福岡でお店を開業しようと思ったとき、多くの人がまずぶつかるのが「店舗づくり、どこから手をつければいいのか？」という壁です。
業者を探すにしても、「設計」と「デザイン」と「施工」の違いがよくわからない。費用感もわからないし、相談の仕方もわからない――。
この記事では、そんな不安を解消するために、福岡という地域性を踏まえた上で、店舗デザイン・設計の基礎から、実際に依頼する流れ、費用感、失敗しない業者選びの視点まで、まるごと解説していきます。
目次（このページの内容）
そもそも「店舗デザイン」と「店舗設計」は何が違う？
要点：
「デザイン」は見た目と空間の印象を、「設計」は図面と安全性を担う役割があります。
内装工事と混同されやすいですが、それぞれの専門領域があるため、まずその違いを押さえることが大切です。
詳細：
「店舗デザイン」とは、お客様にとって心地よく、印象に残る空間をつくるための演出やブランディングの要素を含んだ仕事です。一方で「店舗設計」は、法律や安全性を考慮して、構造や設備などを具体的な図面に落とし込む作業を指します。
内装業者は、設計が済んだ後に実際の工事を担当します。つまり、企画→設計→施工という順番で進むのが一般的です。
店舗づくりの流れを5分で把握する：設計から施工までの全体像
要点：
店舗づくりは、「企画 → デザイン設計 → 設備設計 → 施工 → 引き渡し」というステップで進みます。
この流れを知るだけで、相談先の選び方やスケジュール感がクリアになります。
詳細：
- 企画・ヒアリング：お店の業種、ターゲット、広さ、開業時期、予算などを共有。
- デザイン設計：空間の使い方、導線、素材、照明などのイメージづくり。
- 実施設計：電気・水道・空調などの設備設計や構造計算。
- 見積もり・契約：工事内容と費用のすり合わせ。
- 施工（内装工事）：実際の工事フェーズ。通常は3〜6週間が目安。
- 引き渡し・保守：検査後に店舗を引き渡し、場合によっては保守サポートも。
この中で、「設計」だけを専門とする設計事務所もあれば、「設計と施工を一括で対応」する会社もあります。
福岡で店舗を出すなら、地域性を活かした設計がカギ
要点：
福岡はエリアごとに集客動線や客層が異なります。地域特性に合わせた設計が、長く愛される店舗づくりの第一歩です。
詳細：
福岡は、天神・大名のようなトレンド感のある都市部と、春日や大野城などの住宅地的エリアではまったく客層が異なります。
たとえば、
- 天神・今泉周辺：デザイン性重視、インスタ映えや「空間体験」に価値を置く若年層
- 薬院・平尾エリア：感度高めの30〜40代女性、落ち着きとセンスが共存する空間が好まれる
- 博多駅周辺：ビジネスマンや観光客向けの回転重視型。目立つサイン計画と明快な導線がカギ
設計・デザインを福岡で考えるなら、このような地域性に合ったコンセプト設計が必要になります。
「全国どこでも同じデザイン」では、福岡の店舗づくりにおいては大きな機会損失につながります。
どんな業種にどんな設計が向いている？【業種別ヒント集】
要点：
業種ごとに「集客導線」「空間配分」「演出」の考え方が異なります。代表的な業種別の傾向を把握することで、自分に合った設計イメージを明確にできます。
詳細：
1. 飲食店（カフェ・レストラン）
- 滞在型 or 回転型かでレイアウトが大きく変わる
- キッチンとの動線、客席のパーソナル空間、トイレの位置などを重視
- オープンキッチンとカウンター主体か、個室を主体とするか
2. 美容室・サロン
- 非日常感と安心感のバランスが重要
- スタイリングスペースの照明やバックヤード動線が業務効率を左右する
- キッズスペースや受付ゾーンの設計も差別化要素に
3. クリニック・医療施設
- 清潔感・安心感が第一。患者さんの「視界」に配慮する設計が必要
- プライバシー確保と動線の明確化がカギ
- 医療法に基づいた設計（面積、通路幅など）も要チェック
4. 物販・雑貨・アパレル
- 動線計画が売上を左右する
- 「見せたい商品」と「回遊性」のバランスをとる
- ブランドイメージを空間に落とし込むセンスが重要
店舗デザインの費用感とコスト配分の考え方
要点：
費用は「設計費」「施工費」「その他費用」に分かれます。予算をどう割り振るかが、満足度と成功率を左右します。
詳細：
店舗づくりには、主に次の3つの費用が発生します。
| 費用項目 | 内容例 | 目安費用（坪単価） |
|---|---|---|
| 設計・デザイン費 | 設計図作成、コンセプト設計、図面管理など | 3万〜10万円／坪 |
| 施工費 | 解体、造作工事、電気・空調・水道、内装仕上げ | 10万〜30万円／坪 |
| その他費用 | 看板、什器、照明、厨房機器、申請費用など | プロジェクトによるが別途見積もり |
たとえば、20坪のカフェで「普通のこだわりレベル」の設計・施工を行う場合、
ざっくり300万円〜600万円が相場となります（あくまで一例）。
削ってもよいコスト、削ってはいけないコスト
| 削っていい場合もある | 削ってはいけない |
|---|---|
| 壁紙や床材のグレード | 空調・電気・換気などの設備系 |
| 装飾小物や観葉植物 | 導線や厨房・トイレ位置などの基本構造 |
| 看板のデザイン初期段階 | 消防法や建築基準法への対応設計 |
見た目以上に「見えない部分」の品質が店舗の寿命を左右します。
特に飲食や医療関係では、換気・給排水・電気の設計ミスが大きなリスクになるため注意が必要です。
依頼先はどう選ぶ？設計事務所・工務店・一括対応の違い
要点：
店舗づくりは「誰に頼むか」で結果が大きく変わります。依頼先の違いと選び方を知ることで、後悔のない判断ができます。
【比較表】依頼先ごとの特徴
| 種類 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 設計事務所 | 空間演出とブランディングに強く、オリジナリティ重視の設計が得意 | 他と差別化したい、ブランド性を重視したい |
| 工務店・内装業者 | コスト重視でスピーディな対応が可能。設計の自由度はやや低い | 費用を抑えたい、スピード重視 |
| 一括対応会社 | 企画・設計・施工をワンストップで対応。全体の連携がスムーズ | 店舗づくりが初めてで、全体を任せたい |
メリットとデメリットの整理
- 設計事務所は、デザイン性は高いが「施工段階での調整」に時間がかかることも
- 工務店は価格を抑えられるが、設計提案が弱いケースが多い
- 一括対応はラクだが、対応範囲が会社によって大きく異なるため、得意分野や施工実績を必ず確認すべき
福岡での依頼先を探すポイント
- 福岡での施工実績があるか？（地域特性を理解しているか）
- 業種に強いか？（飲食に強い／美容に強い、など）
- アフター対応やトラブル時のサポートは？（地元密着型は強み）
このような観点から、自分の事業内容や予算、重視するポイントに応じて依頼先を選ぶことが、成功への第一歩になります。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
- 設計・デザイン・施工は、それぞれ役割が異なる。すべてを1社に任せるか、分離発注するかは目的次第
- 福岡で開業するなら「地域性を理解した設計」が他と差をつけるポイント
- 業種によって店舗設計の着眼点は変わる。用途ごとの事例を参考に
- 費用は全体像を理解し、コストの優先順位を明確に
- 依頼先は「得意分野×対応力×実績」で判断するのがベスト
出典・参考情報
- 福岡市の地域特性に関する公開データ
- 各店舗設計会社のWEBサイト・公開事例
- 一般的な設計・施工費用に関する業界統計
- 福岡で実績のある設計事務所・施工業者のヒアリング情報