自動ドアと聞くと、「勝手に開く扉」とだけ思われがちですが、実はその「表示=ピクトグラム」も重要な安全装置のひとつです。特に、近年のバリアフリーやユニバーサルデザインの観点では、誰もが迷わず安全に使えるようにするための「案内表示」として、自動ドアのピクトグラムは施設設計の中でも見落とせない存在になっています。

この記事では、「そもそもなぜ必要なの?」「どんな表示があるの?」「義務なの?」といった疑問に、徹底的かつ体系的にお答えしていきます。施設管理や設計の現場で「正しく表示したい」と考えているあなたのために、JIS規格や表示義務、設置の判断軸までまるごと解説します。


目次(このページの内容)

なぜ自動ドアにピクトグラムが必要なのか?【事故・案内・非常時への備え】

Q:自動ドアにピクトグラムは本当に必要?
A:安全性・案内性・非常時対応の観点から、ピクトグラムの設置は「推奨」ではなく、もはや「実務上の必須」と言える状況です。


根拠:実際に起きた混乱や事故

たとえば、視覚に障害をもつ高齢者が自動ドアの存在に気づかず衝突する事故。あるいは、非常時に「どこから避難すべきか」分からず混乱が起きたケース。これらは、「そこにドアがある」と分かる視覚的な情報が不足していたために起こったものです。

ピクトグラムは、こうした「見た目だけではわからない不安」を補い、安全性を高める手段です。


案内の視点:外国人や子どもにも伝わる共通言語

言葉がわからない来館者や、施設に慣れていない子どもにとって、文字情報だけでは案内になりません。ピクトグラムは「視覚的共通言語」として、どんな人にも「ここが入口だ」「ここは自動で開く扉だ」と直感的に伝える役割を果たします。


非常時の視点:電源が落ちても役立つ案内表示

停電時、自動ドアの動作が一時的に止まる場合もあります。しかし、ピクトグラムがあれば「ここにドアがある」「このドアは開けられる」という情報が残り、避難や誘導に活用できます。

これは、**電気に頼らない荷重式自動ドア(Newtonドア)**が「停電でも使える」ことと同じ発想で、視覚表示も「電気に依存しない安心材料」となりうるのです。


要点まとめ:

  • ピクトグラムは「見えない危険」を伝える視覚的な保険
  • 高齢者・子ども・外国人・障害者など全方位の安全確保
  • 非常時・停電時にも「動かないドアの案内」として有効

自動ドアに使われるピクトグラムとは?【種類・意味を一挙に整理】

Q:どんなピクトグラムが使われている?意味は?
A:基本的には「開閉の方向」「自動か手動か」「注意喚起」などを示すデザインで、JIS規格などに準拠した図記号が存在します。


手順:まず「分類」を理解する

ピクトグラムは用途によっていくつかのタイプに分類されます。以下のように機能別に整理することで、どの施設にどの表示が必要か判断しやすくなります。

  1. 案内型ピクトグラム
    • 例:「自動ドア入口」「プッシュで開くドア」
    • 目的:動線の誘導、迷子防止
  2. 動作表示型ピクトグラム
    • 例:「引き戸」「スライド式」「開き戸」
    • 目的:動作の予測、接触事故の防止
  3. 注意喚起型ピクトグラム
    • 例:「挟まれ注意」「開閉注意」
    • 目的:怪我や事故の予防

使用例:施設ごとの表示パターン

施設タイプよく使われるピクトグラム補足
公共施設自動ドア入口、開閉方向多言語対応の補足表示もあり
マンション自動ドア+注意喚起高齢者・子どもを意識した設計
医療施設スライド式、自動扉松葉杖・車椅子ユーザーの導線確保
商業施設出入口、押しボタン混雑時の接触事故防止

図解:JIS対応ピクトグラムの代表例

(※ここに「JIS Z8210」や「ISO 7001」対応の一般的な自動ドアピクトグラム画像を挿入すると効果的。例:「ドアが自動で開く」矢印付きのドアマークなど)


誤用されやすいピクトグラム

・海外のピクトグラムをそのまま使用(JIS非準拠)
・非常口のマークを入口表示と誤認させる配置
・旧デザインのまま使用し、視認性が低いもの


要点まとめ:

  • ピクトグラムには「案内・動作・注意」の3カテゴリがある
  • 施設や利用者特性に合わせて適切に選定することが重要
  • 表示ミスや旧デザインは、安全上のリスクとなる

自動ドアのピクトグラムとJIS規格【S0021とZ8210の関係】

Q:ピクトグラムにはJIS規格って関係あるの?
A:はい。自動ドアのピクトグラムには、主に「JIS S 0021」や「JIS Z 8210」などの規格が関連しています。これに準拠することで、安全性と視認性が確保されます。


JIS Z 8210とは?(図記号の基本ルール)

この規格は、**「安全・案内に用いる図記号の設計と使用方法」**を定めたものです。対象は非常口・案内標識・注意標識など広範にわたりますが、自動ドアの表示もその一部です。

  • 図形の線の太さや比率、配色、背景とのコントラストまで規定
  • 世界標準(ISO 7001)との整合性も考慮

JIS S 0021とは?(高齢者・障害者配慮設計)

こちらは「高齢者・障害者配慮設計指針」に関する規格で、バリアフリー建築などに密接に関わります。自動ドアの操作部や開閉表示に関して、誰にでも分かりやすいピクトグラムや案内方法を求めています。

  • 文字情報だけでなく、図による視覚的案内が必須とされる
  • 「手動で開ける」「押しボタン式」など、動作が直感的に分かる表示が推奨

よくある誤解と注意点

誤解①:「JISに沿っていればどれでもいい」→ ×
→ 実際には「施設の目的・利用者」に合わせて「どのJISを参照すべきか」が変わります。

誤解②:「JIS=義務」→ △
→ 法的義務ではないが、行政指針や補助金の条件などで「準拠が推奨されるケース」が多いです。


実務での対応例

  • 介護施設 → JIS S 0021+Z8210の組合せで「視覚+行動誘導」を両立
  • 駅施設 → JIS Z8210の「案内標識」規定をメインに設計
  • 災害避難所 → ピクトグラム+多言語表記を併用

要点まとめ:

  • JIS Z 8210は「案内・安全標識」の基本ルール
  • JIS S 0021は「ユニバーサルデザイン」的視点の設計指針
  • 利用者・設置環境によって「参照すべきJIS」は変わる

表示義務はある?【法律・制度・補助金との関係】

Q:自動ドアのピクトグラムって“表示しなきゃいけない”の?
A:法的に「絶対に義務」というわけではありませんが、行政の指針や助成制度と連動して「実質的に必要」とされるケースが非常に多くあります。


法的義務ではないが、指針・ガイドラインで強く推奨

現在、自動ドアのピクトグラムに関する明確な表示義務を定めた法律は存在しません。ただし、下記のような制度やガイドラインで強く推奨されています。

  • バリアフリー法(高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)
     → 公共交通機関や大規模建築物において「視認性の高い案内」が必要とされる
  • 各自治体のバリアフリー条例や建築指針
     → 「JISに準拠したピクトグラムの使用」が基準化されている場合も
  • 災害時対応指針(避難所設計など)
     → 視覚障がい者や外国人対応として、ピクトグラム表示を明示

補助金・助成制度との関係

施設によっては、以下のような制度でピクトグラムの表示が「条件」とされることがあります。

制度名関連要件
バリアフリー改修補助金案内表示の整備が条件になる場合あり
福祉施設の設備改善補助高齢者配慮のピクトグラムが評価項目に
地域防災計画の助成多言語・図記号の表示が要件になることも

裁判例・事故報道に見る「設置しておくべき理由」

  • 事故やトラブル後に「なぜ表示がなかったのか?」と責任追及されたケースがある
  • 裁判では「設置していれば避けられた事故」として過失認定される例も
  • 現場での安全管理責任として、ピクトグラムは「リスク管理上の必要表示」と位置づけられる

要点まとめ:

  • 表示義務は法律で明文化されていないが、制度上の実質的な義務が存在
  • 補助金や設計指針とセットで求められるケースが多数
  • リスク管理・事故防止の観点からも「設置が望ましい」ではなく「設置すべき」

ピクトグラムはどこに設置すればいい?【実務での判断基準】

Q:どこに、どんなピクトグラムを貼ればいいの?
A:利用者の動線と視点に合わせて、「どの瞬間に、何を伝える必要があるか」で判断することが大切です。


手順:実務での判断ステップ

  1. 設置目的の明確化
     → 「この表示で何を伝えたいか?」(自動か手動か/開閉方向/危険回避など)
  2. 利用者特性の把握
     → 高齢者、外国人、障害者、子どもなど、誰に何を伝えたいかを明確に
  3. 表示タイミングの整理
     → 「施設に入る瞬間」「操作を促す場面」「注意が必要な場面」など、時系列で情報を分けて整理
  4. 設置位置の選定
     → 目線の高さ(1.4m前後)、照明条件、他の標識との干渉をチェック
     → ガラス面や背景と重ならないよう、視認性を重視
  5. 表示内容の選定と統一
     → ピクトグラムと併記する文字情報、言語(多言語対応)も確認
     → 他の施設表示とデザイントーンを合わせると混乱を防止

現場での工夫例

  • マンションエントランス: 住人の高齢化に合わせて「自動ドア+注意喚起」の組合せ
  • 病院: 入口と出口を明確に分け、「自動扉の方向表示+使用中表示」を併用
  • 自治体施設: 子どもが多く集まる場所に「図形+カラー表示」で直感的に伝える

注意点:設置しても「見えていなければ無意味」

  • ピクトグラムが小さすぎる/位置が低すぎる/照明で反射して見えない
    → このような表示ミスは、設置しないより危険になることもあります。

要点まとめ:

  • 判断基準は「誰に・何を・いつ伝えるか」の3軸
  • 利用者目線の視認性・タイミングを重視する
  • 表示は「意味が伝わること」がゴールであり、設置だけで満足しない

ピクトグラムを貼るときのチェックリスト【更新・混同防止のポイント】

Q:どんなミスが多い?どうすれば安全な表示になる?
A:誤った位置・旧デザイン・混同する表示が多く見られます。定期的なチェックと更新が必要です。


チェックポイント①:表示の鮮明さ

  • 汚れや色あせはないか?
  • 印刷がにじんでいないか?
  • 周囲とコントラストが保たれているか?

→ 視認性の劣化は「設置していない」のと同じです


チェックポイント②:デザインの妥当性

  • JIS規格に準拠した最新デザインか?
  • 自施設に必要な案内がすべてカバーされているか?

→ 特に旧デザインは「意味が通じない」「誤認される」原因になります


チェックポイント③:混同しやすい他の表示

混同対象誤解の例防止策
非常口ピクトグラム出口と誤認されてしまう動線と色の差異を設ける
手動ドアとの誤認「押して開くのか?自動か?」が不明自動ドア専用の表示を併記
補助機能の表示押しボタン式の案内が不十分押しボタンマーク+説明をセットに

チェックポイント④:案内文との整合性

  • ピクトグラムと併記する文字が、実際の操作と合っているか?
  • 言語対応(多言語併記)は適切か?不要な言語で混乱を招いていないか?

更新タイミングの目安

タイミング理由
設備の更新時新たな動作仕様に合わせる必要あり
利用者層の変化高齢者や子どもの増加で案内が必要になることも
補助金や制度申請時JIS準拠が条件となる場合があるため見直しを推奨

要点まとめ:

  • ピクトグラムは「貼ったら終わり」ではなく「見えるか・伝わるか」が重要
  • 定期的にチェックし、「今の施設・利用者」に合っているかを再評価すべき
  • 混同しやすい表示との区別、案内文との整合も必須ポイント

【適ドア適所】にそった「まとめ」【停電時の案内力としての役割も】

Q:結局、どういう基準でピクトグラムを選べばいいの?
A:施設の目的、利用者の特性、そして非常時の対応力まで含めた「総合的な視点」で判断することが鍵です。


適ドア適所の考え方から見たピクトグラムの役割

私たちが提唱する「適ドア適所」とは、その施設の目的や使われ方に応じて“最もふさわしいドアと案内手段”を選ぶべきだという思想です。

ピクトグラムもまさにこの考え方に基づいて活用すべきツールです。


たとえば…

  • 災害時に電源が切れる可能性のある施設(避難所など)
     → 自動ドア自体が電気に依存しないタイプ(Newtonドアなど)+「ここは開けられます」の視覚案内が必要
  • 外国人観光客の多い施設
     → 国際標準に準拠したピクトグラム(JIS Z 8210ベース)+多言語補足
  • 高齢者施設や病院
     → 「どう開くか」「どう操作するか」を明確に伝える動作案内型ピクトグラムが必須

ピクトグラムは「案内装置」であり「安全装置」

電動で動く装置としての自動ドアに加えて、ピクトグラムという「静的な視覚情報」が加わることで、はじめて**「本当に安全な入口」**になります。

つまり、**「電気で動くドア」+「電気がなくても伝わる案内」**という組み合わせが、今後の施設設計において重要なスタンダードです。


専門情報と連携して理解を深めるために

本記事で紹介したような「JIS規格との関係」「設置判断」「誤表示の防止策」などは、現場での判断材料として非常に重要です。さらに実践的な情報や事例が必要な方は、以下の記事や資料も参考になります。

▶ 関連記事:

  • [Newtonドアとは?荷重式自動ドアのしくみと特徴]
  • [バリアフリー設計における「案内表示」の最適解]
  • [停電時に安心なドアとは?災害対応設計ガイド]

よくある質問(FAQ)


Q1:自動ドアのピクトグラムに表示義務はあるのですか?
A:法律上の義務はありませんが、行政の設計指針や補助金条件で「実質的に必要」とされる場合があります。


Q2:JIS規格ではどのようなピクトグラムが定義されていますか?
A:「JIS Z 8210」が案内表示の図記号の基本ルールを、「JIS S 0021」が高齢者・障害者に配慮した設計基準を定めています。


Q3:自動ドアと非常口のピクトグラムは一緒に使ってもいい?
A:混同を避けるため、用途ごとに色や配置を変えるのが原則です。非常口とは明確に区別しましょう。


Q4:どこに貼るのが正解ですか?
A:利用者の目線(1.4m前後)、動線の出入り口、手動操作部の近くなど、視認性と操作のタイミングを基準に決めます。


Q5:ピクトグラムはどんな種類がありますか?
A:案内型(入口/出口など)、動作表示型(スライド/開閉方向など)、注意喚起型(挟まれ注意/接触注意など)があります。


Q6:ピクトグラムは定期的に見直す必要がありますか?
A:はい。表示の劣化、利用者層の変化、設備の更新などに合わせて、年1回を目安に見直し・更新することが推奨されます。


Q7:停電時でもピクトグラムは意味を持ちますか?
A:はい。動かない状態でも「ここが通路である」と示す重要な情報になります。視覚案内は電源に依存しません。


Q8:Newtonドアにはどんなピクトグラムを使えばいい?
A:荷重式で電源を使わないため、手動操作案内や非常時対応の案内ピクトグラムを組み合わせると効果的です【関連記事あり】

地震など長期停電でも、止まらず動く
「事故が全くおきない」国も認めた安全自動ドア
アナログの特許構造で壊れないから修理費も0円

お問い合わせ・資料請求は今すぐ
↓↓↓

関連記事一覧

  • 関連記事
TOP