自動ドアというと「センサーで自動的に開閉する便利な設備」というイメージが一般的ですが、その裏側には意外と知られていない「電源」という存在があります。実はこの電源まわりこそ、自動ドアの安定運用やトラブル対応、省エネ設計において非常に重要なポイントなのです。

この記事では、「自動ドアの電源」にまつわるあらゆる疑問──「電源スイッチはどこ?」「停電時はどうなる?」「電気代はかかるの?」「電源がいらない自動ドアって何?」──をひとつずつ丁寧に解きほぐしていきます。

結論から言えば、自動ドアの電源トラブルや停電対策には、「自動ドアの構造」への正しい理解が不可欠です。そのうえで、「電源が必要なタイプ」だけでなく、「電源を必要としないタイプ(荷重式)」という選択肢も知っておくことで、より安心・安全・省エネな運用が可能になります。


目次(このページの内容)

自動ドアの電源ってどうなってる?基本構造を解説

要点:

自動ドアは多くの場合、電動で動いており、電源スイッチやブレーカー、制御盤などが連動しています。停電や故障時に備えて、電源構造を知っておくことが重要です。


自動ドアの「電源の取り方」はどうなっている?

まず、自動ドアの主な電源供給は「建物の商用電源(AC100VまたはAC200V)」です。一般的には以下のような流れで電源が供給されています:

  • 配電盤 → ブレーカー → 自動ドア用の制御ユニット(ドアオペレーター) → モーター・センサー類

この制御ユニットには、開閉を制御するマイクロコンピューターや、センサー信号を受け取る回路などが含まれています。また、ドアの上部に設置されたセンサーや、モーター駆動部も同じ電源から動いています。

設置現場では、壁面にある「電源スイッチ(手動切替スイッチ)」によって、開閉モードの変更やON/OFF制御が可能なケースが多くなっています。


スイッチ・ブレーカー・センサーの関係とは?

誤解されがちなのが、「電源が入っていれば必ず動く」というわけではない、という点です。実際には以下のような構造的連携があります:

項目概要備考
電源ブレーカー主に配電盤に設置され、回路全体の電源供給を管理落ちているとドアは動作しない
壁スイッチ(主電源)ドア付近にある物理スイッチOFFだとセンサーも無効になる
モード切替スイッチ手動/自動/常開などの切替複数のスイッチを誤操作しやすい
センサー類人感・近接など電源が入っていてもセンサー異常で動かない場合あり

とくに、現場でよくあるのは「壁の電源スイッチがOFFになっていることに気づかず、故障だと勘違いする」ケースです。
保守の現場では、「まず電源スイッチがONになっているか?」が最初に確認されるポイントになっています。


どんな時に「電源トラブル」が起こるのか?

自動ドアにおける電源トラブルは、大きく次の3種類に分類されます:

  1. ブレーカーの遮断(過電流・漏電)
     → 安全装置としての働きだが、復旧には確認が必要
  2. スイッチの誤操作や接触不良
     → 老朽化や掃除中の操作ミスで発生しやすい
  3. 配線の断線・ゆるみ
     → 建物の老朽化や振動によるトラブルが原因

また、トラブル時には「ドアが完全に動かない」「途中で止まる」「開いたままになる」といった症状が出るため、居住者や利用者にとって大きなストレスになります。

そのため、日頃から電源スイッチの位置・状態を把握しておくことが、スムーズなトラブル対応の第一歩です。


停電のとき、自動ドアはどうなる?

要点:

自動ドアは基本的に「電気がなければ動かない」構造のため、停電時には開閉ができなくなります。緊急時の安全確保のために、非常用の開放機構や電源対策が必要です。


一般的な電動式自動ドアは、停電時にはどうなる?

通常の自動ドアは、センサーによる検知やモーターの駆動をすべて電気で行っているため、停電時には動作が止まります。これは次のような状態を意味します:

  • ドアが「開いたまま」で止まる場合
  • ドアが「閉じたまま」でロックされる場合

この挙動はメーカーや機種によって異なりますが、「どちらにせよ自動で動くことはない」のが共通点です。
特に、避難経路や出入口として使われている場合には、停電時にドアが開かない=非常に危険な状態になる可能性も。


非常用電源(UPSなど)を備えるべきか?

災害時や緊急時に備えて、「非常用電源(無停電電源装置=UPS)」の設置が推奨されるケースもあります。
特に以下のような施設では導入が進んでいます:

  • 病院・福祉施設・避難所
  • 商業施設や駅など、人の出入りが多い場所
  • エントランスが唯一の出入り口となっているビル

UPSによって数十分〜数時間の電源供給が可能になるため、停電時でも一定の開閉動作が継続されます。
また、「緊急時には自動的にドアを開放状態にする」設計を併用するケースもあります。


災害時や夜間の避難にどう対応すればいい?

以下のような安全設計が求められます:

  1. 手動開放装置の有無
     → 自動ドアには多くの場合、内側から手動で開けられる仕組みがある
  2. 電磁ロックとの連動解除
     → 停電時にロックが外れないと、開放すらできない
  3. 停電復帰後の再起動の手順
     → 制御盤のリセットや初期化が必要な場合も

こうした知識を現場の管理者が把握していないと、実際の災害時にスムーズな避難ができません。
あらかじめマニュアルや非常対応手順を整備しておくことが重要です。


電源が原因の不具合は、どう対処すればいい?

要点:

自動ドアの「動かない」「反応しない」といった不具合の多くは、電源まわりに原因があります。現場で確認すべき3つのチェックポイントを把握しておきましょう。


よくある「電源が原因のトラブル」とは?

  • スイッチの切り忘れや、誤操作
  • ブレーカーが落ちている
  • 配線の接触不良や劣化
  • センサーへの給電不良
  • 制御盤の誤作動

実は、自動ドアの「故障」の半数以上が、制御系や電源まわりの確認で解決できると言われています。


確認すべき3つのチェックポイント(現場でできる)

  1. 壁スイッチのON/OFF状態
     → モード切替スイッチの位置もチェック
  2. ブレーカーの状態(落ちていないか)
     → 分電盤の確認が必要。復旧は専門家が安全に
  3. センサーの反応有無とLED表示
     → 多くのセンサーには通電状態を示すランプがある

これらを確認することで、「業者を呼ばずに自力で復旧できた」というケースも少なくありません。


業者を呼ぶ前にできる簡易診断とは?

  • ドアの反応範囲を確認(センサーの死角になっていないか)
  • ドアの開閉音や動きの異常(引っかかりがないか)
  • 過去に同様のトラブルがなかったか記録を確認

とくに「停電明けに自動ドアが動かない」ケースでは、制御盤の再起動が必要なことも。
手順が分からない場合は、安全のためにメーカーや専門業者に連絡するのが確実です。


意外と知らない?自動ドアの消費電力と省エネ設計

要点:

自動ドアは常に動いているわけではないため、待機時の消費電力が省エネ設計に大きく関わっています。運用方法や設計次第で電気代を抑えることも可能です。


自動ドアの「電気代」はどれくらい?

自動ドアの年間消費電力は、1台あたり50〜100kWh程度とされています。
これは、電気代に換算すると年間約1,500〜3,000円前後の目安(※1kWhあたり30円換算)になります。

使用状態電力消費(目安)備考
待機時約5〜10Wセンサー・マイコン通電など
開閉動作時50〜100Wモーター駆動、数秒間のみ
ピーク時一時的に150W超頻繁な開閉時など

ただし、出入口の利用頻度や設置環境によっては、もう少し増減する可能性があります。


「エコモード」や「省エネスリープ」機能はある?

最近の自動ドアには、省エネを意識した以下のような機能が搭載されています:

  • 待機電力の自動カット機能(センサー非検知時の制御停止)
  • スリープモードへの自動移行(夜間や低頻度利用時間帯)
  • モーター駆動の回生制御(モーターの動作効率化)

導入コストや機種により違いはありますが、こうした機能があるかどうかも機器選定の際の比較ポイントになります。


省エネ型の選び方と、その注意点とは?

  • センサーの検知角度を最適化することで、誤作動による開閉を減らす
  • 開閉速度やタイマー設定を見直すことで、無駄な作動回数を抑える
  • 扉の重量・材質も検討する(軽いドアほど消費電力が少ない)

省エネ型=高価というイメージもありますが、長期的には運用コスト削減につながる投資と考えることができます。


電源がいらない自動ドアもあるって本当?

要点:

自動ドアは「電源が必要」なものだと思われがちですが、実は電気を一切使わない「荷重式自動ドア」という選択肢も存在します。


「荷重式自動ドア」とは何か?

荷重式自動ドアとは、床に埋め込まれた「重さ感知センサー(荷重センサー)」によって、開閉を機械的に行う自動ドアのことです。特徴は以下のとおり:

特徴内容
電気不要モーターやセンサーを使用せず、人が乗るだけで開閉
機械式構造バネとリンク機構で開閉動作を行う
停電対応停電時にも常に正常動作する
音が静か電気モーター音がないため静粛性が高い
故障リスクが低い電気部品がないため、長期運用に向く

この構造は、**Newtonドア(荷重式自動ドア)**として日本でも展開されています。


電源がいらないことのメリット・デメリット

項目メリットデメリット
安全性停電でも動く・災害に強い制御がシンプルなぶん応用が難しい
ランニングコスト電気代ゼロ・メンテ費も少ない初期導入コストがやや高め
設置性配線不要・改修工事がしやすい特殊床構造が必要な場合あり
耐久性長期使用に強い設置時の精度に注意が必要

特に「電気が来ない場所」「非常時の可動性を重視する場所」では、高い効果を発揮します。


どういう場所に向いているのか?(適ドア適所)

荷重式の自動ドアは、以下のような条件に適しています:

  • 避難所や福祉施設:停電時でも確実にドアが開閉する
  • マンション共用部:ランニングコスト削減・静音性が活かせる
  • 学校や保育園:安全で簡単な仕組み、かつ壊れにくい
  • 自治体施設・公共インフラ:電源管理が難しい場所にも対応可能

一方で、出入口の開閉制御を細かく設定したい(認証連動やタイマー制御など)場合は、電動式のほうが柔軟性が高いという利点もあります。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

自動ドアは、ただ便利な設備というだけでなく、**日常と非常時の安心を左右する「安全インフラ」**でもあります。
その中でも「電源」は、見えにくいが極めて重要な要素です。


本記事のポイントをおさらい

  • 自動ドアは多くが電源必須の電動式であり、スイッチ・ブレーカー・制御盤の構造を知っておくことがトラブル対応の基本
  • 停電時には開閉が止まる可能性があるため、非常用電源(UPS)や手動開放装置などの備えが必要
  • 電源トラブルの多くは、現場の簡易チェックで対応可能なケースも多い
  • 消費電力はさほど大きくはないが、省エネ設計や運用改善でランニングコストを最小限に
  • そして何より、「電源が不要」な**荷重式自動ドア(Newtonドア)**という選択肢が存在し、電源に依存しない安心設計が実現可能

「適ドア適所」とは、単に機能で選ぶのではなく、その建物・用途・運用環境にもっとも適したドアを選ぶことを意味します。
電源が使える前提の場所と、停電や管理のしやすさを優先すべき場所では、選ぶべきドアの種類も異なるのです。

たとえば──

  • 「避難所や福祉施設なら、電気に依存しない構造が理にかなう」
  • 「管理コストを抑えたい共用部には、省エネ型や荷重式が向いている」
  • 「複雑な認証連動が必要な出入口なら、電動式が適する」

このように、「電源」という切り口ひとつとっても、選択の幅は大きく広がります。
自動ドアの導入や見直しを検討されている方は、**“どのタイプの自動ドアが、いちばん自然で安心できるか”**という視点で、ぜひ考えてみてください。


出典・参考資料(本文中での記載に基づく)

  • ナブコシステム株式会社「自動ドアの電源とスイッチの仕組み」
  • ナブテスコ自動ドア「自動ドアの構造と消費電力」技術資料
  • 日本自動ドア株式会社「ご利用前の手引き」
  • Newtonプラス「荷重式自動ドア Newtonドア(安全性と構造)資料」
  • NewtonドアFAQおよび導入事例・顧客セグメント資料

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