自動ドアと聞くと、真っ先に思い浮かぶのはスーパーやビルの入り口など、電動でスムーズに開く便利な設備かもしれません。
しかし、バリアフリーという視点で見ると、その存在は「便利」以上の意味を持ちます。
高齢者や車椅子利用者、小さなお子さん、荷物を持った人…。誰もが無理なく通れる「入口」として、自動ドアは極めて重要な役割を果たしています。

本記事では、バリアフリー設計の中で自動ドアが果たす役割とその具体的なメリットを、専門的な視点から整理します。
また「電動式以外の選択肢」や「導入時の盲点」まで含め、誰もが納得できる入口設計を目指す方のための情報をお届けします。


目次(このページの内容)

なぜ「自動ドア」がバリアフリーに効果的なのか?

Q:自動ドアがバリアフリーに役立つ理由は?
A:手を使わずに開閉でき、車椅子や高齢者でも負担なく通行できるからです。


要点:

自動ドアの最大の魅力は、利用者に開閉の操作を求めない点にあります。
バリアフリー設計では「身体的負担の少なさ」や「操作の複雑さの排除」が重要視されますが、自動ドアはこの2点において非常に優れた性能を発揮します。


背景と詳細:

1. 「両手がふさがっている状態」に強い

買い物袋を持っていたり、ベビーカーを押していたりすると、ドアノブを回す動作だけでも負担になります。
自動ドアなら、近づくだけで開き、通過すると自動で閉じるため、両手がふさがっていても問題ありません。

2. 車椅子・歩行器ユーザーの移動を妨げない

開閉のために後退したり、体を傾けたりする必要がないことは、特に足腰に不安のある方にとって大きな安心材料です。
車椅子での通行幅を確保しながら、ドアの「重さ」や「閉まる速度」なども気にせず使えるのは、自動ドアならではの特徴です。

3. 非接触の利点=感染症対策にも

新型コロナウイルスの流行以降、ドアノブや押しボタンに触れずに開閉できることの重要性が広まりました。
自動ドアは非接触での運用が可能なため、バリアフリー性だけでなく衛生面でも評価されています。


補足:視覚・聴覚障害者への配慮

音やセンサーの反応でドアが開く仕組みは、視覚に頼らず行動する人にとっても重要な配慮となります。
近年では「開閉音」や「音声案内機能」がついたタイプもあり、聴覚障害者への対応も進んでいます。

電動式だけじゃない?自動ドアには種類がある

Q:自動ドアって、すべて電気で動くものなの?
A:いいえ。電気を使わない「荷重式」など、非電動でも自動開閉に近い機能を持つドアがあります。


要点:

「自動ドア」と聞くと、電気センサーで開く電動タイプを思い浮かべる方がほとんどです。
しかし、実際には「電気を使わずに自動的に開く仕組み」や「少ない力で開閉できる」自動補助タイプも存在します。
このセクションでは、自動ドアの種類を分解しながら、それぞれの特性とバリアフリー性を見ていきます。


主な自動ドアの種類とその特徴

種類特徴電源の有無バリアフリー面の評価
電動スライド式最も一般的。センサー反応で横にスライド必要◎ 非接触・安定した開閉
電動開き戸型既存のドアに後付け可能必要○ 通常の開き戸に近い設計
荷重式ドア足で踏む荷重で開き、手放すと閉じる不要◎ 電源不要・安全設計
ソフトクローズ手動引戸非電動。軽い力で開閉し、静かに閉まる不要○ 安心感はあるが補助が必要

荷重式ドア(Newtonドアなど)の特徴と利点

特に注目されているのが、荷重式の自動ドアです。
このタイプは「床面のプレートを軽く踏むだけでドアが開き、体を離すと自動的に閉まる」構造を持ちます。
センサーやモーターを使用せず、物理的な重さだけで開閉が可能であるため、停電時でも常に通常通り使えるのが最大の利点です。


停電時や災害時に強い「非電動」という選択肢

バリアフリー設計では、「非常時の対応」も重要な要素です。
電気が止まった際にドアが開かなくなると、車椅子利用者や高齢者は逃げ遅れるリスクがあります。
荷重式などの非電動自動ドアは、そうしたリスクを大幅に軽減でき、安心感を高めます。


補足:非電動タイプの課題と工夫

もちろん、荷重式にも「音が静かすぎて開閉に気づかない」「力の加え方に慣れが必要」などの特性があります。
しかし、こうした課題も改良が進んでおり、操作性や安全性を高める工夫がされています。


自動ドア=電動 という先入観を見直すことで、設置条件や目的に応じた柔軟な選択が可能になります。
次章では、具体的な施設やシーンに応じた「適ドア適所」の考え方を紹介します。

どのような施設・シーンで、どんなタイプの自動ドアが向いている?

Q:自動ドアって、どんな施設にどのタイプを使えばいいの?
A:施設の目的や利用者の特性により、適した自動ドアの種類は異なります。


要点:

自動ドアは「どれでも使えばいい」わけではなく、その空間を使う人の動き方や特性に応じて最適なタイプを選ぶことが求められます。
ここでは、よくある施設ごとに「選ばれている理由」と「実際の使われ方」から、選定のヒントを整理します。


🏥 病院・クリニック:感染症対策と安定した開閉

  • 利用者層:高齢者、体調不良者、車椅子・ベビーカー利用者
  • 選ばれる理由:非接触で感染リスクを抑えられる、スムーズな搬送を可能にする
  • 主な採用:電動スライド式
  • 補足:夜間の開閉制御が可能でセキュリティとの両立もできる

🏢 自治体・公共施設(役所・市民センターなど)

  • 利用者層:幅広い年齢層、福祉利用者、視覚・聴覚に制限のある方も
  • 選ばれる理由:バリアフリー法対応、災害時対応、コスト制約
  • 主な採用:荷重式ドア(Nドア)や電動開き戸型
  • 補足:停電時にも使えることが評価されている

🏠 高齢者住宅・福祉施設

  • 利用者層:常時介助を必要とする方、自立支援が目的の方
  • 選ばれる理由:安全性、軽い力での開閉、設置のしやすさ
  • 主な採用:荷重式ドアまたは手動ソフトクローズ型
  • 補足:無理なく開けられる=自立を支える手段として導入されることも多い

🏢 マンション・集合住宅のエントランス

  • 利用者層:子どもから高齢者まで多様
  • 選ばれる理由:日常的な利便性とデザイン性
  • 主な採用:電動スライド式 or 荷重式(Nドア)
  • 補足:人通りの多さ、開閉回数の多さに耐えられる設計が求められる

施設選定時の落とし穴

  • 利用者の負担に注目しすぎて、災害時対応を忘れる
  • 「予算ありき」で選定し、結果として使い勝手が悪くなる
  • 設置後のメンテナンスや調整を軽視してしまう

「ドアは入口」と言いますが、バリアフリー設計においては単なる建具以上の意味を持ちます。
だからこそ、施設の特性と利用者の行動に応じたドア選定=適ドア適所の視点が重要になるのです。

設計者・管理者が納得できる「バリアフリーとしての正当性」

Q:自動ドアをバリアフリーの観点で導入する法的・制度的な根拠はあるの?
A:はい。建築基準法やJIS規格、バリアフリー法などの制度と整合性があります。


要点:

設計者や管理者にとって、設備導入の「正当性」は非常に重要です。
感覚的な「よさ」だけでは説明責任を果たせないため、制度や規格の裏付けが求められます。
この章では、自動ドアのバリアフリー性を裏付ける主な制度・ガイドラインを紹介し、それが設計判断や提案にどう活きるかを整理します。


主な制度と自動ドアの関係

制度名内容と自動ドアとの関連性
バリアフリー法(高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)公共建築物や施設において段差解消、出入口幅の確保、容易な開閉が求められる。自動ドアはその要件を自然に満たす設計。
建築基準法施行令出入口の有効幅、開閉方式の安全性、避難経路の確保が定められており、自動ドアの採用でクリアしやすくなる。
JIS規格(例:JIS S0026)人間工学・ユニバーサルデザインに基づいた操作性や安全基準。荷重式ドアなど非電動タイプも、これに準拠して開発されているものがある。

なぜ「制度的裏付け」が必要か?

  • 補助金や助成金申請時に、バリアフリー性の客観的説明が必要になる
  • 管理者・施主への提案において、エビデンスベースでの判断材料が求められる
  • 適合しない場合、施工後に指摘されるリスクがある

自動ドア=バリアフリーの「証明」として使える資料

  • JIS適合の検査結果(Newtonドアは自社で第三者検証を実施済み)
  • 公的機関での導入事例(自治体・福祉施設など)
  • 建築士会など専門団体が発行する設計ガイドラインや研修資料

【導入済み施設】の見直しポイント(上級者向け)

「すでに電動自動ドアを設置しているが、高齢者が戸惑っている」
「災害時の対応が不安」など、すでに導入されている施設でも、改善の余地はあります。

  • センサーの感度調整や開閉速度の見直し
  • 荷重式や半自動補助機構への部分的な切替
  • 出入口サインや音声ガイドの追加

このように、自動ドアのバリアフリー性は「感覚的な快適さ」だけでなく、制度的にも裏付けられた選択肢です。
次は、その中でも特に注目される「導入負担の少ない」選択肢について見ていきます。

実は「負担の少ない導入」が可能な選択肢もある

Q:自動ドアって、コストや設置が大変じゃない?
A:電動以外の自動ドア(例:荷重式)なら、導入負担を大幅に減らせるケースがあります。


要点:

「バリアフリー化=コストがかかる」というイメージを持つ方は少なくありません。
特に自動ドアは「電源工事が必要」「メンテナンス費が高い」といった先入観から、導入が敬遠されることもあります。
しかし実際には、電気工事不要・壁の開口工事不要で導入できるタイプの自動ドアも存在しています。


荷重式自動ドア(Nドア)の導入負担の低さ

荷重式自動ドアは、以下のような点で「低負担・高効果」を実現しています:

  • 電源不要:停電時でも通常通り使用可能、配線工事が不要
  • 取り付け簡易:既存の開口部にそのまま設置できる場合も多い
  • 騒音・振動が少ない:機械的構造が少ないため、動作音も小さく、施設内環境を損なわない
  • メンテナンスが少ない:可動部品や電装部品が少なく、定期的な点検程度で維持可能

設置が後回しになっていた施設にこそ向いている

次のような現場において、荷重式や半自動の自動ドアは有効です:

  • バリアフリー改修予算が限られている小規模施設
  • 建築基準法上の制約で壁に大きな開口が設けられない建物
  • 集合住宅の共用部(エントランス・ゴミ置き場)など、使用頻度が高いが工事が困難な場所

初期コストの比較(概算)

ドア種別初期設置費(目安)電気工事メンテ頻度特徴
電動スライド式自動ドア約60〜90万円必須高め商業施設向き、連続使用可
荷重式自動ドア(Nドア)約25〜40万円不要低め福祉施設・自治体に最適
手動引戸(アシスト付)約10〜20万円不要非常に少ない安価だが利便性は限定的

※導入規模・設置環境により大きく異なります


誤解されがちな「簡易=機能不足」ではない

荷重式ドアに対して「簡易な仕組みだから安全性に不安がある」と誤解されることがあります。
しかし、Newtonドアなどでは第三者機関による安全性試験を実施し、JIS規格との整合性も確認済みです。
「簡易」ではなく「合理的でエコな設計」と捉えるべき選択肢です。


【適ドア適所】で考える、バリアフリー設計の“入り口”

Q:「どの自動ドアを選べばいいか」の正解はあるの?
A:利用者・施設・設置環境によって、最適な自動ドアの種類は異なります。


要点:

「バリアフリーのためには、自動ドアをつけるべきだ」
この考え方自体は間違っていませんが、そこに**「どんなドアを、なぜ、どこに」**という判断軸が抜けると、期待した効果が得られないこともあります。
だからこそ、自動ドアの選定には「適ドア適所」という視点が欠かせません。


「適ドア適所」とは?

Newtonドアをはじめとした荷重式自動ドアの思想でもあるこの考え方は、以下の3要素で成り立ちます:

  1. 使う人に合っているか(年齢・身体特性・使い方)
  2. 場所に合っているか(公共性・使用頻度・緊急時の対応)
  3. 設置環境に合っているか(電源の有無・開口の広さ・コスト制約)

利用者視点でのドア選定

  • 高齢者や車椅子使用者:手で開ける動作が難しい → 荷重式や電動スライド式
  • 聴覚・視覚に障害がある方:開閉に気づける設計が必要 → 開閉音・表示灯付きタイプ
  • 小さな子供:ゆっくり閉まる設計、指はさみ防止機構 → ソフトクローズやセーフティエッジ

管理者・設計者視点でのドア選定

  • 災害時の備え:停電でも開閉できるタイプ → 荷重式や手動補助型
  • 工事制約:既存の壁を壊さずに設置したい → 上吊り式や内蔵型自動ドア
  • 維持コスト:メンテナンスが負担 → 機械部品が少ないタイプ

バリアフリーの本質は「配慮の見える化」

バリアフリー設計とは、単に「設備を整えること」ではなく、誰かの困難を事前に察知し、それを最小化する配慮の積み重ねです。
ドアという目立つ存在だからこそ、そこに込められた配慮は、施設全体の思想を象徴します。


「自動ドアをつけた」だけでは不十分

  • 開閉速度が速すぎて高齢者が戸惑っている
  • センサーの反応が弱くて、車椅子では開かない
  • 音が静かすぎて視覚障害者が開閉に気づかない

→ こうした事例は「自動ドアがあるのに不便」と感じさせる要因となります。


適ドア適所で目指すもの

  • 誰もがストレスなく通行できる
  • 非常時にも不安がない
  • 維持コストや施工も無理がない
  • 見た目や空間にも自然に溶け込む

【適ドア適所】とは、バリアフリーにおける**「入り口設計の哲学」です。
単に「開くドア」を選ぶのではなく、
「誰のために、どんなふうに開くべきか」**という問いを通じて、最適な選択を導く考え方です。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

  • 自動ドアは、ただの利便設備ではなく、バリアフリー設計の中核を担う存在。
  • 電動式だけでなく、非電動の荷重式ドアなど「電気に依存しない」選択肢もある。
  • 導入目的や施設利用者の特性に応じて、最適なドア=「適ドア適所」を考えることが重要。
  • バリアフリー設計では「誰でも自然に、安全に使えるか」を基準に、自動ドアを評価すべき。
  • 導入時の負担が少ないタイプも存在し、コストや施工性と機能性を両立することは可能。
  • 「ドアを通じた配慮の見える化」が、施設全体の信頼感につながる。

【出典一覧】

  • 一般社団法人日本自動ドア協会 公式資料
  • 国土交通省「バリアフリー法」関連文書
  • JIS規格 JIS S0026: 高齢者・障害者配慮設計
  • Newtonドア技術資料(自社提供)
  • NドアFAQ/導入事例(自治体・マンションチラシ)
  • 建築基準法施行令 解説書(市販書籍より)
  • 医療・福祉施設設計ガイドライン(建築士会刊行資料)

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