。とくに多いのが、動線・設備・入口設計などの“使い勝手”に関する失敗です。


手順:よくある設計ミス(動線・収納・入口・看板設計など)

設計に関する失敗には、以下のような典型的なケースがあります。

  1. 動線の失敗
     – スタッフ動線と客動線が交差してしまい、業務効率が悪化
     – 厨房やバックヤードの配置が非効率で、日々のストレスに
  2. 収納不足
     – 目に見える空間ばかりを優先してしまい、収納スペースが足りない
     – 結果的に、商品や備品が外に出しっぱなしで見た目にもマイナス
  3. 入口設計の甘さ
     – 開き戸が通行に邪魔で、車椅子・ベビーカーの利用に支障
     – 自動ドアの設定が人通りと合わず、無駄な開閉で空調ロスが発生
  4. 看板・サイン設計の不足
     – 道路側からの視認性が悪く、存在自体が気づかれにくい
     – 法規制を考慮せず、設置後に撤去を求められることも

注意点:施工中・オープン後に発覚する“設計ギャップ”

設計段階では完璧だと思っていても、いざ施工が進んでみると「設計と現場が合っていない」「使いづらい」と感じることがあります。これはいわゆる“設計ギャップ”で、以下のようなタイミングで気づくことが多いです。

  • 現場で施工が始まってから「コンセントの位置が変」「照明の明るさが足りない」などの声が出る
  • オープン後に「入口が狭く、混雑時に人が詰まる」などの運用上の問題が発覚
  • 設計上ではOKだったはずのレイアウトが、消防法や建築基準法に抵触していた

これらの問題は、設計者と運営側の“想像の差”によって起こることが多く、打ち合わせ段階で具体的な運用シーンを共有しておくことが対策になります。


根拠:設計会社選定時の見落としポイント

上記のような問題を防ぐためには、設計会社の“設計力”だけでなく、以下のような実務面での確認力・運用視点の有無があるかどうかを見極める必要があります。

  • 現場経験のある設計者が担当してくれるか?
  • 設計段階で「どう使われるか」をヒアリングし、反映してくれるか?
  • 設計図だけでなく、立体的なイメージ共有(パースや模型)があるか?
  • 初期提案に、入口設備や看板などの“見えない要素”も含まれているか?

特に、入口設計や動線など“誰もが使う部分”の配慮があるかどうかは、その会社が単なるデザイン会社か、“使いやすさまで考えたパートナーか”を見極めるうえで大きな指標となります。


店舗設計で入口まわりが重要な理由とは?

要点:入口は“通るだけの場所”ではなく、来店者の体験を左右する重要ポイント

店舗の設計において、意外と軽視されがちなのが「入口」の設計です。しかし、入口は単なる通路ではありません。そこは来店者の第一印象を決定づけ、利便性や快適性、安全性にも大きく影響を与える場所です。


根拠:第一印象・アクセス性・バリアフリー・安全性の観点から

  1. 第一印象を決める“顔”としての役割
     – おしゃれな内装も、入口が汚れていたり使いにくければ台無し
     – 入店までにストレスを感じさせると、再来店率が下がる
  2. アクセス性と利便性の確保
     – ドアの開き方ひとつで、ベビーカー・車椅子ユーザーの負担が変わる
     – 両手がふさがっている状態(買い物袋・荷物・子ども連れ)での利便性は見落とされがち
  3. バリアフリー設計の出発点としての入口
     – 段差の有無、開閉方式、通路幅などは、全体のバリアフリー設計の成否を左右する
     – 高齢者施設や医療機関だけでなく、あらゆる業種で「誰でも入りやすい店」であることが求められている
  4. 防犯性・安全性の起点
     – 扉のガラスの種類、開閉の制御(風圧・センサー感度)などが安全性に直結
     – 暗い場所や視界の悪い入口では、防犯上のリスクも上がる

比較表:自動ドア・荷重式ドア・手動ドアの違い(概要)

種類開閉方式特徴向いている店舗主な注意点
電動式自動ドアセンサー・モーターで自動開閉高齢者にやさしく、開閉もスムーズ商業施設、病院、飲食店など停電時は動作しない/維持費が高め
荷重式自動ドア人が乗ると開く(重さで作動)電源不要、省エネ、メンテ簡単無人運営、バリアフリー重視の小規模店大型荷物や車椅子通行にはコツが必要
手動ドア手で開閉初期コスト安く、自由度高い個人店、事務所などバリアフリーに不向き、非接触性ゼロ

適ドア適所の視点:状況によって最適な入口設計は変わる

「自動ドアがあるから良い」「手動ドアは古い」というのは短絡的な判断です。重要なのは、「この店舗の目的」「来店者の層」「営業時間帯」「スタッフの人数」などを踏まえて、その店舗にとっての“最適な入口方式”を選ぶことです。

たとえば、Newtonドアが提案する荷重式自動ドアは、「人通りは多くないが、バリアフリーを確保したい」「無人の時間も多いので、省エネ性が重要」といったニーズに非常にマッチします。逆に、人の流れが非常に多い大型施設では電動式が適しています。

「適ドア適所」という考え方は、入口設計を“デザインの一部”ではなく“戦略の一部”として考えるための視点です。


実は多様な選択肢がある「自動ドア」設計の話

要点:自動ドアは“電動式だけ”じゃない。設置場所や用途で選ぶべき「最適な方式」がある

多くの人が「自動ドア」と聞くと、センサーで開閉する電動式のものを思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、電気を使わない「荷重式自動ドア」や、手動式と自動式を切り替えられるものなど、さまざまな選択肢があります。

ここではそれぞれの特徴と、どんな店舗に向いているかを解説します。


根拠:電動式と荷重式の基本的な違い

比較項目電動式自動ドア荷重式自動ドア
作動方式センサー感知+モーター制御足元にかかる“重み”で作動
電源の要否常に電源が必要一切不要(停電時も稼働)
開閉スピード高速かつなめらかややゆっくりだが安定
メンテナンス定期的な機器点検が必要シンプルな構造で故障リスクが低い
向いている店舗来客数が多く、大型施設向き小規模・省エネ・無人運営などに適応

判断軸:規模・頻度・用途で変わる最適方式

どの方式を選ぶかは、単に「便利だから」ではなく、以下のような複数の条件を組み合わせて判断すべきです。

  1. 来客頻度(人の出入りが多いか少ないか)
     – 頻繁に開閉がある場合は電動式が便利
     – 時々しか開かないなら、荷重式の省エネ性が活きる
  2. 入口の位置と通行条件
     – 風除室や屋外からの直結部分では、センサー誤作動や外気流入が懸念されるため、非電動式が適する場合も
  3. 店舗の営業時間と無人時間の長さ
     – 無人営業の時間が長い店舗では「電源不要」が強みになる
     – 人件費の圧縮を考えると、保守が楽な方式が理想

注意点:停電時・安全性・維持費の観点からも考える

  1. 停電時の動作
     – 電動式は停電すると開閉不能になる可能性あり
     – 荷重式は構造上、停電の影響なし
  2. 安全性の違い
     – 電動式にはセンサー感度の設定・調整が必要
     – 荷重式は“人が乗って初めて動く”ため誤作動がほぼない
  3. 維持コスト
     – 電動式は年に1〜2回の点検が推奨され、故障時の修理費も高め
     – 荷重式はメカニカルな構造のため、長寿命・低維持費が特徴

こうした違いを理解したうえで、自分の店舗にとって「本当に必要な性能は何か?」を考えることが重要です。便利そうだから導入するのではなく、運用に合った形式を選ぶことが“最適化された設計”につながります。


人通りの少ない店舗にとっての最適解とは?

要点:「自動ドア=正解」ではない。店舗規模や来客数に応じて“入口の在り方”を見直すべき

設計段階で多くの店舗が無意識に「入口には自動ドアをつけるもの」と考えがちです。しかし、人通りが少ない店舗や、無人運営を前提としたスペースでは、自動ドアが必ずしも最適とは限りません。

ここでは、小規模店舗や省エネ・無人化ニーズのある店舗がとるべき選択肢を掘り下げます。


シナリオ:自動ドアをつけることが“かえって非効率”になるケース

以下のような状況では、電動式自動ドアの導入がデメリットに転じる可能性があります。

  1. 来客が1日10人以下の小規模運営
     – 電動式だと開閉のたびに電力消費/メンテコストも重い
     – 入店のたびに扉が大きく開くため、空調効率が悪化
  2. 無人店舗・短時間営業が中心
     – 防犯上の制御が難しく、誤開閉のリスクも高い
     – 利用しない時間でも常時通電が必要
  3. スペースに制限がある狭小立地
     – センサーの位置が取れない/扉の引き込みスペースが足りない
     – 手動か、荷重式で対応したほうがスムーズ

例:Newtonドアのような荷重式ドアの選択肢(紹介のみ、売り気ゼロ)

こうした背景から注目されているのが、**電気を使わず、利用者の重みで開く「荷重式自動ドア」**という選択肢です。

Newtonドアに代表される荷重式ドアは、次のような場面に向いています。

  • 無人またはセミセルフ式店舗(例:セルフ脱毛/予約制サロンなど)
  • 高齢者やベビーカーの通行に配慮した入口を求める小規模施設
  • 営業時間外でも「通電していない=安全」な状態を保ちたいケース

電気工事不要で初期コストも抑えられ、停電時でも通常通り利用できるというメリットがあり、“ちょうどいいドア”を選びたい小規模事業者にとって実用的な選択肢となります。

※より詳しい仕組みや活用事例を知りたい方は、Newtonドア専門ページへ(関連記事として紹介)


注意点:設計会社に「入口設備」も含めて提案してもらうには?

入口設計を“建具の選定”だけにとどめず、店舗全体の設計の一環として考えるには、設計会社との打ち合わせ時に以下のような観点で質問するのがおすすめです。

  • 自動ドア or 手動 or 荷重式の選定理由はどうなっていますか?
  • 来客頻度や営業時間に応じた設備提案をしてもらえますか?
  • 入口まわりの省エネ性・バリアフリー性はどう評価していますか?
  • 停電時や緊急時の手動対応が可能かどうか、考慮されていますか?

設計の初期段階でこうした質問が出ると、設計者側も「この顧客は入口にも関心がある」と判断し、より丁寧で多角的な提案につながりやすくなります。


設計企業を選ぶときの“チェックポイント”一覧

要点:見た目や価格だけで選ばない。“設備まで連携できる設計力”が真の比較ポイント

店舗設計において、設計企業を選ぶ基準は「デザインがかっこいい」「費用が安い」だけでは不十分です。とくに入口や設備、動線、法令対応まで含めてトータルで設計できる企業でなければ、運用開始後に不具合や追加コストが発生する可能性があります。

ここでは、設計会社を選ぶときにチェックすべきポイントを具体的に解説します。


根拠:最新の選定基準からみるチェックポイント

「店舗デザイン.com」などの業界プラットフォームでも、近年は以下のような基準が重視される傾向があります。

  1. 業種特化の実績があるか?
     – 飲食、美容、医療など、業種によってノウハウは大きく異なる
  2. 設計〜施工まで一貫対応できる体制か?
     – 施工を外注している場合、伝達ミスや納期遅れが起きやすい
  3. 法令や規格への対応力があるか?
     – バリアフリー法、建築基準法、消防法などを理解しているか
  4. 設備との連携設計が可能か?
     – 自動ドアや看板、照明、換気設備などとの調整を想定しているか

判断軸:入口・設備・自動ドアなど「設備連携力」を見抜く質問例

  1. 設計段階で入口の扉の方式まで提案してもらえますか?
  2. 自動ドア・換気設備・空調などの配置に関して、施工業者との連携提案がありますか?
  3. 停電やメンテ時の対応まで設計に反映されていますか?
  4. ドアや入口におけるバリアフリー法対応の実績はありますか?

こうした質問を通じて、単なるデザイン提案ではなく「運用を見据えた設計」ができる会社かどうかを見極めることができます。


チェックリスト:比較検討用の項目一覧(保存用テンプレート)

チェック項目○ or ×備考
業種対応実績がある(例:美容室、医療、物販など)
設計〜施工まで一貫体制(または連携の強い施工パートナーがいる)
入口設備(ドア)まで提案対象に含まれる(自動・手動・荷重式などの提案あり)
バリアフリー・消防・建築基準法への対応力(実績があるか)
設備業者との連携提案がある(空調、換気、電気など)
アフターフォロー・保証制度が明確(施工後のトラブル対応体制)

このように、デザイン性だけではなく、**設備や安全、運用まで視野に入れた「設計力の総合値」**で比較することで、後悔のないパートナー選びが可能になります。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

店舗設計を依頼する際にもっとも大切なのは、「自分たちの店舗にとっての正解が何か?」を多角的に考えられることです。とくに“入口まわり”は、来店者にとって最初に接する体験でありながら、設計段階では後回しにされがちです。

ここで紹介した「適ドア適所」という視点は、単なるドアの種類選びではなく、

  • 店舗の規模や来客頻度
  • スタッフの配置と動線
  • バリアフリーや安全性
  • 無人運営や省エネの必要性

などを総合的に考えたうえで、「その店舗に最も合った入口の在り方」を見出すための判断軸です。

電動式の自動ドアが合うケースもあれば、荷重式や手動の方が適している場合もあります。大切なのは、“見た目のかっこよさ”や“なんとなくの常識”に引っ張られるのではなく、自分たちの運営スタイルに合った選択をすることです。

そして、設計企業を選ぶ際にも、この「適ドア適所」の視点で入口設備まで設計に組み込める会社かどうかをチェックすることで、完成後の満足度は大きく変わってきます。

出典一覧

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