自動ドアと聞いて、多くの人は「電動で勝手に開く扉」という認識にとどまるかもしれません。しかし、設計や図面を描く立場になると、その扉を「どう描くか」「どこに配置するか」「なぜその構成が望ましいのか」といった観点が重要になってきます。
特に「見取り図(平面図など)」において自動ドアをどう表現するかは、施設の使い勝手・安全性・メンテナンス性に直結します。それだけに、設計初心者はもちろん、実務者にとっても頭を悩ませる部分です。
この記事では、自動ドアの見取り図における正しい描き方、記号の使い方、用途別の描き分け、さらには設計ミスを防ぐチェックリストまで、実務に必要な情報を徹底解説します。
目次(このページの内容)
見取り図で何がわかる?なぜ“考え方”が図面に必要なのか
問い:見取り図は「単なる線の集まり」ではない?
答え:見取り図は、「人の動き・安全・運用」までを含んだ、空間設計の意図を伝える設計図です。
要点:
自動ドアの見取り図は、扉の配置や大きさを示すだけでなく、その施設における「動線設計」「安全性配慮」「操作性の確保」までをも担います。これらを正しく表現するためには、「なぜこのドアがここにあるのか?」という設計者の考え方を図面に落とし込む必要があります。
背景:
たとえば、病院のエントランスにある自動ドアが、「両開き」で「センサーで開閉」し、「ストレッチャーが通れる幅」に設定されているとします。これはすべて、「患者の搬送がスムーズで、安全かつ非接触で通行できる」ように意図されている構成です。
この“意図”は、見取り図の中で次のように表現される必要があります:
- 開口幅とスライド方向
- センサーの範囲と反応位置
- 押しボタンや非常開装置の位置
- 戸袋(引き込み部)のスペース確保
- 非常時の開閉方法(停電対応など)
これらの要素を含まずに描いた見取り図は、「構成図」としては成立しても「設計図」としては不完全です。
実務者の悩み:
実務では、「メーカーからCAD図面をもらって貼り付けただけ」では済まない場面が多々あります。施設の性質・利用者の特性・建築基準などをふまえた描写が必要となり、「作図」ではなく「設計としての表現」が求められます。
自動ドアの図面に登場する「種類」とその役割
問い:自動ドアの図面って、どんな種類があるの?
答え:主に「平面図」「立面図」「断面図」「詳細図」があり、それぞれ役割が異なります。
要点:
図面には複数の種類があり、単に形や位置を示すだけでなく、「見せたい情報の種類」によって描き分けが必要です。どの図面にどの情報をどう落とし込むかを理解すると、より正確で意図の伝わる設計になります。
1. 平面図(Plan View)
- 自動ドアの「位置」「開閉方向」「戸袋の位置」「押しボタンの有無」などが表現されます。
- 建築全体の動線設計と関連が深く、ドアの配置ミスが事故につながる可能性もあるため、最も注意すべき図面の一つ。
例:病院ではストレッチャーの幅(70〜80cm)を確保して、両開きスライド式が選ばれることが多い。
2. 立面図(Elevation View)
- ドアの「外観」「高さ方向の構成」「ガラス/アルミ/ステンレスなどの素材」がわかる。
- 壁の仕上げや外観デザインと関わるため、建築設計者や意匠設計者にとって重要。
3. 断面図(Section View)
- センサーや機械部分の取り付け位置(天井埋込か壁面設置か)などが詳細に記載される。
- 天井内部のクリアランスや配線ルートが正しく確保できるかの検証にも役立つ。
4. 詳細図(Detail Drawing)
- 自動ドア機構の具体的構成(モーター、センサー、レールなど)を正確に表現。
- 現場施工時に使用され、製品型番ごとの違いも反映される。
5. 配線系統図・システム構成図(必要に応じて)
- センサー→制御盤→ドア駆動部までの流れが明記される。
- 停電対応のバッテリー接続や、非常解放回路なども記載。
図面別の比較表
| 図面種類 | 主な目的 | 表現される内容 | 主な使用者 |
|---|---|---|---|
| 平面図 | 動線設計 | 位置・開閉方向・押ボタン・戸袋 | 建築設計・施主 |
| 立面図 | 外観・意匠 | 素材・高さ・枠形状 | 意匠設計・デザイナー |
| 断面図 | 構造・施工 | レール・機構部・配線スペース | 設備・施工者 |
| 詳細図 | 施工精度 | 部品ごとの寸法と取付構造 | 現場監督・製作図担当 |
| 配線図 | 電気設計 | 回路構成と連動関係 | 電気設備・保守 |
見取り図に使う記号・図示ルールまとめ
問い:自動ドアって、図面ではどういう記号で描けばいいの?
答え:建具記号と開閉方向を示す記号が基本で、自動ドアには専用の表記方法や注記ルールもあります。
要点:
設計図面では、建具(ドア・窓など)はすべて「記号」で統一的に表現されます。特に自動ドアは、開き戸や引き戸と違って「動き方」「制御方式」「安全装置の配置」なども含めて描く必要があるため、正しい図示ルールの理解が欠かせません。
主な記号一覧(JISや各社ガイドライン準拠)
| 種別 | 記号例 | 意味・使い方 |
|---|---|---|
| 建具記号 | D-1, D-2 | ドアの種類を番号で管理。建具表に対応させる |
| 引き戸(片引) | → | 右または左へスライドする方向を矢印で示す |
| 引き戸(両引) | ←→ | 中央から左右にスライド |
| 押ボタン | □ or 小円形 | 開閉スイッチの位置。注記で「開閉SW」など記載 |
| センサー | ☆や● | 検知エリアを示す場合は破線円などで範囲明示 |
| 戸袋 | 点線四角 | 引き込みスペースの存在を示す。躯体と区別必要 |
| 非常開装置 | ⚠︎ or ✖️ | 非常時の開放装置。用途により注記必須 |
注記の記載方法(例)
- 「自動引戸/センサー付/非常開装置付」など、建具記号のそばに付記
- 図面内の凡例(Legend)にて、記号の意味を明示
- ドアが電気設備と連動する場合、「制御盤位置」「配線ルート」などの補足あり
作図上の注意点
- 自動ドアのセンサーや戸袋は「空間を消費する要素」であるため、物理的なクリアランス(有効開口)に注意
- 特に設計図段階では「戸袋の逃げ」や「引き込み方向」が読み取れないと施工ミスにつながる
- 安全面を図面で表現するには、「どの方向から人が近づくか」「どこに障害物がないか」を線だけで伝える必要がある
おすすめ資料・リンク
- 【外部サイト】mado-handbook.com 建具記号一覧
- 【自動ドア作図例】JW_CAD対応の記号テンプレート
【用途別】自動ドアの見取り図の描き分け方
問い:病院や公共施設だと、自動ドアの描き方って違うの?
答え:施設の「使われ方」によって、必要なドアの種類や図面上の描き方は大きく変わります。
要点:
同じ自動ドアでも、使用される施設や空間の特性によって、「設計要件」や「図面表現」がまったく異なります。図面上でも、その違いを反映させた描き分けが求められます。
用途別の主な違いと描写ポイント
| 施設分類 | 主な自動ドア | 描写のポイント |
|---|---|---|
| 医療施設 | 両引き・センサー+押しボタン併用 | ストレッチャー通過の開口幅、手動操作の冗長性、無接触 |
| 商業施設 | ワイドスライド型・多連式 | 多人数通過への配慮、開口幅と戸袋スペースの確保 |
| 公共施設 | センサー式+手動対応 | バリアフリー対応(車椅子動線)、誘導ブロック位置 |
| 集合住宅 | 片引き or スイングドア | コンパクト設計、夜間施錠システムとの連動記載 |
| 工場/バックヤード | 両引き+セーフティセンサー強化型 | 安全装置の詳細表記(巻き込み防止)、非常停止スイッチ表現 |
図面描写上の注意点(用途別)
- 医療施設:入口だけでなく、通路内や手術室前にも自動ドアを設置するケースがあり、位置関係の把握が重要
- 公共施設:音声案内、点字付き押しボタンなどの「視覚/聴覚障害者対応設備」の位置を記載すべき
- 集合住宅:インターホン・オートロックとの連動表示を忘れずに(特に住戸内からの解錠スイッチ)
描き分けのコツ
- 設置目的の確認:安全?快適性?防犯? → 図示の要点が変わる
- ユーザーの動きの想像:「誰が」「どう通るのか」を線に落とす
- 必要な装置の拾い出し:装置が増えるほど、図面上の注記と記号が重要になる
図面設計における注意点とチェックリスト
問い:図面でミスしやすいポイントって?どんなところに注意が必要?
答え:開閉方向の誤認、センサー範囲の記載漏れ、戸袋スペース不足などが特に多いです。チェックリストでの最終確認が有効です。
要点:
図面が完成していても、「使う人が使いやすいか」「安全に開閉できるか」は図面だけでは判断しづらいことがあります。そこで、設計段階での“見落としがちなポイント”をリストアップしておくことが重要です。
よくあるミス・注意点
| ミス内容 | 結果 | 対処・防止策 |
|---|---|---|
| 開閉方向の表記ミス | 施工現場での逆設置 | 矢印記号と注記を明示/凡例を設ける |
| 戸袋スペース不足 | ドア開閉不能/工事中断 | 戸袋寸法の確認/平面図と断面図の整合性 |
| 押しボタン記載漏れ | バリアフリー違反の可能性 | 必須装置のリストアップと確認 |
| センサー範囲の未記載 | 安全エリア不明瞭 | 破線での範囲図示+注記 |
| 非常開装置の未表記 | 災害対応計画に支障 | 停電時の動作を注記(手動開放可など) |
設計者・作図担当者向けチェックリスト(10項目)
- 開閉方向(矢印)が正しく描かれているか?
- 開口幅が目的に対して十分か?(車椅子/ストレッチャー対応)
- 戸袋の逃げスペースが図面に反映されているか?
- センサーの検知範囲を破線や注記で記しているか?
- 押しボタンの設置位置・数は適切か?
- 制御盤や配線ルートが他設備と干渉していないか?
- 緊急時の対応手段(非常開装置など)が図面に記載されているか?
- 使用者の動線を想定した配置になっているか?
- 図面内に記号凡例(Legend)が設けられているか?
- 平面図・立面図・断面図で矛盾がないか?
参考リンク&図面データが入手できるサイト集
問い:図面って自分で全部描くの?ダウンロードできるところはある?
答え:主要メーカーがCAD図面を提供していますが、「そのまま使う前に確認すべきポイント」があります。
要点:
各自動ドアメーカーでは、製品ごとの「平面図・断面図・取付図」などがCADデータとして公開されています。これを利用することで、図面の精度向上と設計時間の短縮が可能です。
主な提供元と特徴
| 提供元 | 特徴 | URL |
|---|---|---|
| NABCO(ナブコ) | スライド・回転・折戸など網羅/DWG・DXF・PDF形式あり | nabco.nabtesco.com |
| YKK AP | 建築向けドア製品の詳細図/検索機能つき | cad.ykkap.co.jp |
| 寺岡オートドア | 医療施設用など特殊ドアも含む/PDFとCADあり | teraoka-autodoor.co.jp |
| dwglab.com | 自動ドアのDWGブロック図が多数/海外製図例もあり | dwglab.com |
利用時の注意点
- 図面はあくまで「製品設計図」であり、建築用途での配置には調整が必要
- 設置スペースや動線、押しボタンの位置、安全クリアランスなどは図面に反映されていないことも多い
- 「そのまま貼るだけ」では、建築図面としては不十分
使い方のコツ
- 必要な図面形式(DWG、DXF、PDF)を選ぶ
- 図面を挿入後、凡例と注記を自分の設計に合わせて追加
- 複数製品の図面を比較し、開口幅や装置の配置などを見比べて設計意図に合致させる
【Newton視点の適ドア適所】用途別の“良い見取り図”とは?
問い:「いい見取り図」って、どんな図面を指すの?
答え:「誰が、どこで、どう使うか」という“適ドア適所”がきちんと反映されている図面こそが、良い見取り図です。
要点:
図面が正確であることは当然ですが、それ以上に大切なのは「用途に対して最適なドアを最適な方法で配置していること」です。Newtonドアではこの考え方を「適ドア適所」と呼び、設計の基軸としています。
「適ドア適所」が見取り図にどう表れるか
| 要素 | 適切な反映例 | よくある誤り |
|---|---|---|
| 用途とドア形式の一致 | 車椅子対応エントランス → 両引きスライド | 狭い場所に両開き回転ドア |
| 動線とセンサー位置の連動 | 利用者が進む方向に対してセンサーが先読み配置 | センサーが鈍角配置になっていて反応不良 |
| メンテナンスへの配慮 | 戸袋や装置部に点検スペースあり | 装置が梁に食い込み、保守不可能 |
| 安全性の視覚化 | 開閉範囲が破線で明示/非常開装置あり | 開閉の可動域が図面上で不明確 |
Newtonドアの事例で見る「図面から読み取れる良設計」
Newtonドア(荷重式自動ドア)は、電源不要の機構でありながら、確実に静かに開閉できる設計です。このような特殊な機構を図面で表現するには、以下のような配慮が必要です:
- 平面図に「荷重開閉装置」「静音ダンパー」などの注記
- 手動式であることを示す矢印記号の明確化
- 動作の方向と速度(ゆっくり開くなど)を凡例で伝える工夫
これらは、ただの製品図面では伝わりません。使われ方を意識した「設計図」として描くことが、「適ドア適所」への第一歩なのです。
【適ドア適所】にそった「まとめ」
- 自動ドアの見取り図は、「人の動き」「安全性」「使いやすさ」まで設計に落とし込む重要な情報伝達手段です
- 設計段階では、「どの施設に、どんな人が、どのように使うか」を想定し、それが図面に反映されていることが求められます
- 記号・注記・動線・安全装置などが的確に表現されてはじめて「伝わる図面」が完成します
- 特にNewtonドアのような荷重式の機構を設計図に落とし込む際は、電源が不要であること、動きの性質、利用者への影響などを正しく伝える工夫が必要です
出典・参考リンク(記事内紹介分)
- mado-handbook.com 建具記号一覧
- NABCO CAD図面提供ページ
- YKK AP 建築用CAD図面
- 寺岡オートドア 医療施設用図面
- dwglab 自動ドアDWG図面
- JW_CADでの自動ドア作図例
【荷重式自動ドア】Newtonドアの資料請求はこちらから→https://76auto.biz/newtonplus/registp/p-offer.htm
【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus