自動ドアと聞くと、「電気で自動的に開閉する便利なドア」というイメージが真っ先に思い浮かびますよね。実際、病院、商業施設、マンションのエントランスなど、私たちの生活のあらゆる場面で利用されています。
しかし、多くの人が見落としがちなのが「動作の快適さを維持するための地味な努力」、つまり**グリスアップ(潤滑メンテナンス)**の重要性です。
最近、こんなことを感じたことはありませんか?
- 自動ドアが「ギィギィ」と不快な音を立てている
- 動きが重くなったように感じる
- ドアの開閉スピードが不安定になった
それ、潤滑不良のサインかもしれません。
この記事では、自動ドアのグリスアップについて、基本の「キ」から応用レベルまで、絶対に知っておきたいポイントを体系的に整理して解説します。
目次(このページの内容)
自動ドアにグリスアップって必要?
一言で答えると?
はい、必要です。ただし「正しくやる」ことが前提です。
背景:なぜ潤滑が必要なのか?
自動ドアは、見た目にはスムーズに動いているようでも、内部では常に「摩擦」が発生しています。金属同士がすれ合ったり、ガイドレールにゴミがたまったりすることで、次のような不調が起きやすくなります。
不調の初期サイン:
- 異音がする(キーキー、ギィギィ)
- ドアが途中で止まりやすい
- 動作が重く感じる
- スピードが遅くなる
- 開閉時のガタつきやブレ
放置するとどうなる?
潤滑不良を放置すると、「部品の摩耗」が加速し、結果的に以下のような大きなトラブルにつながります。
- 吊り車やガイドレールの削れ → 交換が必要に
- モーターの過負荷 → 基板・センサー不良へ
- 振れ止めの劣化 → ドアの脱線・事故リスク
重要なのは「正しい場所」に「適切な量」で「適したグリス」を使うこと
ただの「油させばいい」という話ではなく、誤った部位・種類・方法でのグリスアップはむしろ機器の寿命を縮めてしまいます。
次のセクションでは、「どのパーツにグリスアップすべきか?」を具体的に見ていきましょう。
どの部分にグリスアップが必要?パーツ別に解説
一言で答えると?
吊り車・ガイドレール・振れ止め・ヒンジなど、動きのある部位すべてに検討の余地があります。
自動ドアの動きは「連携」で成り立っている
自動ドアの開閉動作は、複数のパーツが連携して行われています。その中で「機械的な摩擦が生じる部位」こそが、グリスアップの対象となるのです。
主な潤滑対象部位と役割
| パーツ名 | 役割 | 潤滑の必要性 |
|---|---|---|
| 吊り車 | ドアを吊ってレール上を移動させる | 最重要。ここが滑らかでないと動作不良に直結 |
| ガイドレール | 吊り車が走行するレール部分 | 滑走性と静音性の確保に不可欠 |
| 振れ止め | ドアの横振れ(ブレ)を防止 | 異音・衝撃吸収のため軽いグリスが有効 |
| ガイドピン | ドア下部を安定させる(下部支持方式など) | 接触音や振動低減にグリスが効果的 |
| ヒンジ | 開き戸式ドアの回転軸部分 | 摩耗・きしみ防止に必要 |
| ストッパー機構 | 開閉終点でドアを止める緩衝機構 | 接触面が擦れるため軽めの潤滑推奨 |
部位によって適したグリスは異なる
1. 金属同士が擦れる部位(吊り車、レールなど)
→ 耐荷重性が高く、流れにくい「リチウム系グリス」が定番。
2. ゴム・樹脂との接触がある部位(振れ止め、ガイドピンなど)
→ ゴムやプラスチックを劣化させない「シリコン系グリス」が安全。
3. 可動部が高速運動する箇所(ヒンジなど)
→ 粘度が高すぎず、温度変化にも強い「フッ素系」や「ウレア系」が好まれる。
注意点:塗布前の清掃は「必須」
グリスアップを行う前には、必ず乾いた布でゴミ・ホコリをふき取ることが重要です。汚れの上にグリスを塗ると、摩耗を早める「研磨剤のような状態」になります。
グリスの種類と選び方|「万能」はない?
一言で答えると?
用途・素材・環境に応じて、適したグリスはまったく異なります。
グリスに求められる性質は多岐にわたる
グリスは単なる「滑りをよくする油」ではありません。
それぞれの現場において、以下のような特性を持つことが求められます。
- 高荷重への耐性(吊り車など)
- 金属・ゴム・樹脂との相性
- 温度変化への強さ(屋外設置など)
- 水・湿気への耐性(結露や雨の侵入)
- 流れ落ちにくさ(天井部など重力に逆らう場所)
主なグリスの種類と特徴
| グリスの種類 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| リチウム系 | 粘度が高く、耐荷重性・耐摩耗性に優れる | 吊り車、レール、ヒンジなどの金属部位 |
| シリコン系 | 樹脂・ゴムへの攻撃性が低く、広温度帯で安定 | 振れ止め、ガイドピンなどゴム接触部 |
| フッ素系 | 高温・高荷重・高回転に強い。高価。 | プロ用途、高機能ドアなど |
| ウレア系 | 耐熱性・酸化安定性に優れ、なじみが良い | 屋外使用、長期間交換不可な場所 |
| モリブデン系 | 高圧下でも潤滑性維持。ただし汚れやすい。 | 摩耗が激しい箇所、一部業務用限定 |
「万能グリス」は存在しない
ホームセンターで売られている「多目的グリス」や「万能グリス」は便利そうに見えますが、
自動ドアに使うには注意が必要です。
誤ってゴム部にリチウム系を塗ると、膨張・劣化を招く可能性があります。
また、過粘度のグリスは寒冷地で硬化し、ドアの動きに支障が出ることもあります。
グリス選びの3つの判断基準
- 塗る相手が金属か?ゴムか?樹脂か?
- 屋内か屋外か?温度や湿気は?
- 垂直面か水平面か?グリスが流れるリスクは?
業務用現場では「混合を避ける」意識も重要
異なるグリスを混ぜて使用すると、性能が打ち消し合い、かえってトラブルの原因になります。
現場では「グリスの系統を揃える」「塗り替える際は旧グリスを完全除去する」など、丁寧な対応が不可欠です。
正しいグリスアップの手順と頻度とは?
一言で答えると?
「清掃→塗布→余分除去」の3ステップで、半年〜1年に1回が基本。
グリスアップは「ただ塗る」では効果が出ない
正しい順序と方法を守らなければ、かえって摩耗や不具合の原因になります。
特に、清掃を省いたり、量が多すぎたりするとトラブルの元になります。
手順:グリスアップはこの3ステップで
- 清掃(汚れ・ホコリ・旧グリスの除去)
- パーツ表面に付着した汚れを、乾いた布やパーツクリーナーで除去します。
- 旧グリスが劣化していた場合は、完全に拭き取るのが望ましい。
- 塗布(適量を、適した部位に)
- 指先や筆、専用のグリースガンなどで塗布します。
- 「ベタ塗り」ではなく、「薄く均一に」が基本。
- グリスの系統に注意(前節参照)
- 余分除去(飛散・付着を防ぐ)
- 塗布後に周囲の余分なグリスを軽く拭き取ります。
- 流れ落ちやすい天井部などでは特に注意。
頻度:どれくらいの間隔でやるべきか?
| 使用状況 | 推奨グリスアップ頻度 |
|---|---|
| 屋内、標準的使用 | 年1回程度(12か月に1回) |
| 屋外、風雨にさらされる | 半年ごと(6か月に1回) |
| 高頻度通行(病院・駅など) | 3〜4か月ごと |
頻度と合わせて考えたい「メーカー点検との連動」
もし自動ドアが保守契約に入っている場合、グリスアップも「業者側で対応済み」のことがあります。
- 年2回の定期点検で、すでに清掃・潤滑を実施している可能性あり
- 自力で追加グリスアップする場合、種類や系統を必ず確認
→ 点検レポートを確認し、「どのパーツにどのグリスを塗布済みか」が記載されている場合もあります。
やってはいけないグリスアップNG例集
一言で答えると?
やり方を間違えると、不調の「原因」にすらなります。
グリスアップには「落とし穴」がある
多くの人が「グリスアップ=良いこと」と思いがちですが、実は失敗しやすい工程でもあります。
ここでは、現場でよくある失敗例と、それが引き起こす不具合を紹介します。
NG例とそのリスク
| NG内容 | 起こりうる問題 |
|---|---|
| ① グリスを塗りすぎた | ホコリが付着しやすくなり、研磨剤化して摩耗加速 |
| ② 違う種類のグリスを混ぜた | 潤滑効果の打ち消し合い、化学反応による劣化 |
| ③ 清掃せずに上から塗った | 旧グリスと汚れがこびりつき、むしろ摩擦増加 |
| ④ ゴム部にリチウム系を使った | ゴムが膨張・変質し、密閉性や可動に影響 |
| ⑤ 電装部(センサー周辺)に塗布 | ショートや誤作動など電気系トラブルの原因になる |
| ⑥ 粘度が高すぎるグリスを使用 | 寒冷時に硬化し、ドアが動かなくなる可能性あり |
実際にあったトラブル事例
【事例1】商業施設のドアが開閉しなくなった
→ 吊り車に大量のグリスを塗布。ホコリと一緒に固着し、動きが阻害された。
【事例2】マンションのドアが異音を出し続けた
→ ガイドピンに金属系グリスを使用。ゴム部劣化により振動・異音が増加。
【事例3】開閉途中でドアが停止
→ センサー部に誤ってグリスが付着。誤検知で誤作動を引き起こした。
NG防止のための3つの心得
- 「清掃→塗布→拭き取り」の3ステップを毎回守る
- 部位ごとにグリスの相性を確認(ゴム・樹脂には注意)
- 電装部・センサー付近には絶対に塗らない
業者に任せるべき?自分でやる?判断基準とは
一言で答えると?
「部位の特定ができない」「異音が解消しない」なら、業者に任せるのが安全です。
自動ドアのメンテナンスは「誰でもできる」が「正しくできる」とは限らない
グリスアップは、手順さえ守ればある程度は自力でも対応可能な作業です。
ただし、以下のようなケースでは専門知識や経験が不可欠になります。
自分で対応できる範囲
✅ 吊り車・ガイドレールの表面清掃と軽いグリス塗布
✅ 振れ止めの軽微なきしみ対応(明確な場所が分かる場合)
✅ ゴムパーツとの接触がなく、金属部に限定された部位へのグリスアップ
業者に依頼すべきケース
🔻 どこから音がしているのか特定できない
🔻 一通りやってみたが症状が改善しない
🔻 屋外で動作不良が出ていて、雨水や温度差の影響が疑われる
🔻 モーターや基板などの「動力部」に関わりそうな気配がある
🔻 高所・特殊構造のドアで、安全確保が難しい場合
自動ドア業者の対応内容(例)
- 吊り車・ガイドの分解清掃とグリス再塗布
- モーター軸・スプロケットなど内部部品への潤滑
- 異音診断とパーツの摩耗確認
- 潤滑剤の種類選定(現場環境に応じたもの)
- グリスアップとあわせて調整・点検・報告書提出まで一括対応
保守契約に含まれている場合は?
商業施設やマンション等では、多くの場合自動ドアの保守契約が結ばれています。
- 年2回点検 → その都度、必要なグリスアップも実施済みのケースあり
- 自力対応の前に「点検報告書」を確認することで重複作業を防げる
判断軸まとめ
| 判断項目 | 自分でOK | 業者に依頼すべき |
|---|---|---|
| 異音の発生場所が明確 | ✅ | |
| 屋内設置 | ✅ | |
| 高所/特殊ドア | ✅ | |
| ゴム/電装部が近い | ✅ | |
| 症状が解消しない | ✅ |
ドアの方式によって潤滑ポイントは違う?
一言で答えると?
電動式・荷重式・ヒンジ式など、構造が違えばメンテナンス箇所も変わります。
自動ドアには複数の「方式」がある
一般的に「自動ドア」と呼ばれる装置には、以下のような駆動方式があります。
| ドアの種類 | 特徴 | 主な潤滑ポイント |
|---|---|---|
| 電動スライド式 | モーターとベルト駆動で開閉。商業施設などに多い | 吊り車、レール、振れ止め、モーター軸 |
| 荷重式(Newtonドア) | 電気を使わず、ドアの重みと傾斜で動作。停電時も可 | ヒンジ、支点部、ガイドピンなど |
| ヒンジ式 | 扉を回転軸で開閉。開き戸型の自動化バージョン | ヒンジ、シリンダー部分 |
荷重式ドア(Newtonドア)と潤滑メンテの視点
Newtonドアのような荷重式自動ドアは、電動部が存在しないため、グリスアップが必要なポイントも限られます。
メンテナンスの利点:
- 可動部が少なく、潤滑ポイントも明確
- 屋外設置にも強く、環境による影響が少ない
- グリスアップが簡単に済む(点数が少ない)
注意点:
- 支点部のヒンジ、可動シャフトなどは適切な粘度のグリスを使用
- グリスが漏れて床に落ちると滑りやすくなるため、塗布後の拭き取りが重要
【適ドア適所】の視点:
構造がシンプルな荷重式は、**「グリスアップの負担が少ない」**というメリットがあるため、
・高齢者施設(安全確保)
・省電力を求められる施設
・頻繁な業者対応が難しい地方施設
などでは特に、メンテナンス性を重視した選定軸として有効です。
まとめ|トラブル予防のために今できること
本記事のまとめ
- 自動ドアのグリスアップは、定期的に必要な基本メンテナンス
- 塗布部位・グリスの種類・使用量の選定ミスはトラブルのもと
- 「清掃→塗布→余分除去」の3ステップがグリスアップの基本
- 異音・不調が改善しない場合は、早めに業者へ相談が安心
- ドア方式によって、メンテナンス性や潤滑ポイントは大きく異なる
今できる具体的なアクション5つ
- ドアの異音や動作状況を今チェックしてみる
- グリスアップ対象部位を目視し、汚れの有無を確認
- 点検記録や保守契約がある場合は、内容を見直す
- 必要であれば、自分でできる範囲の清掃+軽い潤滑を実施
- 迷ったら、業者に写真を送って事前診断してもらう
【適ドア適所】にそった視点で考えると…
たとえば、「頻繁なグリスアップが面倒・難しい」と感じている施設には、
電気を使わず、**可動部が少なくて潤滑管理のしやすい「荷重式ドア(Newtonドア)」**のような選択肢も、
長期的に見て安心・安全を両立できる判断軸となるかもしれません。
関連記事リンク(参考導線)
- [Newtonドアとは?停電時も使える荷重式ドアの仕組みと安全性]
- [自動ドアの部品構成とメンテナンスの基本を知る]
- [自動ドアの異音トラブルとその対策方法まとめ]
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【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus