自動ドアは、どこにでもある。でもなぜそこにある?
「自動ドア」と聞いて、あなたはどんな場所を思い浮かべるでしょうか?
多くの人がまず思い浮かべるのは、スーパーやコンビニ、ショッピングモールといった商業施設の出入口かもしれません。
でも、実は自動ドアが使われている場所はそれだけではありません。
医療機関、公共施設、マンションのエントランス、さらには倉庫の搬入口やトイレの個室ドアにまで及びます。
なぜ、そこに自動ドアが使われているのか。
そして、なぜその場所には「そのタイプの自動ドア」が採用されているのか。
──そうした問いに、明確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、「自動ドアが設置されている場所」を整理しながら、
**それぞれの用途で「どのような理由で導入されているのか」「どんな自動ドアが向いているのか」**を丁寧に紐解いていきます。
「なんとなく自動ドアがある」から「なぜこの場所にはこのドアなのか」を説明できるようになる、
そんな本質的な理解が得られる構成になっています。
目次(このページの内容)
そもそも自動ドアって、どんな場所にある?
一言でいうと、「人の手を使わずにスムーズに出入りできることが望ましい場所」には、自動ドアが設置されやすい傾向があります。
ですが、それは単に「便利だから」ではなく、環境ごとの必然性があります。
設置場所の一例(よくある例)
| カテゴリ | 具体的な場所 |
|---|---|
| 商業施設 | スーパー、コンビニ、デパート、飲食店、ショッピングモール |
| 医療・福祉 | 病院、クリニック、介護施設、福祉センター |
| 住宅関連 | 分譲マンションのエントランス、高齢者向け住宅 |
| 公共施設 | 市役所、図書館、体育館、駅構内 |
| 宿泊施設 | ホテルのエントランス、ロビー出入口 |
| トイレ・個室 | バリアフリートイレ、多目的トイレ、介助用個室ドア |
| 物流・作業空間 | 工場の搬入口、倉庫の出入口、バックヤード扉 |
| その他 | 高速道路のサービスエリア、学校の昇降口、銀行のATMコーナー |
「意外と知られていない」設置場所も…
たとえば以下のような場所にも、自動ドアが導入されているケースがあります:
- 個人住宅の玄関(高齢者や介護目的)
- 学校や保育園の保護者出入口
- 寺院や斎場の出入口(バリアフリー化対応)
- 物流センターの冷蔵室ドア(温度保持目的)
これらの場所では、通行のしやすさ、衛生性、安全性、空調管理、バリアフリー性といったニーズが重なり、自動ドアの導入が進んでいます。
手動ドアでは代替できない理由
「自動ドアじゃなくてもいいのでは?」という意見もあります。
たしかに、扉としての役割だけを見れば、手動の引き戸や開き戸でも機能します。
ですが、多くの施設で自動ドアが選ばれている背景には、**”利便性を超えた合理性”**があります:
- 人が多く通る → 手で開ける手間を減らす
- 荷物を持っている → 両手がふさがっていても出入りしたい
- 車いす・ベビーカー利用者がいる → 物理的に押すのが困難
- 感染対策・衛生管理が求められる → 触らずに開閉したい
- エアコン効率を下げたくない → 必要な時だけ開く
つまり「設置される場所には、必ず何かしらの理由がある」ということです。
自動ドアが設置されやすい場所とは?
要点:
自動ドアがよく設置される場所には共通の傾向があります。単に「人が多い」だけでなく、「手を使わずに開けたい理由」や「環境を一定に保ちたい理由」が必ず存在します。
共通する3つのキーワード
自動ドアが導入されやすい場所には、以下の3つの特徴が共通しています。
- 高頻度の出入りがある
例:スーパー、駅、マンションのエントランスなど - 手を使わずに開ける必要がある
例:病院、介護施設、荷物搬入出エリア、トイレなど - 空間の状態を一定に保ちたい
例:冷暖房空調、衛生状態、遮音性、風の侵入など
これらが組み合わさることで、「自動ドアの導入が必須」となる状況が生まれます。
よく設置される場所と、そこに自動ドアがある理由
以下に、自動ドアが導入されやすい代表的な場所を「理由」とともに解説します。
商業施設・店舗
- 目的: 出入りの効率化、空調の保持、清潔感の演出
- 理由: 顧客が多く通行するため、自動化が効率的
- 補足: 冷暖房の逃げを防ぎ、エネルギー効率も向上
医療施設・福祉施設
- 目的: 衛生管理とバリアフリーの両立
- 理由: 車いすやストレッチャー、手を使えない患者に対応
- 補足: 高齢者に配慮した、低速・高感度のセンサー設定が重要
マンション・集合住宅のエントランス
- 目的: 防犯と住民の利便性の両立
- 理由: オートロック連動や、荷物を持ったままの出入りを想定
- 補足: 近年は「鍵を出さなくても開く」スマートキー連携も増加
公共施設(市役所・図書館・駅など)
- 目的: バリアフリーと多様な来訪者への対応
- 理由: 子どもから高齢者まで、さまざまな人が訪れる場所
- 補足: 建築基準法やバリアフリー法による設置義務も影響
ホテル・宿泊施設のエントランス
- 目的: 高級感と快適性の演出
- 理由: 重いスーツケース、雨天での傘使用を想定
- 補足: 風除室との併用や、回転ドア採用なども見られる
表にまとめるとこうなる
| 設置場所カテゴリ | 自動ドアの主目的 | 主な導入理由 | 補足ポイント |
|---|---|---|---|
| 商業施設・店舗 | 通行性と空調効率 | 顧客動線と冷暖房効率 | 演出効果・デザイン性 |
| 医療・福祉施設 | 衛生とバリアフリー | 非接触対応と車いす配慮 | 高感度センサー |
| 住宅(集合住宅) | 防犯と利便性 | オートロック連携 | 管理費とのバランス |
| 公共施設 | バリアフリー | 多様な利用者への配慮 | 法規制も関与 |
| ホテル・宿泊 | 快適性と高級感 | 重い荷物や傘への対応 | 雨天・風対策 |
商業施設・店舗での自動ドア【通行性と空調効率】
要点:
商業施設では「たくさんの人が出入りする」「商品やサービスを見せたい」「冷暖房効率を下げたくない」といった理由から、自動ドアが欠かせません。店舗の第一印象にも関わるため、デザインや開閉スピード、安全性も重要な要素です。
なぜ、商業施設の出入口に自動ドアが多いのか?
スーパー、コンビニ、ドラッグストア、百貨店、ショッピングモール──
こうした商業施設では、人の流れが激しく、出入りの回数が非常に多いのが特徴です。
手動ドアでは、通行者の手間や渋滞が発生しやすく、非効率。
そのため、自動ドアを使って通行をスムーズにし、買い物体験を損なわないようにしているのです。
また、扉の開閉が自動であることで、冷暖房の効率が良くなるという利点もあります。
手動だと閉め忘れによる空調ロスが発生しやすいため、年間を通じてエネルギーコストに差が出ます。
店舗側のメリットと導入理由
利便性:
- 手を使わずに入店できるため、入りやすさが向上
- 両手がふさがった買い物客もスムーズに出入りできる
集客性:
- ドアが勝手に開くことで「ウェルカム感」が生まれる
- ドアを開ける心理的ハードルが下がり、入りやすく感じる
空調効率の改善:
- 閉め忘れによる冷暖房のロスが減る
- エアカーテンとの併用で、虫の侵入防止にもつながる
安全性:
- ガラス面の大きいドアが多く、視認性が高い
- センサー反応の調整で子どもや高齢者にも対応
お店の種類ごとに異なるニーズ
| 店舗種別 | 自動ドアの形態 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| コンビニ | 片引きスライド | 出入りが速く頻繁、センサー感度が要注意 |
| スーパー | 両引きスライド | 大量の出入りに対応、買い物カゴ利用にも配慮 |
| 飲食店 | スライド or 開き戸型 | 入店時の演出を重視、ドア近くに座席があることも |
| 大型モール | 大型スライド or 回転ドア | 内外の気圧・温度差に対応、風除室と併用も |
注意点:店舗用自動ドアの「盲点」
- 風による誤動作:道路沿いやビル風が強い場所では、センサーが反応しやすく誤開閉が起こりがち
- 雨天対策:ドア下部からの吹き上げ、濡れた床での滑りやすさへの対応
- 夜間の防犯性:営業時間外の施錠機構、遮光フィルムなどとの兼ね合い
デザイン面との両立も重要
店舗の第一印象は、ドアまわりのデザインで大きく左右されます。
- ガラス面を広くとって開放感を演出する
- フレームレスでスタイリッシュに見せる
- カラーリングやサイン表示との調和を考える
医療施設・病院での自動ドア【非接触とバリアフリー】
要点:
病院やクリニックなどの医療施設では、「誰もが安全に、清潔に、スムーズに移動できる」ことが求められます。自動ドアは、非接触・バリアフリー・衛生管理の面で不可欠な存在となっています。
なぜ、医療現場で自動ドアが必要とされるのか?
医療施設では、次のような場面で自動ドアの恩恵が大きくなります:
- 両手がふさがっている医療従事者や患者が出入りする
- 車いす、ストレッチャー、ベビーカーの通行がある
- 感染症対策として、ドアに触れない非接触の仕組みが必要
- 高齢者や子どもなど、ドア操作が難しい人が多く利用する
手動ドアでは、これらすべてに応えるのが難しく、
むしろ事故やストレスの原因になることもあります。
医療施設での主な設置場所
| 場所 | 使用される自動ドアの種類 | 理由と特徴 |
|---|---|---|
| 入口(正面・救急) | 両引きスライド、回転ドア | 出入りの頻度が多く、車両からの搬入にも対応 |
| 外来・診察エリア | 両引きスライド、開き戸型(自動) | 非接触・通行スムーズ・混雑緩和 |
| 手術室・無菌室 | 密閉型スライド、自動ドア+エアロック機能 | 衛生・気圧制御が必要 |
| トイレ・介護個室 | 片引きスライド、折戸型 | 車いす・介助者が一緒に入る想定 |
センサー感度・動作速度が命
医療施設では、特に「誤動作の少なさ」「反応の早さ」「速度の調整」が重要です。
- 高齢者がゆっくり歩くとき → センサーが早めに反応してくれる必要がある
- 子どもが急に駆け出したとき → 誤開閉を防ぎ、安全に止まる仕組みが必要
- 松葉杖・補助器具利用者 → センサーの死角がないよう設計
これらを考慮し、センサーの検出範囲や開閉速度の細かい設定ができる機種が選ばれる傾向にあります。
衛生管理と「非接触」の徹底
特にコロナ以降、医療施設では**「触れない」設計**が強く求められています。
- スイッチレスの自動開閉(手をかざす/近づくと開く)
- 抗菌素材の枠・ハンドルの採用(手動併用の場合)
- 自動ドアとアルコールディスペンサーの連動配置
また、密閉性能の高い自動ドアが採用される場面もあり、
手術室などでは「エアタイトドア」と呼ばれる特殊構造のドアも用いられます。
注意点と導入の工夫
- 音の問題:診察室では開閉音が診療の妨げになることがあるため、静音仕様が好まれる
- ドア幅の確保:車いす+介助者が一緒に通れる広さが必要(最低900mm以上)
- 非常時の開放性:停電時や火災時に、手動でもすぐ開く構造にしておく必要
「必要な人に、きちんと届く」ドア設計が大前提
医療現場では、すべての利用者が自分の意思でスムーズに移動できることが基本です。
その実現のために、自動ドアは単なる「便利な設備」ではなく、人の命や安心を守るインフラともいえます。
マンション・住宅エントランス【防犯と住民利便性】
要点:
マンションや集合住宅のエントランスにおいては、「セキュリティ」と「住民の快適な出入り」を両立させることが求められます。自動ドアは、オートロックと連携しながら、住民の負担を減らす設備として活用されています。
なぜ、集合住宅のエントランスに自動ドアがあるのか?
分譲マンションや高齢者向け住宅では、エントランスに自動ドアが設置されていることが当たり前になってきました。
その背景には、以下のようなニーズが挙げられます:
- 両手に荷物を持っているときに出入りを楽にしたい
- ベビーカーや車いすでもスムーズに通過したい
- 共用部のバリアフリー化を図りたい
- 住民以外の侵入を防ぐセキュリティ機能が必要
つまり、「安心」と「便利」の両立がこの空間でのテーマになります。
オートロックと連動した構造が一般的
現在のマンションの多くでは、以下のような自動ドア連動システムが使われています:
- 共用部の自動ドアにオートロックを内蔵
→ インターホンやカードリーダーで解錠 - 住戸ごとにキー認証(ICカード、暗証番号、スマホアプリなど)
→ 住民は鍵を出さずに通過 - センサーが住民か来訪者かを識別
→ 来訪者は呼び出し後に開扉、住民は自動開扉
このように、自動ドアは単体ではなく「建物全体のセキュリティネットワークの一部」として機能しています。
利便性と安全性のバランス
利便性:
- ゴミ出しや宅配の受け取りなど、短時間の出入りもスムーズ
- 荷物を持った状態でも、自動で開くためストレスが少ない
- 高齢者や妊婦、子ども連れの家庭でも安心して出入りできる
安全性:
- 不審者の侵入を防ぐ仕組み(監視カメラ+オートロック)
- 停電や火災時の非常開放対応(パニックオープン機能)
- センサーの死角や誤作動への配慮
高齢者・介護住宅での導入が増加中
最近では、高齢者向け分譲マンションやサービス付き高齢者住宅(サ高住)でも、
自動ドアの採用が進んでいます。理由は明確で、ドア操作が難しい人の生活を支えるためです。
特に以下のような要素が重視されます:
- ドアが自動で開くことで、杖や歩行器でも楽に通行できる
- 開閉速度がゆっくりで、安全に配慮されている
- センサー範囲が広く、通過を検知しやすい
導入時の制約と注意点
- エントランスの広さ・構造制限:ドアの開閉に必要なスペースが確保できるか
- 修繕・メンテナンスコスト:管理組合での合意が必要
- 騒音・プライバシー対策:開閉音や透明ガラスの視線問題への対応
こうした点も含めて、設計段階から「自動ドアありき」で考える必要があります。
住宅でも「適ドア適所」が必要
商業施設や病院ほど人が多くない住宅でも、自動ドアの導入には理由と設計思想が求められます。
「かっこいいから」「最近のマンションはみんなそうだから」ではなく、
その住宅の居住者特性や使用頻度に応じた最適なドアを選ぶことが重要です。
公共施設・オフィス・ホテルなど【デザインと機能性】
要点:
公共性の高い施設や来訪者を迎える空間では、「第一印象」や「利便性」「安全性」を同時に満たすドアが求められます。自動ドアは、機能面だけでなく建築意匠の一部として設計されることが多く、「見た目と中身の両立」が重要です。
なぜ、公共性の高い場所では自動ドアが選ばれるのか?
オフィスビルや役所、ホテル、図書館、ホールなどの出入口は、
単なる「出入り口」ではなく、その施設の顔=印象を決める場所でもあります。
- 多くの人が訪れる=出入りがスムーズであること
- 初めて来る人にも迷わず入れること
- 外観とのデザイン調和を壊さないこと
- 風雨・風圧などの自然条件にも耐えられる構造であること
このような複数の要素を満たすために、自動ドアは「意匠」と「設備」のハイブリッドとして位置づけられています。
公共施設・オフィスビルでの使用例
| 種別 | 使用されるドアの傾向 | 特徴と目的 |
|---|---|---|
| 市役所・図書館・公共ホール | 両引きスライド、回転ドア、折戸など | バリアフリー+多世代対応、安全装置重視 |
| オフィスビル | フルガラス自動スライド、回転ドア | スマートで高級感のある演出、風除室との連動 |
| ホテル | 両引きスライド、円形自動ドア | 上質な体験を提供する演出、荷物対応 |
デザインとの統合性が重視される理由
1. 訪れる人に「安心感」や「高級感」を与える
- 静かに滑らかに開く動作が、品格ある印象を与える
- デザインと一体化することで建物の価値を高める
2. 外から中の様子が見えることで心理的ハードルを下げる
- 開放感を与え、迷わず入れる導線を作る
- ガラス面積の広いドアで視認性と安全性も確保
3. 建築設計との調和
- ファサードデザイン、サイン計画、照明計画と連動した美観重視の選定
- 「ただのドア」ではなく、「建築としての存在感」が求められる
多くの人が訪れる空間だからこその安全性
デザイン性だけでなく、次のような安全対策が必要です:
- パニックオープン機能:火災や停電時でも内側から押すと開く
- センサーの死角ゼロ設計:小さな子どもや視覚障害者にも配慮
- 風圧センサーとの連動:外気が強い時に自動ドアがバタつかない
風除室の併用で機能性アップ
ホテルや役所、オフィスビルでは、**自動ドア+風除室(2重ドア)**の設計がよく使われます。
その目的は:
- 冷暖房の効率化
- 風による誤開閉の防止
- 防音・遮音性の向上
- セキュリティレイヤーの追加
見た目はスマートでも、裏では「きちんと制御されている」──
そんな安心感の演出にも、自動ドアは一役買っているのです。
ホテルでの自動ドア=“おもてなしの第一歩”
ホテルでは、「玄関をくぐる瞬間からおもてなし」が始まります。
自動ドアが滑らかに開くことで、「歓迎されている感覚」を与えると同時に、
荷物やベビーカー、車いす利用者にも優しい設計がなされます。
- 音が静か
- ゆったりと開く
- 開口が広い
- 雨天対応・傘への配慮
こうした細かな気配りが、顧客満足度に直結しています。
特殊な設置場所(工場・搬入口・トイレなど)の注意点
要点:
一般的な出入口だけでなく、工場や倉庫の搬入口、トイレの個室など、「特殊な環境」でも自動ドアは活用されています。こうした場所では、通行のしやすさだけでなく、作業効率・耐久性・安全性といった独自の要件に応える設計が求められます。
なぜ「こんな場所にも」自動ドアがあるのか?
「工場のバックヤード」「冷凍庫の出入口」「多目的トイレ」──
これらは一見、自動ドアの設置が意外に思える場所かもしれません。
しかし、共通するのは以下のようなニーズです:
- 両手がふさがっている状態での移動(荷物・台車など)
- 清潔状態の維持(食品工場、病院)
- バリアフリー対応(介助者が付き添うトイレなど)
- 大きな物体や器具の出入りが頻繁
- 手動だと誤操作・事故が起こりやすい環境
つまり、人が「作業」や「介助」という目的で動く空間では、自動化が大きな助けになるのです。
工場・搬入口・倉庫での注意点
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 耐久性 | 台車・フォークリフトの通行に耐える強度が必要 |
| 開口幅 | 通過物のサイズに応じた幅の確保(2,000mm超も多い) |
| 開閉スピード | 作業効率に直結するため、開閉時間を短く設定 |
| 安全機能 | 人との接触防止センサー、誤作動防止の二重制御 |
| 環境対応 | 防塵・防湿・防寒などの仕様が必要なケースも |
特に食品工場や精密部品工場では、「気密性」や「衛生性」も求められます。
そのため、ドアが閉まった後に自動で気密ロックされるタイプなども導入されています。
冷蔵・冷凍庫、恒温室など特殊環境での対応
- 自動で短時間のみ開閉し、冷気や熱気を逃がさない構造
- 結露対策として、ガラス部分に電熱線を入れるケースも
- ドア本体に断熱材を使用し、開閉回数を自動制御するシステムあり
多目的トイレ・福祉トイレでの導入例
必要とされる理由:
- 車いす+介助者が同時に入れる広さがある
- ドアを手動で開けるのが困難な人が使う
- 清潔さとプライバシーの確保が求められる
注意すべき点:
- 開閉に時間がかかりすぎないこと(不安やストレスになる)
- 閉まる途中に反応してしまうと危険(再開閉機能が必要)
- 外からも緊急開放できる構造になっているか
実際に使われるドアタイプの例
| 用途 | 主な自動ドアタイプ | 特徴 |
|---|---|---|
| 工場の搬入出エリア | 大型スライド、重量引き戸 | 耐久性重視、耐風設計 |
| 冷蔵庫・冷凍庫出入口 | 密閉型スライド | 結露・断熱対策、短時間開閉 |
| 多目的トイレ | 折戸型スライド、小型自動ドア | 省スペース、バリアフリー |
「特殊だからこそ」自動化の恩恵が大きい
このような場所では、むしろ自動ドアでなければ実現できない安全性や効率性が存在します。
- 手動では物理的に扱いづらい大きなドア
- 使用者の身体的特性に合わせたスピードや開口
- 衛生・環境面での規制対応
こうした要件を満たすには、機種選定時に「使用環境」をしっかり伝えることが極めて重要です。
【まとめ】場所ごとの最適なドア選びと「適ドア適所」の考え方
要点:
自動ドアは、ただ「便利だから設置されている」わけではありません。それぞれの設置場所には、それぞれの合理的な理由があります。重要なのは、「どこに、なぜ、どんな自動ドアを使うべきか」という視点を持つこと。そして、それが「適ドア適所」という考え方の出発点になります。
なぜ「その場所にそのドア」なのかを言語化できるか
今回紹介したように、自動ドアは設置される場所によって求められる要件が大きく異なります。
| 場所 | 重視される要素 |
|---|---|
| 商業施設 | 通行の多さ、空調効率、見た目 |
| 医療施設 | 衛生、バリアフリー、非接触 |
| マンション | セキュリティ、利便性 |
| 公共施設 | バリアフリー、印象、法令対応 |
| 工場・搬入口 | 作業効率、耐久性、安全性 |
| トイレ・福祉設備 | 介助、プライバシー、安心感 |
これらの違いを理解しないまま、単に「見た目」や「価格」だけでドアを選んでしまうと、
あとから「開かない」「誤作動する」「使いにくい」などのトラブルにつながります。
よくある「選定ミス」にはこんなものが…
- 風の強い場所にセンサー式を入れて、風で誤開閉が頻発
- トイレに設置した自動ドアが開閉速度が速すぎて怖がられる
- 工場の搬入口に軽量のドアを選んで、破損や変形が発生
- 自動ドアにしたのに、車いすが通れない幅だった
すべて、「場所に合ったドアが選ばれていない」ことが原因です。
「適ドア適所」──ドアの選び方を再定義する
Newtonドアでは、こうした状況を変えるために「適ドア適所」という考え方を提唱しています。
それは、
- ドアの選定は「建物の格に合わせるもの」でもなく、
- 「見た目を良くするためのもの」でもなく、
- 「その場所に求められる機能と人の動線に応じて選ぶべきもの」だという考え方です。
たとえば、
- 電気を使わず、歩行動作で開く「荷重式」のドアが向いている場所もある
- 車いすの方でも安心して通れる「ゆっくり開く」ドアが求められる場面もある
- 一見すると同じスライド式でも、環境や人の動きで選ぶべきタイプはまったく異なる
このように、ドアは「どこでも同じもの」であってはならないのです。
本質を見極める視点が「信頼される提案」につながる
建築・設計・設備の現場では、「なぜこのドアを選んだのか?」という説明責任が求められることが増えています。
その時に、「場所ごとの特性」「人の動き」「制約条件」を理解したうえで提案ができるかどうかが、
プロとしての信頼につながるポイントになります。
そして、そうした視点の集大成が「適ドア適所」という考え方です。
参考リンク
以下は、より詳しく学びたい方のための関連資料です: