自動ドアというと、「ガラスの扉が電気で開閉する装置」といったイメージが一般的ですが、実はその背後には、建築設計上の細かな部材や構造が関わっています。その一つが「無目(むめ)」です。
「無目」は、自動ドアの構造において見逃されがちな存在でありながら、実際の設計・施工・保守のすべてに影響を与える、極めて重要な要素です。この記事では、建築設計図に出てくる「無目とは何か?」という基本から、無目があることによって設計・運用・保守がどう変わるのかまで、実務的な視点で徹底解説します。
これから、以下のような内容を順に学べます:
- 無目の正確な意味と役割
- 無目がある自動ドア/ない自動ドアの違い
- センサー設置や安全性への影響
- 設計・施工・保守での判断ポイント
- そして「無目が必要かどうか」を判断するための思考フレーム
目次(このページの内容)
無目って何?図面で見かけるけど、どんな意味?
要点:
無目とは、自動ドアの上部に設けられる構造枠であり、駆動装置(ドアオペレーター)やセンサーなどを内蔵するためのスペースです。ただの“見た目の枠”ではなく、構造、機能、安全性に関わる重要な役割を果たします。
手順:まず「無目」という言葉の由来から知っておこう
「無目(むめ)」という言葉をはじめて聞いた方にとって、まず違和感を覚えるのは「“無”という字がついてるのに、実際は“ある”もの」だということではないでしょうか?
実は「無目」というのは建築用語に由来しており、もともと障子や格子の中で「横に通す細い木(目)」を「設けない」ことを指して「無目」と呼んでいたことが由来です。そこから転じて、現在では「開口部の上部に設けられる横架材(梁のような部材)」を指すようになりました。
根拠:建築設計図における「無目」の使われ方
建築設計図には「自動ドア無目一体型」や「無目式センサー」などの表記がされることがあります。
- **「無目一体型」**という表現は、オペレーター(自動ドアを開閉させる機械部分)を無目内に収納する設計を意味します。
- **「無目式センサー」**は、無目に直接取り付けるタイプの人感センサーのことです。
つまり、「無目」とは単に上部にある部材ではなく、装置の収納スペースであり、設計全体にかかわる構造的な要素なのです。
無目の基本構成:どこに、なぜあるのか?
無目の設置位置:
通常、無目は以下のような位置にあります。
--------------------
| | ← 無目(むめ)
| 自動ドア |
| |
--------------------
この無目部分に、以下のような部材が収納されるのが一般的です:
- 自動ドアオペレーター(モーター、制御装置、ベルトなど)
- 電源ケーブル、信号線
- センサー(無目式センサー)
- 安全装置(補助センサー等)
要点:無目が果たす4つの基本的役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 駆動装置の収納 | モーターやギア、制御基板を格納し、外から見えない構造に |
| 見た目の美観 | 装置が露出せず、ファサードと一体化したスッキリした印象に |
| 構造的補強 | 無目が梁の役割を果たし、開口部のたわみ・変形を防止 |
| センサー設置基盤 | 無目式センサーを安定的に設置できる基準面を確保 |
注意点:無目の有無は「見た目」以上に重要
「無目があると見た目がきれいになる」という理由だけで設けられるわけではありません。無目がないと…
- 駆動装置を天井埋込にせざるを得ず、建物構造の制約が増える
- センサー設置位置が不安定になり、誤作動が起こりやすい
- メンテナンス時に天井開口が必要になり、コストと手間が増える
つまり、無目は“ただの枠”ではなく、自動ドアシステムの中核部品が集まる重要な設計要素なのです。
続いて【H2-2「なぜ無目が必要なの?構造・美観・安全性まで」】の本文を展開します。
なぜ無目が必要なの?構造・美観・安全性まで
要点:
無目は単なる「枠」ではなく、建築構造・自動ドアの機能・安全性に直結する要素です。特に「無目がある場合」と「ない場合」とでは、施工方法、デザイン、メンテナンス性、安全装置の取り付け可否まで大きく変わります。
手順:無目が必要とされる3つの主要な理由
- 構造的な安定性
- 無目は梁として働き、開口部のたわみを防ぎます。
- 大型の自動ドアや重量のあるガラス扉の場合、無目がなければ躯体の強度不足で変形や不具合が生じやすくなります。
- 機器収納と保護
- 自動ドアオペレーター(モーター、ベルト、制御基板)は精密機器です。
- 無目内に収めることで、雨風・直射日光・衝撃から保護されます。
- 装置が露出しないため vandalism(いたずら・破損)防止にもつながります。
- 美観と意匠性
- 外部から見える部分に装置が出ていると、建物全体のデザインが崩れます。
- 無目を設けることで、装置を見せずにファサードと一体化した美しい仕上がりが可能です。
根拠:施工現場でよくある「無目がないと困るケース」
- 商業施設の大型出入口
大きなガラスドアを使う場合、無目がないと躯体が変形しやすく、ドアの動作に不具合が生じます。無目を梁として設けることで安定性が確保されます。 - オフィスビルの正面玄関
美観重視のガラス張りデザインでは、無目に装置を隠すことで「透明感」を損なわずに済みます。 - 病院・介護施設
頻繁に開閉するため、機器の保護と保守性が重視されます。無目があると、点検時に機器にアクセスしやすい設計が可能です。
注意点:無目があることによる制約
無目は利点ばかりではありません。設計段階では以下の制約も考慮が必要です。
| 制約項目 | 説明 |
|---|---|
| 天井高さ | 無目を設けるとその分開口高さが減少する |
| コスト増 | 無目の製作・設置費用が追加される |
| デザイン制約 | 「無目が見えること自体」を避けたいデザインでは不向き |
| 重量増加 | 構造的に梁を設けるため、重量が増して施工に影響 |
要点整理:
無目は「構造強度」「機器保護」「美観保持」という三大メリットがある一方で、「高さ制約」「コスト増」というトレードオフが存在します。したがって設計段階では、建築用途・利用頻度・意匠性のバランスで判断する必要があります。
無目があるタイプ vs ないタイプの違いとは?
要点:
無目は必ずしも「あるべき」ものではありません。建物の用途や設計意図によって「無目あり」と「無目なし」どちらも選択肢となります。ここでは両者の特徴を比較し、設計判断に役立つ視点を整理します。
手順:まず両タイプの概要を理解する
- 無目があるタイプ
- 自動ドア装置を無目内に収める設計
- 商業施設・医療施設などで広く採用
- 強度・美観・保守性に優れる
- 無目がないタイプ
- 天井埋込や側面収納など、無目を設けずに装置を納める設計
- ガラス張りファサードやデザイン重視の建築で採用されることが多い
- 開口高さを確保できるが、施工・保守に制約あり
比較表:無目あり/なしの違い
| 項目 | 無目あり | 無目なし |
|---|---|---|
| 強度・構造安定性 | 梁としての補強効果があり、大型ドアに適する | 躯体強度に依存するため、条件次第では不安定 |
| 機器収納 | オペレーターや配線をまとめて収納できる | 天井や壁に埋込む必要があり、施工難度が上がる |
| デザイン性 | 装置が隠れてスッキリするが、無目自体の存在感が出る | 無目がない分、開放感がある。全面ガラスデザインに有効 |
| 開口高さ | 無目の分だけ開口高さが制限される | 最大限の高さを確保できる |
| センサー設置 | 無目式センサーを取り付けやすい | 設置位置が限定され、誤作動リスクも高まる |
| メンテナンス性 | 無目内部から容易に点検・交換できる | 天井や壁を開口しないと作業できず、工数増 |
| コスト | 無目製作・設置費用がかかる | 無目の分は削減できるが、天井施工コストが増える場合も |
| 利用例 | 商業施設、病院、マンションエントランス | 美術館、ショールーム、全面ガラス建築 |
根拠:利用事例から見る傾向
- 無目ありタイプ
ショッピングモール、病院、自治体庁舎の入口など、利用者数が多く安全性・耐久性を優先する場面で採用されます。
無目にセンサーを設置できるため、安全対策も取りやすい。 - 無目なしタイプ
デザイン性を重視する建築(全面ガラスの美術館、ショールームなど)で選ばれます。
ただし、センサー設置が難しく、安全対策が課題となることが多いです。
注意点:
無目の有無は「コスト」や「デザイン」だけで決めるのではなく、利用頻度・安全性・メンテナンス性の観点から総合判断する必要があります。
無目式センサーって何?どんなメリット・注意点がある?
要点:
「無目式センサー」とは、自動ドア上部の無目部分に設置される人感センサーを指します。ほとんどの商業施設や公共施設では、この無目式が主流です。センサーの種類や設置位置によって安全性や誤作動のリスクが変わるため、理解しておくことは重要です。
手順:無目式センサーの基本
- 設置位置:無目の正面や下面に取り付けられる
- 役割:通行者を検知してドアを開閉させる
- 種類:赤外線方式、超音波方式、マイクロ波方式、複合方式など
メリット:無目式センサーが広く使われる理由
- 設置高さが安定している
無目は開口上部に必ず一定の位置があるため、センサーを「人が通る位置」に合わせやすい。 - 配線・電源がまとめやすい
無目内に制御装置や配線を納められるため、センサーと機器の接続が容易。 - 見た目がすっきり
外から見てもセンサーが自然に収まり、建物の意匠を損なわない。 - 安全性の確保
センサーが正しく作動すれば、通行者に接触する前に確実に開閉できる。
注意点:無目式センサーの課題とリスク
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 誤作動リスク | 赤外線方式は直射日光や温度変化に弱く、誤検知・誤動作が発生することがある |
| 検知対象の区別 | 超音波方式は「人」と「動く物体(カーテンや旗など)」を区別できない場合がある |
| 風や振動の影響 | 建物の揺れや風によるガラスドアの動きが誤検知につながることがある |
| 設置条件の制限 | 無目の幅や高さが足りないと、適切なセンサーを設置できない |
| メンテナンス性 | 無目内に収めたセンサーは交換しやすい一方、機種によっては無目の加工が必要な場合がある |
根拠:実際の運用現場での声
- ショッピングセンターでは「日差しが強い入口で赤外線センサーが誤作動する」という事例が多く、最近はマイクロ波や複合方式を採用するケースが増えています。
- 病院・介護施設では、車椅子やストレッチャーを確実に検知する必要があるため、検知範囲が広い無目式センサーが適しています。
要点整理:
無目式センサーは「安定性」と「設置のしやすさ」から標準的な方式ですが、建物の環境条件(外光・風・利用者の動線)に応じたセンサー選定が欠かせません。
どう判断する?無目が必要かどうかの考え方
要点:
「無目は必須なのか?」という疑問に対して、答えは「場合による」です。用途、建物設計、利用者特性、安全基準、将来の保守計画まで含めて考えたときに、その場に最も適した選択をすることが重要です。
手順:判断フレームワーク(適ドア適所の視点)
無目の有無を判断する際には、以下の5つの軸で整理すると明確になります。
- 用途・通行量
- 大型商業施設や病院 → 利用頻度が多く、安全性が最優先 → 無目ありが基本
- デザイン重視の美術館やショールーム → 無目なしの開放感を重視することもある
- 構造的要求
- 大型ガラスドアや重量ドア → 無目で梁補強が必要
- 軽量ドア・荷重式自動ドア → 無目なしでも運用可能な場合あり
- 安全性・センサー設置
- 多様な利用者(子ども、高齢者、車椅子)が通る施設 → 無目式センサーで確実に検知
- 特殊な検知システムを採用する場合 → 無目なしでも運用可能
- メンテナンス性
- 定期点検をしっかり行う前提なら無目があると便利
- 天井埋込型の場合、天井開口が必要になりメンテコストが増加
- デザイン・意匠性
- 無目あり → 機器が隠れ、ファサードはスッキリだが無目の存在感は出る
- 無目なし → 開口部がフルガラスで「透明感」が最大化される
根拠:実際の判断シナリオ
- マンションエントランス
- 居住者の安全性と耐久性が最重要 → 無目あり
- 無目内にセンサー・制御装置をまとめて収納 → メンテも容易
- 美術館・ショールーム
- 「ガラスが途切れない意匠」が最重要 → 無目なし
- センサーは床埋込や側面設置を検討 → 施工コスト増になる可能性
- 公共施設(自治体庁舎など)
- バリアフリー要求が高い → 無目あり
- 車椅子・ベビーカーなどの検知を確実にするため、無目式センサーを標準採用
注意点:無目の判断を誤るとどうなるか?
- 無目を省略した結果、センサー位置が不安定になり誤作動が増える
- 無目を設けた結果、開口高さが不足し大型荷物の搬入が難しくなる
- 天井埋込にした結果、保守のたびに大規模な天井開口工事が必要になる
要点整理:
無目の有無は、「コスト」や「見た目」だけでなく、利用者の安全・建物の用途・メンテナンス性まで含めて判断することが必須です。つまり「適ドア適所」の原則を踏まえ、「その建物、その利用環境に最も合う選択」をすることが正解となります。
実際の設計・施工ではどうしてる?事例とアドバイス
要点:
理屈では無目のメリット・デメリットを理解できても、実際の現場で「どう選ばれているか」が一番参考になります。ここでは、施設種別ごとに「無目あり」「無目なし」の採用傾向を整理し、設計者や発注者が失敗しないためのアドバイスを紹介します。
事例1:マンションエントランス
- 採用傾向:無目ありが主流
- 理由:
- 居住者の出入りが毎日頻繁にあり、耐久性・安全性が最優先
- センサーを無目内に設置することで、子どもや高齢者の動きを確実に検知可能
- メンテナンスも管理会社にとって容易
- アドバイス:将来の修繕を考えると「メンテ性」が特に重要。無目を設けた方が長期的な安心につながる。
事例2:公共施設(自治体庁舎・市民センターなど)
- 採用傾向:無目ありがほとんど
- 理由:
- バリアフリー設計が必須であり、車椅子やベビーカーを確実に検知する必要がある
- 多数の利用者に対応するため、安全基準が高く求められる
- 無目内にセンサーを設置することで誤作動を抑制
- アドバイス:自治体発注の仕様書には「無目一体型オペレーター」と明記されるケースも多いため、仕様確認を怠らないこと。
事例3:病院・介護施設
- 採用傾向:無目ありが圧倒的
- 理由:
- 車椅子・ストレッチャー利用者が多く、安全性を最優先する必要がある
- 無目式センサーにより、低い位置の動きをも確実に検知
- 無目部分に制御装置を集中させ、非常時対応もしやすい
- アドバイス:電源確保や停電時対応を含め、オペレーターと無目の関係をあらかじめ確認しておくことが大切。
事例4:商業施設(ショッピングモール・店舗)
- 採用傾向:入口は無目あり、店舗内部は無目なしのケースも
- 理由:
- メインエントランスは多数の利用者が通行するため安全性・耐久性重視 → 無目あり
- 店舗内部はデザイン重視のため、無目なしの全面ガラス設計も採用される
- アドバイス:人通りの多い入口では「無目あり」が基本。デザイン重視の部分的な出入口でのみ「無目なし」を検討すると良い。
事例5:美術館・ショールーム
- 採用傾向:無目なしが多い
- 理由:
- 建築意匠として「透明感」を最優先
- 展示空間との一体感を保つため、無目の存在を排除
- アドバイス:無目なしの場合、センサーを床や側面に設置するため施工コストは増える。安全性確保のため、冗長的にセンサーを設けるケースも多い。
注意点:施工後・保守段階での課題
- 無目ありの場合
- 長期的なメンテナンスは容易だが、無目内部が狭いと機器交換が困難になる
- 設計段階でメンテ性を確保する寸法を盛り込むことが重要
- 無目なしの場合
- 天井開口が必要となり、保守工事のたびに大掛かりになる
- 保守契約の内容(対応時間や費用)を必ず確認しておく必要がある
要点整理:
実際の事例を見ると、**利用者の安全性や運用の安定性を重視する施設では「無目あり」**が圧倒的に多く、**デザイン性を重視する施設のみ「無目なし」**を選んでいます。これはまさに「適ドア適所」の判断軸そのものです。
【適ドア適所】にそったまとめ
自動ドアにおける「無目(むめ)」は、単なる上枠ではなく、
構造・安全性・美観・メンテナンス性のすべてに関わる重要な設計要素です。
本記事で整理したポイントを振り返ります。
Q: 無目とは何か?
- 自動ドアの上部に設けられる枠構造で、モーターやセンサーを収納する場所。
- 梁としての補強効果もあり、構造安定に寄与。
Q: 無目が必要とされる理由は?
- 強度確保、美観保持、機器保護、センサー設置の安定化。
- 特に大型ドアや利用頻度の高い施設では不可欠。
Q: 無目あり/なしで何が違う?
- 無目あり → 安全性・保守性に優れるが、高さ制限やコスト増。
- 無目なし → 開放感やデザイン性は高いが、施工・保守に制約あり。
Q: 無目式センサーの特徴は?
- 設置高さが安定し、誤作動を減らせる。
- ただし外光や風の影響に注意。環境に応じた方式選定が必要。
Q: どう判断すべきか?
- 用途・通行量・安全性・保守性・意匠性の5軸で考える。
- 施設ごとの事例を見ると、公共・医療・住宅系は無目あり、デザイン重視の文化施設は無目なしが多い。
最終メッセージ:
自動ドアにおける「無目」の設計は、どちらが正しいかではなく、その建物に最適かどうかで決まります。
つまり、無目の有無を考えること自体が「適ドア適所」の実践です。
設計者や発注者に求められるのは、目先のコストや見た目だけでなく、利用者の安全・快適さ、そして将来の保守性までを含めた「全体最適の判断」です。
出典
- Nabcoドア「自動ドア用語集」
- 自動ドア修理メンテナンス各社サイト(autodoor-repair.com ほか)
- ファーストレイズ「自動ドアセンサーの種類と特徴」
- Goldman Exa「自動ドアセンサー誤作動の原因」
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