自動ドアというと、「電動で自動で開閉する便利なドア」というイメージを持つ方がほとんどかもしれません。しかし、実はその「横幅(よこはば)」こそが、使いやすさ・安全性・設置性を左右する重要な設計要素なのです。

特に、「有効開口幅(=人や物が通れる実際の幅)」は、施設の用途や使う人の身体状況によって大きく要件が異なります。この記事では、「自動ドアの横幅」にまつわる疑問を根本からひも解き、現場での設計・選定に迷わないための判断軸をお伝えします。


自動ドアの「横幅」ってどの部分?用語の違いに注意

**要点:**自動ドアの「横幅」という言葉が示す範囲は実は曖昧で、意識せずに話すと誤解が生まれやすい言葉です。現場では、以下のように複数の寸法が「横幅」と表現されます。

用語の整理:

用語名意味
枠外幅ドア枠を含んだ全体の幅。建築設計図上で「開口幅」として扱われることが多い
枠内幅ドア枠の内側にある実寸の幅。実際に建具(扉)が収まる空間
有効開口幅(通行有効幅)扉が開いた状態で、人や物が実際に通れる幅
引き残し幅引き戸が開いた時、壁の中に完全に引き込めず残る部分。これにより有効幅が減ることがある
戸尻〜戸尻間両引きや引き分け時に、左右の扉の端から端までの距離。これも通行幅とは異なる場合がある

背景と注意点:
現場で「ドア幅は900mmです」と言われたとき、それが「枠外幅」なのか「有効開口幅」なのかで、通行性は大きく変わります。特に重要なのは、**人や物が通れる「有効開口幅」**であり、この記事でもこれを「横幅」の基準として扱います。


最低限必要な自動ドアの有効開口幅とは?

**簡潔な答え:**自動ドアの通行幅として、有効開口幅900mm以上がひとつの目安とされています。ただし、用途や利用者の状況によって必要幅は変わります。

根拠:

  • 全国自動ドア協会(JADA)の「自動ドア安全ガイドライン」では、最低でも900mm以上の有効開口幅が望ましいとされています。
  • バリアフリー法、福祉住環境コーディネート関連の設計指針でも、車椅子での通行には800mm以上、理想は900~1000mm以上が必要とされています。
  • 2022年改正のJIS A 4722でも、安全性や検知範囲における設計要件が強化され、センサーや補助検知装置の配置と連動して適正な開口幅の設計が求められています。

詳細解説:

  • 片引きドアで900mmの開口幅を確保する場合、扉1枚あたりのサイズや引き込み寸法、戸袋スペースに影響されるため、設計には制約がある場合も。
  • **引き分け型(両引き)**では、扉2枚を左右に引き分けることで、比較的容易に広い有効幅を確保しやすくなります。
  • 多連スライドでは、複数の扉を折りたたむように引き込むことで、壁幅を圧迫せずに有効幅を最大化できる方式です。

まとめ:
有効開口幅は、安全・通行性・バリアフリーを確保する上での「最低ライン」です。施設の性質によって、さらに広い幅が求められることもあります。



建物用途ごとに異なる「適切な幅」の考え方

**一言で言えば:**どんな施設に設置するかで、求められる横幅は大きく変わります。人の流れ・利用者の属性・搬入物のサイズによって、有効開口幅の「適正値」は異なるからです。


用途別に見る「必要とされる横幅」

用途推奨される有効開口幅理由・特徴
一般住宅約800〜900mm通常の出入りを想定。段差や柱がない設計を補うためのゆとり幅
マンション共有部900〜1100mmベビーカー、車椅子対応、日常の買い物や荷物搬入を想定
病院・クリニック1000〜1200mm以上ストレッチャー、車椅子、補助器具使用者のため広めに設計
商業施設・スーパー1200〜1600mm以上(両開き・引き分け型)多人数の出入り、カート・ベビーカー・搬入車両も考慮
学校・公共施設1000〜1400mm多人数の利用・集団の流れを意識した設計が求められる
介護施設1100〜1300mm介助者+車椅子の並列通行を想定、より広い開口が必要

ケーススタディ:現場の「通りやすさ」の違い

  1. マンションのエントランスで幅850mmだった場合:
    • 車椅子は通れるが、ベビーカーとすれ違いできない
    • 荷物を抱えた人がドア枠にぶつかる可能性がある
    • 配送業者が台車で通るのに苦労する
  2. 病院の外来入口で幅950mmしか確保できなかった場合:
    • ストレッチャーが角を曲がれず、斜め通行を強いられる
    • 高齢者の介助者が一緒に入るには狭すぎる

設計者視点の注意点:
用途ごとの利用者の動き方(歩行速度・方向転換の頻度・手荷物の有無)まで考えると、必要な幅は表面的な「規格数値」以上に慎重な検討が必要です。


まとめ:

「何mm以上が正解」という画一的な基準ではなく、施設の役割とユーザーの行動特性に応じて有効幅を設定することがベストです。そのため、現地の導線シミュレーションを前提に、初期段階からドア形式と幅の両方を同時に検討することが重要になります。



自動ドアの形式によって変わる「通れる幅」

**一言で言えば:**同じ「開口寸法」でも、ドアの形式によって「実際に通れる幅(有効開口幅)」は大きく異なります。


自動ドアの主な形式とその特性

形式概要有効開口幅の特徴設置上の注意点
片引き(1枚扉)扉が一方向に引き込まれるシンプルな構造扉1枚分しか開かないため、有効幅が限られる扉の引き込みスペースが必須
引き分け(2枚扉)扉が左右に分かれて引き込まれる中央から両側に開くことで広い有効幅を確保両側に壁面スペースが必要
多連スライド扉が折りたたまれるように引き込まれる壁幅が少なくても広い開口が可能特殊な駆動装置や設計が必要
弧形ドア(カーブ型)円弧状に開閉するデザイン性の高いドア通常よりも狭い通行幅になることが多い美観・演出重視の施設向き
荷重式自動ドア(Newtonドア)人の荷重で開閉する省エネ型。電気不要駆動機構が不要なため、引き残しが少なく有効幅を最大化しやすい傾斜床や機構設計に工夫が必要

形式ごとの「実際に通れる幅」の違い(実測イメージ)

例えば、枠外寸法1,200mmの開口で比較した場合…

  • 片引き:有効開口幅 約800〜850mm
  • 引き分け:有効開口幅 約1000〜1100mm
  • 多連スライド:有効開口幅 約1100〜1150mm
  • 荷重式(Newtonドア):引き残しが非常に少ないため、有効開口幅が枠内寸にほぼ近くなるケースあり(例:枠内幅1150mm → 有効開口幅1120mm)

有効開口幅を最大化する設計のコツ

1. 壁の引き込みスペースを十分に確保する
引き残しが大きいと有効幅が削られるため、壁内への扉収納を想定した設計が望ましい。

2. 扉厚・戸尻のオーバーラップを最小限に
扉同士や壁との重なり部分(戸尻のクリアランス)を調整することで、数センチの通行性改善が可能。

3. 荷重式や多連スライドなどの特殊形式を検討する
制約の多い現場では、通常の片引きでは確保できない幅を出す方法として有効。


まとめ:

設計段階で「ドアの形式」と「開口幅」はワンセットで考えるべきです。形式の違いは、安全性だけでなく、実際の使いやすさ(通行性)に直結します。

特にスペースが限られる現場では、**機構に引き残しの少ない荷重式(Newtonドア)**のような形式を活用することで、「開けられるはずの幅」を最大限に活かすことが可能になります。



「幅を広くすればよい」は誤り?設計制約と安全のバランス

**一言で言えば:**広いドアは一見便利ですが、「幅を広げれば広げるほど良い」という考え方には落とし穴があります。実際の設計では、安全性・建物構造・駆動性能とのバランスを取る必要があります。


幅を広げることのメリットと盲点

メリット:

  • 多人数の出入りがスムーズになる
  • 台車・ストレッチャーなどの搬入がしやすい
  • バリアフリー対応がしやすく、将来の利用にも柔軟に対応できる

盲点:

  • 引き込みスペースが不足する → 壁面や戸袋の長さが足りないと扉が完全に開かない
  • 駆動装置の負荷増大 → 重い扉を開閉するため高出力のモーターが必要に
  • 誤作動や接触リスクの増加 → 長く重い扉はセンサー検知エリアの管理も複雑になる
  • 停電時の動作に影響 → 大きいドアは手動開閉時に重く、非常時対応に支障が出る

設計時に考慮すべき制約要素

1. 建物側の物理的制約

  • 開口部の幅よりも、壁の厚みや隣接構造物との干渉に制限される
  • 建物全体の構造耐力や内装設計に影響を与えるケースもある

2. 駆動装置の性能限界

  • 自動ドアのモーターは対応できる扉質量・幅に上限がある
  • 特に風圧がかかる屋外では、扉を押し戻す力も考慮が必要

3. 安全距離(クリアランス)

  • 扉が動く範囲に人や物が入らないよう、安全ゾーンの確保が必須
  • 開く方向に対して、柱や家具が近すぎると事故につながる

4. 検知センサーとの整合性

  • 有効開口幅が広いほど、センサーの死角が生まれやすくなる
  • センサーの設置位置や検知距離が、使用環境に合っていないと事故のもとに

対策:幅を広げるだけでなく「適正に」設計する

  • 「この空間で、人が通れる最も安全な幅はどこか?」という視点から再設計する
  • 自動ドア形式そのものを見直す(例:荷重式・多連スライド)
  • 幅にこだわるだけでなく、クリアランス・安全・メンテナンス性も含めた総合判断を行う

まとめ:

「とにかく広く」が正解ではなく、「目的に対して最適な幅とは何か?」が重要です。
施設の運用目的・通行者の特性・建物制約・安全性の4つのバランスを取って、最適な幅を設計しましょう。



【適ドア適所】建物や使い方に合わせた幅の選び方

**結論から言えば:**自動ドアの幅は、「用途」と「場所」と「形式」によって、最適な選び方が存在します。これこそが、私たちが提唱する「適ドア適所」の考え方です。


施設別・適ドア適所の判断軸

建物用途通行量・目的推奨される形式推奨有効幅選定時のコツ
マンションのエントランス住民・宅配・ベビーカー荷重式・引き分け型900〜1100mmスペースが限られるなら引き残しの少ない形式を優先
医療施設車椅子・ストレッチャー多連スライド・引き分け型1200〜1400mm緊急対応の通行性を確保。手動でも軽く開けられる工夫を
公共施設多人数の同時出入り引き分け・大型弧形ドア1400〜1600mmセンサー死角を作らず、バリアフリー性を担保
店舗・オフィスカート・人流重視片引きまたは両引き1000〜1300mm出入口幅よりも導線全体のスムーズさを重視
戸建住宅の勝手口や納戸少人数・限られた動線荷重式800〜900mm電気不要でコストを抑えた自動化も可能

Newtonドア(荷重式)の特性と幅の最適化

荷重式自動ドア「Newtonドア」は、以下のような特性から「幅を有効に使える選択肢」として特に注目されます:

  • 電気を使わず、床の傾斜+人の荷重で開閉
     → 駆動機構が不要なため、引き込みや機械スペースがいらず、有効幅が最大化しやすい
  • 施工が簡単で壁を壊さず後付け可能
     → リフォームや限られた空間でも導入しやすく、スペースのムダが少ない
  • センサー誤作動がなく安全
     → あくまで「人の動き」が前提の構造のため、安全設計がしやすい

これにより、「限られた壁幅で、できるだけ広く・安全に・省施工で」通行幅を確保したい場面では、非常に合理的な選択肢となります。


【適ドア適所】にそった「まとめ」

  • 自動ドアの横幅で重要なのは「有効開口幅」であり、これは形式・建物制約・目的で大きく変わります。
  • 施設ごとに通行性のニーズは異なり、車椅子・搬入・安全設計などをすべて考慮して適切な幅を決める必要があります。
  • 設計時には「幅の広さ」だけでなく、「形式(引き戸か荷重式か等)」や「引き残し・クリアランス」も合わせて検討しましょう。
  • 特に狭い場所やリフォーム前提の現場では、荷重式(Newtonドア)のように「構造制約の少ない形式」が有効な選択肢になります。

出典・参考資料

  • 全国自動ドア協会(JADA)『自動ドア安全ガイドライン(スライド式自動ドア編)』
  • JIS A 4722(2022年改正)『歩行者用自動ドアセット-安全性』
  • superreee.com『自動ドアの規制・基準・法令まとめ』
  • madomise.com『ドアの横幅はどれくらい?』
  • lixil.co.jp『LIXIL|建物別自動ドアシリーズ』
  • autodoor-repair.com『自動ドアのルールと安全設計』

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【荷重式自動ドア】NewtonドアのYoutubeチャンネルはこちらから→https://www.youtube.com/@newton_plus

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