駅や商業施設の自動ドアの前で、ふとしたときに「キーン」と耳障りな音が聞こえた経験はありませんか?
実はそれ、故障でも耳鳴りでもなく、“モスキート音”と呼ばれる高周波音である可能性があります。しかも、聞こえるのは特定の年齢層だけという特徴があるため、周囲の人と共有できずに不安を感じる人も少なくありません。

この記事では、「自動ドアの近くで聞こえるモスキート音」の正体とその目的、聞こえてしまう人の感じる不快感への対処方法、さらには、設備設計上どう捉えるべきかまでを、専門的な視点で徹底解説します。


目次(このページの内容)

なぜ、自動ドアの近くで“キーン音”が聞こえるのか?

問いかけ
自動ドアが開閉するたびに「キーン」と音がするように感じるのは、機械の故障でしょうか?それとも別の要因でしょうか?

答え
その音の多くは、自動ドア本体からではなく、自動ドア付近に設置された“高周波発生装置”から出ているモスキート音である可能性があります。


背景:モスキート音は「意図的に流されている」

まず重要なのは、「高周波音=モスキート音」が、意図的に発せられているケースがあるという点です。
これは主に商業施設や公共空間で「夜間や休業時間帯に若者のたむろを防止する」ために設置されており、**若年層にしか聞こえない高い音(17kHz〜20kHz)**を使って“その場に留まりたくない空間”を演出するのが目的です。

発生場所の例:
  • 駅ビルの地下通路
  • コンビニエンスストアの入口
  • 商店街の自動ドア脇
  • 病院や役所の裏口付近

特に「自動ドアの天井部分」や「建物の庇(ひさし)」部分などに設置されていることが多く、自動ドア=モスキート音の発生源という誤解が生まれる原因にもなっています。


自動ドアの異音とは明確に区別すべき

自動ドアからの異音として考えられるのは、以下のような機械的要因によるものです:

原因音の特徴対応方法
モーターの劣化「ウィーン」「ガタガタ」など部品交換・メンテナンス
レールの摩耗「キーキー」金属音注油・部品交換
センサーの不調無音だが動作不良センサー交換

これらはすべて“機械音”であり、「キーン」とした耳障りな高周波ではありません。
よって、異音かモスキート音かを見分けることが、まず初めの対処ステップになります。


次のセクションでは、「モスキート音とは何か?」その仕組みと聞こえる人・聞こえない人の違いについて詳しく解説します。


モスキート音とは? 誰に聞こえて、どんな意図がある?

問いかけ
「モスキート音」と呼ばれる高い音、なぜ一部の人にしか聞こえず、どのような目的で使われているのでしょうか?

答え
モスキート音とは、人間の可聴域の中でも**非常に高い周波数(17kHz〜20kHz以上)**を狙って発生させる音で、若年層のみに聞こえる特性を利用して、防犯やマナー対策として使われている音です。


モスキート音の仕組みと“聞こえる人”

人間の耳は年齢とともに高周波への感度が落ちていきます。一般的に…

  • 10代:17kHz〜20kHz以上がよく聞こえる
  • 20代:17kHz前後まで聞こえる人が多い
  • 30代以降:15kHz以上は徐々に聞こえづらくなる

この性質を利用して、「若者だけが不快に感じる音」を流すことで、「長時間とどまりたくない空間」を意図的に作り出すというのがモスキート音の仕組みです。


モスキート音の導入目的

利用目的実例補足
夜間のたむろ防止コンビニや駅前のロータリー深夜営業店舗や駅ビルなどで活用
防犯・迷惑行為の抑止空きビル・駐車場若者の侵入・落書き防止など
動物避け(亜種)飲食店・商店街ネズミや猫よけ用途の高周波も存在

商業施設においては、「夜間の利用者層を限定したい」「クレームを減らしたい」といった背景から、設置されることがあります。


聞こえることによる不快感とクレームの実例

  • 「耳の奥がジンジンする」「頭痛がする」「耳鳴りが止まらなくなった」などの体調不良
  • 「なぜ私だけが聞こえるのか?」「設備不良ではないのか?」という誤解
  • 若年層からの抗議やSNSでの拡散 → 施設へのクレーム増加

これらの問題が、**「設置側と利用者の対立」**に発展するケースもあります。


意図的な設置=許されるのか?

設置そのものは違法ではないケースがほとんどですが、公共性の高い施設や通行の多い場所では、「過剰な音響による迷惑」として苦情対象になることも。自治体によっては指導・撤去要請が行われた事例もあります。


次は、モスキート音の「設置リスク」や「法的・倫理的観点」を深掘りします。
「なぜ施設が導入するのか?」「苦情が来たときの対応はどうなるのか?」を見ていきましょう。


高周波音の設置は問題ないの? 法律・倫理・トラブル事例

問いかけ
自動ドア付近でモスキート音のような高音が聞こえる場合、それは問題ないのでしょうか?法律やモラルの面から見てどう評価されているのでしょう?

答え
現時点では明確な「禁止法令」はないものの、自治体による指導や苦情対応の事例が増えており、施設側には“使い方”の慎重さが強く求められています


法律的には「グレーゾーン」

モスキート音は、現在の日本国内では「使用自体が法律違反」とはされていません。
しかし、次のような法律や条例に接触する可能性があります:

関連法規主な内容モスキート音との関係
騒音規制法一般的な騒音(デシベル値)を規制高周波は規制対象外のケースが多い
各自治体の生活環境条例迷惑行為・生活妨害の抑止「不快音」として苦情対応される可能性
民法 第709条(不法行為)他人に損害を与えた場合の賠償責任健康被害があった場合に争点となる

つまり「音がデシベル的に小さいからOK」ではなく、“聞こえた人にとって不快であるか”が評価基準になりつつあるのです。


実際にあったトラブル事例

  1. 都内商業施設(駅ビル)でのクレーム増加
    • 学生から「耳が痛くなる」とSNSで投稿 → 拡散 → 一時撤去対応
  2. 自治体職員の通報で設置業者が指導を受ける
    • 公共空間の通路での使用が「通行人の健康被害につながる」として、注意喚起を受ける
  3. 市民団体からの抗議文提出
    • 「モスキート音は若者差別ではないか」として、使用中止を求める活動が起きた事例も

倫理的な視点:「音を使った排除」の是非

設置側からすると「安全・安心のため」という理由がある一方で、
受け手からすると「自分だけがターゲットにされている」「身体的にダメージを受ける」と感じることも。

このように、音という見えない手段を使った“選別的な設計”が倫理的に妥当かという議論が生まれつつあります。


運用の工夫と配慮が不可欠に

「一律に禁止されていない」からこそ、以下のような配慮が求められます:

  • 利用時間帯の限定(夜間だけ)
  • 音量・周波数の調整
  • 周辺環境(住宅街、学校など)への配慮
  • “聞こえる人がいる”前提のサイン表示や説明対応

次のセクションでは、その音が「どこから来ているのか?」を見分ける方法と、自動ドアの誤解を解くチェックポイントを具体的に解説していきます。


その音はどこから来る?発生源を見分ける方法とチェックポイント

問いかけ
耳障りな高音が聞こえたとき、それが自動ドアの故障音なのか、それとも“モスキート音”なのかを見分けるにはどうすればいいのでしょうか?

答え
ポイントは「音の性質」と「発生位置」。高周波音(モスキート音)は、自動ドア本体ではなく、周辺に設置された発生装置から出ているケースがほとんどです。


見分けるためのチェックポイント

以下は、モスキート音と自動ドア異音の見分け方の基本です。

チェック項目モスキート音の特徴自動ドア異音の特徴
音の高さ極めて高い音(17kHz〜)中~高音(2kHz〜5kHz)
聞こえるタイミング常時または夜間限定ドア開閉時に限定される
音の方向天井付近・壁面スピーカー方向ドア本体・レール付近
聞こえる人若年層中心年齢問わず
音量(主観)小さいが不快/刺さる感覚機械的でわかりやすい
その他他の人には聞こえない場合も多い多くの人が同時に認識する

実際の現場での観察ポイント

  1. 音の位置を探る
     立ち位置を少しずつ変えて、音の強く聞こえる方向を探ります。
     → 自動ドアの上部や入口天井付近から聞こえる場合、スピーカー設置の可能性。
  2. 音の継続性を確認
     ドアが開閉していないときにも音が続いていれば、ドア本体の動作音ではないと判断できます。
  3. 聞こえる人・聞こえない人を比較
     周囲の同年代・年齢の違う人に聞こえるかを確認。
     → 若年層だけが「耳鳴りのよう」と感じる場合はモスキート音の可能性大。

確実に確認したい場合の方法

  • スマートフォンアプリでの周波数測定
     「音圧計アプリ」「周波数スペクトル分析アプリ」などを使うと、
     17kHz付近のピークが検出されることがあります(ただし、スマホのマイク性能に依存)
  • 施設管理者への問い合わせ
     「自動ドアから異音が出ているのでは?」と伝えるのではなく、
     「高周波のような音が聞こえるが、スピーカーなどを設置していますか?」と確認するのが有効です。

誤解されやすい例:「自動ドアが原因では?」という思い込み

  • 自動ドアの開閉とほぼ同時に音が聞こえる場合、「連動している」と誤解されがち。
  • 実際は“自動ドアの上”にあるモスキート音装置の動作タイミングが連動しているだけというケースも。

次は、自動ドア設備設計の視点から「音」をどう捉えるか、
静音性の考慮点や“聞こえない配慮”としての設計哲学を見ていきます。


自動ドア設備で気をつけたい「音」の設計とは?

問いかけ
そもそも、自動ドアの設計において「音」への配慮はどのように考えられているのでしょうか?静かさが快適さと関係あるなら、どこまで意識すべきなのでしょう?

答え
現代の自動ドア設計では、見た目や動作だけでなく「音」も重要な設計要素のひとつ。静音性は快適性・安心感・環境との調和に直結するため、非常に高い優先順位で扱われています


音を発生させる主な構成要素と対策

要因音の原因静音対策の例
開閉モーター摩耗、低品質モーター高トルク・静音モーターへの切替
ドアガイドレール摩擦・劣化樹脂製レール、グリス保持構造
センサー感知空振り動作高精度センサーで誤作動減少
ガラスの共鳴開閉時の音反射防振ガスケット、建具間吸音材

このように、「聞こえないこと」が設計品質の指標になることもあるのです。


なぜ“静かさ”が求められるのか?

  1. 利用者にとっての快適性
     病院・図書館・高齢者施設などでは、無音に近い動作が求められます。
     → モーター音や閉扉音すら「騒音」と感じられる場面も。
  2. 環境との一体感を保つため
     建築デザインや内装と調和する静音動作は、「施設全体の印象」を左右します。
  3. 設備としての信頼性
     「音がしない=不具合がない」という安心感。
     逆に少しの異音で「壊れているのでは?」と疑われることも。

荷重式自動ドア(Newtonドア)の例から見る静音構造

ここで、静音設計の優れた実例として、Newtonドア(Nドア)シリーズの構造を簡単に紹介します。

※本文中では商品紹介を避けるため、詳細は関連記事として案内

  • 特徴①:電源レス構造
     電気モーターを使わない荷重式機構により、可動音の発生源が極めて少ない。
  • 特徴②:軸構造の静音化
     接地部の工夫やヒンジ形状により、軋み音やガタつきが発生しにくい。
  • 特徴③:使用時の衝撃吸収
     人の力でゆっくり閉まる構造のため、「バタン」という閉扉音がなく、静かで自然な動作。

このように、「静かであること」がドア設計において極めて重要であるという考え方は、すでに現場で実装されてきています。


設計者・施工者に求められる視点

  • 設備の選定時に「静音性能」をスペック表だけでなく、実際の空間での“聞こえ方”で検証する。
  • 音の種類(可聴域・高周波・構造音)を分けて理解する。
  • 自動ドアだけでなく、周囲の音響設計(反響・吸音・遮音)との関係性を考慮する。

次は、モスキート音が「不快」「健康に悪影響」と感じられる場合にどう対処するか、
利用者・管理者それぞれの立場からできる対応を紹介します。


もし“モスキート音”が不快に感じられる場合の対応方法は?

問いかけ
自動ドア周辺で聞こえる“モスキート音”が不快で耐えられないとき、どんな対応策があるのでしょうか?誰にどう伝えるのが効果的ですか?

答え
まずは発生源を特定した上で、施設管理者へ冷静かつ具体的に伝えることが第一歩です。実際には、多くの施設が“苦情があれば調整・撤去に応じている”ケースもあります。


ステップ1:記録と確認

  1. 聞こえた日時と場所を記録
     → 何曜日・何時頃にどの場所で聞こえたかを記録しておくと、管理者に伝えやすくなります。
  2. 周囲の人にも聞こえるか確認
     → 若年層中心に聞こえる場合、個人差があるため、複数人で確認すると説得力が増します。
  3. 音の特徴をメモ
     → 「キーンという高音で、耳鳴りのよう」「自動ドアの前に立つと聞こえる」など、具体的な感覚を言語化しておくことが重要です。

ステップ2:伝えるべき相手と伝え方

対象伝える手段ポイント
商業施設の管理会社施設の問い合わせ窓口・テナントカウンタークレームではなく「相談」として伝えると対応が柔軟に
公共施設(駅・役所など)サイトのお問い合わせフォーム/電話「体調に影響がある可能性がある」旨を伝えると重要視されやすい
テナント(店舗など)店舗スタッフ経由で本部へ「他にも聞こえる人がいる」と伝えると真剣に扱われやすい

過去の対応事例から学ぶ:誠実な対応で改善されたケース

  • 某ショッピングモール(関東地方)
     → 複数の若者から「頭痛がする」との相談が寄せられ、管理会社が音源を調査・撤去。
  • 公共施設の地下通路(関西地方)
     → 近隣住民からの通報により、自治体が設置企業に改善指導。
  • 都内ビルのオーナー会社
     → SNSで拡散される前に「ご指摘ありがとうございます」と丁寧に撤去し、評判が上がった。

対応が難しいときは、外部相談先も視野に

  • 地域の消費生活センター
  • 保健所(体調への影響がある場合)
  • 環境問題に取り組むNPO法人や市民団体

これらは「どうすればよいか分からない」という場合の中立的な相談窓口になります。


管理者側ができること

  • 音量・時間帯の調整(例:夜間のみ使用、周波数を下げる)
  • 音が出ていることを周知するサイン設置
  • クレームに備えた職員教育・FAQ整備

【適ドア適所】にそった「まとめ」

モスキート音は、設置する側には「安全・防犯」の目的がある一方で、利用者にとっては「聞こえないからこそ不安」「聞こえることで強い不快感」をもたらすこともあります。

自動ドアという設備の周辺でこれらの音が発せられている場合、設計者・管理者は単に「機能するからOK」ではなく、“静音性”と“音環境”のバランスをとった運用が求められます。

Newtonドアのように「電気を使わず、静音性を構造から実現する設計思想」もひとつの方向性です。静かであることが、設計上の美しさ・やさしさとして、これからますます求められていくでしょう。

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