自動ドアは「電動式」が当たり前──そう思っている方は多いかもしれません。でも、もし今この瞬間に建物が「停電」したとしたら、その自動ドアはどうなるでしょうか?
・開いたまま?
・閉じたまま?
・そもそも、途中で止まってしまう?
こうした疑問に加えて、「じゃあその時に手動で開けられるのか?」「中に人がいたらどうなる?」という不安が一気に押し寄せるのが、停電という“非常時”の現実です。
この記事では、**「停電時に自動ドアが開かなくなるかもしれない」**と感じたあなたに向けて、
- 停電時の自動ドアの挙動
- 手動で開ける仕組みと確認方法
- 安全性と防犯性のバランス
- 停電に備えた選定・設計の考え方
- 電気を使わない“もうひとつの選択肢”
まで、現場目線で具体的に、体系的に解説します。
目次(このページの内容)
自動ドアは「停電」するとどうなるのか?
結論から言うと、停電時の自動ドアの挙動は“設計思想”によって大きく異なります。
ここではまず、「停電になると自動ドアはどうなるのか?」という基本中の基本から押さえていきましょう。
手動操作を検討する前に知るべきこと
まずは「自動ドアが停電になった時、そもそも開いたままなのか?閉まるのか?」という動作のタイプを整理しておく必要があります。なぜなら、**この挙動こそが“安全性”と“防犯性”のバランス”**を大きく左右するからです。
停電時の代表的な動作パターンは3つ
| 状態 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 1. 開いたまま | 通行を確保するために、通電が切れるとロックが解除され、ドアが開いたままになる設計 | 商業施設の非常口、自動ドア全開機能付き |
| 2. 閉じたまま | 防犯重視のため、停電でもドアはロックされて閉まったままになる設計 | 金融機関、マンションのエントランス |
| 3. 途中で停止 | 停電の瞬間に動いていた位置で止まり、状況によっては隙間が空いたままになる | 病院、オフィスビルなどの汎用設計 |
設計思想:「フェイルセーフ」と「フェイルセキュア」
この違いを生み出す背景には、自動ドアにおける2つの基本設計思想があります。
| 設計思想 | 意味 | 採用例 |
|---|---|---|
| フェイルセーフ(Fail Safe) | トラブルが起きたときでも、安全を確保するよう設計 | 停電時に自動でロック解除して“開いたまま” |
| フェイルセキュア(Fail Secure) | トラブルが起きても、セキュリティを維持するよう設計 | 停電時も施錠状態を維持して“閉じたまま” |
「人命優先」で設計される避難動線(例:商業施設、公共施設)ではフェイルセーフが多く、「防犯優先」の施設(例:金融機関、マンション)ではフェイルセキュアが選ばれる傾向にあります。
種類別の違い
結論から言うと、「手動で開けられるかどうか」は、自動ドアの「駆動方式」と「安全設計」の組み合わせで決まります。
そして、それを見極めるには、事前の“確認ポイント”が重要です。
「電源が落ちたら、開けられない?」という根本的な不安
停電時に自動ドアが開かないと、出入りができなくなり、建物の安全性も損なわれます。
多くの管理者がここで初めて「手動で開けられるかどうか」という問題に直面します。
実は、この「手動で開ける」能力の有無は、すでに設計段階で決まっているのです。
ドアのタイプ別に見る「手動可否」の傾向
| ドアタイプ | 手動対応性 | 説明 |
|---|---|---|
| スライド式(引戸) | ◯〜△ | 一部機種は手動開閉に切替可能。ワイヤーやスイッチによる手動解放機構が付属する場合あり。 |
| スイング式(開き戸) | △〜✕ | 電気錠連動が多く、手動開放の可否は設計依存。フェイルセキュア採用が多い。 |
| フラップ式(高速シート等) | ✕ | 基本的に手動開閉不可。バッテリーや非常用電源併用が前提。 |
| 荷重式(Newtonドア) | ◎ | 電源不要で、人が力を加えればそのまま開く。停電時も問題なし。 |
具体的な「確認ポイント」
あなたの施設のドアが手動対応かどうかを確認するには、以下の項目をチェックしてみてください。
チェックポイント:
- 制御盤の位置と中身のラベル
- 非常解放レバーや切替スイッチの有無
- ドア本体に非常解放の表示があるか
- 「緊急時はこの方向に開けてください」などの指示があるかどうか
- 非常バッテリーの搭載状況
- 制御盤内にバッテリーが格納されているか、表示ラベルが貼られているか
- ワイヤー手動開放の機構があるか
- 旧式や一部機種では、ワイヤーを引っ張ることでロック解除できる構造も存在
- メーカー・機種名の確認
- 型番を記録し、製品サイトやマニュアルで仕様を調べる
実務での落とし穴:操作できる人が限られている
機構としては「手動開放可能」でも、現場でその操作方法を知っている人がいない場合、結局「誰も開けられない」という事態に陥ります。
定期的な操作訓練や、マニュアルの整備が求められる理由はここにあります。
停電対策としての「非常用バッテリー」は万全か?
結論:非常用バッテリーがあっても、「機能していない」ケースは少なくありません。
「うちはバッテリー搭載の自動ドアだから大丈夫」と思っていると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
よくある誤解:「バッテリーがある=安心」ではない
多くの自動ドアメーカーでは、オプションまたは標準装備として「非常用バッテリー」を搭載しています。
停電時でも数分〜数十分、動作を維持したり、ドアを開放したりできる設計です。
しかし、以下のような実情があります:
- 設置後に一度も点検されていない
- バッテリーが劣化していて充電容量が極端に減っている
- どのタイミングでどのように動作するか、使用者が理解していない
- 実際に作動させたことがない(未検証)
つまり、「あるけど使えない」ことが多いのです。
バッテリーの寿命と点検
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 想定寿命 | 約3〜5年(使用環境により大きく変動) |
| 点検内容 | 電圧確認、充放電テスト、劣化状況の確認 |
| 管理責任者 | 建物オーナー/管理会社/保守業者いずれか明確化が必要 |
実際、2019年の某ビル火災事故では、「バッテリー付きの自動ドアが開かず、人が閉じ込められた」との指摘がありました。
「ついているかどうか」だけでなく、「機能しているかどうか」が問われるのです。
バッテリーがあっても起こる“中途半端な状態”
非常用バッテリーによる開閉は、完全に自動ドアを通常動作させるわけではなく、あくまで一時的・限定的な動作です。
| 状況 | 起こる問題 |
|---|---|
| バッテリー残量不足 | ドアが途中で止まり、挟まれ・脱出不能のリスク |
| 開閉回数制限あり | 多数の人が出入りする施設では対応しきれない可能性 |
| 手動モードに切替不可 | バッテリー作動中は強制的にロックがかかるケースも |
「点検しているか」が全て
最終的に大切なのは、停電時に「自動ドアがどのように動くか」について、事前に確認し、試験運用しておくことです。
- 点検記録を残す
- 管理マニュアルに記載する
- 訓練で実際に作動させてみる
これらがあってはじめて、非常用バッテリーは「安心のための設備」になります。
安全性か防犯性か?迷いやすい設計思想の分かれ道
結論から言えば、「安全性」と「防犯性」はトレードオフの関係にあります。
そして、自動ドアの停電時の設計は、どちらを優先するかによって根本から変わってきます。
現場でよくあるジレンマ
建物の管理者・設計担当者は、こうした“矛盾する要請”の間で板挟みになることが少なくありません。
停電時に人が避難できるように「開けておきたい」
→ でもそれでは不審者が侵入してしまうかもしれない…
防犯のために「閉じておきたい」
→ でもそのせいで、中にいる人が外に出られないかもしれない…
このジレンマに対する設計上の答えが、**「フェイルセーフ」と「フェイルセキュア」**です。
フェイルセーフとフェイルセキュア:どちらが正しい?
| 設計思想 | 意味 | 停電時の動作 | 主な設置場所 |
|---|---|---|---|
| フェイルセーフ | 安全最優先 | 停電で開く(ロック解除) | 病院、商業施設、避難経路など |
| フェイルセキュア | 防犯最優先 | 停電で閉じたまま(ロック維持) | 金融機関、マンション、研究所など |
どちらが正しい、というものではなく、「何を優先すべきか」を現場ごとに明確にすることが重要です。
「併用設計」や「可変モード」という選択肢もある
最近の高機能な自動ドアでは、「普段はフェイルセーフ」「夜間はフェイルセキュア」といった、時間帯や状況によって挙動を切り替えられるタイプも登場しています。
あるいは、非常時には「警備室で一括解除」や「手動で解放」できるようなバックアップ設計をしておくことで、柔軟な対応が可能になります。
判断の軸を持たないと、選びを誤る
たとえば、「うちは防犯重視だからフェイルセキュアでいい」と安易に決めると、いざ災害時に人命に関わるトラブルを招くこともあります。
逆に、「安全第一だから開けっ放しでOK」とすると、不法侵入や盗難のリスクが跳ね上がります。
判断軸の例:以下の3点で考える
- 避難の優先順位(通行の自由が絶対条件か)
- 日常のセキュリティリスク(無人時間帯が多いか)
- 非常時の対応体制(常駐管理者がいるか)
このように、単に「停電でどうなるか」ではなく、「なぜその設計になっているか」を理解することが、真の安全対策につながります。
どんな施設に、どんな自動ドアが向いているか?
結論:停電時の対応もふまえ、「適ドア適所」の原則で選ぶことが最も重要です。
多くの施設では「とりあえず自動ドア」と導入されていますが、**使い方・立地・目的に応じた“最適な選択”**をすることで、安全性も防犯性も高めることができます。
自動ドアの選定に「正解」はない
自動ドアは、以下の要素によって最適な仕様が異なります:
- 建物の用途(公共施設/住宅/商業施設/医療施設など)
- 1日あたりの利用人数
- 無人時間帯の有無
- 災害発生時の避難経路の有無
- 通常時のセキュリティ要件
そのため、「この製品が一番」という答えはなく、**“目的に応じて最適なドアを選ぶ”**という視点が不可欠です。
用途別:停電対応まで含めた自動ドアの選び方
| 用途 | 優先事項 | 推奨タイプ | 停電時の推奨設計思想 |
|---|---|---|---|
| 病院 | 通行のしやすさ、安全性 | スライド式/荷重式 | フェイルセーフ(開放) |
| 商業施設 | 避難経路の確保 | スライド式 | フェイルセーフ |
| オフィスビル | 防犯と利便性のバランス | スライド式+非常解放 | 可変設計 or 管理者切替 |
| マンション | 防犯性 | スイング式 or スライド+電気錠 | フェイルセキュア(閉鎖) |
| 公共施設(役所など) | 通行性と停電対応 | 荷重式 or フェイルセーフ設計型 | フェイルセーフ or 自然解放型 |
「適ドア適所」とは?
Newtonプラス社が提唱する「適ドア適所」という考え方は、まさにこの課題に対する根本的な答えです。
ドアは単なる出入口ではなく、**安全・防犯・災害対応の機能を担う“選択すべき設備”**である。
この思想に立てば、自動ドアの導入時に“見た目や価格”ではなく、“用途・緊急時の動作・操作性”といった要素で選ぶことが、結果的に住民・利用者の命を守ることにつながります。
判断を誤らないためのチェックリスト
- 停電時にドアは「開く」のか「閉じる」のか?
- 手動で開けられる設計か?操作できる人がいるか?
- 非常バッテリーは機能しているか?点検されているか?
- 建物の用途に合った設計思想か?
- 通常時と非常時のバランスは取れているか?
このように、ドア選びは「いざという時」のことを想定してこそ価値があります。
電気に頼らない自動ドアという選択肢もある
結論:電気が止まっても問題なく動く、荷重式の自動ドア「Newtonドア」が存在します。
ここまで停電時のトラブルや対応策を見てきましたが、「そもそも電気に依存しないドアを選ぶ」という発想そのものが、非常に有効な対策になります。
荷重式とは?:人の体重を利用して開く仕組み
Newtonドアは、人がドアの前に立ったときの“体重”を利用して開くという、非常にシンプルな構造を採用しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 駆動源 | 人の重み(荷重) |
| 電気使用 | 完全ゼロ(通電不要) |
| 停電対応 | 常に可動。電源の有無に無関係 |
| 安全性 | 開閉速度が自然で、接触時も安全 |
| 維持管理 | 電装品がないため、故障リスクが低くメンテナンス容易 |
Newtonドアの動作原理(簡単解説)
- 人がドア前の床センサー(荷重スイッチ)に乗る
- 荷重により開閉機構が物理的に作動
- ドアがスムーズにスライド開閉
- 人が離れると、カウンターウェイト機構によりドアが自動で閉まる
このように、一切の電気的制御を使用しない構造によって、停電時でもまったく影響を受けない自動ドアとなっています。
停電時の「ゼロトラブル設計」
Newtonドアは、以下のような非常時に真価を発揮します:
- 災害による長時間停電時も、通行を阻害しない
- 機械的構造のみのため、復旧作業や点検不要
- 電磁ロックやバッテリーのような不確実要素がない
つまり、「動くかどうか」を心配する必要すらないのです。
導入事例から見える「適ドア適所」
- 公共施設(役所・避難所)
→ 停電時に人が殺到しても、自然に通行できる。訓練不要で高齢者にも安心。 - マンションのエントランス
→ バッテリー切れによる閉じ込めリスクを回避。日常と非常時の両立が可能。 - 自治体施設や医療機関の非常口
→ ライフライン喪失時にも自律的に開閉を維持。命を守る設計に直結。
「フェイルセーフ」でも「フェイルセキュア」でもない、新しい選択肢
Newtonドアは、設計思想としてはフェイルセーフに近いものの、そもそも「失敗しない」構造であり、フェイル思想そのものから一歩先を行くソリューションとも言えます。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
この記事を通じてお伝えしたかったのは、「停電で自動ドアが動かない」こと自体が問題なのではなく、
そのドアが、“そこ”にあるべきものだったのか?
という、「適ドア適所」の視点です。
まとめチェックリスト
- 自動ドアは停電時、設計によって「開く」「閉じる」「止まる」がある
- 「手動で開けられるかどうか」は、事前に確認と訓練が必要
- 非常用バッテリーは「あるだけではダメ」、点検と理解がカギ
- 「安全」と「防犯」のどちらを優先すべきか、用途に応じた判断を
- そもそも停電に強い「電気を使わないドア」という選択肢がある
【荷重式自動ドア】Newtonドアの資料請求はこちらから→https://76auto.biz/newtonplus/registp/p-offer.htm
【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus