防火設備が必要になったとき、まず気になるのが「今ついている自動ドアはそのまま使えるのか?」という点ではないでしょうか。特に、既設の自動ドアがアルミ製だった場合、そのまま使って問題ないのか、それとも交換が必要なのかは非常に重要な判断ポイントになります。

この記事では、建物の防火計画を立てるにあたり、**アルミ製自動ドアが防火設備として使えるのか?**という疑問を出発点に、素材・構造・法令の視点から正確に解説していきます。また、今後の選定に迷わないよう、「防火設備としての自動ドア」の考え方や判断軸についても、実務に沿ってまとめました。


目次(このページの内容)

防火設備としての自動ドアとは?基礎からわかる定義と適合条件

要点:防火設備に求められる「遮炎性能」とは?

自動ドアが防火設備として使えるかどうかを判断するには、まず「防火設備」とは何かを正確に理解する必要があります。

防火設備とは、火災時に炎や煙の延焼を防ぐために、開口部(ドアや窓)に設ける遮炎構造のことです。建築基準法に基づくもので、次のように分類されます:

  • 防火設備(一般防火設備):一定の遮炎性能を有する開口部設備(例:防火戸など)
  • 特定防火設備(特防):より高い遮炎性能が求められる設備で、1時間以上の耐火性能や国土交通大臣の認定が必要になることもあります。

自動ドアであっても、これらのいずれかに**「該当する性能と認定を持つ」**必要があります。

注意点:自動=不適合、ではないがハードルは高い

「自動ドアだから防火設備として使えない」というわけではありません。ただし、防火設備には以下のような条件が課せられるため、一般的な自動ドアがそのまま使えることは稀です:

  • 炎が貫通しない遮炎性(通常30分以上)
  • 火災時に自動的に閉じる機構があること
  • 電源が断たれても閉じる動作ができる構造であること
  • 煙感知器などとの連動機能

これらを満たした「防火設備用の自動ドア」も存在しますが、一般流通品とは別設計・別価格帯となるケースが多くなります。

根拠:建築基準法施行令第112条と告示

たとえば、建築基準法施行令第112条や、告示第1360号などにより、「防火設備に求められる性能」「特定防火設備の構造」などが明示されています。これらの法律に適合していることが、認定や申請のうえでの前提条件になります。


アルミ製の自動ドア、なぜ防火設備に向かないのか?【素材の性質】

結論:アルミは防火設備としては基本的に「不適」

まず、結論から述べると、アルミ製の自動ドアは防火設備として使用するには非常に不向きです。その理由は、素材の物理特性にあります。

根拠:アルミの融点と耐熱性

アルミニウムの融点は約660℃。これは火災時の室内温度(600~1,000℃)に対して非常に低い数値です。つまり火災発生時にアルミ部材はすぐに変形・溶解してしまい、ドアとしての遮炎性能が保てなくなります。

また、アルミは熱伝導率も高いため、炎が直接当たらなくても、熱が伝わって変形・劣化を起こしやすいという問題もあります。

現場での実例:設計段階でのやり直し事例

たとえばある商業施設では、既存のアルミ製自動ドアを活かそうと設計を進めたものの、消防検査で不適合となり、急きょ「特定防火設備」に対応したドアに変更する事態が発生しました。

設計変更に伴うコスト・工期の増加に加え、審査機関からの指摘対応で相当な労力がかかったとのこと。アルミ製ドアのまま進めようとするのは、実務上は非常にリスクが高い判断となります。


あなたの自動ドアは使える?既存ドアの「防火適合チェックリスト」

要点:既設のアルミ製自動ドア、まずはここを確認

すでに建物に設置されているアルミ製自動ドアについて、「防火設備として使えるのか?」を判断するためには、以下のチェックポイントを確認することが重要です。簡易に済ませようとすると後で大きな手戻りになることもあるため、慎重に検討しましょう。


チェックリスト:防火適合の判定ポイント

  1. 型式認定の有無を確認
    • ドア枠や扉の内側に「特定防火設備認定番号」や「防火設備認定プレート」が貼付されているか。
    • なければ、防火設備としては未認定の可能性が高い。
  2. 遮炎性能の記載を確認
    • 設計図書や施工時の仕様書に、「遮炎30分」「耐火1時間」などの性能表記があるか。
    • 表記がなければ、防火性能が立証できない状態。
  3. 素材がアルミ製かを確認
    • ドアパネルや枠の素材がアルミである場合は、前述の通り基本的に不適合。
    • スチールやステンレスであれば、次項で対応可否を判断。
  4. 火災時の動作機能があるか
    • 火災時に自動的に閉まる構造(例:スプリング閉鎖、電磁ロック解除など)が組み込まれているか。
    • 煙感知器との連動、停電時閉鎖機能の有無も確認。
  5. 書類が揃っているか
    • 消防署や建築審査機関に提出するための型式認定書・仕様書・施工記録があるか。
    • 不足している場合、設置後であっても再検査・再申請が求められる可能性あり。

よくある落とし穴:業者の「大丈夫ですよ」をうのみにしない

設置業者や販売店から「これは防火対応品ですよ」と口頭で言われても、それだけでは通用しません。認定ラベル・型式番号・提出書類など、正式な根拠が明確になっていなければ、消防や建築指導課では「不適合」とされるケースが多くあります。


まとめ:判断に迷ったら「書類」「素材」「動作」で3点確認

  • 型式認定と書類があるか?
  • アルミ製でないか?
  • 火災時に閉まる構造があるか?

この3点を起点に、「自動ドア=使える」と思い込まず、一つずつ丁寧に確認することが重要です。


防火対応の自動ドア、どんなタイプがある?【素材・動作方式別に整理】

要点:防火設備として「認定」されている製品の種類と特徴

防火設備に対応した自動ドアには、特定の素材や機構を備え、法的な認定を受けたものがあります。ここでは、実際に使われている製品タイプを「素材」と「動作方式」の2軸で分類しながら整理します。


素材別分類:防火性能を担保する代表的な素材

素材防火適合度特徴・備考
スチール製遮炎・耐熱性能に優れ、特防にも多く採用。重量はあるが信頼性高い。
ステンレス製耐腐食性と耐熱性を両立。高級建築や医療施設にも採用される。
ガルバリウム鋼板軽量で加工性が良く、防火性能も一定評価。内装制限あり。
アルミニウム×耐熱性が低く、原則として防火設備には不適。

特に、スチールやステンレスは遮炎時間(30分〜1時間)をクリアしやすく、多くの認定製品が存在します。


動作方式別分類:火災時に「確実に閉まる」機構が重要

動作方式特徴防火設備適合性
スプリング機構火災時や停電時にドアが自動的に閉まる設計。
電磁ロック連動通常時は開放、火災信号で通電が切れ閉鎖。
電気駆動+UPS搭載自家発電で閉鎖動作を維持。コストは高いが確実。
通常の電動自動ドア通電しなければ閉じない。火災時不適合。×

防火設備として認定されるためには、「火災時に確実に閉鎖される構造」が求められます。停電や制御盤損傷など、非常時でも動作する設計が必要です。


製品の選び方:建物の用途と設置環境で判断を

  • 病院・高齢者施設など避難が遅れる場所:確実な閉鎖が優先され、UPS付きやスプリング機構型が好まれる
  • 商業施設や駅など高頻度通行エリア:開閉速度・安全性を両立させる必要があり、認定済の高性能機種が必要
  • 集合住宅・公共施設:自治体ガイドラインに基づく製品選定が求められる

特定防火設備の確認方法

国土交通省や各自治体で公開されている「特定防火設備認定一覧」から、製品メーカー・型式で検索が可能です。また、製品に貼付された認定プレートの型式番号をもとに、性能証明書類を取得することで証明が可能になります。


非常時に閉じるドアとは?「電気がなくても閉まる構造」の意義

要点:防火設備で最も重視されるのは「確実に閉じる」こと

火災時、開口部を閉じることができなければ、防火設備としては機能しません。とくに自動ドアの場合、「普段は開けっ放し」であることが多く、非常時に自動で確実に閉じる構造かどうかが、防火設備として認定されるうえで最も重要なポイントになります。


背景:なぜ「電気不要な閉鎖構造」が求められるのか?

多くの火災は電源喪失と同時に発生します。そのため、次のような事態は想定されます:

  • 停電でモーターが作動しない
  • 制御盤が焼損し、指令が届かない
  • センサーが故障しても開きっぱなしになる

このようなリスクを避けるには、電気に依存しない構造=重力・バネなどの物理的な閉鎖機構が必要です。


構造例:「荷重式」や「スプリング閉鎖構造」とは?

  • 荷重式(Newton方式)
    • 扉に一定の荷重をかけることで、常に閉じる方向に力が働く構造。
    • 開ける際には人の力やモーターが必要だが、停電時でも確実に閉鎖。
    • 電力を「開けるとき」だけに使うため、火災時の閉鎖安全性が極めて高い。
  • スプリング閉鎖型
    • ドアに内蔵されたスプリングが、常に閉じる方向にテンションをかける。
    • 火災信号や電源断でロック解除し、自動閉鎖。

見落とされがちな利点:復旧やメンテナンスもシンプル

「電気がなくても閉じる構造」は、火災時だけでなくその後の復旧のしやすさ部品交換の容易さにもつながります。

  • 電気制御に依存しない=復旧が速い
  • 焼損範囲が狭く、交換部位が限定的
  • 長期使用でも劣化要因が少ない

こうした視点は、防火設備としての信頼性だけでなく、BCP(事業継続計画)や自治体施設の運用継続性という点でも大きなメリットになります。


自動ドアは「開けやすさ」より「閉じやすさ」を優先すべき場面がある

建物用途やゾーンごとに、自動ドアに求められる性能は異なります。たとえば高齢者施設や避難経路上にある扉であれば、「日常の通行性」以上に「非常時の確実な閉鎖性」が優先されます。

その意味で、「電気を使って閉める」よりも「電気がなくても自然に閉まる」ドア構造が選ばれるべき場所は確実に存在します。


防火設備で失敗しない!「素材×設計」の判断ステップ

要点:素材だけでなく「設計との組み合わせ」で成否が決まる

防火設備としての自動ドア選びで最も多い失敗は、「素材さえ良ければ大丈夫」と思い込むことです。実際には、素材と動作構造、そして設計上の配置や用途との“かけ算”で防火適合が決まるのです。


判断ステップ①:用途別に防火区画の要否を整理する

まずは建物全体の用途や構造から、防火区画が必要な場所を把握します。

  • どのエリアに防火区画が必要か?
  • 扉がある場所が避難経路かどうか?
  • 誰が使うドアか?(高齢者、児童、車椅子利用者など)

これらをもとに、「そこに設置するドアに、どんな閉鎖性・素材耐性が求められるか」を明らかにします。


判断ステップ②:必要な性能条件を明確にする

用途と区画が明確になったら、以下のような性能要件を整理しましょう:

  • 遮炎性能:30分 or 1時間?
  • 動作機能:火災時に閉鎖/停電時閉鎖/煙感知連動
  • 素材特性:アルミNG、スチール・ステンレスOK
  • 建築基準法・消防法上の「防火設備」「特定防火設備」該当性

このように、必要性能をリストアップしてから製品を探すのが正しい順序です。


判断ステップ③:素材と機構を組み合わせて選定する

性能が整理できたら、それを満たす素材・機構を選びます。

要件素材の選択動作方式の選択
遮炎性が必要スチール、ステンレススプリング/荷重閉鎖型
腐食環境(海沿い等)ステンレス電磁ロック+UPS併用
開けたままが基本自動制御+火災時閉鎖電磁ロック解除+スプリング型
非常時も確実に閉鎖ガルバ・スチール荷重式 or スプリング閉鎖型

このように、「素材」と「動作機構」の両方を踏まえた組み合わせで判断していくと、設置後のトラブルも最小限に抑えることができます。


よくある失敗:製品仕様を見ただけで「安心」と思い込む

防火設備として認定されている製品であっても、設計・配置・施工が正しくなければ不適合と判断されることもあります。

  • 煙感知器との連動が未設置
  • 常時開放の状態で使っていた
  • 法令の改正による性能不足(例:準耐火→耐火へ変更)

このような点も、設計段階・選定段階で確実に確認しておく必要があります。


専門家の視点:「素材×構造×設計」で見極める

最後に、防火設備としての自動ドアを成功させるには、素材や製品スペックだけでなく、建物全体とのバランス、使い方、非常時動作のシナリオまで含めた設計が不可欠です。

  • 誰がどう使うドアか
  • 火災時にどう動くべきか
  • それを実現する素材と構造は何か

このような順序で判断すれば、防火設備としての「適ドア適所」が実現できるはずです。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

防火設備としての自動ドアを検討する際、以下の3つの視点が重要です。


1. 素材の性質に注意する:アルミは原則不適

アルミは熱に弱く、火災時には遮炎性能を保てないため、防火設備としては基本的に不適です。スチールやステンレス、ガルバリウムなど、遮炎・耐火性が高い素材が必要とされます。


2. 動作構造で選ぶ:「閉じること」に注目せよ

防火設備では、火災時に確実に閉鎖されることが必須です。特に、**停電時やシステム異常時でも閉じる構造(スプリングや荷重式)**が求められます。自動ドアでもこの条件を満たすものはありますが、一般的な電動ドアでは対応できません。


3. 「適ドア適所」の視点で選定する

防火設備としてのドア選定では、「素材」「構造」「配置」「用途」すべての条件を組み合わせて最適な判断が必要です。
Newtonドアのように、閉じる機能に電気を使わない構造は、停電時のリスクやBCP視点でも有効な選択肢の一つです。


自動ドアの選定は、単に便利さだけでなく「万が一のときに命を守る設備」であるという認識が重要です。現場の状況に応じた適切な素材・構造・製品を選び、「適ドア適所」の思想で、安全と機能のバランスを実現していきましょう。


出典・参考資料一覧

  • 建築基準法施行令第112条
  • 国土交通省「防火設備に関する技術的基準」
  • 消防庁「防火区画における設備設置基準」
  • LIXIL、三和シャッター、文化シャッター各製品カタログ
  • 自社資料「Newtonドアの安全性検証とJIS規格整合性」
  • チラシ資料(Nドア 自治体・マンション編)
  • NドアFAQ・導入事例・チャネル構成

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