出入口の寸法をどう決めるか──店舗設計を進めるうえで、意外と悩みどころです。設計士から「このくらいで大丈夫です」と言われても、それが「なぜ」適切なのか、自分で判断できないと不安になりますよね。

本記事では、そんな迷いに答えるために、「出入口寸法をどう決めればよいか?」という問題を、法令の基準だけでなく、「誰が使うか」「どう使われるか」という視点から丁寧に解説していきます。

読み終えたときには、「正解のない寸法設計」を自分の判断で納得して進められるようになるはずです。


店舗の「出入口寸法」はなぜ悩ましいのか?

要点: 寸法に「絶対の正解」がなく、目的・使う人・動線次第で最適解が変わるからです。

背景:なぜ迷うのか?

「店舗の出入口をどれくらいの幅・高さにすればいいか?」という疑問に、ズバリ答えてくれる資料は意外と少ないもの。ネットで調べれば、

  • 車いすが通れるのは800mm以上
  • ベビーカーのために900mm以上が望ましい
  • 荷物の搬入があるなら1000mm以上

……などの「目安」は出てきます。でも、これらは“目安”にすぎず、あなたの店舗でその寸法が「過剰」か「不足」かは、店舗の業態・立地・客層によって大きく変わります。

施工会社は「設置可能寸法」を答えてくれるだけ

設計のプロである建築士や施工業者は、「このスペースで法的に問題ない寸法」として、必要最小限の寸法を提示することが多いです。もちろんそれで法的には通るのですが、実際に使いやすいかどうかは別問題。

つまり、「通れること」と「使いやすいこと」は違うのです。


まず押さえるべき「法令・ガイドライン」の寸法とは?

要点: 法的に求められる寸法の最低ラインを知ることで、「ここから先は自由に調整できる」と判断できます。

法令と基準から見る「最低限の寸法」

出入口寸法に関わる法令やガイドラインには、以下のようなものがあります:

法令・指針名内容
建築基準法避難経路としての開口幅(750mm以上など)
バリアフリー法(高齢者・障害者等配慮)車いす通行に必要な幅(800mm以上が望ましい)
消防法火災時の避難に支障がないこと(主に開き方向など)
各自治体の条例商業施設向けの寸法指針やユニバーサルデザイン条例

出入口形式別の寸法注意点

  • 片開き戸(通常のドア):開口有効寸法が小さくなりがち。ドアノブなどでさらに狭まる。
  • 両開き戸:有効幅は大きいが、開閉スペースを多く取る必要あり。
  • 引き戸:開閉スペースを取らないが、レールや壁面のスペース確保が前提。
  • 自動ドア(スライド式):最も通行しやすいが、電源やセンサー設置が必要。
  • 荷重式ドア(Newtonドアなど):押すだけで開き、開閉幅も調整できる柔軟性あり。

最低ラインの例

使用目的推奨される出入口幅
一般の出入り750mm〜800mm
車いす対応800mm〜900mm
台車・荷物搬入900mm〜1000mm
ベビーカー850mm以上が望ましい

※ただし、これはあくまで「数字の目安」。次の章では、これをどう「判断」するかを解説します。


誰のための出入口か?「利用者ベース」の寸法思考

要点: 寸法は「使う人の特性」によって必要な幅や高さが変わります。誰の使いやすさを優先するのかを明確にすることが、最適寸法の第一歩です。

手順:利用シーンと利用者を想定する

  1. 主な利用者層の洗い出し
    • 高齢者が多い地域か?
    • 子育て世代の利用が多いか?
    • 観光客や外国人が多いか?
  2. 使用目的の確認
    • 搬入用としても使う出入口か?
    • 一般来客専用か?従業員用も兼ねるか?
  3. 利用シーンの再現
    • 2人がすれ違うことはあるか?
    • ベビーカーとすれ違うことがあるか?
    • 雨天で傘を差している状態でも通行できるか?

ケーススタディ:状況別に必要寸法を考える

シーン必要な出入口幅の目安理由
車いすユーザーが単独で通る最低800mm、推奨850〜900mm自走式車いす+手の可動域を考慮
ベビーカー利用者が入店最低850mm、推奨900mm以上ベビーカーの種類によっては幅が大きく異なる
台車で荷物を搬入する最低900mm、推奨1000mm以上台車+人が通る幅が必要
高齢者が多く手すりも設置する有効幅900mm以上手すりや壁との距離確保が必要

「引き戸・開き戸・自動ドア」…開閉方式で変わる寸法の実際

要点: 実際の開口幅だけでなく、開閉方法により「使える空間の実質」が大きく変わります。

比較表:代表的な開閉方式の特徴

開閉方式必要スペース実効開口寸法操作性メンテナンス主な用途
片開き戸ドアの回転半径分(約800mm〜)有効寸法が狭まりやすい手動一般住宅、小規模店舗
両開き戸大きな回転空間が必要大きく確保可能手動(重くなりがち)大型施設、避難口
引き戸スライド空間が必要(壁面 or 外壁)最大幅確保可能軽いが施錠操作が必要レール清掃など美容室、医療施設など
自動ドア電源・センサー設置が必要広くスムーズ非接触で快適商業施設、オフィスビル
荷重式ドア(Newtonドア)スペース不要(押して開く)自在に調整可能非電動でシンプル小規模店舗、公共施設等

要点解説:

  • 引き戸は省スペースに見えて、実は壁面にドアを収納する「スライドスペース」が必要。
  • 片開き戸は一般的だが、開き角度によっては有効寸法が足りなくなる。
  • 自動ドアは最も快適だが、電源・コスト面の制約あり。
  • 荷重式ドア(Newtonドア)は、操作性・設置性・寸法自由度のバランスが高い。電気不要・押すだけ開閉なので、スペースに制限がある設計に向いている。

現場で後悔しないために必要な「導線設計」とは

要点: 出入口の寸法は、ドア枠の“幅”だけでは不十分。前後のスペース、動線の連続性が「実際の使いやすさ」を決定づけます。

導線とは何か?

建築設計における「導線」とは、人や物がスムーズに移動できるように設計された動きの流れです。店舗では主に以下が関係します:

  • 来客の出入り導線
  • 従業員の作業導線
  • 搬入・搬出の物流導線

出入口寸法を考える際、この「導線の始点・終点」との関係性を見逃すと、せっかくの広いドアも使いにくくなってしまいます。

ケース別:見落とされがちな「導線の死角」

状況問題対応策
ドアは広いが、外に段差や傾斜がある車いす・台車が使えないスロープまたは段差解消が必須
出入口内側にすぐレジや陳列棚がある開閉時に人と物がぶつかる出入口前に“溜まりスペース”を設ける
外側に人がたまりやすい(待ち合わせなど)ドアが開けにくくなる自動ドアや押して開く荷重式ドアで対応
搬入時にドアを開けっぱなしにする必要がある暑さ寒さ、虫害が発生両開きやスライド式+網戸などの工夫

設計時に見るべき「導線寸法」

項目推奨寸法理由
出入口前の待機スペース最低1200mm角1人が出入りし、もう1人が待機できる広さ
出入口から通路までの幅最低900〜1000mmすれ違い・転回が可能な寸法
出入口から什器への距離最低1000mm以上入店時の荷物・ベビーカーとの干渉回避

【適ドア適所】で見る「使いやすさの寸法最適化」

要点: 単なる「寸法の数字」ではなく、「ドアの種類」と「誰がどう使うか」の掛け算でベストを見つける──これが「適ドア適所」の視点です。

適ドア適所とは?

Newtonドアの提唱する「適ドア適所」とは、用途・場所・利用者に応じて最も使いやすいドアを選ぶという考え方です。

寸法もまた、「どのドアを、誰が、どこで使うか」によって、まったく異なる“ちょうどよさ”が存在します。

例:同じ900mm幅でも意味が変わる

  • 自動ドア900mm幅:開閉は自動で広さ十分。車いすも楽に通れる。
  • 開き戸900mm幅:ドアノブや開き角で有効幅が実質700〜750mmに。
  • Newtonドア(荷重式)900mm幅:押すだけで開くため、ベビーカーや台車でもノンストレス。しかも電気不要。

実寸 vs 運用寸法

設計図に描かれるのは「実寸」ですが、現場で問われるのは「運用寸法」。例えば:

  • 壁との干渉で「全開にできない」
  • ドアストッパーで実質の開口が狭まる
  • カーテンやマットで足元に障害がある

これらを設計段階から見越して、「実際にその寸法で、使いやすいか?」を評価する視点が、適ドア適所の根本思想です。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

  • 出入口寸法は、「法令の数値」をスタート地点としつつ、「誰がどう使うか」を軸に決めるのがベスト
  • 単に数値を見るのではなく、「開閉形式」と「導線設計」を含めたトータル設計が必要
  • Newtonドアのような荷重式(押すだけで開く)ドアは、電源不要で運用寸法の柔軟性も高く、省スペースな店舗設計にもフィット
  • 「適ドア適所」の考え方で、寸法もドアの種類も“現場視点”で選ぶことが、後悔しない設計のコツ

【出典一覧】

  • 建築基準法 第35条等
  • バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)
  • Newtonドア公式サイト:https://newton-plus.co.jp
  • 自治体バリアフリー設計指針資料

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