自動ドアと聞くと、商業施設や駅のような大規模な場所を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実は飲食店の店舗設計においても「入口ドアの選択」は、意外にも集客や運営の成否を左右する大きな要素です。入口は、お客様が初めて接する「お店の顔」。その第一印象は、見た目だけでなく、使い勝手や快適さにも直結しています。
本記事では、飲食店の設計・開業を検討中の方に向けて、「自動ドア or 手動ドア」どちらを選ぶべきかを、設備コストや衛生面、顧客の快適性といった多角的な視点で整理。さらに、電気を使わない「荷重式自動ドア(Newtonドア)」という選択肢についても解説し、後悔しない店舗設計のための判断軸をお届けします。
目次(このページの内容)
飲食店の「入口設計」が店舗の成否を分ける理由
問い:飲食店の入口、そんなに重要?
答えは「YES」。入口の設計は、お店の第一印象だけでなく、快適性・安全性・回転率など、店舗運営に直結する要素が多く含まれます。
手順:なぜ入口が重要なのか?
- 第一印象を決める「視認性」
人通りの多い通りに面した店舗では、どれだけ目立つかが集客に直結します。透明なガラス扉で中が見えることは、入りやすさにも影響します。 - スムーズな動線設計
入口の開閉がスムーズであることは、特に混雑時において重要。手動で重たい扉は回転率を下げる要因にも。 - 衛生対策・接触軽減
特に感染症対策が重視される昨今、入口での接触回避は大きな安心感につながります。 - 空調効率と快適性
扉の閉まりが悪いと、夏は冷気が逃げ、冬は寒風が入り込むことで、顧客の滞在快適性を損ないます。
根拠:
入口周辺の印象・温度・動きやすさは、来店客の“無意識”に作用します。リピーター獲得や口コミ形成において、実は大きな差を生む部分なのです。
「自動ドア or 手動ドア」どちらがいい?飲食店ならではの判断軸
問い:飲食店にとって、自動ドアは贅沢品?それとも必要設備?
答えは「場合による」。どちらが優れているという話ではなく、店舗の形態や運営スタイルによって最適な選択が異なるのが実情です。
比較表:自動ドア vs 手動ドア(飲食店向け)
| 項目 | 自動ドア(電動) | 自動ドア(荷重式) | 手動ドア |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 高め(機器+配線工事) | 安価(電気不要) | 最も安価 |
| メンテナンス | 定期点検・電気部品交換有 | 構造がシンプルで壊れにくい | 少ないが経年劣化あり |
| 衛生対策 | ◎(非接触開閉) | ◎(非接触開閉) | △(手で触れる) |
| 開閉速度・静音性 | ◎ | ○ | △(重い/騒音の可能性) |
| デザインの自由度 | △(機器設置の制限) | ○(シンプル構造) | ◎(多様なデザイン可能) |
| バリアフリー対応 | ◎(認証仕様もあり) | ○(物理的に自動で開く) | △(補助が必要な場合も) |
| 空調効率(開閉頻度) | ○(センサー制御可) | ◎(必要時のみ開閉) | △(開けっぱなしの恐れ) |
根拠:
- 手動ドアはコスト面で優れますが、利便性や感染症対策では後手に回ります。
- 電動自動ドアは快適ですが、コスト・配線工事・メンテ負担がネックに。
- 荷重式自動ドアは「電気を使わずに自動で開く」という独自性で、両者の中間に位置する選択肢です。
要点: 飲食店の形態(立ち食い/ファミレス/カフェ/高級店など)や営業時間、来店者層(高齢者・子連れ)によって、必要とされる入口機能は異なるため、「どちらが優れているか」ではなく「何に優れているか」で選ぶのが最適解です。
飲食店における「荷重式自動ドア」という選択肢とは?
問い:電気を使わない自動ドアって、本当に使えるの?
答えは「用途によっては非常に有効」。特に飲食店にとって、荷重式自動ドアはコスト・衛生・快適性の観点で見逃せない選択肢です。
根拠:荷重式自動ドアのしくみと特徴
荷重式自動ドアとは、ドア前のマット(床面)に人が乗ることで開閉する「人の重さ」を利用した非電動の自動ドアです。
代表例として、**Newtonドア(Newtonプラス社)**があります。
特徴まとめ:
- 電源不要:停電時もそのまま使える
- 非接触:手で触れずに開閉できるため、衛生的
- 設置が簡単:電気配線がいらないため、工事が軽微で済む
- 故障が少ない:構造が非常にシンプルで、長期的に安定稼働
- 開閉音が静か:飲食空間の快適さを損なわない
- 空調効率が高い:ドアが必要な時だけ開く構造(センサー式より無駄が少ない)
飲食店との相性:どんな店に向いているか?
- 個人経営のカフェ・定食屋など: コストを抑えつつも衛生面に配慮したい
- テイクアウト専門店: 回転率重視&手がふさがっている顧客が多い
- 高齢者が多く来店するエリアの店舗: 押す・引く動作を軽減できる
- 省エネを意識する店舗設計: 電気代をかけずに快適性を保つ
要点:
「自動ドアを入れたいけど、コストやメンテが不安…」という飲食店にとって、**荷重式自動ドアはまさに“ちょうどいい選択肢”**です。
飲食店での実際の導入事例と「適ドア適所」の考え方
問い:他の飲食店って、どんなドアを選んでるの?
答えは「店の立地・規模・客層によって、選び方が全く違う」。つまり「適ドア適所」です。
実際の導入事例(Newtonドア)
- 郊外型の個人経営カフェ(約20席)
- 課題:入口が風除けなく寒い/ドアが重くて開けづらい
- 導入:荷重式自動ドア(引き戸型)を採用
- 効果:高齢客層にも好評/冬場も入口がスムーズに閉まり、空調効率UP
- 都市部のテイクアウト専門店
- 課題:回転率を上げたい/手がふさがった客が多い
- 導入:片開きの荷重式ドア+開口部を広く設計
- 効果:スムーズな出入りでストレスが減少/手動より衛生的と好評
- 大型商業施設内のフードテナント
- 課題:施設規定で電動機器の設置が制限されていた
- 導入:荷重式自動ドア(簡易施工で対応)
- 効果:工事の手間も最小限で済み、短期開業が可能に
適ドア適所:用途別の最適な入口選び
| 店舗の特徴 | 最適な入口形式 | 理由/条件 |
|---|---|---|
| 小規模・低予算 | 手動ドア/荷重式自動ドア | 初期費用を抑えたい/シンプル運用 |
| 高齢者・子連れが多い | 荷重式自動ドア | 力を使わずに出入りできる |
| テイクアウト中心 | 荷重式 or 電動自動ドア | 両手がふさがっていても開閉できる |
| 高級感を出したい | 電動自動ドア(全自動) | 高い静音性/外観の重厚感 |
| オープンテラス併設 | 手動ドア(フルオープン型) | 季節性を重視/開放的空間演出 |
要点:
「ドアは入口設備であって、設計の後に決めるもの」ではなく、店舗運営そのものと密接に関係する重要要素です。
店舗の個性・ターゲット顧客・提供価値に合わせて、最適な“入口体験”を設計することで、リピーター獲得や業績向上にもつながります。
店舗設計の初期段階で「入口設計」を決めておくべき理由
問い:入口のことって、店舗の間取りが決まってから考えればいい?
答えは「それでは遅すぎることが多い」です。入口設備は、設計の初期段階で検討しないと、後から大きな設計変更やコスト増加の原因になります。
根拠:入口設備が後回しにされやすい理由とそのリスク
- 設計者の視点に入口設備が含まれていないケースが多い
→ レイアウトや構造を優先し、入口は「あとで決めましょう」となりがち。 - 自動ドアに必要なスペースや構造が反映されていない
→ あとから無理に設置しようとすると、壁厚の再検討、開閉スペースの確保などで設計変更が必要。 - 予算配分で後回しにされる
→ 内装や厨房に予算を使いすぎて、「ドアにお金をかける余裕がない」となりやすい。
設計段階で伝えるべき「入口に関する5つの観点」
- 来店客の年齢層・利用シーン(高齢者/ベビーカー/テイクアウト)
- 営業時間と気候条件(開閉回数、空調効率を考慮)
- 衛生対策の重要度(接触回避がどの程度求められるか)
- 店舗のブランド性と見た目(外観と一体感のある入口設計)
- 電源の有無や配線の可否(電動ドアか荷重式かの判断基準)
要点:
入口ドアの選択は「単なるドア選び」ではなく、設計コンセプトと直結する重要な要素です。
「入口は後で決めればいい」は大きな落とし穴。初期段階からしっかりと設計に組み込んでおくことで、理想の店舗像により近づけます。
自動ドア導入の前に考えておきたい「7つのチェックポイント」
問い:自動ドアを導入すべきか、どう判断すればいい?
答えは「7つの観点で整理して考える」と、迷いがなくなります。
チェックポイント①:電源が取れるか?
- 電動式自動ドアには専用の電源工事が必要
- 電源が取りづらい場合は、荷重式など電気を使わない選択肢を検討
チェックポイント②:開閉の頻度は多いか?
- テイクアウト店や回転率重視の店舗では、自動ドアが有利
- 開閉が少ないなら、手動ドアでも問題ないことも
チェックポイント③:衛生対策を重視するか?
- 飲食店においては、入口の非接触化が信頼性に直結
- 感染症リスクの軽減を打ち出すなら、自動開閉の導入を検討
チェックポイント④:高齢者や子連れの利用が多いか?
- 押す・引く動作が負担になる場合は、自動ドアが有効
- 荷重式なら、簡単にバリアフリー化が可能
チェックポイント⑤:冷暖房効率は重要か?
- 手動ドアは「開けっぱなし」になりがち
- 自動ドア(特に荷重式)は必要時のみ開くため、空調効率が高い
チェックポイント⑥:外観・内装のデザインにこだわりたいか?
- 自動ドアは、機器の存在感が出やすい
- 荷重式はシンプルで、内装に馴染みやすいデザインが可能
チェックポイント⑦:予算や工期に制約があるか?
- 電動式は工期・工事費ともにかかる
- 荷重式は工事が簡易で、コスト・スケジュール両方に優しい
要点:
この7つの観点でチェックすることで、**「店舗にとって本当に必要な入口設備は何か?」**が見えてきます。
迷ったときは、「売れ筋」や「他店舗の真似」ではなく、**自分の店舗の運営に合った判断軸(適ドア適所)**を持つことが、後悔しない設計への第一歩です。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
飲食店の店舗設計において、「入口ドアの選択」は、単なる出入口の話ではなく、お客様の体験価値と店舗運営の効率性を左右する重要な要素です。
本記事のまとめ:
- **入口設計は「第一印象」+「動線」+「衛生」+「快適性」**を支える要
- 「自動 or 手動」は店舗の条件によって正解が異なる(適ドア適所の視点)
- **荷重式自動ドア(Newtonドア)**は、電気不要・衛生的・シンプルな構造で飲食店にフィット
- 店舗の種類、客層、立地条件に応じて「最適なドア選び」は変わる
- 設計初期段階で入口まで含めて考えることで、トータルで無理のない導線が実現
- 最後は「自分の店のスタイルに合っているか?」を判断基準に
入口設備に“正解”はありません。あるのは「その店に合っているかどうか」。
流行や価格だけで選ぶのではなく、「お客様の快適性」と「運営のしやすさ」を両立できるドアこそが、あなたの店舗にとっての最適解です。
出典・参考
- Newtonプラス株式会社「Newtonドア」製品資料
- NドアFAQ/導入事例資料
- 自社チャネル情報(店舗・自治体・集合住宅別の適用)
- Newtonドアの安全性検証とJIS規格資料
- 飲食店向けチラシ資料