自動ドアといえば、駅やビルの電動式ドアをイメージする方が多いでしょう。けれど、世の中には「電気を使わず、人の体重で開く自動ドア」も存在します。そしてそれは、単なる構造の話ではなく、「空間づくり」の一部として非常に重要な役割を担っているのです。
この記事では「店舗設計」という仕事の全体像を、単なる「設計図を書く人」という枠にとどまらず、「空間体験をつくる専門職」として、その深さや面白さを余すところなくお伝えします。
目次(このページの内容)
店舗設計ってどんな仕事?実際の仕事内容を徹底解剖
要点:ただ図面を描くだけじゃない、空間体験の設計者
「店舗設計の仕事」と聞いて、すぐに仕事内容が思い浮かぶ人は多くないかもしれません。建物を建てるわけでもないし、家具を作るわけでもない——そう思う方もいるでしょう。
ですが、実は私たちが日々訪れるカフェ、レストラン、アパレルショップ、美容院、コンビニ、スーパーに至るまで、「店舗」と呼ばれるあらゆる空間は、設計の専門家によって細部まで設計されています。
それは「見た目のデザイン」だけでなく、「人の流れ」「目線の動き」「使いやすさ」「居心地」など、体験そのものを考慮した設計です。
背景:なぜ店舗に「設計」が必要なのか?
飲食店なら、お客様が入りやすく、オーダーしやすく、食事に集中できて、出るときもスムーズに移動できる設計が求められます。アパレル店なら、商品が引き立ち、自然に手に取ってもらえるような動線とレイアウトが重要です。
つまり店舗設計とは、単に「空間を作る」仕事ではなく、目的を達成するための仕組みを空間で設計する仕事なのです。
そしてこれは、見た目の美しさやカッコよさだけではなく、「どのようにお客様が動くか」「店員がどう動くと効率的か」といったロジックがベースになります。
手順:設計の全体フロー
- クライアントからのヒアリング
- コンセプト、営業スタイル、ターゲット顧客層などを聞き出す
- 現地調査
- 敷地条件・法規制・既存建物の構造確認など
- ゾーニングと動線設計
- 入店・接客・会計・退店までの動きやすさを図面化
- 意匠設計(内装デザイン)
- 材質、照明、色彩、什器レイアウトを含む提案
- 設備・構造の調整
- 空調・電気・水回りの計画と調整(専門業者と連携)
- クライアントへのプレゼン・修正
- CGや模型でイメージを共有し、細部の変更を繰り返す
- 施工図面の作成・発注
- 実際の施工に必要な詳細図面を用意し、業者へ共有
- 工事監理・完成チェック
- 工事の進捗や品質を確認、クライアントと最終確認
こうして、はじめて一つの「店舗空間」が生まれます。
インテリアデザインや建築設計と何が違うの?
要点:設計対象と目的が異なる、似て非なる3つの職種
「店舗設計って、インテリアデザインや建築設計とどう違うの?」という疑問は非常に多く聞かれます。どれも「設計」という言葉がついていて、空間に関わる仕事であることは同じですが、設計対象とその目的が異なります。
それぞれの違いを、以下のように比較するとイメージしやすくなります。
比較表:3つの職種の違い
| 項目 | 店舗設計 | インテリアデザイン | 建築設計 |
|---|---|---|---|
| 主な設計対象 | 店舗空間(内装+動線) | 室内空間(住宅・施設等) | 建物全体(構造・外観含む) |
| 主な目的 | 商業機能の最大化 | 美観と快適性 | 安全性と機能性の両立 |
| クライアント層 | 小売業・飲食業などの事業者 | 個人住宅・企業・施設 | デベロッパー・行政・個人など |
| 必要な視点 | 顧客導線・売上設計・運営視点 | 空間演出・生活動線 | 建築基準・耐震性・構造計算 |
| 関わるフェーズ | 店舗の新規開業やリニューアル | 住宅・オフィス・施設全般 | 建築確認申請~竣工まで |
誤解されやすい点:見た目だけをつくる仕事ではない
店舗設計もインテリアデザインも「デザイン=見た目づくり」と誤解されがちですが、実際はその背景にある機能性や戦略が非常に重要です。
特に店舗設計では、売上に直結する空間づくりが求められるため、照明の配置ひとつ、ドアの種類ひとつにも意味があります。
例えば、入り口の自動ドアが押し引き式か、引き戸か、センサー式かによっても、お客様の第一印象や流入率が変わることがあります。
このように、設計者が扱う「空間」は見えない心理まで含まれているといえるでしょう。
店舗設計の1日の仕事の流れとは?現場とどう関わる?
要点:デスクワークだけじゃない、現場との連携が日常
店舗設計の仕事は「パソコンの前で図面を描いているだけ」と思われがちですが、実際には社内外の調整や現場とのやり取りも多く、動きのある仕事です。
プロジェクトの進行状況によって、1日の業務内容は大きく変化します。ここでは、よくある一日の流れを紹介しつつ、現場との関係性についても解説します。
手順:ある日の業務スケジュール例
- 9:00 出社・メールチェック・業者対応
- 工事業者やクライアントからの連絡を確認し、スケジュールを調整
- 10:00 設計作業(CAD図面作成)
- レイアウトの修正、設備配置、什器の調整などを進める
- 13:00 クライアントと打ち合わせ(オンラインor現地)
- コンセプト確認や変更点の相談、新たな要望のヒアリングなど
- 15:00 現場確認
- 実際の工事状況や仕上がりを確認、問題点の洗い出しと対応指示
- 17:00 図面の修正・資料作成
- 打合せ結果を図面に反映、次のミーティングに向けた資料作成
- 19:00 退社(または残業で作業継続)
- 納期前や工事初期は残業が多くなる傾向
注意点:イレギュラー対応の連続がリアルな日常
店舗設計では、施工中の変更や現場での想定外の問題がつきものです。たとえば…
- 設計通りに什器が入らない
- 設備が既存の配管と合わない
- お客様から急なデザイン変更の依頼がくる
このような場面では、現場監督や施工会社との密なコミュニケーションが必要です。言い換えれば、「机上のプラン」を「現実の空間」にするための橋渡し役ともいえるのが、店舗設計の仕事なのです。
店舗設計に必要なスキルや資格は?未経験でもなれる?
要点:資格が絶対ではないが、スキルと経験は武器になる
店舗設計に携わるために、必ずしも「資格」が必要なわけではありません。ただし、設計や施工に関わる基礎知識やスキルがあるかどうかが、採用や現場対応で大きな差を生みます。
また、設計職としてのキャリアを積むうえで、建築系の学歴や経験があると優位に働くことは事実です。
根拠:店舗設計職に求められる主なスキル
- CADスキル(AutoCAD、Vectorworksなど)
- 図面作成・修正業務においては必須レベル
- 2Dだけでなく、3Dのプレゼン能力が求められる場面も増加中
- デザインセンスと論理的な空間構成力
- 「おしゃれ」なだけでなく、目的にかなった構成力が鍵
- 客観的な視点で動線設計ができるかどうか
- ヒアリング力・コミュニケーション力
- クライアントの要望を引き出す力と、現場との調整力の両方が必要
- 施工や設備に関する基本知識
- 空調や電気、水道など、専門業者とのやり取りに必要なベース知識
- プレゼン資料の作成能力
- 図面だけでなく、パース(完成予想図)や資料の見せ方も大切
要点:未経験からのチャレンジも可能
未経験からでも目指せる道はあります。たとえば以下のようなステップです。
未経験からのステップ
- 建築・インテリア系の専門学校・通信講座で基礎を学ぶ
- CAD操作や建築基礎を学ぶカリキュラム多数
- 社会人向けスクールや夜間講座も増加中
- アシスタント職や内装業務補助として現場に関わる
- 最初は設計補助や資料作成、施工補助などからスタート
- 実務経験を積みながらスキルを習得
- OJTの中で徐々に設計提案や顧客対応にも参加
- ポートフォリオを作成して転職・独立を目指す
- 実績や図面・パースをまとめた資料がキャリア形成に直結
資格がなくても挑戦できる反面、「自分のスキルを証明できる手段」は必要です。
それがポートフォリオであり、実績であり、知識であり、クライアントの信頼を得る手段そのものになります。
どんな人が向いている?店舗設計に向く性格や考え方
要点:デザインだけじゃない、“折衝力”と“思考力”が光る仕事
店舗設計と聞くと「センスが必要」「オシャレな空間を作れる人向け」といったイメージを持たれがちですが、実際には調整力や論理性、柔軟性などが強く求められます。
空間づくりにおいて、「つくりたいもの」と「できること」の間を埋める力が問われるのが、店舗設計の現場です。
根拠:店舗設計に向く人の特徴
- 観察力が高く、人の動きに敏感な人
- 「こう動くと便利だな」「ここが混みそうだな」といった想像力が設計に活きる
- 聞き上手で、相手の意図をくみ取れる人
- クライアントの要望を“言葉以上に”読み取る力が設計精度に直結する
- 感性と論理をバランスよく持っている人
- 「なんとなく」ではなく「なぜそのデザインにしたのか」が説明できる人
- 他者と協力してものづくりができる人
- 設計士・施工業者・職人・営業など多職種と関わるため、調和力が不可欠
- 細かい部分まで気が利く人
- 数センチのズレが空間の質を大きく左右するため、繊細な感覚も大切
背景:実務で直面する“現実的な板挟み”
店舗設計では、理想通りにいかないことの方が多いです。
- クライアントの要望と予算が合わない
- デザインの意図と施工現場の事情が食い違う
- 設備上の制約でレイアウトが変更になる
こうした場面で求められるのは、「誰かを説得する力」ではなく、全体を調整し、最適解を見つけ出す力です。
その意味で、店舗設計とは「人と空間をつなぐ調整型クリエイター」ともいえる仕事です。
年収・キャリアパスは?どんな働き方ができる?
要点:働き方によって収入・自由度が大きく変わる
店舗設計の仕事は、雇用形態・キャリアの進め方によって、年収も働き方も大きく異なります。
企業に属する設計士、フリーランス、設計・施工を一体で担う人など、キャリアの選択肢が多いのが特徴です。
働き方別:店舗設計のスタイルと特徴
| 働き方 | 特徴 | 年収目安 |
|---|---|---|
| 企業内設計職 | 設計事務所や施工会社に属し、安定収入 | 350万〜600万円 |
| フリーランス設計 | 案件ごとに請け負い、自由度が高いが収入も変動 | 300万〜800万円以上 |
| 設計+施工兼業 | 設計から施工管理まで行う。工務店などで増加中 | 500万〜900万円 |
相場:年収の上下を分ける要素とは?
年収は経験年数だけでなく、以下のような要素で大きく変わってきます。
- 実績の数と質(ポートフォリオが説得力になる)
- 業種特化の強み(飲食特化、物販特化など)
- 設計+コンサルやブランディング力の有無
- クライアントとの直接取引があるかどうか
実績が増え、自分の提案で空間全体を設計できるようになると、単価も上がりやすくなります。
キャリアパス:成長と分岐の多様性
店舗設計のキャリアは、一つのルートに縛られません。
- 企業で経験 → フリーランスに独立
- 設計専門から → 施工ディレクションへ拡張
- 店舗設計から → 商業施設全体や街づくりへスケールアップ
- 設計士から → デザインディレクターやブランドコンサルへ進化
空間づくりに関わる中で、「もっと全体を動かしたい」「企画から入りたい」と思う人も多く、それに応える多彩な道があります。
よくある質問(FAQ)
Q: 店舗設計に資格は本当に必要ですか?
A: 必須ではありません。ただし、建築士やインテリアコーディネーターなどの資格があると信頼性が高まり、できる仕事の幅も広がります。
Q: 現場に出ることも多いですか?
A: はい。設計だけでなく、施工現場の確認や業者との打ち合わせなど、現場対応も日常的に行います。現場感覚を持っていることが、良い設計につながります。
Q: 就職先はどこになりますか?
A: 設計事務所、店舗デザイン会社、施工会社、内装工事会社、工務店など多岐に渡ります。最近では、デザインに強い不動産会社やコンサル会社も採用しています。
Q: 店舗設計の将来性はありますか?
A: 商業施設や店舗の形が変わっても、「空間体験の設計」が不要になることはありません。今後もリアルな体験を重視する業態での需要は安定して続くと予測されます。
Q: 女性でも店舗設計の仕事はできますか?
A: もちろん可能です。体力勝負の職種ではなく、設計力・調整力・コミュニケーション力が評価される仕事のため、性別に関係なく活躍できます。
Q: どのタイミングでこの仕事を目指す人が多いですか?
A: 学生時代に建築やデザインを学んでから志す人もいますが、社会人になってから興味を持つ人も多くいます。「人の流れを設計すること」や「空間づくり」が好きな人が、未経験からでもチャレンジしやすい分野です。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
店舗設計の仕事は、空間そのものを“つくる”のではなく、“意味を持たせる”仕事です。
ただ美しく仕上げるのではなく、「この店舗がどう使われ、どう印象を与え、どう成果を生むか」を設計によって導き出す——それがこの職業の本質です。
そしてその中には、「ドア一枚」も含まれます。
例えば、ドアの開閉方式ひとつとっても、業種や利用シーンによってベストな選択肢は変わります。
高齢者が多い施設では軽い荷重式ドア、頻繁に開閉する商業施設ではセンサー式、意匠性を重視する場合はフレームレスなど。
このように、設計のなかで「何を、なぜ、どう選ぶか」が求められるのが、店舗設計の醍醐味でもあります。
最終的に空間は、ドアや照明、什器といった**“点の集合”でできています。**
だからこそ、それぞれの要素を「適材適所」で選び抜く力が、設計者に求められています。
【出典表示(参考)】
- 『NドアFAQ.txt』: Newtonドアの基本仕様と設置環境に関するQ&A
- 『Nドア顧客セグメントと導入事例.txt』: 導入対象業種・活用シーンの実例
- 『Newtonドアの安全性検証とJIS規格整合性.txt』: 荷重式ドアの技術的背景と安全性の考察
- 『Newtonドア.txt』: Newtonドア製品における適ドア適所の思想