自動ドアというと、「開いたり閉じたりを自動で行う装置」という機能面だけに目が行きがちです。

しかし、実際に建築物に自動ドアを設置する際にまず向き合うことになるのは、「どうやって納めるか?」という物理的な設計と寸法の問題です。その中でも多くの人が最初につまずくのが「枠見込み」という図面用語。「枠見込み120mmって、どういう意味?」「この寸法、何を基準に決めるの?」という疑問は、現場経験のある方ほど感じたことがあるかもしれません。この記事では、「枠見込みってなに?」から、「どの寸法を選べばいいのか?」までを段階的に、かつ実務的に解説していきます。また最後には、「そもそも枠に依存しない発想ってないの?」という疑問にまで踏み込み、荷重式=Newtonドアのような設計思想も紹介します。


目次(このページの内容)

「枠見込み」とは何か?意味と定義を整理する

まずは用語の定義から整理しましょう。

要点:枠見込みとは、「枠の厚み(壁方向への奥行き)」のこと

建築や建具図面で使われる「枠見込み」という表現は、枠材が**壁の奥行き方向にどれだけ食い込むか(設置されるか)**を示す寸法です。専門的には、「枠の厚さ」「壁厚と枠の関係寸法」「無目の納まりとの関係寸法」として使われるケースが多いです。


手順:他の用語との違い
用語意味寸法方向枠見込み壁厚方向の枠の奥行き奥行き(壁厚方向)枠見付(みつけ)外から見える枠の幅正面幅(視認面)内法(うちのり)寸法枠の内側(扉が収まる範囲)有効開口寸法外法(そとのり)寸法枠の外側(全体の仕上がり幅)建具全体寸法

図面上では「W=枠内法幅」「C=枠見付」「見込=D」などの略記号で表現されることもあります。たとえば図面に「枠見込120mm」「枠見付35mm」と書かれていれば、それは「この枠は壁奥に120mm入る」「表面に見える幅は35mmある」という意味になります。


よくある混同ポイント
  • 「枠見込み」と「見付け」は、どちらも“枠の寸法”でありながら、寸法方向が違う「内法」「外法」は、扉の設置寸法や施工上のクリアランスに関係「枠見込み」は、施工時の干渉や納まりに直接影響するため、建築側との整合が最も重要


  • 枠見込みの図示(テキスト版)
    ┌──────────────┐
    │ ←枠見付→ │
    │┌────────┐│
    ││ 開口部(内法) ││
    │└────────┘│
    │        ↑
    │      枠見込み(壁方向)
    └──────────────┘


    キーワードの意味が明確になったところで…

    ここからは、「なぜこの寸法が重要なのか?」を理解するために、実際の設計・施工現場でどう影響するのかを見ていきましょう。


    なぜ枠見込みが重要なのか?設計・施工上での影響とは

    「枠見込み」という言葉が図面に書いてあっても、それがなぜ重要なのかピンとこない方も多いかもしれません。しかし実務において、この寸法がズレると設計ミス・施工トラブルの原因になる可能性が非常に高い項目です。


    根拠:枠見込みが施工上重要になる理由
  • 壁厚との整合が必要

    • 枠が壁より厚すぎると、壁からはみ出すことで見た目が不格好になる逆に薄すぎると、壁に埋め込みきれずに隙間ができることもある石膏ボード+軽鉄(LGS)下地などで構成される壁の場合、実壁厚が90〜150mmになることもあり、それに合わせた枠見込みの選定が不可欠

    構造体(躯体)との干渉を避ける

    • 特にRC構造(鉄筋コンクリート)やS造(鉄骨)で下地が複雑な場合、アンカー位置や壁芯とのずれで干渉が起きやすくなる枠見込みを過信して施工した結果、アンカーが躯体に効かないというトラブルも起きている

    無目や装置類の納まりに影響する

    • 自動ドア上部(無目)に駆動装置やセンサーが内蔵されるタイプでは、枠見込みが小さいと機器が収まらないことも「枠見込み100mm」なら収納可だが、「70mmタイプ」では収まらず別途スペースが必要という例もある

    意匠・見た目への影響

    • 枠見込みを大きく取ると、見た目として枠が厚くなり「重たく感じる」印象になるデザイン重視の施設(病院、ホテルなど)では、視覚的な軽さと機能のバランスが重要


  • 注意点:現場で実際に起きたトラブル例
    トラブル内容原因結果壁から枠がはみ出している壁厚90mmに対し枠見込み120mmを選定美観が損なわれやり直しに駆動装置が枠に納まらない枠見込み70mmに装置を内蔵しようとした補強追加でコスト・納期が増加アンカーが効かない見込み深さに合わせたアンカー設計をしなかった構造的に不安定になり補修必要


    補足:製品仕様と図面の「見落としがちな注意書き」

    多くの自動ドア図面には、以下のような注意書きが小さく書かれています。

    ※枠見込みは壁厚と整合をとってください※見付寸法を変更する場合、外法寸法が変化します

    → これらを読み飛ばしてしまうと、設計段階では問題ないが現場で施工できないという事態にもなりかねません。


    このように、「ただの数字」と思われがちな枠見込みですが、設計・施工・意匠・コスト・スケジュールすべてに影響する、極めて重要な要素なのです。次のセクションでは、「ではどのように選定すべきか?」という具体的な判断軸を提示します。枠見込みは「言われたまま」ではなく、「自分で意味をもって判断できる」状態を目指しましょう。



    【判断軸】枠見込みを決める5つのポイント

    これまで見てきた通り、枠見込みは単なる寸法ではなく、設計・施工・意匠に大きな影響を与える重要な判断項目です。ここでは、現場で使える「判断軸」を5つの観点で整理します。


    1. 壁厚との整合が取れているか?

    最優先で確認すべきは、壁厚との整合性です。特に多いのが「LGS下地+PB仕上げ(石膏ボード)」で構成された軽量間仕切り壁。この場合、一般的な壁厚は 75mm〜125mm程度。これに対して枠見込みが

    • 70mm以下:納まりが厳しい、補強が必要になる場合も100mm前後:壁厚との整合がとりやすい(推奨ゾーン)120mm以上:壁の内外どちらかに飛び出すリスクあり

    設計上は壁芯との取り合いだけでなく、「仕上がり厚」まで把握して枠寸法を選ぶことが肝心です。


    2. 駆動装置・センサーなどの機器の納まりに適しているか?

    自動ドアの駆動装置やセンサーは、枠の無目部(上部)や見込み部に収納されることが多いため、枠見込みが足りないと

    • 駆動装置が枠内に収まらないセンサー取り付け位置が制限される機器が露出して意匠性が損なわれる

    といった事態に陥ります。仕様書や図面で「見込み○○mm以上必要」などと明記されている部分を見落とさないようにしましょう。


    3. 補強部材・アンカーとの関係を考慮しているか?

    枠見込みが浅すぎると、補強材を入れるスペースが確保できません。逆に深すぎると、アンカー長が足りなかったり、施工性が悪くなったりします。特に注意が必要なのは…

    • ALC壁やRC壁:補強材が壁内に納まりきらないアンカー打設範囲:枠内からの距離や有効長に注意

    → 枠補強材の設計指示と枠見込みを合わせて確認することが重要です。


    4. 意匠・見た目への影響はどうか?

    意匠性を重視する建築では、枠が目立ちすぎると空間の雰囲気を壊すことがあります。枠見込みが大きすぎると、下記のようなデメリットが生じることも。

    見た目影響枠が厚く見える圧迫感が出る、重たく見える納まりが複雑化粧材などの追加でコスト増

    → 見た目と機能のバランスをとる設計が求められます。


    5. 施工性・メンテナンス性への配慮はあるか?
  • 枠が深いと、配線作業や機器交換がしやすい反面、施工に手間がかかる枠が浅いと、施工は早いが、機器の収納が難しくなる将来的な交換・増設を想定するなら、多少余裕を持たせた寸法が◎

  • → 「今だけ」ではなく、「将来の維持管理」も視野に入れると失敗が少ないです。


    以上の5つの視点を「チェックリスト」として活用すると、設計時に枠見込みを何となく決めるのではなく、目的に応じて根拠を持って選べるようになります。次のセクションでは、実際に多く使われている主要メーカーごとの「枠見込み寸法」の傾向を比較表で整理し、より具体的に判断しやすくします。


    主要メーカー別「枠見込み寸法」の比較一覧【実例付き】

    ここまでの理解を踏まえて、次は実際の自動ドアメーカーの仕様で「枠見込み寸法」がどうなっているかを整理して比較してみましょう。これにより、「選定の判断」や「納まり調整」の目安を得ることができます。


    比較表:主要メーカーごとの枠見込み寸法
    メーカー名枠見込み寸法例特徴・注記NABCO100mm(標準)/70mm/120mm製品によって無目見込み・見付も変動あり。駆動部収納設計は仕様書確認が必須。不二サッシ100mm(標準)枠見込み100mmで自動ドア装置を無目に内蔵可能。ドア仕様と連動設計。寺岡オートドア70mm/100mm/120mm100mm以上が主流。重扉や強風対策モデルでは枠見込みが増える傾向。その他中堅メーカー90〜120mm程度(製品依存)顧客仕様や設計者指示によるカスタム対応が可能なケースもあり。


    具体例:製品仕様書・図面から読み解く見込み寸法

    NABCO:V-60WO-Nタイプ

    • 枠見込み:100mm無目見込み:100mm設計用途:一般的な建物の片引き・引き分け自動ドアに最適

    不二サッシ:AD型自動ドア

    • 枠見込み:100mm駆動装置:無目内蔵型(フラット納まりが可能)特徴:壁に干渉せず、スッキリした外観が得られる

    寺岡:オートドア図面例(公式ダウンロード)

    • 枠見込み:70mm、100mm、120mmのラインナップあり図面注意:壁厚との整合を強く推奨する記載あり補強プレートの設計が、見込みと連動して図面に示される


    注意:同じ「100mm」でも中身が違う

    各メーカーで「枠見込み100mm」と記載されていても、以下の点に違いが出ます。

    • 駆動装置の収納方法(無目内蔵型/外付け型)見付け寸法との関係(例:見付35mm/45mm)補強材や内部構造の厚み適用扉重量の違い

    つまり、単純に「100mmだから同じ仕様だろう」と判断するのは危険です。


    選定の目安:判断軸との照合
    判断軸目安壁厚が90〜110mm→ 100mmタイプが最も整合しやすい装置内蔵を優先→ 無目見込み100mm以上が必要デザイン性重視→ 70mm〜のスリム枠も視野に重量扉や高頻度利用→ 120mm以上の頑丈枠が有利


    このように、「メーカーごとに違う」ことを前提として情報を集める姿勢が非常に重要です。また、納まり図や施工マニュアルは製品ごとにWebで公開されていることも多いため、「図面のどこを見るべきか」が分かっていれば、判断が格段にしやすくなります。次のセクションでは、実際に寄せられた疑問に答えるFAQ形式で、「どれを選べばいいか?」という判断に迷ったときのヒントを紹介します。


    よくある疑問:「どれを選べばいいの?」にどう答えるか

    ここでは、「枠見込み」に関して現場や設計者からよく寄せられる代表的な疑問をQ&A形式でまとめました。判断に迷ったときのヒントとして、ぜひチェックしてみてください。


    Q: 壁厚が90mmでも枠見込み100mmで問題ないですか?

    A:基本的には問題ありません。ただし「仕上がり壁厚が本当に90mmか?」を確認することが重要です。石膏ボードの厚み、クロスの有無、下地材などを含めて「実際の厚み」が90mmを下回ると、枠が外に出っ張る可能性があります。現場寸法を確認した上で、場合によっては90mm対応のスリム枠タイプを検討するのが安心です。


    Q: 図面で「枠見込み120mm」と書かれていたら、特別な意味がある?

    A:120mmの枠見込みは、通常より厚い壁構造や重扉対応の可能性が高いです。また、強度確保のために補強プレートが内蔵される仕様になっている場合も。「なぜ120mmなのか?」を図面上の他要素(扉重量、無目寸法、補強指示など)とセットで確認すると、理由が見えてきます。


    Q: スッキリした納まりにしたいのですが、枠見込みは小さい方がいい?

    A:一概には言えません。確かに枠見込みを70mm程度にすると、枠が薄くなりスッキリと見えます。ただしその分、機器の収納が難しくなったり、強度的に不利になったりする場合があります。意匠と構造のバランスを取るなら、100mm程度で無目収納タイプを選ぶのが現実的です。


    Q: 枠見込みって、施工後に変更できますか?

    A:基本的にはできません。枠材は壁と連結・固定される部材であり、製品段階で製作されているため、施工後に「もっと薄く(厚く)したい」と思っても変更は困難です。設計段階での見込み寸法の検討が極めて重要です。


    Q: 複数の枠見込み寸法がある場合、どうやって選べばいい?

    A:以下のように「用途×構造条件」で整理するとわかりやすいです。

    用途壁厚推奨枠見込みオフィス間仕切り75〜90mm70〜90mm病院・学校など90〜110mm100mm商業施設・重扉110mm〜120mm以上

    Q: メーカーごとに枠見込みが違うのはなぜ?

    A:枠見込みの設計は、駆動装置の方式・補強設計・デザインポリシーなどにより各社異なります。たとえば同じ「見込み100mm」でも、センサー収納方式や配線経路が異なることで、中身はまったく違う場合も。比較するときは、単に寸法だけでなく、内部の納まり構成まで確認することが大切です。


    次のセクションでは、いよいよこの記事のまとめとして、「適ドア適所」という視点から、そもそも“枠に依存しない”という設計思想の可能性についても紹介します。


    【適ドア適所】自動ドアの納まりはどう選ぶ?プロの視点

    ここまで、「枠見込み」の意味・重要性・選び方について解説してきました。最後にもう一歩進んで、「そもそも枠に頼らない」という視点についても触れてみたいと思います。


    手順:従来型の「枠中心」設計からの脱却

    多くの自動ドアは「枠」が構造体としての役割を果たし、そこに駆動装置や補強材を取り付けることで機能します。そのため、設計者は常に「枠見込み」「壁厚」「無目納まり」といった要素の整合を考え続けなければなりません。しかし一方で、「枠がなくても機能する自動ドア」が存在することをご存じでしょうか?それが、「荷重式自動ドア(Newtonドア)」という新しいアプローチです。


    根拠:Newtonドアが提示する“壁に依存しない”設計思想

    Newtonドアは、壁の強度に頼らず、床に荷重をかけることで開閉機構を動かす設計になっています。このため、従来の自動ドアに必要だった以下の要素が不要になります:

    • 無目(上枠)に駆動装置を入れる必要なし枠見込みや壁厚に応じた特注対応が不要枠と構造体の干渉リスクがゼロ

    つまり、「壁厚に合わせた枠選び」や「寸法トラブル」から解放される設計が可能なのです。


    導入事例:Newtonドアを選んだ背景と効果

    Newtonドアはすでに多くの施設で導入され、特に以下のようなケースでその利点が発揮されています。

    導入事例導入理由得られた効果公共施設(役所・図書館)改修現場で壁厚がまちまちだった壁厚に関係なく施工できたため、現場対応がスムーズ分譲マンション意匠性重視でスリムな納まりが求められた枠を細くでき、設計自由度が上がった医療施設清掃性・メンテナンス性が重視された枠構造がないことで清掃箇所が減り、運用負荷が軽減

    要点:適ドア適所の発想が、選定ミスを防ぐ

    本記事では「枠見込みをどう選ぶか?」を中心に解説してきましたが、それは裏を返せば「枠に依存する自動ドアを前提としている」世界観でもあります。しかし、すべての現場で「枠がベスト」なわけではありません。荷重式のように「枠が不要な選択肢」も含めた上で、

    • 現場の施工条件壁の強度や厚み使用頻度や意匠性予算・メンテ性

    といった複合的な観点から“適ドア適所”を考えることが、最も納得感のある選択につながります。


    次のセクションでは、この記事全体のまとめと、この記事が他サイトと違う「信頼できる理由」を明確に整理します。



    【適ドア適所】にそった「まとめ」


    ✅ 結論:枠見込みは“ただの寸法”ではなく、設計の要点
  • 「枠見込み」は、壁厚や機器の納まりと連動する設計の中核寸法ですよくある「100mmでOK」という認識は、現場条件によっては落とし穴になります特に、壁厚との整合/無目・機器の収納/補強/意匠の4点をチェックしながら判断することが大切です


  • ✅ この記事で伝えたこと
  • 枠見込みの定義、図面での読み方設計・施工で失敗しないための判断軸(5つ)主要メーカーごとの見込み寸法比較と注意点よくある疑問に対するプロ視点の回答「枠に依存しない」Newtonドアのような設計思想


  • ✅ 最後に:適ドア適所の視点を忘れずに

    すべての現場に「同じ答え」はありません。しかし、「この寸法で正しいのか?」「他に方法はないのか?」と立ち止まって考えることは、自動ドアの設計をよりよいものにしていく第一歩です。「壁に合う枠を探す」のではなく、「現場に合う納まりと方式を選ぶ」という発想こそが、設計の本質ではないでしょうか。


    【出典一覧(参考リンク)】
  • NABCO公式サイト:https://nabco.nabtesco.com不二サッシ公式サイト:https://www.fujisash.co.jp寺岡オートドア株式会社:https://teraoka-autodoor.co.jpNewtonドア(Newtonプラス):https://newton-plus.co.jpNドアチラシ資料(マンション・自治体)/FAQ/導入事例集より引用

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    【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus

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