自動ドアといえば、電動式でスライドするガラス扉を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、自動ドアにはさまざまな種類があり、「どこに設置するか」によって、その選び方や適性は大きく異なります。

本記事では、自動ドアを検討しているすべての方に向けて、「設置場所に応じた最適な選び方」をわかりやすく解説します。
単なる製品紹介ではなく、「どう判断すればよいのか?」という視点から、場所別・条件別・方式別に最適な選定軸を提供します。


目次(このページの内容)

自動ドアは「どこにでも同じもの」でいいの?

結論から言えば、「どの場所にも同じ自動ドアでいい」わけではありません。


要点:

  • 自動ドアは、設置する「場所」によって、必要な性能や機能が異なる
  • 誤った選択は、利便性だけでなく、安全性やコストにも影響を及ぼす
  • 「とりあえずスライド式」ではなく、「適ドア適所」の視点が重要

背景と詳細:

多くの施設で、自動ドアは来訪者の第一接点となる「入り口」です。
ここでスムーズな出入りができるかどうかは、施設の印象や安全性に直結します。

ところが、自動ドアを導入する際、機器の価格や見た目だけで選んでしまう例も少なくありません。
結果として、「うちの施設には向いていなかった…」「工事が思った以上に大掛かりで困った」などの声が、現場ではしばしば聞かれます。


なぜ「場所に合ったドア」が重要なのか?

場所によって求められる条件はまったく違います。以下は一例です:

設置場所求められる機能や条件
病院衛生性・静音性・高頻度の出入り対応
高齢者施設バリアフリー・停電時の安全性
商業施設多人数対応・見栄え・セキュリティ
倉庫・工場大型出入口対応・耐久性・防塵性
公共施設(役所)誰でも使いやすい構造・緊急時の解放性
マンションデザイン・プライバシー・非常時の動作

このように、設置場所の性質や来訪者の属性、さらには建物の構造によって「最適なドア」はまったく異なります。
この違いを見落としたまま導入すると、後々のトラブルや追加コストにつながることも。


「自動ドア=電動スライド式」の思い込みが落とし穴に

多くの人が、自動ドアと聞いてまず思い浮かべるのは、いわゆる「電動スライド式」です。
確かに、駅やショッピングモールで見かける典型的な形式ですが、これはあくまで一部に過ぎません。

実際には以下のように、さまざまな形式が存在します。

  • スライド式(引き戸)
  • 開き戸式(片開き・両開き)
  • 回転式
  • 荷重式(人の荷重で開くタイプ)

それぞれに「向いている場所」と「不向きな場所」があり、選定を誤ると使い勝手の悪さやトラブルに直結します。


自動ドア選びの新常識:「適ドア適所」

従来は「スライド式がスタンダード」とされてきましたが、近年ではより多様な方式が見直されています。

とくに注目されているのが、「場所に応じた最適なドアを選ぶ」という「適ドア適所」という考え方です。
これは、見た目や価格だけでなく、「電源の有無」「設置の自由度」「緊急時の対応力」など、設置環境全体をふまえて選ぶことを意味します。


【設置場所別】主要な施設ごとの自動ドアの適性

どんな場所に、どんな自動ドアが向いているのか?
その答えは、「利用者の属性」「設置環境」「安全性の要件」によって変わります。
ここでは主要な5つの施設種別を取り上げ、それぞれに適した自動ドアのタイプを整理していきます。


商業施設:多人数・回遊動線に対応するスライド式が主流

【要点】

  • 出入りが激しく、利用者層が幅広いため、開閉のスムーズさが最優先
  • ガラス製で視認性が高く、印象も重視される

【詳細】
ショッピングモール、コンビニ、スーパーなどの商業施設では、「一度に多くの人が出入りする」ことが前提となるため、スライド式(自動引き戸)が圧倒的に多く採用されています。
自動で素早く開閉し、視認性の高いガラス戸で中が見えることで、入店しやすい心理も生まれます。

ただし、大規模施設では「人感センサーの誤動作」や「開閉時間の最適化」が重要になるため、適切な設定と定期点検も不可欠です。


医療・福祉施設:衛生性・安全性とバリアフリーの両立が鍵

【要点】

  • 清潔性の観点から「接触を極力避ける」設計が求められる
  • 車椅子・ストレッチャーの通行が前提
  • 非常時の避難経路としても機能することが重要

【詳細】
病院やクリニックでは、感染症対策や清潔維持のために「完全非接触」のスライド式が基本。
また、介護施設や福祉施設では、開き戸タイプでも「自動開閉化」が進んでいます。

ここで見逃せないのが、「停電や災害時」における自動ドアの動作です。
特に電動式のみで稼働するタイプでは、電源喪失時に扉が開かずトラブルとなるケースも。

その点、荷重式のような「電源不要・自力で開ける構造」は、非常口やサブ出入口などにおいて有効な選択肢になります。


マンション・集合住宅:セキュリティと住民ニーズの両立

【要点】

  • デザイン性とプライバシー性が重視される
  • 防犯・認証システムとの連動が求められる
  • 停電時の手動開閉も想定される

【詳細】
マンションのエントランスは、住民にとって日常的な導線でありつつ、外部からの不審者侵入を防ぐ「セキュリティゲート」の役割も担います。
このため、オートロック連動や顔認証・ICカード対応など、電子認証と連動可能な電動スライド式が採用されるケースが主流です。

一方で、裏口や管理人室側などのサブ出入口では、「電源不要で確実に開くこと」が重視され、荷重式や手動切替式の需要もあります。


公共施設(役所・図書館・ホール等):誰でも使いやすい構造が必須

【要点】

  • 高齢者や障がい者も使う前提で、バリアフリー対応が絶対条件
  • 一時的な混雑への対応力が求められる
  • 建築基準法やバリアフリー法の要件を満たす必要あり

【詳細】
自治体の庁舎や図書館、文化ホールなどの公共施設では、ユニバーサルデザインの原則が強く求められます。
扉の重さや速度、反応センサーの位置までが「誰にでも優しい」設計でなければなりません。

バリアフリー法の規定により、一定規模以上の施設には「自動ドア等による出入口の開放」が義務化されているケースもあり、設計段階から検討が必要です。


工場・倉庫・バックヤード:耐久性・自由度が求められる現場仕様

【要点】

  • 通行頻度は少なくとも、大型搬入が可能である必要がある
  • 汚れ・ホコリへの耐性、簡易メンテナンス性も重要
  • 自由度の高い「機械レスな開閉構造」が有効

【詳細】
荷物搬入が主目的となる出入口では、開口幅の広さや障害物の少なさが重視されます。
ここで活躍するのが「荷重式」のように、電気工事なしで後付けできるドア方式です。

特に、フォークリフトの出入りや台車通行などがある現場では、「両手がふさがっていても開けられる」「踏むだけで開く」ような構造が非常に有用です。


【条件別】電源の有無・設置環境から見る自動ドアの選び方

自動ドアの選定では、「どんな場所に設置するか」だけでなく、「どのような条件で使われるか」も極めて重要です。
ここでは、特に見落とされがちな「電源の有無」「工事の自由度」「災害・停電時の安全性」といった条件面に焦点を当て、自動ドア選びの視点を深掘りします。


電源が確保できない場所に最適なタイプとは?

【問い】停電しても使える、電源がとれない場所に使える自動ドアはある?
【答え】あります。電気を使わない「荷重式自動ドア」はその代表です。

【詳細】
電源が確保しにくい場所――例えば、古い建物の通用口や、屋外に近い勝手口、仮設の出入口などでは、電動モーターを動かすためのコンセントや配線が引けないという問題があります。
そういった場面で、完全に電気を使わず「人が乗る荷重」でドアが開く構造を持つ「荷重式自動ドア(Newtonドアなど)」は、非常に理にかなった選択肢です。

加えて、これらのドアは停電時にも「確実に」開閉できるという点で、防災・BCP(事業継続計画)の観点でも優れています。


大掛かりな工事ができない場所は?

【問い】壁に配線工事ができない場合でも、自動ドアは設置できる?
【答え】できます。後付け可能な構造の自動ドアもあります。

【詳細】
例えば、マンションの共用部、文化財建築など、壁を壊したり掘削したりするような大規模工事ができない場所では、「電動式」の導入に高いハードルがあります。
しかし、荷重式や一部の簡易電動モデルであれば、「枠だけで自立する」「壁を傷つけずに設置できる」といった特徴を持っており、施工の自由度が非常に高いのです。

こうした製品は、「短期的に設置したい」「使い勝手を試したい」といったニーズにも対応できます。


停電時の動作や災害対応も考慮すべき場所は?

【問い】災害時、自動ドアはちゃんと開くの?
【答え】機種によります。手動切替機能や、電源不要型を検討すべきです。

【詳細】
一般的な電動式自動ドアは、停電時には「自動開閉が停止」し、ドア自体が手動でしか動かなくなります。
一部では「緊急時に全開保持」する設定や、「UPS(非常用電源)」を備えた機種もありますが、それでも完全に安心とは言い切れません。

その点、「電源を必要としない構造」を持つ荷重式は、災害や停電時にも動作の信頼性が高いことで知られています。
このような理由から、災害対策・避難導線としての機能を求められる場所では、荷重式を含む構造の選定が重要となります。


「スライド式?開き戸?荷重式?」方式別の特徴と適所

自動ドアには、大きく分けて3つの主要方式があります。
それぞれの方式には「得意な環境」と「苦手な環境」があり、単に価格や見た目で選ぶと、後々の不満につながることもあります。

この章では、それぞれの自動ドア方式の特徴を整理しながら、適した設置場所と避けた方がよいケースを解説します。


スライド式(引き戸)自動ドア

【基本特徴】

  • 横方向にスライドして開閉する自動ドアの最も一般的な形式
  • 電動モーターとセンサーによって開閉制御される

【向いている場所】

  • 商業施設、病院、公共施設、駅など、利用者が多く頻繁に出入りする場所
  • 出入口に十分な横スペースがある場合

【強み】

  • 出入りの流れを妨げにくい(回転動作がない)
  • 接触がなく清潔性が高い
  • ガラス素材で視認性が良く、開放感を与える

【注意点】

  • 停電時は自動開閉が止まるため、手動切替機構が必要
  • 電源・センサーの設置が前提なので、工事が必要
  • 出入口の横幅確保が難しい場所には不向き

開き戸式(スイング式)自動ドア

【基本特徴】

  • 片開きまたは両開きの回転式構造に、自動開閉ユニットを組み合わせたもの
  • モーターによる回転制御で開閉される

【向いている場所】

  • 医療・福祉施設、集合住宅、狭い通路がある建物

【強み】

  • 狭い間口でも設置可能
  • 一般的なドア構造を活かせるため、レトロフィット(後付け)が容易
  • 防音・断熱性に優れるケースもある

【注意点】

  • 扉の回転スペースが必要なため、扉前後に十分な空間が必要
  • 開閉中に人と接触するリスクがあるため、センサーの精度が重要

荷重式(人の体重で開く)自動ドア

【基本特徴】

  • 床に設置されたステッププレートに人が乗ることでドアが開く構造
  • 完全に機械レス、電源不要で稼働する

【向いている場所】

  • 工場、倉庫、公共施設のサブ出入口、非常口
  • 電源がない・配線工事ができない場所
  • 停電時にも確実に開けたい場所

【強み】

  • 電源不要(停電時も稼働)
  • 壁や構造物を傷つけずに後付けできる
  • 両手がふさがっていても使える、ハンズフリー構造
  • 極めてシンプルな機構で、メンテナンス負荷が少ない

【注意点】

  • 体重によって開く構造のため、高齢者や小柄な方への配慮が必要な場合も
  • 設置には一定の床スペースが必要

方式別のマッチング早見表

設置場所/方式スライド式開き戸式荷重式
商業施設×
病院・福祉△(場所により有効)
マンション◎(エントランス)△(サブ出入口)◎(裏口等)
公共施設◎(非常口等)
工場・倉庫

【早見表】設置場所ごとに最適な自動ドアのタイプは?

ここでは、これまで解説してきた内容を整理し、「どの施設に、どの方式の自動ドアが最適か」をまとめた一覧表を提示します。
選定の際には、目的・環境・条件を踏まえて、この表を“逆引き辞典”として活用してください。


◎判断基準として使える早見表

設置場所主な要件推奨タイプ備考
商業施設(モール、店舗)多人数出入り、視認性、安全性スライド式電動必須、ガラス製が主流
医療施設(病院、クリニック)非接触、清潔、ストレッチャー対応スライド式または開き戸式安全センサー必須
福祉施設(介護・支援)バリアフリー、停電対応、安全開き戸式+手動切替 or 荷重式停電対策重視なら荷重式も有効
マンション(集合住宅)デザイン、認証連動、非常時対応スライド式(エントランス)/荷重式(裏口)認証連動タイプと手動併用推奨
公共施設(役所・図書館)ユニバーサル対応、広範な利用者層スライド式 or 開き戸式非常口側に荷重式併用も
工場・倉庫大型出入り、手がふさがっている、工事制限荷重式機械レスで後付け設置に適す

【使い方ガイド】

  • 「◎:最も推奨」「〇:状況により有効」「△:場所次第で適用可能」「×:非推奨または困難」
  • 上記は「基本傾向」に基づいたものであり、実際の現場環境・利用者層に応じた調整が必要です

「適ドア適所」で考える、自動ドアの本当の選び方

ここまで、自動ドアの「場所別」「条件別」「方式別」の選び方を見てきました。
最後にお伝えしたいのは、これらを単なる知識としてではなく、判断軸として活かすための思考法です。
それが、「適ドア適所(てきドアてきしょ)」という考え方です。


「適ドア適所」とは?

単純に「この場所にはこれ」というテンプレートではなく、

  • どんな目的で
  • 誰が使い
  • どんな制約や背景条件があり
  • どういう非常時を想定しているか

までを含めて、自動ドアの「合っている/合っていない」を考える、総合的な視点です。


判断軸の整理:この4つで選ぶ

  1. 利用者の特性(誰が使うか)
    例:高齢者・子ども・車椅子・スタッフなど
    → スピード?安全?ハンズフリー?
  2. 設置環境の制約(どこに設置するか)
    例:屋内外、電源の有無、工事可否、建築物の性質
    → 荷重式や簡易設置式が適するかも?
  3. 運用面の要件(どう使うか)
    例:開閉頻度、セキュリティ連動、緊急時対応
    → 開き戸・スライド・UPS対応などを検討
  4. コストバランス(何を重視するか)
    例:初期費用?メンテナンス?電気代?
    → 「省エネかつメンテ不要」は荷重式が得意

誤解されがちな「価格だけの比較」からの脱却

自動ドア選びでありがちなミスは、「価格だけ」で比較してしまうことです。
しかし、初期費用が安くても、電気代や修理費、トラブル対応コストを含めると、
「場所に合っていないドア」を選んでしまうことでかえって高くつくことがあります。

「適ドア適所」の考え方は、こうした短期的な価格ではなく、
長期的な安全性・快適性・コストのバランスで選ぶことを大切にします。


判断に迷ったら、「違和感が少ない方」を選ぶ

最後に、自動ドアの選定でどうしても迷ったときに使えるシンプルな基準をご紹介します。

「使っている人が違和感を覚えず、自然に通れること」

これは、デザインでも機能でも重要な基準です。
機能が高くても、開くタイミングが遅い・扉が重い・入りにくい…となっては意味がありません。
誰もが自然に使えているか。その感覚こそが「合っている証拠」です。


次に、全体のポイントを「適ドア適所」の視点でまとめます。

【適ドア適所】にそった「まとめ」

  • すべての自動ドアが、どこにでも合うわけではない
     → 設置場所や目的、利用者によって適した方式は異なる
  • 電源の有無、施工条件、災害対応などの「環境要因」を見落とさない
     → 荷重式のような機械レス構造は「条件で選ぶ」最良の例
  • 「価格」ではなく「違和感のなさ」で選ぶ
     → 利用者の自然な通行を妨げないことが何より重要
  • 「適ドア適所」という判断軸で選ぶことで、長期的な満足度が高まる
     → 初期費用だけでなく、安全性・運用性・緊急時の安心感も含めて検討を

出典表示(参考資料):

  • 自社資料:『Newtonドア.txt』『NドアFAQ.txt』『Nドア顧客セグメントと導入事例.txt』
  • 各種公開資料:ナブコ社HP、オートドア工業会公開データ、建築基準法・バリアフリー法ガイドライン(国交省)

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