自分のお店を持ちたい――そう思った瞬間から、きっとあなたの頭の中には「理想の空間」が浮かんでいるはずです。しかし、いざ店舗づくりを始めようとすると、物件選びや資金繰り、開業手続きなど、やるべきことが山ほどあり、「設計は最後でいいかな」と後回しにしがちです。
でも実は、設計は最初に考えるべき重要な要素なのです。なぜなら、設計次第で「集客・使いやすさ・コスト」すべてが大きく左右されるからです。とくに、福岡市のように飲食店や美容サロンの出店が活発な地域では、物件の特徴や法律上の制限も絡み、計画段階からの設計的な視点が不可欠です。
本記事では、「店舗設計ってそもそも何をするの？」「誰にいつ頼むの？」「費用は？失敗しないためのコツは？」といった疑問に、設計士や施工経験者の視点も交えて、徹底的にお答えしていきます。
福岡での出店準備を進めているあなたに、安心と納得の判断軸をお届けします。
目次（このページの内容）
- 1 店舗設計とは？内装工事と何が違うの？
- 2 店舗設計はいつ誰に頼む？タイミングと依頼先の選び方
- 3 福岡市で設計会社を探す前に知っておくべきこと
- 4 設計にかかる費用の目安と、見えにくいコストの正体
- 5 設計の失敗を防ぐための3つの判断軸
- 6 適ドア適所の視点から見た、設計における自動ドア選定の落とし穴
- 7 【適ドア適所】にそった「まとめ」
- 8 よくある質問（FAQ）
- 9 参考・出典一覧
店舗設計とは？内装工事と何が違うの？
結論：設計とは「見た目を整えること」ではなく「お店の価値と機能を設計すること」
よくある誤解：内装と設計の違い、ちゃんと理解できていますか？
店舗づくりを考えたとき、多くの人がまず「内装工事っていくらかかるの？」と気にします。けれども、そもそも「内装工事」と「設計」はまったく別物。内装とは「工事」、つまり壁や床、照明などを実際に作る工程です。
一方で「設計」は、その工事を行うための設計図・仕様・工程・空間構成などを計画する仕事。もっと言えば、お店のビジネスモデルやターゲット層に合った「体験のデザイン」を担っているのです。
設計が必要なのは、こんなとき
- 飲食店で厨房動線を合理的にしたい
- 小規模サロンで顧客のプライバシーを確保したい
- 物販店で動線と陳列効果を両立させたい
- バリアフリー対応を考慮したい
- 空調や照明、音響まで含めて雰囲気を演出したい
このような「体験」を作るのが、設計士の役割です。内装工事は、その設計に従って行うもの。設計をせずに内装工事を始めてしまうと、使い勝手が悪くなったり、あとで「こんなはずじゃなかった」と後悔したりします。
設計がないと起きるトラブルの例
- 工事途中で「やっぱりここにコンセントが必要だった」と気づき、やり直しに
- 厨房設備が大きすぎて、通路が狭くなり保健所に指摘される
- デザイン優先で収納や動線が考慮されず、スタッフが使いづらい
- 店舗什器と建具のサイズが合わず、改装費が倍増
これらはすべて、最初に設計がなかった／設計が甘かったことが原因です。
設計の目的＝空間価値の最大化と長期的な収益性の確保
設計とは「見た目をよくすること」だけではありません。店舗の使い勝手、収益性、安全性、メンテナンスのしやすさなどを総合的に考えるのが本来の設計です。
特に福岡のように競争が激しい都市では、いかに効率よく「魅せて」「回して」「長く使える」空間をつくるかが、生き残りの鍵となります。
専門家が設計に込める視点
- 動線計画：スタッフ・客・商品の動きが交差しないか
- ゾーニング：厨房・接客・トイレなどを合理的に配置できているか
- 設備計画：電気容量、給排水、空調などインフラの適切配置
- 法規制対応：消防法、建築基準法、保健所基準への適合
- 収益設計：一人あたりの回転率や席配置による売上最大化
これらを、ただの「工事」だけで実現するのは不可能です。だからこそ、設計が必要なのです。
「設計は高い」と思っていませんか？
多くの人が「設計はコスト」と考えますが、実際は設計によって余計な出費を減らすことができるのです。
例えば、あとでレイアウト変更が必要になれば、什器や壁の移設費だけで数十万円かかります。それを最初の設計で回避できれば、その分だけコストダウンになるのです。
このように、設計とは「建物の見た目」を整えるものではなく、「お店の価値を最大化する戦略的行為」です。
この視点を持つことで、あなたの店舗づくりは失敗しない第一歩を踏み出せます。
店舗設計はいつ誰に頼む？タイミングと依頼先の選び方
結論：物件を決める前に「相談」するのが正解。依頼は段階を踏んで最適化すべき
多くの人が「設計の依頼タイミング」を間違える理由
よくある誤解の一つに、「物件が決まってから設計を考える」という順序があります。実際、多くの人がこの順番で動きがちですが、それでは遅すぎるケースが少なくありません。
なぜなら、「この物件に合った設計」ではなく、「あなたのやりたいことに最適な物件」を選ぶためには、最初から設計の視点が必要だからです。
手順：店舗開業における設計のステップ
- 業態・規模・客層などビジネスモデルを整理
- 出店エリアの選定と物件探し
- （←ここで設計士に相談）物件の現地調査・法規チェック
- 基本設計（レイアウトやゾーニング）
- 実施設計（詳細な仕様や設備計画）
- 見積もり比較・施工会社決定
- 工事・監理・検査・開業
→ 設計が入るタイミングは「3〜6」。しかし、相談は1や2の時点で始めるのが理想的です。
福岡市での事例：物件を決めてから後悔したケース
あるカフェオーナーは、居抜きの物件が手頃だったためすぐ契約。しかし後日、設計士に相談すると「厨房機器の容量に対して電気容量が不足」「給排水の勾配が取れない」「保健所の許可が出にくい構造」といった問題が判明。
結果、設計上の制約が多く、予定していた店舗レイアウトができず、大幅に計画を変更することに。設計費・改修費ともに想定以上となり、「先に相談していれば…」という後悔が残ったそうです。
依頼先の種類と違いを整理する
| 依頼先 | 特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 設計事務所 | 設計専門、独立性高い | 空間にこだわりたい人、複雑な要件がある人 | 施工は別会社なので手間がかかる場合も |
| 工務店 | 設計施工一体が多い、コスト重視 | シンプルな内装、コストを抑えたい人 | デザインの自由度や品質は担当次第 |
| デザイン会社 | デザイン性重視、設計＋ブランディング対応 | 世界観を大事にしたい人 | 実施設計や法規対応は別途必要なことも |
→ あなたの目的によって、依頼先を正しく選ぶことが成功の鍵になります。
判断軸①：誰が「設計監理」をしてくれるか？
設計監理とは、施工中に「設計通りに工事が行われているか」を確認・調整する役割です。設計だけをして、監理しない業者も多く、それでは設計の意図が現場で反映されないこともあります。
→ 設計監理まで一貫して対応してくれるかどうかは、重要な判断軸です。
判断軸②：業態理解と法規対応への経験値
同じ福岡市内でも、飲食・美容・物販・医療では必要な設備や規制が異なります。
保健所の基準、消防法、建築基準法などに対応するためには、その業態に特化した経験値が不可欠です。
→ 経験値の少ない業者だと、あとで「これは違法です」と言われるリスクも。
判断軸③：ヒアリング力と翻訳力
「こんなお店にしたい」という漠然としたイメージを、具体的な設計図に落とし込むには、クライアントの言葉を「建築の言語」に翻訳する能力が必要です。
→ 単なる「デザインセンス」ではなく、「言語理解と設計力の両立」が問われます。
まずは相談ベースからでもOK
設計士に相談するのは、「契約するかどうか決めてから」ではなく、「何が必要か判断してもらうために」行うものです。
福岡市内には、初回相談を無料で受け付けている設計事務所も多数あります。
まとめ：設計の相談は「物件を決める前」が最適。自分に合った依頼先を選ぶための情報収集がカギ
設計を成功させるためには、「適切なタイミングで、適切な依頼先を選ぶ」ことが重要です。
後悔しないためにも、早めの相談を通じて、自分に合った設計パートナーと出会うことが、成功の第一歩です。
福岡市で設計会社を探す前に知っておくべきこと
結論：物件や業種に合う「地域の条件」と「法規制」を知らずに動くと、後で大きなリスクに
福岡市で店舗を開こうと考えているなら、設計会社を探す前に知っておきたいことがいくつかあります。それは、単に「センスのある設計士」や「安くやってくれる業者」を探す前に、福岡という土地ならではの条件や制約を理解しておくことです。
福岡市特有の物件事情：築年数・階段物件・狭小区画が多い
福岡市内、特に中心部（天神・博多エリア）では、以下のような物件傾向があります。
- 古いビルや木造の物件が多く、図面が存在しないことも
- 階段のみの2階・3階店舗（エレベーターなし）
- 幅が狭く奥行きがある、いわゆる「うなぎの寝床」型店舗
- 天井高が低い／電気容量が不足／給排水の取り回しが困難
→ これらはすべて、設計と施工に影響を与えるため、物件を決める前に設計士に確認を取るべきポイントです。
用途地域と法規制：出せない業種がある／制限があることも
福岡市には、用途地域（商業地域／近隣商業地域／準住居地域など）という区分があり、これにより出店できる業種や、建物の使い方に制限がかかることがあります。
例：
- 住宅街に近い「第一種住居地域」では、風俗営業・深夜営業などは原則NG
- 「準工業地域」なら飲食・加工・製造も可能だが、騒音規制あり
- 保健所や消防署の許可基準も、場所や階層によって対応が異なる
→ 設計士や行政窓口に「この物件でこの業態はいけますか？」と早めに相談しましょう。
物件ごとの「インフラ状況」が施工費に直結する
福岡市のテナント物件の中には、以下のようなケースもあります。
- トイレが共用で店舗内に設置が必要
- ガスの容量が足りず、厨房機器に制限
- エアコンが店舗用として使えず入れ替えが必要
- 防火シャッターや誘導灯など消防法対応が必要
→ これらはすべて「見た目」では判断できません。
事前に現地調査をしないまま契約すると、設計以前に施工不可ということも。
福岡市のサポート制度：使える補助金や相談窓口がある
福岡市では、創業支援や空き店舗活用などの観点から、以下のような制度が活用できます。
- 創業支援補助金（福岡市・福岡県・国）
- 商店街活性化事業補助金（空き店舗への出店で最大100万円）
- 中小企業相談窓口（FVM・福岡商工会議所など）
→ 設計会社を選ぶ前に、これら制度の利用可能性も確認しておくと、予算や設計内容に影響する可能性があります。
実際の「相談が成功した例」と「失敗した例」
- 成功例：設計士に同行してもらい物件を見学。天井裏のスペースを活用して断熱性・空調効率を改善。光熱費が月2万円下がった。
- 失敗例：不動産業者だけで内見し契約。設計士に相談すると「水道管の径が足りず厨房機器が使えない」ことが発覚。追加費用80万円。
→ 設計士の視点＝コストと法律と運営のすべてを俯瞰する目線
相談のタイミングで結果がまったく変わります。
用途地域・建築制限の基本と調べ方（＋市のツール紹介）
- 福岡市都市計画情報提供サービスを利用（https://map.city.fukuoka.lg.jp）
- 物件住所を入力すると、「用途地域・建ぺい率・容積率」が確認可能
- 保健所や消防の規制もエリア・業態別に検索できる
→ 設計会社に聞く前に、自分でも確認しておくと、打ち合わせがスムーズです。
まとめ：福岡市ならではの「物件特性・法規・制度」を知ることで、設計依頼がより効果的に
設計会社を探す前に、「出店したい地域の制限」や「自分の業態に必要なインフラや許可」を理解しておけば、
ミスマッチや無駄な費用の発生を防ぎ、より良い設計依頼が可能になります。
設計にかかる費用の目安と、見えにくいコストの正体
結論：設計費は「無駄なコスト」ではなく「トータルコストを下げる投資」。ただし、見落としやすい費用もある
店舗づくりにおいて、設計費というのはときに“見えにくいコスト”です。「工事に直接関係ないから…」という理由で節約しようとする人も多いのですが、それは大きな誤解。実は、設計費を削った結果、総コストが膨れ上がるケースも珍しくありません。
このセクションでは、設計費の内訳や費用感の目安、そして「見えないコスト」がどこで発生するのかを、具体的に解説していきます。
設計にかかる費用の基本構造
設計費は、大きく3つのフェーズに分かれています。
- 基本設計費
店舗のレイアウトや機能配置、ゾーニング、外観・内観の方向性などをまとめた初期設計。
→ 相場：工事費の3〜5％程度 - 実施設計費
電気・配管・設備などの詳細設計。業者が工事できるよう、具体的な図面を作成。
→ 相場：工事費の5〜8％程度 - 設計監理費
工事中に設計図通りに施工されているか、進捗や品質のチェックを行う監理業務。
→ 相場：工事費の2〜3％程度
費用の目安（例：30㎡〜50㎡程度の小規模店舗）
| 項目 | 費用相場（税別） |
|---|---|
| 基本設計費 | 15万〜25万円 |
| 実施設計費 | 25万〜40万円 |
| 設計監理費 | 10万〜15万円 |
| 合計（目安） | 50万〜80万円程度 |
※上記は設計事務所に個別依頼した場合の例。業態や規模、地域により変動します。
「設計無料」の落とし穴
一部の施工会社では「設計費無料」をうたうところもあります。
これは一見ありがたいように思えますが、以下のような背景があります。
- 設計費を工事費に上乗せして回収している
- デザインや機能性よりも「施工しやすさ」が優先される
- 設計監理が行われず、現場での施工品質にバラつきが出る
- 設計変更への柔軟な対応ができない
→ 結果として、「無料設計なのに工事が高い」「使いづらくて結局リフォームする羽目に」などの事例も少なくありません。
設計以外にかかる「見えにくいコスト」とは？
設計に関わる費用は設計費だけではありません。以下のような費用も設計の質に大きく影響します。
1. 設備容量の見誤りによる追加工事
厨房の電気容量が足りず、電気引き込みの増設が必要になることも。追加費用で20万〜50万円かかる例もあります。
2. 図面がない物件での現地調査コスト
古い物件では図面がなく、設計士が採寸から始める必要がある場合があります。この調査費が別途必要。
3. 消防・保健所対応の設計変更
法規制に対応するための設計修正が発生すると、再設計費用や申請費用が発生することがあります。
「居抜きだから設計は要らない」は本当か？
結論から言うと、ほとんどの場合「設計は必要」です。
居抜き物件でも設計が必要な理由：
- 前の業態と違えば厨房や設備は使いまわせない
- 空調や給排水が劣化・不適合であるケースが多い
- 看板や外観の変更には構造チェックが必要
- 法令改正で以前はOKでも今はNGなケースも
→ 「使える設備を使ってコストダウン」と思っていたら、実は一から作り直しになったという例も非常に多いのです。
成功事例と失敗事例の比較
| 事例 | 成功例 | 失敗例 |
|---|---|---|
| A：小規模カフェ | 設計士に依頼し、照明・空調のバランスを最適化 → 電気代が半減 | 無計画に居抜きを使用。光熱費・改修費で逆に高額に |
| B：美容サロン | 基本設計で収納・導線を徹底検討 → スタッフ満足度UP | 無料設計で工事したが、顧客のプライバシー配慮が足りず苦情 |
設計費を「節約」する方法はある？
正規の設計士に依頼する場合でも、以下の方法で費用を調整することが可能です。
- 設計と監理を分ける：自分で施工監理できるなら、監理費をカット可能
- 設計図の再利用を前提にする：同じ業態・形状の物件なら、修正のみで済む場合も
- パースやCGを省略する：イメージ図の作成は意外と高額（1枚3万〜）
→ 設計費は「交渉の余地がある費用」であることも覚えておくと良いでしょう。
まとめ：設計費は「必要経費」ではなく「事業の成功率を高める投資」
設計費は高いように思えるかもしれませんが、それによって避けられる失敗のコストやロスを考えると、非常に合理的な投資です。
また、見えないコストを意識することで、「なぜ設計が必要なのか」が明確になってくるはずです。
設計の失敗を防ぐための3つの判断軸
結論：設計依頼で失敗しないためには、「センス」ではなく「機能と責任の見極め」が重要
設計の依頼先を選ぶとき、多くの人が「この人のセンスが好きかどうか」だけで判断してしまいます。もちろん、相性や感覚の一致は大切です。ですが、それ以上に大事なのが、「その設計士（会社）が何を担い、何まで責任を持つのか」を見極めることです。
ここでは、設計の失敗を防ぐために最低限押さえておきたい3つの判断軸をご紹介します。
判断軸①：業態への理解力があるか
要点：設計の「汎用性」ではなく、「業種特有の機能」に対する理解があるか？
例えば同じ20坪でも、飲食店、美容室、物販店では設計の内容はまったく異なります。
| 業種 | 特有の設計要件 |
|---|---|
| 飲食 | 厨房設備・排気・保健所基準・動線設計（配膳・返却） |
| 美容 | 給湯・照明・コンセント配置・プライバシー配慮 |
| 物販 | ストックヤード・動線計画・セキュリティ・見せ方 |
→ これらを理解せずに「見た目優先」で設計されると、オープン後の運営に大きな支障をきたします。
チェックポイント：
- 同業種の設計実績があるか？
- 保健所・消防・建築基準法などへの対応経験があるか？
- 他の同業者の導入事例を具体的に説明できるか？
判断軸②：設計監理を含めた「一貫性のある対応」ができるか
要点：「設計だけ」で終わると、図面が現場で意味を失うことがある
設計図を描くことはゴールではありません。工事現場でその通りに施工されるか、現場の判断で変更されていないか、それを監督する「設計監理」がなければ、設計通りの品質は保証されません。
典型的な失敗例：
- 図面と違う位置に照明が付いていた（現場の判断）
- 見積もりと実際の材料が違っていた（監視がなかった）
- 店舗什器とコンセント位置がずれていた（現地確認不足）
→ 「設計だけ依頼して、あとは工務店にお任せ」では、設計の意図が失われるリスクが高くなります。
チェックポイント：
- 設計監理を含めたサービスか？
- 現場立ち会いの頻度は？
- 工務店との関係性はどうなっているか？
判断軸③：対話力と「イメージ翻訳力」があるか
要点：言葉にならないイメージを、形にできるかどうか
設計士とのコミュニケーションは、図面や3Dパースだけでなく、「言葉」のやりとりが非常に重要です。
「落ち着く感じにしたい」「ちょっとレトロな雰囲気」「おしゃれだけど使いやすく」——
こうした曖昧な表現をどう咀嚼して、具体的な形にできるかが、設計士の本領です。
判断ミスが生むトラブル：
- 「ナチュラルな感じで」と言ったら、木材だらけの仕上がりに（清掃性ゼロ）
- 「女性にウケる感じに」と頼んだら、ピンク主体でダサくなった（客層とのズレ）
- 「落ち着いた感じで」と言ったら、暗すぎて不評に（照度とカラーの不一致）
→ 要望を「翻訳」する力が、設計の成否を分けます。
チェックポイント：
- 初回相談で「抽象的な要望」にどう反応してくれるか？
- イメージ共有のためのツール（写真・図面・CGなど）を持っているか？
- 過去の事例で、どんな「翻訳」をしてきたか説明してもらう
プロとしての誠実さを測る「逆質問力」
本当に信頼できる設計士は、こちらの要望をそのまま図面にしません。
「この考えで本当に大丈夫か？」「もっと適した方法がないか？」と、一緒に検討してくれます。
それは、「要望を鵜呑みにせず、真にクライアントの利益を考えている」証拠です。
まとめ：センスだけで選ぶと危ない。設計は「経営と空間をつなぐ通訳者」
設計をお願いする相手は、単なるデザイナーではありません。
お店の価値を最大化するための戦略家であり、法律と現場をつなぐ翻訳者であり、時に経営パートナーのような存在にもなりえます。
3つの判断軸をもとに、「この人なら任せても大丈夫」と思える相手と出会えることが、店舗づくり成功への最大の近道です。
適ドア適所の視点から見た、設計における自動ドア選定の落とし穴
結論：入口まわりの「自動ドア選定」は、設計と同じくらい慎重に考えるべき設計要素のひとつ
自動ドアは「施工会社任せ」でいい？」という落とし穴
設計や内装については細かく打ち合わせをするのに、ドアについては「自動ドアつけといて」で済ませてしまう。そんなケースが非常に多く見られます。
しかし、実は店舗設計における入口まわりの選定こそ、空間体験・安全性・メンテナンスコスト・運営効率に直結する重要ポイントなのです。
設計と設備が分離されていると起きること
- ドアの開閉範囲が内装レイアウトと干渉して、什器が置けない
- 自動ドアのモーター音が店内に響き、静音性の高い業態に不向き
- 電源の位置や容量が合わず、配線や電気工事が追加発生
- 開閉スピードやセンサーの誤作動が起き、バリアフリーに不適合
→ これらはすべて、「ドアは工事の最後に決めればいい」と思っていた結果です。
そもそも「自動ドア＝電動式」だと思っていませんか？
現在、国内で設置されている自動ドアの多くは電動式です。
しかし、実はそれだけではありません。たとえば、**Newtonドアのような「荷重式自動ドア」**という選択肢もあります。
荷重式自動ドアとは？
- 足をかけたときの体重を利用して開閉する「非電動」の自動ドア
- 電源が不要で、停電時も確実に作動
- 駆動音がなく、非常に静か
- 故障リスクが低く、ランニングコストがほぼゼロ
「適ドア適所」の考え方とは？
Newtonドアが提唱する「適ドア適所」とは、設計・業態・利用者特性・環境条件に応じて、最も適したドアを選定するという考え方です。
選定基準の例：
| 判断軸 | 電動式自動ドア | 荷重式自動ドア（Newtonドア） |
|---|---|---|
| 電源の確保 | 必要（100V〜200V） | 不要（完全非電源） |
| 騒音対策 | モーター音あり | 静音（無音） |
| 保守管理 | 故障リスクあり／定期点検必要 | 故障が少なく、定期点検ほぼ不要 |
| 使用頻度 | 1日100人以上など高頻度に最適 | 1日50人未満など中〜小規模に最適 |
| バリアフリー対応 | センサー式で通過がスムーズ | 身体のバランス保持ができる方に適応 |
| コスト | 導入費30万〜＋定期点検／修理費 | 導入費約20万〜＋保守費ほぼゼロ |
設計初期段階での「入口選定」が空間の質を左右する
設計士やインテリアコーディネーターと話すとき、「入口まわりの計画」は必ず共有すべきトピックです。
たとえば次のような点を、事前に話し合っておくとスムーズです。
- 外観の印象とブランドイメージの整合
- バリアフリー動線とドア開閉の関係
- 電源の取り回しや、電気容量の負担
- 開閉時の安全性や子ども・高齢者対応
→ 特に静音性・停電時対応・電気代削減といった視点は、あとから変更しづらい重要要素です。
福岡市内で実際にあった事例
事例①：小児クリニック（静音重視）
→ 電動式自動ドアのモーター音が診察室まで響き、神経質な子どもが落ち着かず診察が難航。荷重式に変更し、環境音を改善。
事例②：カフェ（通行頻度：1日30名程度）
→ 電動式導入後、使用頻度に対して過剰だったうえ、電気代と故障頻度が想定以上。荷重式へ変更し、コストと静音性が大幅改善。
設計士に相談すべきこと
- 「自動ドアは何を前提にしていますか？」
- 「停電時や騒音対策は考慮されていますか？」
- 「電源確保やコスト面での違いも踏まえて検討されていますか？」
→ これらを尋ねることで、設計の初期段階で“入口まで含めた空間設計”ができているかがわかります。
関連リンク：
- 詳しくは、Newtonドアの自動ドア選定に関する記事をご覧ください → 関連記事：荷重式自動ドアの選定ガイド（設計者向け）
まとめ：「入口選定」も設計の一部。誰がどう使うかから逆算する選び方が鍵
設計において「空間全体のバランス」はもちろん重要ですが、一番最初に人が触れる場所＝入口も、空間体験に大きな影響を与えます。
「適ドア適所」の考え方を知ることで、設計の精度と満足度は格段に上がるでしょう。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
福岡市で店舗設計を考えるとき、多くの方が直面するのが、「何から始めればいいのか分からない」「誰に頼めばいいのか判断できない」という戸惑いです。この記事では、そのような悩みに対し、設計というプロセスの本質から、選び方・費用・地域特性・失敗例・そして自動ドアという見落とされがちな視点までを一貫して解説してきました。
改めて、要点を整理しましょう。
✅ 設計とは「空間を見た目よく整えること」ではない
→ 設計の本質は、空間をどう使い、どう利益を生み出すかの戦略的行為。内装工事とはまったく異なります。
✅ 「物件を決めてから設計」は順番が逆
→ 設計士の視点で物件を見ることで、無駄な工事・制約を回避できる。初期相談こそがコストダウンの鍵です。
✅ 福岡市には福岡市なりの「制限と機会」がある
→ 法規制・補助金・物件特性など、地域に根差した知識をもつ設計士との連携が不可欠です。
✅ 設計費用は「見えないコスト」を防ぐ最も有効な保険
→ 設計を軽視すると、後から高額な改修・修正コストが発生。トータルではむしろ割高になります。
✅ 成功の鍵は「センス」ではなく「判断軸の明確さ」
→ 業態理解・設計監理・対話力という3つの軸で選べば、信頼できるパートナーが見つかります。
✅ 自動ドアにも「適ドア適所」の視点が必要
→ 音・電源・安全・使用頻度に応じて選ぶべきであり、Newtonドアのような荷重式は一つの最適解となり得ます。
設計とは、単なる図面作成やインテリア選定ではありません。
それは、あなたのお店がどう見られ、どう使われ、どう利益を生むのかという「事業の骨格」をつくる行為です。
そして、ドアひとつに至るまで、それは同じこと。
入口の選定ひとつで、印象・安全性・維持コストは大きく変わります。
これから店舗づくりを始めるあなたが、迷いなく次の一歩を踏み出せるよう、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
よくある質問（FAQ）
Q: 店舗設計と内装工事はどう違うのですか？
A: 設計は空間の構成や機能性を計画する段階で、内装工事はそれを実現する施工作業です。設計がなければ内装も機能しません。
Q: 設計事務所に頼むと、費用はどれくらいかかりますか？
A: 一般的に工事費の10〜15％程度が設計費（基本設計＋実施設計＋監理）としてかかります。小規模店舗で50万〜80万円が目安です。
Q: 福岡市で店舗を出す際に注意すべき法規制はありますか？
A: 用途地域によって出店できる業態に制限があります。また、保健所・消防の基準も業種や建物階数で異なるため事前確認が必要です。
Q: 居抜き物件でも設計は必要ですか？
A: 多くの場合必要です。前業態との違いや法改正による不適合、インフラ老朽化などの理由で、再設計が求められるケースがほとんどです。
Q: 設計の相談は、いつ・どのタイミングですればいいですか？
A: 物件を決める前に相談するのが理想です。設計士の視点で物件を選定すれば、トラブルや追加費用の発生を防ぐことができます。
Q: 自動ドアは標準で電動式だと思っていましたが、他にもあるのですか？
A: はい、荷重式自動ドア（Newtonドア）という電源不要・静音型の選択肢もあります。設計段階で用途に応じた選定が必要です。
Q: 自動ドアの選定って、設計と関係ありますか？
A: あります。入口の動線、電気容量、騒音対策、バリアフリー性など設計との整合が重要です。ドアも設計の一部と捉えるべきです。
Q: 設計士に相談する際、どういった点を確認すべきですか？
A: 業態経験、設計監理の有無、初回相談の内容、施工会社との連携体制、イメージ共有の手段（パースや過去事例）などが確認ポイントです。
参考・出典一覧
- 福岡市都市計画情報提供サービス：https://map.city.fukuoka.lg.jp
- 福岡市創業支援補助金制度（商工部経済企画課）
- Newtonドア 公式サイト：https://newton-plus.co.jp
- 自動ドアの選定基準と導入コストに関する専門記事（Newtonメディア）
- 福岡市内テナント物件の仲介・施工・設計会社の事例公開ブログ各種（SERP分析より）
- 国土交通省 建築基準法・用途地域関連ガイドライン
- 福岡市保健所 飲食店営業許可の基準と設計要件