店舗設計と施工、何から始める?全体の流れと失敗しない判断軸


自分のお店を持つ──それは多くの人にとって、夢のような瞬間です。しかし「店舗の設計や内装工事」となると、一気に現実感を増して、不安が押し寄せてきます。「どこから始めればいいのか分からない」「誰に相談すればいいの?」「費用っていくらぐらい?」──そんな疑問を抱えるのは当然です。

実際、店舗設計と施工は「建築の知識」だけでなく、「事業としての戦略性」や「安全性・法規対応」「コスト配分」など、多くの判断が重なり合う非常に重要なプロセスです。しかも、最初の一手を間違えると、あとから取り返しのつかないことにもなりかねません。

この記事では、そんな不安や疑問を持つ方のために、「店舗設計と施工の全体像」「失敗を避けるための判断軸」「見落としがちなチェックポイント」までを、順を追ってわかりやすく整理していきます。

設計士でも施工業者でもない「施主=あなた」が、どういう視点で準備・判断していけばいいのか。この記事を通じて、自分の店舗を自分の意志でつくっていくための地図を手にしていただければ幸いです。


目次(このページの内容)

店舗設計と施工、最初にやるべきことは?

要点:
店舗づくりの第一歩は、「設計と施工の全体像」を把握することです。どんなに良い業者でも、施主自身がゴールと現在地を知らなければ、満足のいく店舗にはなりません。


手順:店舗設計〜施工の6ステップ

  1. コンセプト整理と予算感の把握
     どんな業種で、どんなお客さんに、どんな体験を提供するのか。言葉にできなくても、イメージやキーワードだけでもOKです。
     同時に「全体で○○万円以内に抑えたい」など、ざっくりでも予算感を明確にしておくと、以降の業者との相談がスムーズになります。
  2. 物件選定(または取得済の物件情報を整理)
     すでに契約済であれば、「図面・寸法・法的制限(用途地域など)」を把握しておきます。
     物件が未確定の場合でも、候補ごとの条件差を可視化しておくことが重要です。
  3. 設計相談(デザイナー/設計事務所/施工会社)
     自分のコンセプトや予算、スケジュール感を伝えて、「どこまでやってくれるか」「どんな提案があるか」を比較していきます。
  4. 見積と設計図の精査 → 業者決定
     複数社からプランを比較検討し、「設計案の具体性」「費用内訳の明瞭さ」「コミュニケーションの相性」などを見極めましょう。
  5. 工事契約・各種申請手続き
     必要に応じて、消防・保健所・行政への確認や申請が行われます。申請の主体は業者に任せるのが一般的ですが、施主として「何が申請されるのか」は把握しておきましょう。
  6. 着工〜完成・引き渡し・アフター確認
     工程表に基づいて工事が始まります。中間確認や最終チェックは、施主が「自分の目で」見ることもとても大切です。

注意点:業者に“すべて任せる”はNG

「プロに全部任せれば安心」と思いがちですが、設計・施工業者にもそれぞれ得手不得手があります。
たとえば「デザインは得意だが法規チェックが甘い」「施工は確実だが設計の提案力に乏しい」といったケースも。

施主であるあなたが「全体像を理解したうえで判断する」ことが、トラブルや後悔を未然に防ぐための最大の武器になります。


設計と施工は、別にすべき?一括にすべき?

要点:
「設計と施工は、別々の会社に頼むべきか? それとも一括して任せるべきか?」
これは多くの施主がつまずくポイントです。どちらが良い・悪いではなく、それぞれに“向いている状況”があります。


比較:設計施工一括 vs 設計・施工分離

項目設計施工一括方式設計・施工分離方式
流れ1社に全て任せる設計と施工で別会社に依頼
コスト一般的にコストは抑えやすい傾向設計費が明示されやすい(透明性)
コントロール性スピード感があるが、施主の関与が少なめ設計者が施主の代理として施工を監理
トラブル時設計と施工が一体のため責任所在が曖昧になりやすい「設計と施工の板挟み」になるリスクも
向いているケーススケジュール重視、予算重視の人デザインにこだわりたい人、納得して決めたい人

判断基準:「自分がどこまで関わりたいか」

  • 一括方式が向いているのは?
     → 飲食チェーンやフランチャイズのように、パッケージ化されたデザインで早くオープンしたい場合。
     → 予算やスケジュールに明確な制限がある場合。
  • 分離方式が向いているのは?
     → 独自のコンセプトや空間体験を重視したい個人店舗やブランド型ショップ。
     → 建築・デザインにこだわりがあり、細かく関わりたい場合。

根拠:専門性の分担で“見える化”が進む

分離方式では、設計士があなたの立場で「施工の内容と質」をチェックしてくれます。
一方、一括方式では「窓口が一つ」になる代わりに、「中身のチェックは施主次第」ということも。

いずれを選ぶにしても、重要なのは「自分がどれだけ中身を把握できるか」を意識することです。


費用の内訳と、見積もりの落とし穴とは?

要点:
「設計・施工にいくらかかるのか?」──これはすべての施主にとって最大の関心ごとです。
しかし、金額以上に大切なのが「何にいくらかかるのか」「抜けている費用はないか」という構造の理解です。


内訳:費用はこのように分かれます

店舗づくりの費用は、ざっくり以下のように分かれます:

  1. 設計費(全体の5〜15%)
     デザイン、設計図作成、法規チェック、申請補助などの費用。
  2. 施工費(全体の60〜80%)
     解体・下地工事・電気・水道・空調・塗装・仕上げなど現場作業の費用。
  3. 設備・什器費(全体の10〜20%)
     冷蔵庫や調理機器、家具、照明器具、POSレジなどの導入費用。
  4. 申請・検査・諸費用
     消防、保健所、役所への申請や中間検査・竣工検査費用など。
  5. 予備費(全体の5〜10%)
     現場での予期せぬ追加工事や変更対応への備え。

見積書の見方:ここを見逃すと危ない

  • 「一式」と書かれている項目が多すぎないか?
     → 詳細が不明だと比較もできず、後から「そんな話聞いてない」が起きやすい。
  • 「設計費込み」や「申請代行込み」になっているか?
     → 設計施工一括の場合は、これらがオプション扱いになっていることも。
  • 「電気」「空調」「給排水」の項目が具体的か?
     → これらは後から増減が起きやすく、ざっくり記載ではリスク大。
  • 見積の有効期限と支払い条件
     → 分割・前払い・完成後一括など、支払いタイミングを確認。

注意点:予算オーバーは「設計後」に始まる

多くの店舗オーナーが「見積までは想定内だったのに、あとからオーバーした」と語ります。

その原因は、設計段階で「見えない費用」や「条件変更」が多発するからです。
たとえば、「キッチン設備が追加になった」「防火仕様で扉が変更になった」など。

こうした事態を防ぐには、「初期段階でできる限り具体化」すること、
そして「予備費を必ず設定すること」が何より重要です。


設計時に見落とされがちなリスクとは?

要点:
設計段階では、意匠(デザイン)やレイアウトに意識が向きがちですが、実は多くのトラブルや後悔は「この段階での見落とし」に起因します。
とくに初心者にとっては“あとから気づいても遅い”リスクが多く潜んでいます。


リスク1:動線設計が曖昧で、使いにくい店舗になる

  • 客導線(入りやすさ・歩きやすさ・見やすさ)
  • スタッフ導線(厨房・レジ・ストックとの動き)
  • バックヤードと接客スペースの交差問題

→ 店舗設計では「誰が、どこからどこへ、どう動くか」の視点を図面上で検証することが不可欠です。


リスク2:照明・音響・温熱環境の快適性を軽視

  • 昼と夜での見え方の違い
  • 客席に熱がこもる、眩しすぎる、暗すぎる、音が反響する
  • トイレや通路に照度ムラがある

→ 設計士のセンス任せにせず、実際の使用環境で「お客さんとしてどう感じるか」を想像して調整を依頼しましょう。


リスク3:法規・申請の「グレーゾーン」が放置される

  • 消防設備の不足・不適格
  • 保健所基準を満たさない厨房レイアウト
  • 建築基準法・用途地域との不整合
  • バリアフリー・避難経路の未対応

→ 設計士や施工業者が「これはギリギリ大丈夫」と言っていた内容が、あとからNGになることも。必ず文書で根拠を確認しましょう。


リスク4:清掃・維持管理の視点が抜ける

  • 床材の耐久性と清掃性
  • 壁面の汚れやすさ
  • 設備のメンテナンス性(天井裏へのアクセスなど)

→ 毎日使う店舗だからこそ、「見た目」だけでなく「掃除しやすい・壊れにくい」設計が重要です。


リスク5:出入口(開口部)の安全性・運用が未検討

  • 手動ドアでの衝突事故リスク
  • 電動ドアの停電時リスク
  • 子供や高齢者が使う場合の配慮

→ 多くの設計プランでは、出入口=「ドアの開き方」程度にしか扱われません。
しかし開口部の設計は、安全性・避難性・省エネ・清掃性にも大きく影響します。

この点については、次章でより詳しく解説します。


店舗の開口部、どう設計する?

要点:
出入口──それは、お客様が最初に触れる店舗の“顔”であり、同時に「安全性」「導線」「運用性」「省エネ」すべてに関わる重要な構成要素です。
にもかかわらず、設計段階では驚くほど軽視されがちです。


よくある見落とし:「とりあえずドアをつける」

「引き戸か開き戸か」「左開きか右開きか」程度の話で終わっている設計図を、実際によく見かけます。
しかし、以下のような点を考慮せずに設計された扉は、トラブルのもとになります:

  • 人の流れと逆に開くドアでの接触事故
  • ドアノブに触れる必要があることで、衛生面の問題や身体的負担
  • 開け放しによる冷暖房効率の悪化
  • 電動ドアが停電で動かないというリスク

自動ドアを導入するか、の判断軸

自動ドアは「便利」「おしゃれ」という印象だけで選ばれることがありますが、導入判断には以下のような視点が必要です:

判断軸意味検討すべき視点
電源の要否通常の自動ドアは電源が必要停電時の対応、配線のコスト、設置環境
開閉方式引き戸、自動スイング、荷重式など動線・安全性・清掃性とのバランス
利用者の属性子ども、高齢者、障がい者など接触事故リスクの回避、安全な開閉方法
維持コスト電動部品のメンテ費、電気代長期運用時のコスト感覚
閉じた状態での気密性開けっ放しにならない構造か冷暖房効率、省エネ効果

荷重式自動ドアという選択肢

「電源を使わず、人がドアに触れることで自動的に開閉する」荷重式自動ドア(Newtonドアなど)は、
以下のような環境で特に有効です:

  • 電源の確保が難しい小規模テナント・仮設施設
  • 子どもや高齢者が出入りする場
  • 自然換気を活かしながらも、開けっ放しを避けたい場所
  • メンテ費・電気代を削減したい事業者

選定のポイントは「便利さ」ではなく、「目的と場所に応じた適ドア適所」の視点です。


手動ドア=安価、とは限らない

よくある誤解が「手動ドアの方がコストが安い」というものですが、これは初期費用だけを見た話です。
長期運用での省エネ性、開閉による故障リスク、安全性、補修対応のしやすさなどを総合的に見ると、
むしろ「安く済んだつもりが、あとから高くついた」事例も少なくありません。


出入口は単なる“ドア”ではなく、「その店らしさ」と「安全・快適な空間体験」をつなぐ鍵。
設計段階からしっかりと向き合うべき要素のひとつです。


施工段階で“やってよかった”と思えるチェックリスト

要点:
施工が始まったからといって、すべてが順調に進むとは限りません。むしろ、「ここで何を見て、どう関わるか」が、完成後の満足度を大きく左右します。
以下に、施主として押さえておくべき重要なチェックポイントをまとめました。


1. 着工前チェック:設計通りの仕様か再確認

  • 設計図面(特に寸法・仕様・仕上げ)と見積内容が一致しているか
  • 扉や什器の位置、開口部の寸法、安全対策の反映などに食い違いがないか
  • 使用材料のグレードやメーカーが変更されていないか

→「よくある変更ミス」はこのタイミングで止められます。


2. 工事中チェック:現場の進捗を「見に行く」

  • 工事の進行状況が工程表通りか
  • 配線・配管などの隠れる部分を写真に記録しておく
  • 間違いや施工不備を早期に発見できるよう「遠慮なく質問」する

→ 施主が現場に足を運ぶだけで、現場の緊張感も変わります。


3. 中間確認:引き返せるポイントでのチェック

  • 石膏ボードを貼る前、床を貼る前など、内部が見える段階での確認
  • 自動ドアや空調の動作確認(仮設電源で対応可能なことも)

→ 「もっとこうしておけばよかった」を防ぐのは、この時期がラストチャンスです。


4. 竣工チェック:完成後に気づく「微差」に注意

  • ドアの開閉音、スムーズさ、戻りの速さ
  • 床の段差、角の仕上がり、スイッチや照明の配置
  • トイレ・手洗いの動線、臭気の逆流、換気の効き具合

→ 特に「実際に歩いてみる」「座ってみる」「触ってみる」ことが大切です。


5. 引き渡し後:アフター体制と保証の確認

  • 引き渡し時に「完了図書(竣工図)」を必ずもらう
  • 設備や自動ドア、空調機器などの保証内容を確認
  • 不具合があった場合の連絡先や対応期限の明記

→ ここで曖昧なままだと、半年後に「もう対応できません」と言われることも。


注意点:記録を残すこと

設計図、仕様書、写真、保証書、契約書など、「後から確認できる記録」が、
未来の自分を助けてくれます。とくに多店舗展開を検討している人にとっては、
1店舗目での記録が「標準仕様」づくりの土台になります。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

店舗設計と施工は、「理想をかたちにする」工程であると同時に、「想定外の連続」とも言えます。
その中で施主として最も重要なのは、「判断の軸」を持つこと。
業者に丸投げするのでも、細かく管理しすぎるのでもなく、目的と手段を切り分け、自分の店舗にとって本当に必要な選択をするという意識です。

なかでも、盲点になりやすいのが「出入口の設計」です。
開口部は、建物の外と中をつなぐだけでなく、安全性・快適性・エネルギー効率・導線すべてに直結します。
にもかかわらず「とりあえず自動ドア」「安いから手動扉で」など、判断が表面的になりがちです。

しかし、Newtonドアのような「電源不要型の荷重式自動ドア」のように、必要な場所に、必要な機能だけを設置するという視点=「適ドア適所」は、
これからの店舗づくりにおいて極めて合理的かつ持続可能なアプローチです。

空間は、つくって終わりではなく、「使いながら育てていくもの」。
ぜひ、自分の事業に本当に合った設計を、今日から少しずつ描き始めてみてください。


【出典一覧】

本記事は以下の知見・資料を参考に構成しています:

  • 「Newtonドア」製品情報・FAQ・導入事例:Newtonプラス社提供資料(荷重式自動ドアの仕組み、安全性、JIS規格との整合性等)
  • 「Nドア顧客セグメントと導入事例」より:自治体・教育機関・マンションなど多様な導入シーン
  • Web上の主要設計・施工会社記事:
    • it-archi.jp(設計施工の流れ)
    • ixsa-design.com(依頼先の選び方)
    • risby.jp(費用相場と注意点)
    • re-air.jp(法規・消防の視点)
    • and-newlife.com(コスト最適化の方法)

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