自動ドアと聞くと「便利な入口装置」と思われがちですが、実は防犯対策の一部として非常に重要な役割を果たしていることをご存じでしょうか?
一方で、「自動で開く=無防備」と捉える方も多く、防犯面での不安を抱える方が少なくありません。

本記事では、自動ドアが持つ防犯機能や他の設備との連携、選定時の判断軸などについて、専門家視点で徹底解説します。
導入を検討中の方はもちろん、すでに設置されている方でも「後付けできる対策」までわかります。


目次(このページの内容)

自動ドアは「防犯になる」のか? それとも「危険」なのか?

要点:防犯性は設計次第。自動ドアは「入り口管理装置」として機能する

「自動で開く」という性質上、自動ドアは一見すると防犯に向いていないと思われがちです。
しかし、出入り口という建物の最重要ポイントに設置されているため、適切に設計・運用すれば、防犯性を大きく高めることができます。


根拠:なぜ自動ドアが防犯につながるのか?

1. 出入りの視認性を高める

自動ドアは大きく開く構造が多く、通過する人の動きが外部から見えやすくなります。これは「誰かに見られているかも」という心理的な抑止効果を生み、不審者の侵入を防ぐ要因になります。

2. 侵入のスピードをコントロールできる

適切なセンサー設定や開閉速度の調整によって、不審な人物の“すり抜け”を防止できます。開閉タイミングの制御により、侵入を「一瞬のすき間」ではなく、意図的な動作が必要なものにできます。

3. 心理的なバリアとしての機能

「開くための条件がある」自動ドア(例:カード認証や暗証番号入力)があると、それ自体がバリアとなり、不正侵入の動機を失わせます。


このように、自動ドアは「便利なだけ」でなく、「人の出入りを管理する」という本来の目的に立ち返れば、防犯にも有効に活用できる装置なのです。


防犯対策として有効な「自動ドアの機能」とは?

要点:自動ドア単体でも「防犯強化」につながる具体機能がある

自動ドアそのものには、「勝手に開く」というイメージがある一方で、防犯性を高めるための各種機能が存在します。
ここでは、防犯対策として有効な主な機能を4つ紹介します。


機能1:オートロック連動機能

もっとも基本的な防犯対策が、自動ドアと施錠機構の連動です。
オートロックとは、一定時間が経過した後や、外からのアクセスを制限したいときに自動的に施錠する機能のことです。

特徴:

  • 通常は開くが、夜間や無人時間帯は自動的に施錠
  • 住民や関係者はカードや暗証番号で解錠
  • 不審者の侵入リスクを時間帯でコントロール可能

機能2:センサー連動アラーム

赤外線や近接センサーと連携することで、「不審な動き」を検知し、即時にアラームを発報する仕組みです。

特徴:

  • 立ち入り禁止区域への接近を検知
  • 開閉時間外の接近に反応して警告音を鳴らす
  • 管理室や警備会社への通知も可能(要システム連携)

機能3:時間帯による開閉制御

時間帯に応じて開閉挙動を変更できる機能もあります。

例:

  • 営業時間内:フルオープン・来客歓迎モード
  • 営業時間外:カード認証者のみ通行可能
  • 深夜:完全施錠+通行履歴記録モード

このように、**使われ方の「モード切替」**を組み込むことで、防犯性と利便性を両立できます。


機能4:出入り履歴のログ管理

認証システムと組み合わせることで、「誰がいつ通ったか」を記録できます。

特徴:

  • カードリーダー、顔認証、指紋認証などと連携
  • 出入りの履歴が残ることで抑止効果が生まれる
  • 万が一のトラブル時に、ログ確認が可能

防犯設備との組み合わせで、ここまでできる

要点:単体では限界がある自動ドアも、他の防犯設備と連携することで「入口のセキュリティゲート」になる

自動ドアの防犯性を最大限に活かすには、他の防犯機器との連動が鍵になります。
ここでは、特に効果的な3つの連携パターンを紹介します。


パターン1:監視カメラとの連携(顔認証・録画記録)

最も基本的かつ重要な組み合わせが、監視カメラとの連携です。
防犯カメラの映像記録はもちろん、最近ではAI顔認証技術と組み合わせた出入管理も普及しています。

連携効果:

  • 通過する人物を録画
  • 特定人物を顔認証で自動通過 or アラート通知
  • 常連客やスタッフの動線分析にも活用可能

パターン2:カードリーダーや指紋認証との連携

扉を開ける前に、認証動作を必須にすることで、**“自動ドアのロックゲート化”**が可能になります。

連携方法:

  • 非接触ICカード(社員証、入館証など)
  • 指紋・静脈・虹彩などの生体認証
  • スマホアプリによるワンタイム認証も可

防犯効果:

  • 権限のない人は開けられない
  • ログが残るため、万一のトラブルに対応
  • カードやスマホを紛失しても即時に無効化可能

パターン3:遠隔管理システムとの連携(通信制御)

最近は、クラウド管理型の遠隔セキュリティシステムとの連携も進んでいます。

できること:

  • 管理室や警備会社でリアルタイムに施錠・解錠
  • 非常時に強制ロック・開放
  • 通行履歴や異常検知をオンラインで監視

結論:設備連携で「入口そのもの」が防犯システムになる

自動ドアを入口装置としてだけでなく、人と建物をつなぐセキュリティの要所と捉えることで、非常に高い防犯効果を得られます。
「ただのドア」ではなく、「制御された通路」にするという考え方が、防犯性を一段上へ引き上げるのです。


どんな建物に、どんな防犯仕様の自動ドアが適しているか?

要点:「出入りの特性」と「管理のしかた」で最適な自動ドアは変わる

防犯対策としての自動ドアは、建物の種類によって必要な機能や設計が異なります。
ここでは、代表的な4つの建物タイプを例に、どんな仕様が適しているかを整理します。


① マンション・集合住宅

特徴:

  • 入居者・来訪者・配達業者など出入りが多い
  • 夜間や無人時に狙われやすい
  • 高齢者や子どもの安全も考慮が必要

推奨仕様:

  • オートロック付き自動ドア
  • インターホン・顔認証・カードリーダーとの連携
  • 夜間は居住者専用モード(外部は施錠)

② 高齢者施設・医療機関

特徴:

  • 入居者・患者の安全確保が最優先
  • 無断外出・不審者の侵入を防止したい
  • スタッフは頻繁に出入りする

推奨仕様:

  • 内側からの自動開閉制御(誤作動防止)
  • 出入り履歴記録機能
  • 非常時は一斉開放できるシステムとの連携

③ 小売店舗・飲食店

特徴:

  • 営業時間中は自由な出入りを確保したい
  • 商品盗難・深夜侵入を防ぎたい
  • スタッフのセキュリティ意識は低めなことが多い

推奨仕様:

  • 営業時間外は自動施錠
  • カメラ・センサーとの連携で侵入検知
  • 閉店作業時の「一斉ロック」機能

④ オフィスビル・事業所

特徴:

  • 社員の出入り管理が重要
  • 情報資産や設備の保護が必須
  • ビジター対応も多い

推奨仕様:

  • カード認証付き自動ドア
  • 通行履歴ログ管理
  • 訪問者用ゲートと従業員用ゲートを分離

決め手は「使う人」と「時間帯」

同じ自動ドアでも、「いつ」「誰が」「どう使うか」によって最適な防犯機能は変わります。
大切なのは、建物と人の動きにあわせて、防犯仕様を調整できる自動ドアを選ぶことです。


「開閉方式」や「動作原理」によって防犯性はどう変わる?

要点:ドアの「開き方」や「開くしくみ」そのものが、防犯性能に大きく影響する

自動ドアには、いくつかの種類がありますが、「どのように開くか」や「どんなしくみで動くか」によって、防犯の視点では大きな差が生まれます。


開閉方式による違い

引き戸式(スライドタイプ)

  • 特徴:左右にスライドして開く方式
  • 防犯面のメリット:
    • センサー連動や電気錠との相性が良い
    • 開閉速度の調整がしやすく、すり抜け防止が可能
  • デメリット:
    • ドアが軽い構造だと、強引なこじ開けに弱い場合がある

開き戸式(スイングタイプ)

  • 特徴:ドアが内外に開く方式
  • 防犯面のメリット:
    • 頑丈な素材とあわせれば高いバリア性能
    • 通常の手動ドアに近いので、制御が効きやすい
  • デメリット:
    • 誤開放による接触事故の懸念(高齢者・子ども)

動作原理による違い:「電動式」と「荷重式」

ここで注目したいのが、動作原理そのものが防犯性に影響を与える点です。

電動式自動ドア

  • 特徴:モーターやセンサーによって自動で開閉する一般的なタイプ
  • 防犯面:
    • 様々な機器との連携が容易(認証、ロック、警報)
    • システム停止時は手動で開くものもあり、防犯性が下がることも

荷重式自動ドア(例:Newtonドア)

  • 特徴:人が“乗る”ことによってドアが開くシンプルな物理構造
  • 防犯面:
    • 電気を使わず、誤作動・遠隔操作が起こらない
    • 「誰でも開けられるわけではない」=物理的なセキュリティが高い
    • 非常時や停電時にも安心

荷重式は、そもそも「必要な人しか開けない」構造になっているため、電動制御とは異なる「原始的かつ確実な防犯性」が魅力です。


防犯性を高めるには「適ドア適所」の考え方が必須

自動ドア選びで失敗しないためには、建物の構造、使う人の特性、運用体制までを踏まえて、ドアの形式・開閉方式・制御方法を適切に組み合わせる必要があります。

これは単に「高機能なドアを選ぶ」という話ではなく、場所にあった“最適なドア”を選ぶ視点=適ドア適所が重要になります。


【まとめ】防犯視点で選ぶべき自動ドアとは

要点:「どう開くか」「誰が通るか」「何と連携できるか」がカギ

自動ドアは単なる入口設備ではなく、防犯システムの一部です。
しかし、すべての自動ドアが同じ防犯性能を持つわけではありません。重要なのは「どのように開くか」「どんな制御がされているか」「その場所に合っているか」という視点です。


防犯性を高める3つの視点

  1. 構造そのものが安全か?
     電動式/荷重式、自動ロック、誤作動防止の工夫などを含めて、基本設計に防犯視点があるか。
  2. 人の動きを適切に管理できるか?
     時間帯、曜日、役割(スタッフ・訪問者・居住者)に応じて開閉制御できるか。
  3. 他設備と連携できる拡張性があるか?
     監視カメラ、カードリーダー、遠隔システムなどとの接続性があるか。

最後に:便利さと安全の「両立」を目指す

防犯とは「万が一を防ぐための準備」です。
自動ドアも同様に、日常的な利便性を損なうことなく、安心・安全を確保できるものが求められています。

そしてそのためには、施設や建物の特性に応じた「適ドア適所」の選択が、なにより重要です。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

視点内容
建物タイプマンション/医療施設/店舗/オフィスなど、それぞれの課題が異なる
使用者の特性高齢者、子ども、スタッフ、来客など「通る人」によって適切な制御方法が異なる
設備との連携カメラ・カード・顔認証・警備システムとの連携ができるか
開閉方式と構造引き戸/開き戸、電動/荷重式など「開き方そのもの」がセキュリティに影響
運用体制管理人常駐/無人/警備連携など、運用の現実に応じた防犯機能が必要

【出典・参考文献】

  • 警備会社公式サイト(セコム、ALSOK等)公開資料
  • 建築・防犯設備の業界サイト
  • 「Newtonドア」製品資料および自社提供ドキュメント
  • 自動ドア業界における安全性と規格対応の解説資料
  • 全国マンション管理組合の防犯導入事例

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