自動ドアの工事をする際、多くの人が「ドア本体の破損」や「センサーの誤動作」、「見た目の劣化」などに不安を感じています。養生といえば建築現場では基本の作業ですが、実は自動ドアには自動ドア特有の養生ポイントがいくつもあります。可動部が多く、センサーがあり、ガラスが使われている──こうした構造を考えると、「通常の養生方法ではカバーしきれないリスク」が潜んでいるのです。
この記事では、自動ドアを扱う工事や改修において、「どこまで養生すべきか」「どう養生すればいいか」を具体的かつ実用的に解説していきます。
対象は、工事を担当する現場監督・職人さん・管理会社・ビルオーナーなど、施工に関わるあらゆる立場の方。
知識ゼロでもわかるように、基礎から応用まで順を追って解説していきます。
なぜ“自動ドアの養生”は特別なのか?
建築現場では、壁や床、サッシなどへの養生は日常的に行われていますが、自動ドアの養生はそれらとはまったく別の視点が求められます。理由は、自動ドアが「動く設備」であり、さらに「センサー」「ガラス」「レール」など、壊れやすく誤作動しやすい要素が組み合わさっているからです。
自動ドアの養生が特別とされる第一の理由は、「動作機構がある」ということです。壁や柱と違い、稼働する部位は物理的な可動域を持っているため、間違った養生方法を施すと養生材が巻き込まれたり、モーターに負荷がかかったりして、動作エラーや故障につながるリスクがあります。
さらに、自動ドアにはセンサーが組み込まれている点も注意が必要です。センサーが誤検知を起こすと、作業員がいないのに勝手に開閉したり、逆にまったく反応しなかったりと、安全上のトラブルが生じます。養生材によって赤外線や超音波が遮断されたり、誤ってセンサー部分を密閉してしまうことで、このような誤動作が起こることがあります。
また、ガラス部分の存在も大きなリスク要因です。透明な強化ガラスは、打痕や擦り傷に弱く、ちょっとした接触でひびが入ったり、施工後に見た目の美観が損なわれたりする原因になります。とくに高層マンションや商業施設など、意匠性が重視される現場では「美観を損ねた=工事ミス」と評価されかねません。
最後に、自動ドアにはJIS規格による安全基準も存在しており、一定の開閉速度、感知距離、停止条件などが定められています。養生の仕方によってこれらの基準を満たさない状態にしてしまうと、安全認証の観点からも問題が生じる可能性があります。
これらを踏まえると、自動ドアの養生は「ただ覆う・保護する」だけでは不十分であり、部位別にリスクを洗い出し、それぞれに最適な方法で“適ドア適所”の養生を行う必要があるのです。
この視点こそが、次章から展開していく「部位別・目的別の養生方法」の土台となります。次に、実際にどの部分をどう養生すれば良いのか、部位ごとに具体的に解説していきます。
どの部位をどう守る?自動ドア部位別の養生ポイント
自動ドアは複数の精密な部位で構成されており、それぞれに応じた養生が必要です。ここでは、よく使用される自動ドアの構造を基に、部位ごとのリスクと具体的な養生ポイントを解説します。
ガラス面の養生:透明だからこそ要注意
ガラス面は、外からも目につきやすく、建物の美観を左右する部分です。特にマンションやオフィスビルのエントランスなどでは、施工後の見た目に厳しい目が向けられます。
養生不足による小傷、接触によるヒビ割れ、施工中の落下物による衝撃などが頻発するため、クッション性のあるシートや、非粘着の静電気吸着フィルムなどが効果的です。
おすすめは、「養生ポリカ板」や「透明シート+エッジガード」の併用。粘着性のあるテープを直接ガラス面に貼るのは避けましょう。剥がした後に糊残りや曇りが発生することがあります。
ドアパネルの養生:可動部分との戦い
自動ドアのメインであるドアパネル部分は、スライドする構造が多く、養生材が動作に干渉すると非常に危険です。強制的にパネルを押し返してしまうことで、内部モーターやギアに負荷がかかり、機構不良の原因になります。
基本は、「可動範囲外のフレーム部分だけを固定する」養生に留め、動作試験の際には完全に取り外す準備ができるように設計しておくこと。段ボールやプラダンなどは軽くて扱いやすいですが、風などでばたつかないよう固定方法に工夫が必要です。
レール・戸袋部の養生:埃と異物が大敵
レール部はスライドドアの“足元”にあたる部位で、埃や切り粉、小さな異物が侵入するだけでも動作不良や異音の原因になります。施工時には仮設カバーや防塵マットをレール上に敷設し、レールが塞がらないように上から覆うタイプの養生を施すのが有効です。
レールの隙間にテープを貼って封鎖するのはNG。通気・排水・可動に必要な空間を塞いでしまうためです。
レール部分には、「隙間を避けてカバーする」=浮かせて覆うという手法が有効です。
センサー部の養生:誤動作を防ぐには“触らない”のが原則
センサーは非常に繊細な部位であり、赤外線・超音波・ミリ波など、感知方式により誤動作の要因が異なります。基本的にセンサー部に直接養生材をかぶせるのは避け、一時的に仮停止する、またはセンサー範囲に干渉しないように遮蔽物を設ける形がベストです。
たとえば、センサーの真下を養生しようとして板状のものを立てると、センサーが「人がいる」と誤検知してドアが開きっぱなしになる例もあります。センサー位置と感知範囲を理解したうえで、「死角」を作らないように配慮しましょう。
枠・戸袋部の養生:ぶつけ防止・視認性確保
搬入時や足場設置時に最もぶつけられやすいのが、ドア周囲の枠や戸袋です。養生には緩衝材が有効ですが、視認性を確保することも重要です。
施工スタッフが見落としやすい箇所には、目立つ色のコーナーカバーや、蛍光テープでのマーキングが有効。角材の接触による「打痕事故」はここで防げます。
養生材の種類と選び方【目的別一覧】
自動ドアの養生に使う材料は、ただ「柔らかい」「貼りやすい」という基準だけで選んでは不十分です。ドアの材質や構造、使用場所、施工時間、安全性などを考慮し、“目的に合った養生材”を選ぶことが重要です。
ここでは、実際に現場で使われている主要な養生材を、「用途」「材質」「メリット・デメリット」という観点で分類し、選定のポイントを明確にします。
紙系養生材:短期・簡易施工向け
代表例は「クラフト紙養生」や「マスキングペーパー」。主に内装養生で使われますが、一時的な保護としては自動ドアにも活用できます。
- メリット:安価で施工が早く、不要になったら簡単に撤去可能
- デメリット:耐水性がなく、強度も低いため、屋外使用やガラス保護には不向き
→ ガラス以外の下枠、戸袋の軽い保護に一時的に使用するのが現実的です。
プラダン・養生ボード:衝撃・擦れ防止に最適
「プラダン(プラスチック段ボール)」や「養生ボード」は、養生材として最も汎用的で、自動ドアにも多用されます。衝撃・擦れ・打痕に対する耐性が高く、一定の形状保持も可能です。
- メリット:再利用が可能、見た目が整いやすく、施工後の印象も良い
- デメリット:可動部には不向き、固定が不完全だと風などでズレる
→ 自動ドアの枠や、周囲の壁面部には最適。テープ固定時にはガムテープではなく、養生専用の粘着が弱いテープを使用すること。
緩衝材系:クッション性を重視した保護
エアキャップ(プチプチ)、ウレタンマット、フォームシートなどがこれに該当します。特にガラスやセンサー周辺、「万が一」の衝撃吸収が求められる場所に使用されます。
- メリット:衝撃吸収力が高く、物理的な破損防止には強い
- デメリット:厚みがあるため、動作範囲やセンサー範囲に干渉しやすい
→ 可動部近辺では使用注意。貼る位置・厚み・固定力を緻密に調整する必要があります。
粘着テープ類:接着・固定に欠かせない存在
養生にはテープも欠かせません。自動ドア養生では特に「剥がしやすさ」が重視されます。以下は代表的な種類です:
- 養生テープ(布/ポリエチレン):粘着力中〜弱、糊残りしにくい
- マスキングテープ:細部・隙間の養生に便利、仮止めや下地保護向け
- ガムテープ・布テープ:粘着力が強すぎて非推奨。ガラスや塗装面には不適
→ **「貼ってもいい場所」と「絶対に避ける場所」**を分けて使い分けるのがポイント。
その他特殊材:静電シート・透明保護フィルムなど
現場によっては、「透明養生フィルム」や「帯電防止シート」なども使われます。特にガラス面で美観を保ちたい場合や、埃の吸着を避けたいときに重宝します。
- 静電フィルム:ガラスに密着し、粘着なしでも落ちにくい
- 帯電防止シート:埃の吸着を抑え、センサー誤作動防止にも貢献
→ 高級物件やショールームなど、仕上がりの美観が重視される現場では導入を検討するとよいでしょう。
貼り方・固定のコツと注意点
いくら適切な養生材を選んでも、「貼り方」が雑だったり、「固定の方法」が甘かったりすると、養生の効果は大きく損なわれてしまいます。
このセクションでは、現場で実際にありがちな失敗を避けつつ、確実に養生効果を得るための手順とテクニックを解説します。
養生テープの使い方には“貼る順番”がある
養生テープを貼る際に大切なのは、「接着面の素材」「重ね順」「方向性」の3つです。
まず、貼る面がガラス・金属・塗装面などかどうかで適したテープが変わります。誤ってガムテープをガラス面に貼ってしまうと、剥がすときに糊が残ってしまい、清掃に時間がかかるばかりか、ガラス表面に曇りが残ることもあります。
貼る順番は、「端部(角)→平面→中央部」の順が基本。端をきちんと留めることで、後から重ねて貼る箇所のズレや浮き上がりを防げます。
重ねるときは“段差”が出ないように工夫
複数の養生材を重ねる場合、段差ができると引っかかりの原因になりやすくなります。特にスライドドアの可動部近くでは、段差が動作に干渉するおそれがあるため、テープの継ぎ目をズラしたり、段差ができないように斜めカットするといった工夫が必要です。
隅部処理:入隅・出隅の対応で“仕上がり”が決まる
もっとも養生の腕が出るのが、「隅部処理」です。四角い養生材を単に貼り付けると、角の部分が露出したり、剥がれやすくなることがあります。
プロの現場では、以下のような処理がよく使われます:
- 入隅(内角):テープを“V字型”に折ってから貼り込み、隙間なく密着
- 出隅(外角):角を包み込むように、“くの字”型のカバー材を使う
こうすることで、見た目にもきれいに仕上がり、養生の強度もアップします。
可動部周辺では“ずれ防止”と“逃げ”を同時に確保
動くドアの周辺に養生を施すときは、固定が甘いと風や振動でズレて、巻き込み事故が起きやすくなります。一方で、がっちりと固定しすぎると可動部の動作を妨げる原因にも。
そこで重要なのが、“逃げ”の設定。養生材を数センチ外側にオフセットして設置し、可動域内に入り込まないようにすると、巻き込みを防止できます。また、マグネット式の仮固定金具や、テープの貼り方を対角にすることで、ズレ防止と剥がしやすさを両立することができます。
一時養生と長期養生で使い分けを意識
たとえば、数時間だけの作業なら、簡易的な貼り付けでも問題ないかもしれません。
しかし、数日以上にわたる作業や、複数工程が絡む場合は“耐久性”も意識した養生方法が必要です。
- 一時養生:養生フィルム+マスキングテープなどで簡易対応
- 長期養生:養生ボード+緩衝材+しっかりとしたテープ固定
また、作業の合間ごとに“点検”する習慣も大切です。テープが剥がれていたり、汚れが蓄積していたら、早めに貼り直しましょう。
施工中の誤動作を防ぐには?センサー対応と仮停止処置
自動ドアの施工現場で最もヒヤリとする瞬間の一つが、「養生作業中にドアが突然動き出した」というトラブルです。
これは主に、センサーが誤検知をしてしまった場合に起こる現象です。
センサーは非常に繊細な機構で構成されており、養生による誤操作や物理的な干渉によって、思わぬ事故につながることがあります。
ここでは、施工中に安全を確保するための「センサーへの対応」と「仮停止処置」について詳しく解説します。
誤動作の原因:遮断・反射・誤配置の3パターン
センサーの誤動作は大きく分けて次の3つのパターンで起こります:
- 遮断系:養生材がセンサーの前を完全に覆ってしまい、対象物を“見失う”
- 反射系:光や電波が養生材に反射し、センサーが“対象物がある”と誤認
- 誤配置系:センサー本体の角度がズレてしまい、感知範囲が変化
たとえば、透明フィルムをセンサー部分にかけたことで、赤外線が内部反射し、開閉信号が止まらなくなったというケースもあります。
仮停止がベスト:センサーの“OFF”は第一選択
施工前には可能であれば、センサーを一時的に停止することが最も安全です。
多くの自動ドアセンサーには、操作盤や本体で「感知モードのOFF」「一時休止」などの設定が可能です。
- 自動モード → 手動モードに切替
- 感知エリアの無効化(メーカーごとの方法あり)
- 電源スイッチの位置確認(必ず作業責任者と確認すること)
※ただし、電源オフにする場合は、再起動時の設定状態や開閉テストが必要になるため、操作前に必ずマニュアルを確認してください。
センサーの種類別:対応のポイント
センサーの感知方式によって、養生時の注意点も異なります:
| センサー方式 | 特徴 | 養生時の注意点 |
|---|---|---|
| 赤外線式 | 物体の存在を感知 | 養生材の反射・遮光に弱い。透明フィルムは使用注意 |
| 超音波式 | 音波の反射で検知 | 厚みのある養生材や密閉により、反射精度が下がる |
| ミリ波式 | 微細な動きを検知 | 養生材にかかわらず“微振動”でも誤動作の可能性あり |
センサーを完全に避けて養生することが難しい場合は、**あらかじめ感知範囲を把握して、そこだけ避ける“穴あき加工”**や“ガードフレーム”の使用も有効です。
センサー対応時の注意点まとめ
- 養生前に「センサー位置」と「感知範囲」を必ず把握する
- 作業員全員が、センサー動作の有無と切替方法を共有しておく
- 養生終了後は、「センサーON → 動作テスト → 養生残りの有無確認」の順で点検
これを怠ると、仮設撤去時にドアが急に動いて作業員を挟んでしまうといった重大事故もあり得ます。
撤去・清掃の最適タイミングと注意点
自動ドアの養生が完了し、工事も無事に終わった…ここで油断してはいけません。
養生の“撤去”と“清掃”もまた、仕上がり品質を左右する大切な工程です。
むしろこの段階での不備が、施主からのクレームや再工事の原因になることすらあります。
そこでこのセクションでは、「いつ剥がすか」「どう剥がすか」「どんな清掃をすべきか」を、現場での失敗例を交えて解説します。
撤去タイミング:早すぎても、遅すぎても失敗する
養生材を剥がすタイミングは、施工工程が完全に終わった後で、開閉試験や通電テストが済んでからが基本です。
ただし、以下の点には注意が必要です:
- 養生材の“粘着力が上がる”前に剥がす(長時間放置すると粘着が固着しやすくなる)
- 気温・湿度が高い現場では、特に糊残りが発生しやすいため早めの撤去を意識
- 塗装作業や外構仕上げなど、“飛散リスクがある作業”が終わってから剥がす
最適な撤去の流れとしては、「試運転完了 → 点検者立会い → 養生撤去 → 最終清掃」の順です。
粘着跡を残さない剥がし方:角度とスピードがポイント
テープやシートを剥がすときに“ベリッ”と勢いよく剥がすと、粘着剤がガラス面や枠に残ってしまうことがあります。
特に長時間貼っていた場合、粘着剤が熱で素材にしみ込んでいる可能性もあります。
対策としては:
- ゆっくり、45度以下の角度で引き剥がす(粘着材の残りを最小限に)
- ガラス面では、養生テープではなくマスキングテープを使用しておくと剥がしやすい
- 粘着剤が残った場合は、「シール剥がし剤」や「アルコール成分入りクリーナー」で対応
- 絶対にカッターなどで削り取らない(ガラスに傷が入る)
特に業務用の透明フィルムを使用した場合、静電気による埃の吸着も生じるため、撤去後の拭き上げ作業は必須です。
清掃のポイント:埃・水滴・指紋を残さない
施工後に「養生は完璧だったのに、ガラスが汚れている」という印象を与えるのはもったいないことです。
以下の清掃手順が推奨されます:
- 養生撤去後、乾拭き(マイクロファイバークロス)で大まかな埃除去
- 中性洗剤またはアルコール水で湿拭き → 拭き跡が残らないように仕上げ
- ドア枠やレール部分も念入りに(特にレールは埃が詰まりやすい)
- センサー周辺は乾いた布で拭く(濡らすと誤作動・故障リスク)
そして清掃の最後には、必ず「第三者目線」での仕上がりチェックを実施しましょう。
ここでの見落としが、後のトラブルを招きます。
実例から学ぶ:よくある失敗と対策
どんなに養生の理論を理解していても、現場では思わぬトラブルがつきものです。
ここでは、実際に多くの施工現場で見られる「自動ドア養生の失敗例」と「それをどう防ぐか」を、具体的に紹介します。
ケース①:センサーに養生が干渉してドアが開かない
現場で最も多いトラブルの一つが、センサー周辺を過剰に養生した結果、ドアがまったく反応しなくなるというパターンです。
- 事例:センサー部分を保護しようとしてプチプチをかぶせたところ、赤外線が遮断されて動作停止
- 原因:センサーの位置や感知範囲を把握せず、全面を覆ってしまった
- 対策:センサー位置を養生前に確認。“感知エリアだけ避ける” or 仮停止するのが基本
ポイントは、**“安全のために養生したはずが、機能を阻害してしまっている”**という逆転現象が起きていることです。
ケース②:養生材がドアに巻き込まれて破損
これはスライドドアの可動部にありがちな事故です。固定が甘かった養生材が、ドアの動作中に風でバタつき、レールに巻き込まれて内部部品を破損してしまう事例があります。
- 事例:仮固定されたダンボールが風で煽られ、戸袋側に巻き込まれ異音発生
- 原因:可動範囲を理解せず、養生が“動線上に入っていた”
- 対策:可動範囲から最低でも5cm以上離して設置。テープは対角方向で貼りズレを防ぐ
特に大型ドアや強風の多い現場では、この事故が多発します。
ケース③:ガラスの粘着跡が取れずにクレームに
高級物件では「見た目の仕上がり」が非常に重要視されます。
ガラス面に直接粘着テープを貼ってしまい、剥がした後に跡が残ってしまったというトラブルも少なくありません。
- 事例:ガラス全面に養生テープを貼っていたが、撤去時に糊残りが広範囲に発生
- 原因:素材とテープの相性確認を怠った
- 対策:静電吸着フィルムや中性マスキング材を使用。試し貼りも推奨
また、清掃時に強くこすりすぎてガラスに細かい傷をつけてしまうという二次トラブルも起こりがちです。
ケース④:仮養生の撤去忘れで再工事に
「後でちゃんとやろう」と思って仮止めしておいた養生が、最終的に撤去されず、ドアの動きや通気口を塞いでいたという例もあります。
- 事例:下枠の通気口に被さったまま養生が残り、結露が発生してクレームに
- 原因:作業担当者と清掃担当者が異なり、情報共有不足
- 対策:養生撤去を“チェックリスト化”。担当を明確にし、引継ぎ徹底
人為的な見落としを減らすには、チェック体制と情報共有の仕組みが必要不可欠です。
以上のような事例を把握しておくことで、自分たちの現場でも似たようなミスを回避することができます。
次のセクションでは、「コスト・工期の中で養生を最適化するには?」というテーマで、現実的なバランスの取り方を解説します。
コスト・工期の中で養生を最適化するには?
養生は「やりすぎても」「手を抜いても」失敗につながる作業です。
特に自動ドアのように高額で精密な設備を扱う場合、適切なコストと時間をかけるべきかどうかを見極めることが非常に重要になります。
このセクションでは、実際の現場で養生をどこまでやるべきか?どうやれば最小の手間で最大の効果を得られるのか?について考えていきます。
コストをかけすぎると、工期や利益を圧迫する
たとえば、以下のような場面で“過剰養生”が起こりがちです:
- 高級案件だからといって、すべての面を3重に養生(→撤去・清掃の手間増)
- 動作部にも「念のため」と言って緩衝材を無理に入れ込む(→破損リスク逆に上昇)
- すべて新品材料で養生を作成し、コストがかさむ(→原価割れの危険)
→ 結果として「養生にかけたコストや人手」が、施工自体の利益を圧迫してしまうという本末転倒な状況が生まれます。
「必要最小限」の判断軸を持つことが重要
では、どこで線を引くべきでしょうか?
判断のポイントは以下の通りです:
- 接触の頻度が高い部分(ドア下部、枠、センサー周辺) → 養生必須
- 装飾的で交換コストが高い部分(ガラス面、エンブレムなど) → 丁寧に養生
- 養生しても意味がない or トラブルを招く部分(可動部) → 養生NG or工夫
このように、**「リスクの高さ」「交換コスト」「作業頻度」**の3軸で、養生対象を絞り込むのが有効です。
短工期・多職種が出入りする現場では、段取りが命
自動ドアの養生作業は、必ずしも「自動ドア工事業者」だけが行うとは限りません。
特にマンションや商業施設などの新築・改修では、以下のような流れが典型的です:
- 電気設備工 → 下地工事 → サッシ業者 → 自動ドア設置 → 仕上げ → 清掃業者
この流れの中で、誰がいつ養生をするか?どの段階で撤去するか?が明確になっていないと、他業者との“二重施工”“養生剥がし忘れ”などが起こります。
そのためにも:
- 養生作業の分担とタイミングを工程表に明記
- 養生材は「どこに何を貼るか」を記録しておく
- 簡易な“養生図面”や写真による記録があると情報共有がスムーズ
「段取り八分、仕事二分」と言われる通り、段取り=養生品質と言っても過言ではありません。
【適ドア適所】の視点で見る自動ドア養生の本質
これまで、「どのように養生するか」というテクニカルな内容を中心にお伝えしてきました。
しかし最後に改めて考えておきたいのは、**「なぜ養生が必要なのか」**という本質的な問いです。
自動ドアは、単なる設備ではありません。
建物の“顔”であり、最も多くの人が接する部位でもあります。
その自動ドアが施工時に傷ついたり、誤動作したりすることで、安全性や美観、さらには建物全体の印象までもが損なわれてしまいます。
だからこそ、**「そのドアが、どんな環境で、どんな役割を担うのか」**に応じて養生の方法を見極めること──それが“適ドア適所”の考え方です。
たとえば、Newtonドアのような荷重式の自動ドアであれば、センサーがないため養生時の誤動作リスクが少なく、施工者の心理的負担も軽減されます。
逆に、電動スライド式で高度なセンサーが搭載されているドアであれば、その分だけ慎重な養生設計が求められます。
つまり、「どのドアを、どこに、どう使っているか」によって養生の考え方も変わる──
それが、“適ドア適所”の本質であり、プロフェッショナルな施工を支える哲学なのです。
養生とは、ドアを保護する作業であると同時に、建物の第一印象を守る作業でもあり、
それはすなわち、あなた自身の仕事の品質を証明する行為でもあります。
FAQ|よくある現場の疑問に即答!
Q1: 養生ってどこまでやれば十分ですか?
A: 接触頻度が高く、損傷リスクのある「ガラス面」「ドア下部」「枠まわり」「センサー付近」は必須です。可動部やレールは、養生が干渉しないよう注意を。
Q2: センサーってどこにあるの?養生で隠しても大丈夫?
A: センサーはドアの上部や側面に設置されていることが多く、赤外線・超音波式などがあります。養生で覆うと誤作動を起こすことがあるので、基本は仮停止または範囲外に養生しましょう。
Q3: 養生テープはどれがいいですか?ガラスに貼っても大丈夫?
A: 粘着が弱く糊残りしにくい「マスキングテープ」「養生テープ(布・PE)」が適しています。ガラスには静電フィルムやテープレスな方法もおすすめです。
Q4: 剥がす時に粘着跡を残さない方法は?
A: 45度以下の角度でゆっくり剥がすこと。長時間放置しないこと。残った場合は中性洗剤やアルコール系クリーナーで対応してください。
Q5: 自動ドアが開かなくなった…養生が原因ってありえますか?
A: はい、センサー部や可動部に養生が干渉すると開閉エラーが発生することがあります。誤動作が起きたらまず養生材の位置と状態をチェックしましょう。
Q6: 養生材が足りない時、代用できるものありますか?
A: 応急処置として、段ボール、発泡シート、静電フィルムなどが使えます。ただし、ドアの可動域に干渉しないようにすることと、粘着テープの素材選びには注意が必要です。